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水無月蔵光の冒険譚  作者: 銀龍院 鈴星
第一章 伝説のはじまり
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第5話 適正検査(模擬戦闘テスト)

何とか続きできました。

まだもう少しポチれそうです。

第5話 ~適正検査(模擬戦闘テスト)~

蔵光らは、一旦休憩を挟んで次の検査場所となる訓練所へ案内された。

本来なら午前中の体力テストでフラフラになるため、模擬戦闘のテストは何日か後に実施されるのだが、蔵光らのたっての希望で急遽、午後から行われることになった。


訓練所はギルドの建物の地下にあり、広さは大体100m四方の大きさの石畳の床とその周囲を高さ約3mの大理石製の壁が囲み、さらにそれらの周囲に観客席が設けられている。

天井は高く約20mはありそうだ。

ここでは、普段、冒険者が自分達の戦闘技量を上げるための訓練場として開放されている他、定期的に、剣術や魔法の試合も行われている。

ここは地下ではあるが外の太陽光を取り込める工夫がなされていて、かなり明るい。

それと、観客席には何やら観客と思われる者達の姿が何人か見られる。

どうやら、午前中のテストの噂が広がっている様子でザワザワとした空気がある。


「それでは只今から、模擬戦闘テストに入ります。今回の実技試験官はBランクの冒険者、ヘルメス・カース・ヴェレリアントが担当します。」

と紹介されて訓練所の通路から姿を現したのは見目麗しい女性剣士であった。

年齢は18歳、身長は165cmくらいの、すらりとした身体に短めの金色の髪、端正な顔立ちに大きな瞳、鼻筋が通り、薄い唇はピンク色。

だが着ているものはドレスではなかった。

胸と肩には軽装だがしっかりとした造りの革鎧が装着され、その内側には薄紫色の丈夫な上下服、足には膝下までの革のブーツを着用し、腰には太めの革ベルトとそれに取り付けられた金具には、やや大きめの剣が吊るされていた。

ヘルメスと呼ばれた女性剣士が姿を現すと、観客席からどよめきが起こった。

「おい、ヘルメスってあのヘルメスか?」

「えっ、あの『メトナの女豹(めひょう)』と呼ばれている奴か!?」

「あれが『レゼントの10人切り』か?」

どうやら結構な有名人らしい。

それにまた、別のどよめきが、起こった。

「おい、あれってギルマスじゃね?」

「うわぁ、本当だ、『雷光のジアド』だ!すげぇ」

別の通路からハーブやアロマと共に姿を現したのは、現在の冒険者ギルドタスパ支部のギルマスことギルドマスターのジアド・アロバスタであった。

年齢は35歳くらい、身長は190cmくらいのややゴリマッチョで、髪の毛はシルバーの短髪、精悍な顔立ちだが顔面の左眉から右ほほにかけて大きな一本傷がある。

元々、彼も昔は冒険者で慣らしていた頃があり、色々と逸話がある人物である。

ギルドマスターになった時はSS級であり、かなりの実力者であるが本日は、新人の適正検査ということで、ハーブから色々と蔵光のことを聞かされて興味を持ち、訓練所に現れたという訳である。

「どうなってんだ、ギルマスまで来てるぜ。」

「今回の新人は一体どんな奴なんだよ?」

観客席の観客はいずれも冒険者である。

自分達のパーティーに有望な新人を引き入れたいと思うのは当たり前で仕方がないことである。

それが午前中の検査で『すげえ新人がいる』という噂が広がって、噂の真相を確認するため一目蔵光らを見ようと訓練所へやって来た。

そして、その噂の信憑性がギルマスが現れたことや、ヘルメスが姿を現したことで現実味を帯びてきた。

普通であれば、ヘルメスのような新進気鋭のBクラス剣士は絶対に来ない。

ギルマスもたかが新人の検査に顔を出すこともないからだ。


最初の模擬戦闘は、誠三郎である。

訓練所の中央で、誠三郎とヘルメスが向かい合って立っている。

その間には、この試合の審判で検査官となる男性が立っているが、どうやらギルド職員ではなく、上位の冒険者と思われる。

かなりの手練らしくその動きに隙がない。

その審判が事前の説明を始めた。

「今回の実技テストに関して説明させてもらいます。あなた方には模擬戦闘でこちらの木剣を使用してもらいます。この木剣の材料はメトナプトラの西方の砂漠地帯に生息するヤイダ樫という非常に硬い材木を切り出して作っていますので少々の打ち合いでは決して壊れたりすることはありませんのでご安心下さい。勝負の判定は、相手に相当の打撃を与え、戦闘不能状態させたり、身体の大半が損傷、切断等の影響で審判の判断において戦闘が継続不能と認められた場合は相手方の勝利となります。あと相手の武器を破壊し、使用不能状態となった場合、又相手が降参すれば勝利となります。武器、暗器の使用は可能、魔法もランク2までの魔法の使用は可能です。なお毒物使用や毒、強酸、呪詛等試合後にも影響が継続する魔法等の使用は不可です。また、今回は念のため衝撃吸収魔法や防御魔法をそれぞれにかけておりますが、もし相手を死亡させれば試合は即中止となり、死亡させたものが敗者となります。それでは開始してください。」

かなり、詳細な試合規則(ルール)であった。

恐らくは、蔵光の力を認めた上での雁字搦め(アントニオ○木)ルールであろう。


ヘルメスが木剣を八相の構えのように上段に構え声を上げる。

「さあ!」

「おう!」

これに誠三郎が正眼の構えで応える、誠三郎の剣先はヘルメスの眉間を指している。

だが、両者の実力は完全に段違いであることをヘルメスはこの時に知った。

『なっ!?、何者なの?この男は?今まで戦った者とは全く強さの次元が違う、S級やSS級の冒険者と試合をしたことはあるが、それらと同じ、いやそれ以上の実力者…』

と雑念が頭をよぎった瞬間であった。

誠三郎が仕掛けた。

「来ないなら、こちらから行くぞ。」

と言うや、誠三郎の姿がヘルメス前から消え、次の瞬間にはヘルメスの喉元に木剣の先端が突きつけられていた。

反応する間もなかった。

「ま、参った。」

ヘルメスはその言葉を絞り出すのがやっとであった。

そして、その場に座り込んでしまった。

一瞬の出来事にも関わらず、額からは大きな粒の汗が吹き出る。


ヘルメスは下級貴族の四女で、自宅では冷や飯食いのごく潰しという状態であった。

容姿は端麗で美人であったが気性が激しく、おしゃれよりも馬に乗って野山をかけ、剣を振るうことに喜びや幸せを感じていた。

性格はやや短気でケンカ(ぱや)く、街では男どもを相手に大立ち回りをしては、最終的には全員を()してしまうという、男顔負けの完全なじゃじゃ馬娘であった。

そのため、今まで来ていた数々の縁談は破談、ついに実家から追い出される始末であった。

そして、行き着いた先が冒険者ギルドの冒険者という職業であった。

何とか親から推薦状と実力証明書を取り付け冒険者登録をした。

元々剣の才能があったのかギルド内でメキメキと頭角を現し、B級となった今では並みの男では全く歯が立たなくなっていた。

この職業はヘルメスにとって天職とも言えた。

剣術があれば、何でも自由だった。

今まで、剣一本で、自分の未来、運命や人生はこの剣で切り開いてきた。

命掛けのクエストにも、敢然と立ち向かい、血が湧き、肉が踊る数々の冒険。

今までのクエストでは大きな失敗も無く、怖いものは無し、それが、ヘルメスだった。


それがどうだ、試験官として簡単に終わらせれると思っていた模擬戦闘。

新人で格下のはずの、得体の知れない小汚ないオッサン(そりゃ言い過ぎか)に一瞬でやり込められてしまったのだ。

当然、こんな経験は初めてであり、ヘルメスの高いプライドが粉々に砕ける。

「スキルさえ使わせてもらえなかった…」

と口惜しさを声に出して悔しがる。

しかし、相手の誠三郎からは、

「まあ、悔しいだろうが、次にやる、うちの若の試合を見たらそんな言葉もでないだろうよ。」

とまるで本人(誠三郎)自身は大したことはないと言っているように聞こえ(まあその通りなんだが…)、自分がさらにあの若い少年より弱い存在とバカにされているような言い方に聞こえた。

蔵光を見れば、優しい顔立ちで何とも頼りない少年に見える。

「あんな少年がなんだというのだ!?」

ヘルメスは座り込んだ状態で思わず大きな声を出す。


そんなヘルメスの気持ちを思いやることもなく誠三郎はヘルメスの前から移動し、観客席から試合を見ていた、ギルドマスターであるジアドの前に進み出た。

そして、一言

「ギルドマスター殿とお見受けするが、ひとつあなたにお願いがあるのですが。うちの若とこの後、勝負してはくれませんかな?」

と言って蔵光の方へ視線を送った。

「えっ?」

ジアドはその言葉には驚かなかった。

この驚きはまわりのハーブやアロマ達の声であった。

当然であろう、ギルドマスターはこの冒険者ギルドのトップであり、今は冒険者というよりは、ギルドのお飾り的な存在であり、SS級とはいえ、一線からは外れている格好になっているからだ。

だが逆にジアドはこの申し出にニヤリと顔をほころばせた。

「さすがだな…俺が、あの坊主とやりたがっていると…よくわかっている。あとヘルメスの鼻っ柱を折ってくれてありがとう。あいつはちょっと思い上がりが強かったんで、ギルド内で少し浮いていて、どうしようかと思っていたんだ。」


元々冒険者であるジアドはギルドマスターという退屈なポジションに飽き飽きしていた。

『今でも俺はクエストに行けるぞ!若いやつらにはまだまだ負けんわ!』

という気概は持っていても、周りがそうさせてくれなかった。

だからこそ、今回の誠三郎の申し出は嬉しかった。

また、ヘルメスのことも日頃から気にかけていて、試験官をさせるという話は、以前から考えていた。

彼女は、貴族出身ということもあり、自分のパーティーの者以外とは余り馴れ合いはせず、他の冒険者達とは距離があった。

周囲から少し浮いた存在であった彼女に対し、ちょっとでも強い奴からガツンといかれてみたら少しは意識も変わるのではと思うのと、現況、井の中の蛙である彼女にはより強いものと戦うことで、良い経験、良い刺激になるであろうと前々から考えていたが、彼女が結構強いこともあり、それを相手にする適任者が周りにいなかったため、なかなか実現せず延び延びになっていた。

しかし、丁度、今回、蔵光らのような破格な新人が現れたため、急遽このような試験官をさせることになったのだった。

これについては予想通りの結果であった。


誠三郎の申し出に話を戻す。

「ダメです、マスター!あの子だけは!」

誠三郎の申し出に割って入ったのは何を隠そう副ギルドマスターのハーブであった。

蔵光から漂う異形の雰囲気(オーラ)

蔵光に付き従う恐るべき実力の持ち主である八鬼誠三郎という謎の侍。

ハーブも蔵光が非常に危険な存在であると本能的にわかっているようであった。


しかし、ジアドも元々は冒険者である。

蔵光が、適正検査で全ての結果に対し、測定不能というとんでもない結果を叩きだし、使用した魔鉱機のほとんどか破壊、あるいは使用不能にしてしまう等、全てが異例ずくめであった。

ハーブを含めギルド職員がその結果を目の当たりにして恐怖を抱く。

自分の前に、そんなとてつもない存在が現れたのを見て、正直、血が騒いだ。

過去に自分達のパーティーが決死の覚悟で挑んだドラゴン退治にその感覚が似ている。

これだけの者に対し、腕試しをせずに終われる訳はなかった。

「ハーブ、俺の一生のお願いだ、あの坊主と一回だけでいいから、模擬戦闘をやらせてくれ。」

とジアドはハーブの前で両手を合わせた。

ハーブは目をつぶって呼吸を整える。


『この人はどこまで行っても、冒険者ですね。おそらく私が止めても絶対に止まらないでしょうね。』


ジアドの申し出を許すことにした。


「わかりました。ですが命だけは大事にしてください。」

こう言うとジアドは、一回武者震いをした後、子供のような純真であどけない表情になり、ハーブに礼を言った。

「恩に着る!」

こうして、蔵光とギルドマスターのジアドとの模擬戦闘テストが行われることになったのだった。





いよいよ、次からはちょっと展開が早いけど、蔵光の過去編が始まりますが…まだ読みますか?

ゼ「そら、興味があったら読むやろ」

えっ?マジで?

ゼ「何、その反応は?ワイはそれをどう捉えたらエエんや?」

いや、ポチるのが大変だなと。

ゼ「……」


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