運命の出会い.
〜プロローグ〜
俺は、ごく普通の会社員だった。毎日、同じようなルーティーンを繰り返し、家と職場を往復するだけの日々。何も特別なことはない……少なくとも、あの事故が起こるまでは。
ある日の帰り道、突然トラックが俺に突っ込んできた。激しい衝撃と共に、俺の意識は暗闇に沈んだ……と思ったが、気づけば見知らぬ場所に立っていた。目の前には、見慣れない巨大な城壁と、異形のモンスターたち。明らかに、ここは俺の知っている世界じゃない。
「ようこそ、勇者様。」
振り返ると、女神を名乗る美しい女性が微笑んでいた。彼女は、俺が異世界に転生し、無敵の力を与えられる運命だと告げる。どうやら、俺はこの世界の救世主らしい。
「そして、特別にあなたには”チート能力”を授けます。これを使えば、誰にも負けることはありません。」
俺に与えられたのは、すべてを超越する最強の能力。どんな敵でも一瞬で倒せる力、そして、周囲の女性たちが次々と俺に心を寄せる、特別な魅力。
「これからは、あなたの冒険が始まるのです。どんな困難も、どんな女性たちも、あなたの手の中に。」
こうして、俺の異世界での冒険者としての生活が始まった。無敵の力と、次々に現れる美しい女性たち――俺は、手に入れたチート能力を駆使して、この世界を思いのままに生きていく。
異世界に降り立って数日が過ぎた。手に入れたチート能力のおかげで、どんなモンスターも簡単に倒せる。街の中で目立たないようにしていたが、俺の力を隠すのは簡単ではない。だが、そんな生活に少しずつ退屈を感じ始めていた。
「ここで何をしているの?」
振り返ると、柔らかな声が俺の耳に響いた。見上げると、そこには一人の女性――長い金髪に青い瞳を持ち、整った顔立ちをした美しい冒険者が立っていた。
「君は……?」
「私はリリス。この街のギルドに所属している冒険者よ。あなた、強いわね?」
彼女の眼差しは鋭く、それでいてどこか柔らかさがあった。リリスの存在感に圧倒されつつ、俺はその場に立ち尽くしていた。彼女が近づくたびに、俺の心は高鳴り、なぜかその距離が近づくたびに胸の奥が熱くなった。
「あなた、名前は?」
「俺は……アレン。」
俺が名乗ると、リリスはふっと微笑んだ。その瞬間、何かが弾けるような感覚が胸に広がる。彼女の美しさだけではない。リリスから感じる強さと優雅さ、それにどこか孤独を感じさせるような眼差しに、俺は不思議な引力を感じた。
「アレン、私と組んでみない? あなたの力を見てみたいの。」
彼女は俺に手を差し出す。その手に触れた瞬間、全身に電流が走ったかのような衝撃を覚えた。リリスの手は温かく、指先がほんの少し震えていた。その震えに気づいたのは俺だけだった。
「君と一緒に……」
自然とその言葉が出ていた。俺は彼女の手を取り、二人は共に歩き出した。
――――――――――――――
不可解な感情
それから数日、リリスとの冒険は順調に進んでいた。彼女の戦いぶりは華麗で、俺の無敵の力をもってしても彼女の存在を無視することはできなかった。共にモンスターを倒し、ダンジョンを探検し、少しずつ俺たちの距離は縮まっていった。
だが、ある晩、俺たちは焚き火の前で休んでいると、リリスが突然問いかけてきた。
「アレン、あなたはどうしてここに来たの?」
その質問に、俺は少し戸惑った。異世界に転生した理由なんて、正直俺自身もよくわからない。だが、彼女の瞳には真剣な光が宿っていた。
「わからないんだ。ただ、気づいたらここにいて……気づいたら君と一緒にいる。」
その言葉が口からこぼれた瞬間、リリスの顔がほんの少し赤く染まった。そして、彼女はそっと俺の隣に座り、焚き火をじっと見つめた。
「あなたがここにいるのは、きっと運命なのよ。」
「運命……?」
リリスはゆっくりと顔を俺に向け、瞳をじっと見つめてくる。その瞳の奥には、深い孤独と何かを求めるような光があった。俺は思わず手を伸ばし、彼女の頬に触れた。リリスは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに目を閉じ、俺の手にそっと身を委ねた。
「アレン……」
彼女が囁くその声は、どこか切なく、それでいて温かかった。その瞬間、俺たちの間にある距離が一気に縮まった気がした。リリスの温もりが俺の全身に伝わり、胸の奥が熱くなった。
「リリス……俺は、君のことを……」
その言葉が口から出かけた瞬間、リリスはそっと俺の唇に指を当て、静かに微笑んだ。
「今はまだ、何も言わないで。お互い、もっと知ることがあるわ。」
その夜、俺たちは焚き火の前で寄り添いながら、いつまでも語り合った。心の奥底で、俺は彼女に惹かれていることを確信していた。リリスもまた、同じように感じているのかもしれない……。