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水無月蔵光の冒険譚  作者: 銀龍院 鈴星
第二章 新人冒険者として
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第44話 調査クエストの真相

ようやく第二章が終わりました。


第44話 ~調査クエストの真相~

ヘルメス達から調査の話を聞いた後、S級冒険者セージが、

「ところで、タスパ支部から手紙が届いていたんだった。」

と言うと、ポケットに入っていた、紙切れを出してきた。

小さな紙切れであった。

恐らくは伝書つばめを使ったのであろう。


伝書つばめは鳥類の中でも人間に懐きやすく、また、飛ぶスピードは鳥類最速で、空に住む魔物からも余裕で逃げ切れる程のすごい鳥だ。


手紙は蔵光に宛てたものだった。

ヘルメスはセージから受け取った手紙を蔵光に渡す。

蔵光は手紙を受け取ると、その場で目を通した。

『クエスト終了後の報告は首都ヨーグのギルドで願いたい。また、蜂の巣の報償金は最長老の屋敷にて受領手続きを願いたい。冒険者ギルドタスパ支部 ジアド』


「ヨーグかぁ、ねえ、ヘルメス、ヨーグってどこにあるの?」

「えー?蔵光殿、ヨーグを知らないのですか?」

ヘルメスが驚いたが、よく考えれば、蔵光達は、まだメトナプトラに来てからあまり日が経っていない、タスパでさえもまだまだ知らないところがあるみたいだし、ヨーグくらい知らなくても当然か。


「うん、何か俺、ヨーグへ行け、みたいな話になってる。」

と蔵光が言うと、セージが蔵光に、

「いや、この調査クエスト自体、元々は、冒険者ギルドのヨーグ支部が依頼を受けていたものだからな。なので、報告は首都のヨーグにあるヨーグ支部に報告となるんだ。」

と説明した。

すると、それを聞いていたヘルメスが、少し変な顔をしながらセージに確認する。

「ちょっと待って、依頼は元々ヨーグが受けてたって?それってどう言うこと?」

「えっ?どういうことって、何でそんなこと聞くの?」

「だっておかしいじゃない?元々C級とかB級とかの冒険者が派遣されているとは聞かされていたけど、てっきりウチの支部の案件だと思ってたのに!」

「えっ?いや、それを承知で受けたんじゃないの?」

セージが聞き返す。

「知らないわよ!」

とヘルメスもセージに言い返すが、それを聞いてサーガスも会話に混ざる。

「おいおい、お嬢さん…そりゃクエスト受けるときに普通考えりゃ分かるだろ?ヨーグ支部の案件を、それより規模が小さなタスパに回すなんてこと、まずないって……て?おいおい本当だよ何でタスパの人間がここへ来てるんだよ、俺も今、それ気付いちゃったよ!」

「あっ!そう言えば…確かに…」

セージもようやく気付いたようであった。


そうなのだ、普通、規模が小さな支部で解決出来ない案件は大きな支部へ依頼を回すことがある。

だが、首都ヨーグのヨーグ支部はメトナプトラの最大ギルドである。

だから、それより規模が小さいタスパ支部にクエストを回すなんてことは通常あり得ないことなのだ。

だから、ヘルメスはそれに気付きセージに聞いたという訳なのだ。


しかし、その言い合いをサンジャが一言で解決した。

「あんたたち相当のバカよね。考えればわかるでしょ…その蔵光って子がこのパーティーに入っているってことを。」

そう言われて、みんなが同じ反応をした。

「あっ!」

「なるほど、そういう訳か。」

ジェムもこのパーティーの人選の意味に納得する。

「ヘルメスお嬢様。」

ついセージが、昔のようにヘルメスを呼ぶ。

「だーかーらー、お嬢様はやめてって。」

「すみません、じゃあヘルメス殿、確認しますが、このクエストってどういう経緯で受けられたのですか?」

「えっと、……これは……あっ!ギルドマスターに直接部屋に呼ばれて……でもウチのパーティーはマッソルとトンキの二人が『蜂の巣』の残党狩りで引き上げられていて、人数が足りないので……どうしようかと思っていたら…」

「で、この人達にお願いをしたら良いのではとギルマスに言われた?」

「えっ、ええそうよ。」

ヘルメスの声がうわずる。

「ヘルメス~!お前、ギルマスに巧いこと操られとるのぉー!」

とゼリーが言うと、ヴィスコも、

「私もそう思います。」

と追い討ちをかける。

そして、誠三郎からは、

「恐らく、そのマッソル殿とトンキ殿とやらも残党狩りには計画的に入れられていますな。」

と言われて初めて、ヘルメスはその事実に気付かされた。

「あんのぉ~オッサン!()めやがったな!」

ヘルメスが切れる。

場にいた全員が爆笑の渦に巻き込まれたのは言うまでもない。


一方、タスパ支部では、

「は~くしょん!んー、誰だ?誰か俺の噂をしているな?」

とジアドが大きなくしゃみをしていた。


事実は誠三郎の予想通りであった。


ヨーグ支部が、今回のクエストをピータバ村から受けたが、最初は、村の防衛依頼であった。

内容は、『村に出没する、ワイバーン等からの村の防衛。』であった。

出没するのがワイバーンということもあり、S級冒険者セージを擁するパーティーが村へやって来た。

さすがにワイバーンは手強く、危ない状況は何度もあったが、何とか何頭かの、ワイバーンや大カマキリを討伐した。

しかし、出没が減少する兆しが無かったため、その原因の元となる森やクライ渓谷の調査をしてもらうよう、セージからヨーグ支部へ依頼を飛ばしたのだ。


そして、数日後、最初はC級とは言えども、ヨーグ支部の優秀な情報収集(データコレクタ)達が派遣されてきた。

戦闘は今ひとつだが、逆に戦闘回避能力に長けており、本職の調査にかけてはピカイチの者達であった。

しかし、彼等が森に入って一週間、何の音沙汰もなく、連絡が途絶えたままとなった。

すぐさま、新しい部隊が派遣された。

今度はB級のバトラーとデータコレクタの混合パーティーだった。

しかし、これも帰らずとなったため、事態を重く見たヨーグ支部は、本件クエストを『緊急クエスト』として指定し、特A級の救出部隊を送り込むことを決定した。

さらには、タスパ支部で最近、ギルドマスターを伸した新人、噂の水無月家の跡取りであり、先日、盗賊団『蜂の巣』を壊滅に追いやったといわれる少年の出馬を要請することにしたのである。


ジアドはヨーグ支部からの要請を受けたが、これに細工をした。

蔵光達はC級冒険者である。

そのランクでは低すぎて、他の支部の応援派遣は悪目立ちしすぎるため、彼等をよく知っているB級冒険者のヘルメスらを利用することにした。

ちょうど、蜂の巣の残党狩りのクエストも人手がいったので、ヘルメスのパーティーにいる、こん棒使いのマッソルと斥候の得意なトンキを外して向かわせることとし、そこへ、蔵光と誠三郎に入ってもらうようにヘルメスを誘導した。


ヘルメスのパーティーはB級の剣士ヘルメスと魔法使いのヴィスコがいるが、どちらもヴェネシア王国の貴族出身で、生真面目なのはいいが、気位が少々高すぎて、また女性ということもあり、周りの男性冒険者連中とは気が合わず、浮いている状態のため、他のパーティーとの合同クエストとかは一切参加せず、常に自分達のパーティーだけでクエストを受けているような状況であった。

また、気の良いマッソルと物静かなトンキは文句も言わず、二人をフォローしているので、何とかパーティーを回せているといった状況であり、彼等が扱うクエストも合同とは違って微妙な報酬のものが多く、パーティーを維持していく為の資金繰りにも困っている様子であった。


これについては、ハーブからも相談を受けていたので、何とかならないかと思案していたところ、水無月蔵光と八鬼誠三郎という超規格外の新人が、あのジパング王国から海を渡って我がタスパ支部に冒険者登録にやって来た。


まさに渡りに船とはこの事かと、ジアドはヘルメスに戦闘試験の試験官をさせることとした。

実際、受注できそうなクエストも無く、ブラブラとしていたため、何とか巧く丸め込んで試験官をさせることに成功した。

後はご承知の通りで、ヘルメスは人間が変わったように積極的に他のパーティーと合同クエストへ行くまでになった。


だが、まだ心配事があった。

ヴィスコである。

彼女は、ヘルメスと一緒にタスパ支部で冒険者となったが、魔法使いとしては優秀だが、なかなか冒険者としては、実力が伴っていなかった。

ヘルメスに助けられ何とかB級に上がったが、自分でもわかっているみたいで、何とか強くなってヘルメスの力になろうとしていたが上手くいかず、スランプ状態になっていたのだ。

そこで、ジアドは一石二鳥で、このヴィスコも蔵光らに引っ付けて、どうなるかはわからないが何かのきっかけ、いや起爆剤になればと思い、同行させたのだ。

彼等のようにはなれないが、そこから、何かを感じてもらえればと思ったのだ。


それで、マッソルとトンキに事情を説明したところ、

「ヘルメスの姐御があれだけ人が変わったように明るくなったのは、あの人達のお陰です、ヴィスコもどうかよろしくお願いします。」

と二つ返事でお願いされたので、この計画を実行することにしたのだ。


まあ、結果はご覧の通りで、ヘルメスはまだまだ上には上がいるということを、世界は広い、自分達がいる世界のなんと狭いことよ、と思うくらいの経験をした。

ヴィスコも同じだ、今まで本でしか見たこともないような魔法をいくつも見れた、伝説ではない、実際に存在することをその目で確認した。


ヘルメスはジアドに対して、口ではオッサンと言っていたが、本当は今回のクエストに加えてもらい非常に感謝していた。

ヴィスコが悩んでいることも知っていたし、自分達のパーティーが崩壊寸前であることもわかっていた。

それを彼は救ってくれた。

タスパに帰ったら、

「てめえ、はめやがったな!ウチのパーティーにてめえの心配なんかいらないんだよ!」

とか憎まれ口の一つでも言って安心させてやろうかなと思った。










第三章もまた、溺死だ…あっ、違った、出来次第投稿するのでよろしくお願いします。

ゼ「ところでワイの活躍はあるんか?」

あるある

ゼ「ホンマかいな?」

たぶん…あると思う

ゼ「信用でけへんな。」

右に同じ

ゼ「は?」

みなさん、また見てくださいね。


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