2.レイリアが子供時代までさかのぼる-何で昔ばなしなんか……-
全44話予定です
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カズの話、それはレイリアが子供時代までさかのぼる。
レイリア・ルーデンバッハは幼くして両親はいない。それは物心ついた時からそうだった。親、というものを知らなかった。そんな彼女たちをスラム街のとある男が拾ってきて育てていたのだ。
レイリアには兄弟姉妹がいた。
そう[いた]のだ。ジャズリンという、彼女より四つほど上の姉と、一つ下のアレックスという弟がいた。
――何で昔ばなしなんか……。
「二人と何か関係があるの?」
素直にそう聞く。
すると、
「もし関係がある、と言ったら、きみはここで聞くのを諦めるかい?」
と逆に問われてしまう。
レイリアにとってジャズリンお姉ちゃんはとても頼りがいのある人だったし、アレックスは誰よりもかわいい弟だ。
そんな二人に関係がある、と言われて正直なところ、一瞬聞くのをためらったが、
――今のあたしなら、こんだけ汚れたあたしなら何だって聞ける。
「ううん、諦めたりしない。昔のあたしなら、多分耳をふさいじゃって[聞きたくない]ってダダこねると思う。でも、これだけ自分の手を汚してきたあたしだから、これ以上手を汚しても同じ、って訳じゃあないけど、今更どの口がそう言うんだって。だから、続けて」
そうカズに言う。
カズはまだ少しためらっていたようだが、
「これからレイドライバーの秘密について話す。これを聞いたらもうあとには引けない、いわゆる[こちら側]の人間になってもらうしかないんだ。もし拒んだら特殊な[クスリ]を使ってきみの思考をコントロールしないといけなくなる。そうなれば、どの道きみはもうきみでなくなる。これが最後の質問だ。それでも聞くかい?」
カズは静かに語り掛ける。
「ねぇ、クリスとトリシャは、もうその話を聞いたの?」
レイリアが時々見せる[子供のような]質問。再度、クリスとトリシャについて、どこまで知っているかを聞いたのだ。
カズは沈黙したあとすぐに、
「ああ、二人はオレのコントロール下にいる」
「コントロール?」
と言ったレイリアの言葉にカズは答えずに、
「どうする?」
と再度尋ねる。
「うん、いいよ。あたしはカズの言う事を聞くよ。だから、その秘密、聞けるところまで教えてよ」
カズはレイドライバーの秘密について静かに話し始めた。現在、レイリアやカズの機体はパイロットの他にコアユニットとサブプロセッサーで構成されている事、そしてレイリアの機体に搭載されているそれそれぞれの二人はまさしくジャズリンとアレックスである事。アレックスは既に意識がない事、たとえこの秘密を知ったとしても、コアユニットであるジャズリンとは絶対に話が出来ない事。
レイリアはそれを黙って聞いていた。
カズは更に、自分は人体実験を行っている事、その手に何百という被検体をこの手にかけた事も話した。おぞましい生体標本の話も、どうして子宮を使うシステムが開発されたのかも。そしてクリスとトリシャとの今の関係も。
それは車を乗り換えても続いた。
レイリアは、その間ずっと黙ってうなずいていた。
――カズ、そんなにしょい込んでいたんだ……。
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