表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
季下に冠を正さず  作者: 風蓮華
1章 迷いの森
4/7

4話

だが、そこにあったのはお菓子ではなく先程の少女。まるで鏡写しのように佇んでいた。先程と違うのは彼女は左手に銀のナイフを持っていること。


あれ、彼女はいつの間に…。なんで、ナイフを…。

考える暇もなく、彼女は手に持っていたナイフを僕に向かって刺してきた。冷たい物が僕の中に入ってくる感覚がした。

ぐちゃ。

奇妙な音がお腹辺りから聞こえた。


「え……」


その音は止まることなく何度も掻き回した。どくどくと心臓の音が妙に大きく聞こえる。床の赤い面積が徐々に拡大していく。鉄の香りが鼻を掠める。


身体が熱い。これは血だ。赤い…赤い赤い赤い赤い。


誰かが僕の肩を掴んだ。だが、その感覚はもう感じる事がなかった。そっと後ろから耳元で囁かれる。


「ね、そこにあったでしょう?」


体から異物が抜けるのと同時に支えがなくなり、そのまま赤く染まった地面に伏す。

やっとの思いで顔を上げると、そこにはまったく同じ顔が二つ写されていた。一人の少女は右手で手を振り、もう一人の少女は左手のナイフをじっと見つめていた。


「あなた方人間は、私達人喰いにとっては甘い甘いお菓子同然の存在なの。これこそが【究極のお菓子】なのよ」


その言葉を最後に左手に握られたナイフが振り落とされた。


蝶の様に美しい少女達は、蜘蛛の様に獲物を糸に絡め捕食する。


「食べちゃった!」

「食べちゃったね!」


可愛らしい声が木霊するかのように立て続けに聞こえる森の中。

ゆらゆらと揺れる影が二つに分かれる。

彼女達は紅く染めた口で密かに笑ったのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ