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水無月蔵光の冒険譚  作者: 銀龍院 鈴星
第一章 伝説のはじまり
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第7話 過去編2~免許皆伝と巨大ヒヒ退治~

とりあえず今日はここまで。


第7話 ~免許皆伝と巨大ヒヒ退治~

水無月家の水魔神拳(すいまじんけん)伝承者となる者は、力の制御がある程度出来るようになってから、拳法の修行に入る。

蔵光も5歳となり、力の制御が出来るようになると、祖父王鎧(おうがい)から水魔神拳を伝承されることとなった。

水魔神拳は魔法と拳法が合わさったもので、長い呪文の詠唱なしで魔法を発動させることが可能であり、また、魔法を相手から封じ込められたり、そもそも魔法の発動ができない場所であったりした場合において、体術だけで戦えるための体術もあり、それぞれ両方の特性を活かした技も存在する。

拳法というだけに、徒手空拳による技が主体であるが、剣術、棒術などの技もあり、特に蔵光は棒術を得意としている。


水魔神拳の修行を始めて5年間の歳月が流れたが、修行は筆舌に尽くし難い程の厳しいものであったが、その修行を耐えることが出来たのは

加護スキルの存在と水無月一族に脈々と流れる血糖、いや違う、『血統』とか、『血筋』というものであろう。


いくら力があったとしても、それを扱えるだけの技術や、敵を想定した動きや技、自分の命が懸かった経験などがなければ、所詮は素人、それらの修行無しでは、もしもの想定ができず、

一瞬で命を失うというのが戦いの常識である。

もし自分のスキルや技が通用しなかったら、もし、相手が自分より優れた技や能力を持っていたらどうやってその場を切り抜けるのか?

恐るべき力を持っていても水魔神拳を使う水無月一族はその事を忘れない。


そのような修行を続け、蔵光が10歳になった時、ほとんどの技の修得が終了した。


そんなある日、蔵光に水魔神拳免許皆伝のための試練というか試験が与えられた。

それについては、特に本人に伝えられる訳ではなかったが、丁度ジパング王国の首都アズマミヤへこんな依頼が届いたからだった。

『エブーダに巨大なヒヒが出没し、村人の要請により王国兵士が対応しているが、強力な個体のため討伐不能、本家の対応を要請する。』

本家とは水無月家の本家である蔵光らの家の事だ。


ジパング王国には主たる大陸となるホンシュ、その周囲には6つの大きな島があり、それらを称してジパング王国としている。

ホンシュは、斜めに置いた空豆をゴツゴツさせたような形状の大陸で、南北へ約4000㎞、東西へ約3500㎞にもなる広大な陸地で、中央南部には『龍火山(りゅうかざん)』という全長が1000㎞を超える巨大な火山帯があり、ドラゴンの生息地にもなっている場所がある。

その回りには今回、問題になっているエブーダの森が北東にあり、南西部にはカントゥの森が広がっている。

首都のアズマミヤは大陸の北西側にあり、水無月家の本家がある。

ホンシュの他、周りの島の名称はフォカイド、キュッシュ、シッコク、アーワジ、サアド、ナアハという何かどこかで聞いたような名前だが、それぞれの島には水無月家の分家があり、それぞれがその島を統治している。

分家は全部で7つ、ホンシュには、本家以外に第一位の分家が東部を治めている。

まあ、これらの話は機会があればしてみよう。


依頼元は、東部を治めている水無月家第一位の分家からだった。

一応言っておくが分家なので名前は同じく水無月なので、分家によって鬼龍院家とか神禅家とかに名前が変わることは絶対にない。

分家からアザ持ちの子供が生まれれば本家の子として育てられるため、相続とか家督争いとかで、本家と分家が争うことはまずない。

というのもアザ(紋章)持ちで生まれるのは水神様の意志により取り決められることなので本家だろうが分家だろうが関係ないからだ。

ただ、本家と分家の格は別格で統率力、軍事力、資金力全てにおいて本家は群を抜いている。

水無月家の大屋敷などは敷地面積が広すぎてヤバい。

屋敷の大きさも、デカすぎてヤバい。

王様の城よりデカいので、別の意味でもヤバい。

そこに詰めている、兵士や使用人もいっぱいで、ヤバい。


まあ、水無月家のチートの力で各国の問題解決をしたらそうなるだろう…

ということで、蔵光が金持ち(いいとこ)の家の坊っちゃんというのは正解でした。


時々話が飛ぶので戻すのが大変だ。

ということでジパングの大陸の北西部にある首都アズマミヤから東へ約1000km、大陸の中央付近からやや東側にあるエブーダという森の近くの村で、最初に大量のヒヒ(狂暴な猿の一種)が発生したようで、エブーダの森にはヒヒの他にも多種多様な動物が生息しているが、どうも食料となる果物や小動物が減少しているようで、ヒヒが近くの村の作物を荒らし出したことから、村が水無月家第一位のミクニの家に討伐を依頼、そこの兵士が村に現れたヒヒを討伐したが、それらを統率するボスザルの『キングドリル』が村に現れ、兵士共約50名を惨殺、応援に駆けつけた分家第一位の当主水無月主眞(かずま)も応戦したが反撃を受け重症を負った。

分家といえども、元々ジパングへ派兵された優秀な家系であり、相当の実力を持っているのだがその当主を返り討ちにする程の動物がいるとは考えられなかった。


魔物…それは地下から吹き出る『魔素』と呼ばれるものを大量に摂取した動物が変化したものの総称であり、魔素を動物が体内に吸収することで体組織が変化、巨大化、狂暴化することを魔物化と呼んでいる。

魔素には二種類あり、簡単に言えば良い魔素と悪い魔素だ。

魔物化するのは悪い魔素を大量に取り込んでしまった結果と言われている。

逆に良い魔素は魔力の元となって、聖魔法や回復魔法などに使用される。

悪い魔素を使用した魔法もあるが、まず人間が使うことはできない、もし吸収、使用したとしても動物と同じく、体に悪影響を与えるが、巨大化とか狂暴化とかにはならない。

詳しくは解明されていないが、体が崩れ、ゾンビ化するとも言われている。

魔物化した獣は、例外なく狂暴化し、人を襲う。


今回のキングドリルはおそらく魔物であろうというのがミクニの家の見解だ。(ミクニとは第一位の家がある街の名前です)


今回の討伐依頼に、蔵光が選ばれた。

免許皆伝のお墨付きを与えるため、王鎧が提案した。

また、水無月家を支える家来の一つに八鬼(やぎ)家があり、そこから1名、蔵光の従者が同行することになった。

八鬼家は水無月家直近の従者の家系として仕えているが、八鬼家には水無月家の流派の流れをもつ『黒緒神流(くろおかみりゅう)』という比類なき剣術を扱い、その剣術の使い手である八鬼誠三郎(やぎせいざぶろう)が、その従者であった。

誠三郎は八鬼家の三男で、剣の実力では兄弟の中でも一番の使い手であり、兄貴達が家督を継いだり、王家に仕えたりしたことから、水無月家に仕えることとなった。

誠三郎自身は、自分が三男であることから兄貴達が家督を継いだり、王家に仕えることはわかっていたので、自分は自由な道を選べると安心していた。

ゆくゆくは剣の道で身をたてる、いわば剣客という夢を持っていたので、最初、水無月家の従者と言われたときは複雑な思いが頭の中を駆け巡った。

しかし、誠三郎は初めて蔵光と出会った時、その恐るべき力を持った少年が避けることのできない自分の運命と向き合い、逃げることなく前に進んでいるのを見て感動し、蔵光の従者として力になりたいと思うようになり、蔵光のために命を懸けると誓ったのである。

当然、誠三郎は従者になる前に一度、蔵光に勝負を挑んだが、手を抜かれて瞬殺(半殺しに)されている。


「若、もうすぐエブーダの森に着きますぞ。」

誠三郎は右手に見えていたジパング最大の火山である『龍火山』のすそが途切れる辺りから木々が生い茂っているのを見て、そう蔵光に教える。

免許皆伝のためとは言え、蔵光はまだ10歳になったばかりである。

世間の常識を知り、一人前の大人になるためには誠三郎のような従者が必要不可欠であった。

誠三郎は考えていた。

『確かに、若の強さはハンパ無いが、しかし、こんな小さな子に分家の当主が手こずった魔物を退治させるとは王鎧様も恐ろしいことを言う人だ。』

だが蔵光は、鼻歌を歌いながら森への道を歩いている。

普通、約1000kmの距離を歩いて移動しろとか、急に言われたら、絶対に行かないというか子供なら絶対に歩けないし、たどり着くことも出来ないと思う。

だが蔵光は歩いている。

というか、途中、500kmとか普通に走ってたし、誠三郎は付いていくのがやっとだったが。

『若なら大丈夫かな?』

と少し思った。


エブーダの森…全長が約500㎞を超える巨大な森で、ここには色々な動物が生息しているが、魔素が吹き出す場所もいくつかあり、時々、その周辺で魔物化した動物が発見されることがある。

そのような森であることから、人間で森の奥地まで足を踏み入れて生きて帰れたものはいない。

この森は現在、キングドリルらヒヒの集団を頂点として、大猪、巨大な虎等の肉食獣がうごめく超危険な森として指定されていて、ドラゴンの住む『龍火山』と並んで危険な地帯となっているのだ。

エブーダの森は危険な反面、綺麗な水で育った豊富な果物や木の実があり、それらを食べる草食獣が、匂いに誘われ草原から迷い込み運が良ければ草原へ戻れるのだろうが、そのほとんどが猛獣どものエサになってしまう。

しかし、その草食獣が、最近減少したためか、ヒヒが近くの村に出没するようになり、それの対応をしていたミクニの兵士とキングドリルが衝突したのだった。


大抵の肉食獣であれば体の大きさも、狂暴さも大したことはなく対処は楽でいいのだが、巨大化狂暴化した猛獣は大抵悪い魔素、つまり『質の悪い、負の魔素』を体に取り込み、魔物化している。

魔物となった獣の対処は大変であり、普通の人間では対処は出来ない。

魔物は特殊な能力で、自分の同族の獣を統率、支配して操り、森や洞窟などに君臨するようになる。

今回のキングドリルの事例もその一つで、魔物が見つかれば、魔物討伐と共に『負の魔素』があふれでている地脈を探しだし、溢れでている魔素を封じ込まなければならず、それらの封じ込めが出来るのが唯一水無月一族であり、こういった封じ込めをしていないと、再び第二第三のキングドリルが現れる恐れがあるので絶対に忘れてはならない作業なのである。

元々他の国にも地脈の乱れや魔素の流出とかはあるが、ここジパング程頻繁に魔物が出没する場所は少なく、ドリタニアの西方に広がる魔の大森林地帯を除いてその数は限られている。


今回の目的は、キングドリルの討伐とエブーダの森に溢れてしまった魔素の封じ込め、それと地脈の正常化である。


蔵光達は一度エブーダの森の近くにある村へ立ち寄り、村人からヒヒが目撃された場所等を確認してから森へ向かった。

ちなみに村はヒヒで荒らされて大変悲惨な状態となっていた。

村人も何人かヒヒに殺され、ほとんどの村人が家の中で息をひそめている状態であった。

蔵光はその惨状を見てなにも言わなかったが、この時に何かを心に決めた様子であった。


ゼ「ところで、この話どこら辺からおもろくなるん?」

んー?どこやろ?

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