4.これはこれでありがたい事だ-そうカズが思う理由-
全44話予定です
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研究所には既にレイドライバーは運ばれていた。それはレイリアたちは車を変えるだけでなく、わざと寄り道を、回り道をして到着したのだ。
それ程にこの場所は秘匿されなければいけないのだ。
カズは目隠しをしたままレイリアを手術室の前に連れてきた。
そこで目隠しを外し、
「ここが研究所だ、この場所は秘匿されなければいけない。きみの質問にも答えられない事が多いと思う。とりあえず、これからのスケジュールを伝えるよ」
そう言ってカズはレイリアに説明を始めた。
「これからきみは腕の手術と義手の取り付けを行う。それで、こんな事しなくてもいいのに、義手の運用権はオレが持つ事になる。つまり、オレの命令で義手を取り上げで懲罰、なんて事も起こりえるそうだ。ただし、義手もそうだけど義肢の技術は帝国にも負けないくらい良いから安心して」
――チトセと同じだ。両腕を失って……。
そう言ったカズの言葉に、
「あたしの身体も心も、もうカズの好きにしてくれていいよ。本当なら、もう今までに何度も死んでる身だから。どんなことに使ってくれてもいいよ」
――そう言われると、ちょっと心苦しいんだが。これはこれでありがたい事だ。
そうカズが思う理由、それは秘密を減らすことが出来るのだ。
今までは秘匿回線を使っていたが、緊急時には通常回線を使ってサブプロセッサーを交えた会話が出来る。これだけでも相当メリットがあるのだが、レイリアは自分の事は好きに扱ってくれていい、と言った。
それは第一世代のレイドライバー四体をすべて心身ともにカズのコントロール下に置けるという意味を示している。
それは、これからもしかしたら非人道的な改修や、今までだったら拒絶反応が出ていたような事を施さなくてはならなくなってもそれを隠さず行える、という事なのだ。
それに、皆がカズの事を想ってくれていれば命令もしやすい。
「じゃあ続けるよ。腕の手術と共に首のうしろの辺りにコレを埋め込むんだ」
と言ってカズはある器具をレイリアに見せる。
「これは?」
当然の疑問だ。それには直ぐに、
「これはね、スイッチャーと言って、レイドライバーを直接操縦できる技術だ。操縦する時は自分の身体の運動感覚神経系をカットして、レイドライバーの神経系に繋げる、そう言う役割を果たしている」
と答える。
「でもね、きみの機体は、クリスやトリシャの機体のような運用は出来ないんだ」
それは、クリスやトリシャの機体に搭載されているのは、前述のとおり自我を持ったサブプロセッサーである。だが、今回の改修にコアユニットとサブプロセッサーの改修は含まれていない。つまり、このまま使うという事を意味している。
「でも、クリスたちのようにした方がカズにとってもいいんじゃあない?」
――そんな言葉が出てくるとは。意外だよ。
それほどにレイリアは既にカズに重きを置き始めているという現れなのかもしれない。
そんなレイリアに、
「実は、ゼロワン用の改修キットは別の機体に転用したから残っていない、というのもある。だけどね、それ以上にきみの機体のコアユニットとサブプロセッサーを[どうにか]する事がオレには出来なかったんだ。もちろん個体同調率がいいというのもある。だけどトリシャやクリス、あの二人には出来た事がきみには出来ないんだ」
と言ったカズは少し複雑だ。
皆と同等に扱うのであれば、ゼロワンのコアユニットとサブプロセッサーは[どうにか]して別のサブプロセッサーを用意するのが筋であるし、その方が性能は上がる。だが、それが出来ない理由。
それはやはり、
――レイリアはチトセに似ている。
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