第80話 先見の乙姫
第四章と同じ表題です。
第80話 ~先見の乙姫~
蔵光はメトナプトラ国最長老エラルド・ピスタ・メトナプトラから、何者かに誘拐された孫娘オルビア・ピスタ・メトナプトラの捜索を依頼された。
そして、事件の概要について蔵光は話を聞くことになった。
「事件が発生したのは二日前の昼頃、オルビアはこのヨーグ城の敷地内の一画にある、私の息子サーファの屋敷に一緒に住んでいるのだが、少し外へ出かけようと、馬車で屋敷の門を出たところを狙われた。」
「目撃者は?」
「使用人が複数の男達に連れ去られるところを見ているが、あっという間にオルビアの護衛の者達を倒して馬車からオルビアを連れ出し、真っ黒い魔導車に乗せて連れ去っていったと報告を受けているが、それ以外は皆目わからないのだ…」
「相手からの要求は?」
「いや、まだ…だが、奴等の目的は金とかではなく、オルビア自身にあるのではないかと…」
「それは?一体どういう?」
「実はな、あの子には特殊な能力があるのだ。」
「特殊な能力?」
「うむ、スキルというよりは、異能といったほうがいいだろう、その能力の名は『先見の乙姫』と言われるものなんだか…」
とエラルドは絞り出すように話を始めた。
「先見の乙姫?」
「そうだ、それは『未来を予知する力』」
「み、未来を…予知?」
「そうだ、必然的なもの、つまり必ず起こることは1ヶ月から1年の間に必ず実現する。流動的なものは1週間から1ヶ月以内を予知するが必ず実現するとは限らない、何かの影響で別の結果になる場合がある。そんな特殊な能力をオリビアは持っているのだ。」
「そ、そんなことが可能なのですか?」
蔵光も初めて聞く能力に驚きを隠せない。
こと未来に関してはいくら蔵光が強くてもどうなるかはわからない、それがわかるなんて、それを悪人に利用されれば世界を支配されてもおかしくないからだ。
「これは占術師の占いどころの比ではない、確実に実現してしまうからな…それで、その孫娘が拐われてしまったという訳なのだ…」
「えっと、本人はそれを予知していなかったのですか?」
「そのことなんだが、それがこの能力の欠点でな、自分にかかる未来は予知出来ないという制約があってな、全く不便なものだわい。」
「ああ、なるほど…」
「あの子の能力をひた隠しに隠してきたんだがなあ、誰かにその能力のことが漏れたのか、それを何者かに嗅ぎ付けられ利用されようとしたのか…また、それとは全く別の、例えば単なる身代金目的の犯行なのか。皆目わからないのだよ。」
とエラルドは両手を顔にあてて下を向く。
かなり、心労が溜まっているようである。
「この能力を知っているのは?」
「家族だけだ、能力を鑑定したのは鑑定士の能力を持つ私の妻だ。」
「誰かに話をしたことは?」
「家の中で何度かしたことはあるが、家族全員がその事についてあまり触れないようにしている。何しろ命に関わることだからな…」
「なるほど、すると例えばここで話をされたことは?」
「えっ?……ああ、盗聴か…うーむ、オルビアはここへ何度か来ているが能力の話をしたことはありませんな……あっ」
エラルドが何かを思い出したようだった。
「どうしました?」
「うむ、この『先見の乙姫』という能力は、未来を知った者はそれを利用して、巨万の富を得ることも出来るし、未来を予言する預言者として人身掌握も可能となり、その者にとって支配しやすい世界を作ることも出来るということになる。戦争をしたとしても先に結果を知ることが出来れば自分を優位な立場に置くことが出来る…つまり、これを悪い思惑や思想を持った者に利用されれば、世界の均衡が崩れ、混沌とした世界になってしまうことは目に見えている。なので私は、この能力があまりにも危険なため、彼女をどこか安全な場所へ移動させることが出来ないか息子のサーファとここで話したことがある。」
「それはいつ頃ですか?」
「つい最近のことだ。」
「そうすると、あの魔導機で聞かれた可能性がありますね。」
「うーむ考えたくはないが…皆、信用の置ける者達ばかりだからな…」
「わかりました。やってみましょう。私もここでやりたいことがありましたし、都合がいいかと思いますので…」
「おお、そうか、やってくれるか!?有難い、蔵光殿、恩に着ますぞ!」
エラルドは頭を下げた。
「詳しい状況を知りたいので、とりあえず、そのサーファさんの所へ行きたいのですが?」
「そうか、それではサーファに手紙を書くのでちょっと待ってくれ。」
そう言うとエラルドは自分のデスクで何やら紙に書き記し、封筒に入れた。
そして、それを蔵光に渡す。
「ここに蔵光殿へ頼るように書いているので、サーファの屋敷に行けば使用人に渡してくれないか?」
「わかりました。」
「今から案内を付けるので、よろしく頼む。」
こうして、蔵光は黒龍の調査に加え、最長老の孫娘の捜索にあたる事になった。
蔵光と誠三郎はエラルドの屋敷を出ると、エラルドの手配した馬車に乗り込んだ。
そして、エラルドの息子であるサーファの屋敷に向かった。
話によるとサーファの屋敷もこの城壁内に建てられているとのことであった。
つまり、オルビアが拐われたのは、街中ではなくヨーグ城の敷地内ということになる。
ということは、オルビアの誘拐犯は城の内部の者か、もしくはその内部の者が手引きした外部の者の可能性が考えられた。
「若、話の内容はこのゼリーに渡されたモノで大体解りましたが、これは一体何者の仕業でしょうか?」
「恐らくは、今日の、俺の表彰の受賞式に出席していた者の中にその関係者がいる可能性があるよ。」
「何と!?して、其奴は?」
「今、ゼリーやみんなに調べてもらっている。」
「あーなるほど、わかりました。で、私達がサーファ殿の屋敷ですることとは一体?」
「うん、何かを知っている者がいるかも知れないし、現場を調べることで新たな発見があるかも知れないからね。」
「なるほどそう言われればそうですな。」
馬車はしばらく走るとサーファの屋敷前に到着した。
サーファの屋敷は二階建てであったが、大きさはかなり大きく、敷地の面積もこの辺りの屋敷の倍以上はある。
紺色の屋根瓦が特徴的であるが、石壁や窓等の外観は装飾も余りなく落ち着いた造りである。
その屋敷の周囲には他の屋敷にはない石壁の柵が設けられていた。
柵の一ヶ所が正門になっていて、普段はそうではないのであろうが、鎧兜姿の門番が立っていて、物々しい雰囲気である。
門を潜ると、屋敷が見えた。
屋敷の前には執事と思われる男が立っていた。
エラルド手配の馬車とすぐにわかっている様子で、今回の件で動いているとすぐに判断したのであろう。
「エラルド様の?」
「はい。」
蔵光は馬車を降りると、その男にエラルドの手紙を渡す。
「お預かりします。」
執事は手紙を預かるとすぐに屋敷内に入って行った。
しばらくすると、40歳前後の男性が外へ出てきた。
かなり慌てている様子である。
オルビアの父親のサーファである。
身長180cmくらいのスラリとした体格で、紺色のストライプの入った背広の様な服を着ている。
表情に余裕がなく、精神的にかなり疲れている様子である。
蔵光らに近寄ると直ぐに声をかける。
「水無月殿ですね。お待ちしておりました。実は父から今回の件を貴方に頼む予定にしていると言われていました。手紙を見ました、よろしくお願いします。さあ、こちらへどうぞ。」
すぐに蔵光達を屋敷内に招き入れた。
蔵光はサーファの屋敷に入った瞬間から自分のスキル『裁定者』を使用する。
そして、屋敷内の人間をひとり残らず調べていく。
サーファ、執事、使用人、全ての者だ。
今回の件に絡んでいる者がいれば☓判定が出る。
「大丈夫のようだな。」
全ての判定が終了したが、☓判定の者はいなかったようだ。
実は先程の大広間でも蔵光は全ての者に、この『裁定者』のスキルを使用していた。
そして、その中に☓判定の者が何人かいた。
ある程度感度を緩めて確認していたので、全ての者が殺さなければならないほどのものではなかったが、要注意人物としてマークすることにした。
そして、その判定結果をゼリーに伝えて例の透明化の魔法で本人に近付き、グロリアに取り付けたモノをさらに改良した『水蓮花・盗聴+位置探査version』を取り付け、全員の身元を調べさせたのだった。
そして、それには実はクランズ『プラチナドラゴンズ』のメンバーが暗躍していた。
それはのちほど説明しよう。
サーファは蔵光達を自分の部屋に案内した。
「さあ、こちらへ。」
「あ、ちょっと待ってください。ゼリー」
と蔵光が言うと再び、ゼリーが透明化の魔法を解いて姿を現した。
この登場の仕方がゼリーの中で流行っているようだ。
「お待たやな。」
それを見たサーファが驚く。
「な、何と、これは?!」
「あ、もう結構です、さあゼリー入って。」
とゼリーも部屋に入れた。
そして、再びゼリーに指示する。
「ゼリー、この部屋も確認と結界を…」
「わかった。」
ゼリーは盗聴魔導機の発見のため魔力感知と、魔力干渉防止の結界を張る。
「主ぃ、やっぱりここにもあるで、3個ほど…」
「やっぱりか、しょうがないな、じゃあ回収で。」
「わかった。」
ゼリーは蔵光に言われたとおり、凄い勢いで室内を駆け回り、発見した魔導機を体内に回収し収納した。
「な、何を?!」
驚くサーファに蔵光が説明する。
「最長老の部屋にもあったのですが、盗聴用の魔導機が部屋の中に取り付けられていたのです。」
「えっ?何ですって?!そんなことが…」
「恐らくは、この屋敷にいる者以外の何者かに取り付けられた可能性があります。」
「はあ、父の部屋ならわかりますが、私は長老連でもありませんし…どうして…?」
「わかりませんが、多分、オルビアさんの動向を確認するためではなかったのかと…」
「なるほど、それなら合点がいきます。」
ゼリーの魔導機回収が終了した。
「主、この盗聴用の魔導機は結構新しいで、最近、取り付けたんとちゃうかな?」
「ふーん、サーファさん、最近、この部屋に入ってきた人で、お城の関係者はいますか?」
「城の関係者ですか?さて、えーと、あっ!そう言えば、シールさんかな?」
「シールさん?」
「はい、シール・ランカスと言って、このヨーグ城の衛士団の副団長です。」
「どんな方ですか?」
「真面目な方ですよ、剣の実力は団長以上ですが、元々この国の人間でないので副団長で留まっていますがね。人望のある方ですし、あの人がそんな事をするとは到底思えませんが……」
「わかりました。ありがとうございます。」
「主、この人にウチのメンバー、紹介しとくか?」
「うん、そうだな。」
「は?紹介?誰をですかな?」
いきなりゼリーが現れたときも驚いたが、他にも姿を消している者がいるのかとサーファは辺りをキョロキョロと見回す。
「おーい、皆、出てこい!」
ゼリーがそう言うと、ゼリーの体の中から、ヴィスコ、ヘルメス、ギルガ、ザビエラが出てきた。
空間魔法だ。
「ええー!!?」
サーファは目が飛び出んばかりに驚く。
「いきなりで、失礼します。私、ヘルメス・カース・ヴェレリアントと言います、これらの者達はクランズの『プラチナドラゴンズ』のメンバーです。よろしくお願いします。」
とヘルメスが挨拶をした。
「あ、ああ、こちらこそよろしく…は、はは、何とも凄いな…」
サーファが驚くのも無理はない。
二人と一匹しかいない部屋にゾロゾロと追加で四人も増えたのだから…それも透明な青色の体を持つ不思議な生き物の体の中からだ。
これには蔵光発案の、とある作戦があったのだった。
なるほどなあ、未来がわかるんか。
ゼ「あんまり、未来がわかりすぎてもエエことないで。」
えーそうか?
ゼ「そんなもん、『明日、あんた死ぬで』って言われたら嫌やろ?」
た、確かに…うーんじゃあ未来予知反対!
ゼ「ワイも反対!」
反対!反対!って何かのデモみたいで何かそれも嫌やな。
ゼ「じゃ、未来予知反対に賛成!」
うーん、未来予知反対に賛成!ってなんじゃそれ?!
次回もよろしくお願いします(* ̄▽ ̄)ノ~~ ♪




