最後の選択
その日の夜、アリスは
消灯時間を過ぎ、鉄格子の窓から差し込む月明りと、鉄のドアにつけられたのぞき穴から入る、見回りの刑務官が持つランプのみが、隅から隅まで石と鉄でできた部屋の中を照らす
アリスは部屋に敷かれた薄い、とても布団とは呼べない、その布の上にうずくまるように体を置き、布団よりもさらに薄い、ほとんどないのと同じような布を羽織る
瞼がを閉じて、アリスが眠ろうとするとすぐ近くから鉄を思いっきり曲げたような音が鳴る
「やっほーアリスちゃん、久しぶり」
聞き覚えのある声がする方を見るとそこには、赤黒いぼさぼさの長髪の男が、明るそうな声とは全く逆の無表情な顔でそういう
「早く殺してくださいよ、それが目的でしょう?」
「いや~、正確には違うなぁ、戻るなら生かす、戻らねぇなら殺す、お前はボスのお気に入りだからなぁ」
さっきまでとは全く違う、語尾を上げるような、狂った喋り方で聞いてくる
(あの日から今まで、頭にずっと張り付いてた、後悔が、罪が、そしてそれを飲み込む楽しい日々が、嬉しい言葉が、あの日々が何度も何度も頭の中に流れてくる、そのたびに寂しくて、悲しくて、戻りたくて、みんなと会いたくなる、「でもこんな私が会う資格なんてって」思ってた、でも今日みんなが私に会いに来てくれた、こんな私を許してくれた)
そんなことを考えながら起き上がり、みんなからキョウと呼ばれるその男の目を見て言う
「私はもう決めたんです、あの人たちを、ライトさんたちを裏切らないって」
そういい、自らの力を振り絞り、草魔法で作った棘で脳幹を刺し、地面に倒れる
「死んじゃったかあ、悲しいなあ」
真顔で見下ろしながらキョウがそういう
「おい!306番うるさいぞ!」
そういい刑務官が牢屋の中を覗こうとした瞬間、一瞬でドアに穴を空け、鉄ごと刑務官の頭を破壊し、ドアを剥がし、出口に向かっているもう一人の刑務官のところまで走り、心臓を狙うが刑務官がぎりぎりで避け、キョウの攻撃は右半身を破壊する
「いたそうだなあ、かわいそうだなあ、避けなきゃよかったのになあ、なんで避けたんだ?」
どうにかして叫ぼうとしている刑務官の首を絞めつけてそう聞く
「無駄・・・だ・・・ここを登録されてない人間が通れば・・・警報が鳴る・・・来るんだよ・・・最強が」
どうにか声をひねり出して刑務官がキョウに言う
「この後ろに用なんてねえよ、そもそも俺鉄格子壊して入ってきたんだよね~」
「なんで・・・警報が鳴って・・・」
そこまで刑務官が言うと握っていた首をつぶし
「教えるわけねえじゃん」
ここでも常に無表情のまま喋る




