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季下に冠を正さず  作者: 風蓮華
1章 迷いの森
3/7

3話

 紅茶の茶葉の良い匂いが漂ってきた方向を見ると、彼女が大きく足音を立てながら運んできた。

彼女は右手で荒っぽく紅茶を差し出した。席につくと、彼女はスプーンで紅茶をかき混ぜながらねぇ、と声をかけてきた。


「あたしさ、この森から出たことないの」


 彼女は突如、自身の話をした。彼女は海を見たことがないらしい。大きなビルも自動車も。

だから、こうして人と話すのは新鮮な内容ばかりでとても楽しいらしい。


「ところでさ、本題に入っていいかい?」


彼女が楽しそうに話している所を申し訳なく、僕がそう聞くと彼女は首を傾げる。


「本題?」

「そう、究極のお菓子についてなんだけど」


突然、彼女は視線を逸らし、手を忙しなく動かし始めた。


「えっとね、あたし影絵作るの得意なんだ」


彼女は必死に手で何か、生き物の形を作り始めた。

脈絡のない話に少しばかり頭にきたが、もう一度聞き返した。


「ねぇ、究極のお菓子ってのは一体どんなお菓子なんだい?」


彼女は冷や汗を流しながらも、僕の話題を逸らさせようとしてきた。


「それよりさ、もっと面白い話が…」


 僕はついに痺れを切らした。


「それよりっ!究極のお菓子はどこなんですかっ!?」


まるで地団駄を踏む子供のように声を荒げる。僕は周りから温厚と言われるが、ここまで焦らされるのは好きではない。

彼女は観念したように息を吐く。


「そこにあるじゃない」


すらりとした白い指が僕を指す。慌てて僕は後ろを向いた。喉から手が出るほど欲しかったものがすぐ傍にあると思ったら、体が勝手に動いていた。

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