3.二人の姉弟の事について-ありがとう、教えてくれて-
全44話予定です
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二人の姉弟の事について、憎いかと問われれば、昔のレイリアなら、もし拳銃が手元にあれば、もしかしたら震える手でカズに銃口を向けていたかもしれない。
だが、これだけ自分の手を汚し、汚れた躰で考える。今のレイリアなら[仕方がない]と言うだろう。それ程に成長した、とも言えるし汚れた、ともいえる。それはつまり、言い換えると[人として成長した]とも言えるだろう。
現に、
「ありがとう、教えてくれて。二人はどんな形であれ生きているんだね。それだけで十分、十分だよ。カズが悪い訳じゃあない、悪い訳じゃあないよ。この戦争、相手より生き残らないといけないのは分かってるし、その為の人為実験だったんでしょ? それで今のレイドライバーがあるんだから。それに」
そうレイリアは言うと、
「これからもどんな事があっても受け入れるよ。色々とひどい事をしてるのは分かったの、だってカズ、辛そうだもん」
目隠しをされているレイリアはカズが今どんな表情をしているかは分からない。だが、
「え?」
その一声で[オレが辛そう?]と考えているくらいは分かった。
「そう、辛そう。あたしが知っているカズはとても優しい人なの。虫も殺さないほどに。ちょっといたずら好きな。でもそんなカズが何百人も、しかも敵じゃない[ただの人]を殺めてきたのは、それだけの覚悟があったからなんだと思うんだ」
そんなレイリアの言葉に、
「オレはそんなんじゃあない。ただ、自分勝手なんだ」
そう言って、カズは少しだけ自分の事を話した。それは彼の人に対する考えである。関係にランク付けして、それを絶対のものとして扱う。そしてランク外の人は[ヒト]とみなさない事も。
「これの、これのどこが辛そうなんだ」
そう吐き捨てるように言う。
だが、
「ううん、それでもね。きみはとても優しいの。だってあたしたちの事を守ってくれるじゃない。それに実験を続けるのにそんな考え方にならないとやっていけないのは事実だよ」
思わずカズの事をきみ、と呼んでしまう。そして無い腕を広げてカズの声のする方に向かってハグをする。
「ちと、せ?」
そんな状況で、カズも何かが見えたのだろう。前に、カズが目覚めた時の人の名前が出てくる。
「それがカズの想い人なんだね。ううん、それ以上は聞かない。あたしがその人になってはあげられないもの。だけど、もしあたしが少しでも代わりになるんだったら、身も心もあたしの事、好きに使ってくれていいよ、カズ」
――この身も心もカズに託そう。
「いい、のか、レイリア?」
珍しく声が動揺している。
「うん、カズの好きにしていいよ。それに従うよ、クリスやトリシャのように扱ってくれてもいいし」
「いいし?」
「甘えてくれても、いいよ。少しでもその人の代わりになるなら」
――ちょっと恥ずかしいけど。
カズはレイリアに抱かれて少し泣いているように見える。いや、目隠しをされているので実際に見た訳ではないが、そう感じるのだ。
だがそれも直ぐに収まった様で、普通の声で、
「ではきみもオレのコントロール下に入る、という事でいいのか?」
「うん、いいよ。あたしでよければ、ね」
――この気持ちは変わらないよ。
「ありがとう、ではこのまま[こちら側]の人間になってくれるんだね」
「うん、そうして」
即答である。
「じゃあ、このまま研究所へ向かう」
カズはそう言ってレイリアを研究所へといざなう。
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