表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
季下に冠を正さず  作者: 風蓮華
1章 迷いの森
1/7

1話

 風が吹けば波紋の様に拡がる木々の騒めき。それは止まる術を知らないようで、光が届かない程、木で覆われた暗闇の中で佇む僕に不安を煽る。


帰りたい。何度もそう思った。

今、僕が立っているこの地は【迷いの森】と呼ばれており、立ち寄った者は誰一人として帰っては来なかった。

それでも人々は、この地へと向かう。なぜなら誰もが欲しがる物がそこにはあるのだ。


震える足を一歩二歩と差し出す。大丈夫だ、と自分に言い聞かせながら深く地を踏む。

幾分かすると、ぽつんと建った小さな家に辿り着いた。まるで絵本の世界から飛び出してきたかのようなログハウスの扉が、ぎこちない音をたてながら開く。こちらを覗き込むように顔を出したのは、花のような少女だった。


少女は長い黄金色の髪を(なび)かせながら、こちらにゆっくりと近づいて来る。小さな体が僕の前に立ちはだかるやいなや、胸ぐらを掴まれぐっと引き寄せられた。


「誰、あんた」

「ぅえっ?」


急の出来事に頭が処理しきれず、間抜けな返事になってしまった。目の前の鋭い眼差しに僕は反射的に顔を逸らす。彼女のぎゅっと掴まれた右手に恐怖心を感じた。


「僕は…その、きゅっ…【究極のお菓子】を求めて来たんです…だから」


見逃して欲しい、という言葉は少女の睨みによって呑み込むことにした。


「ふぅん、あんたも…ね」


付いてこいと言わんばかりに家の中へと誘導される。おどおどとした足取りでぬかるんだ地を一歩一歩踏み締めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ