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季下に冠を正さず  作者: 風蓮華
2章 小さな主
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3話

 栄えた街中から森の中へと景色が移り行く。

そこには小さな森の城のように可愛らしい家が建っていた。

中は植物に侵食され、一面緑色だった。それでも少女は花が咲けば綺麗だ、と微笑んだ。


「ところで、貴方の事は何と呼べばよろしいですか?」


少女は一瞬口をすぼめた。だが、直ぐ様口を閉ざす。


「…主と呼べ」


青年は少し悩みながらも何事もなかったように振る舞う。


「では、主。今宵の晩はビーフシチューに致しますね」


そうか、と彼女は短く返事をした。

暫くすると、目の前に湯気が立った温かみを感じる食事が出てきた。茶色いソースの中に色鮮やかなニンジンやブロッコリーが入っていて、その中には見慣れない肉も紛れ込んでいた。


「この肉は…なんだ?人間ではなさそうね」


銀のスプーンによそった肉をじっと見据える。


「……僕は、人間は食べないので。でも、美味しいですよ」


彼に言われるがままに、口に含むと今まで味わったことのない柔らかな肉が溶ける。じゅわり、と次々と溢れ出る肉汁にソースが絡み、味に濃厚さが増す。


「美味しいぞ!理栖(りせい)は料理上手だな」


口にソースを付けたまま、どんどん皿の中身を平らげる。そんな少女の姿を見て、青年はくすりと笑う。


「ありがとう、主。頑張って作った甲斐がありましたね」


その日は一晩中、森の中で小さな幸せの声が響いていた。

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