第一章 出(5)
村の女の子みたいに、胸があるわけでもない。
だからといって男の子みたいに、しっかりした体躯なわけでもない。
ましてや僕には男性器がない。
では女性器があるのかと言われれば、多分ないのであろう。
村の女の子たちがいう、いわゆる月のものが来たことがない。
14歳という年齢を考えればもうきてもいいはずなのに。
沈む夕日を眺める。
血のついた洗濯物をカゴに放り込む。
やっぱり血は取れなかったか、とため息をつく。
カゴを持って家に入ろうとしたとき、村からざわめきのようなものが聞こえた。
村を見下ろすと、村の入り口に人が群がっているのが見えた。
人々の隙間から甲冑が見えて、騎士だということがわかった。
こんな田舎になんの用だろうか。
家に入り、コーヒーを飲んでいるロドフ神父を見やる。
「ロドフ神父、なんか村に騎士が来てるみたいです」
そう言えば、ロドフ神父は勢いよく立ち上がり、僕の肩を掴んだ。
「何色だった」
「え?」
「甲冑の色だ!何色だった!」
「え、銀、かな…」
「銀…」
そう呟いてロドフ神父はまた椅子に座り、何か考えているようにぶつぶつと独り言を呟き始めた。
僕は前の椅子に座り、洗濯物をたたみ始める。
「イル、夜の祈りをしてきなさい」
「もうですか?まだ早いのでは…」
「いいから、今すぐしてきなさい」
「わ、わかりました」
ロドフ神父の謎の希薄に押されて、まだ畳み掛けの洗濯物もそのままに僕は家を出た。
すぐに礼拝堂につき、重い扉を開ける。
まだ夕日が天窓から差し込んできていて、まだ早い時間なのだと悟る。
それでもロドフ神父の言いつけは守らなければ、と思いため息をつきながら神の前に立つ。
片膝をついて、手を合わせて目を閉じる。
外から大勢の足音が聞こえて、もしかして騎士が家に向かっているのか、と思いながら、それでも目を開けることはしなかった。
騎士ならば、首都から来たに違いない。
騎士は国に誓いをたてているけれど、国に誓いを立てるということは神に誓いを立てたと言っても過言ではない、らしい。全部本に書いてあったことだけれど。
だから騎士が神父出あるロドフ神父を乱暴に扱うわけがないと思った。
しばらくして目を開ける。
足音が礼拝堂に近づいてくるのがわかった。
でもさっきみたいにたくさんの足音ではなく、1人の足音だということがわかった。
礼拝堂の扉はしまっているけれど、鍵はかけていない。
「誰かいるのか」
地を這うような声を聞こえて、立ち上がる。
「何か御用でしょうか」
扉を開けずにそう問いかける。
小さな礼拝堂に僕の声が響く。




