第38話 ワイバーンと時限空間の魔法
ヴィスコの過去ちょっと出します。
第38話 ~ワイバーンと時限空間の魔法~
蔵光達の上空にワイバーンが現れた。
その数、五頭、蔵光の頭の上で旋回している。
大きさは大体10mくらいはあろうか、ワイバーンの翼膜には魔力が内包されているといわれており、浮力へと変換されているためか、鳥のように羽ばたかなくても空中に浮いていられるようだ。
ヘルメス達には隠蔽魔法が効いているためか、攻撃体制へはまだ入っていない。
だが、確実に獲物がいると確信しているようだ。
隠蔽魔法は森の中で枝や葉に体が当たって音がしたとしても、声と違って、僅かな音などはそれを無効にしてくれるため、音によって引き寄せたのではなかった。
「臭いか!」
誠三郎がワイバーンが集まってきた原因に気付く。
確かに大カマキリと違ってワイバーンには強力な嗅覚が備わっていた。
「主、狙われとるな。」
「ヘルメス達を狙わせないために気配遮断を解いたようだな。」
と誠三郎が蔵光の行動を即時理解する。
誠三郎の言う通り、ヘルメス達を狙わせないため、蔵光はわざと気配遮断を解除していた。
そのため、ワイバーンに標的とされてしまった。
だが、蔵光の上で旋回していたワイバーンが突然谷底へ墜落してきたのだ。
「えっ?何で?」
ヘルメスが岩壁に張り付きなから驚く。
「何があったの?」
ヴィスコも同じだった。
まあ、この二人にはわからなかったであろうが、キングドリルを退治した時に蔵光が使用した水魔神拳の技の一つ『水恵・膜』という技である。
水の膜を相手の気道に張り付け窒息、溺死させるという、酷い技だ。
バサバサ、ドサッドサッ
一匹、また一匹と地面に落ちてくる。
蔵光の立っている場所は、谷底といっても、水が流れている訳ではなく、その両岸の片側で、岩石と砂利が広がっている部分であった。
ワイバーンをゴブリンの時のように切り刻まなかったのは血の臭いでワイバーンが集まってきたら面倒なのと、この先にいる魔族に存在を感知されないためにも、すぐに始末する必要があったためだ。
なので、気配遮断解除も一瞬だけのことであり、ワイバーンに感じる程度に気配を抑え気味に解除していた。
「ゼリー!」
蔵光がゼリーを呼ぶ。
「何や、またかいな?」
ゼリーは答えたが、まだヘルメスらは、岩壁の途中に張り付いている状態で、下へ降りている最中だったが、ゼリーは呼ばれたので、先に飛び降りた。
高さは大体30mくらいはあったが、ゼリーは着地すると地面にあった石で一度スーパーボールのように弾かれその後、見事に砂時へ着地した。
物理攻撃無効があるので怪我は全くない。
ただ、この物理攻撃無効については『蔵光くらいのレベル以外』と限定つきだが。
(あっ、それじゃただの耐性か。)
ゼリーは墜落しているワイバーン五匹を『空間魔法』で次々と飲み込んだ。
その後、少ししてヘルメス達も下へ無事降りてきた。
「ところで主、ワイバーン取り込んだのはエエけど、こいつらの討伐部位って知ってるんか?」
「うーんよくわからないなあ。ゴブリンの耳とかみたいに討伐部位があればいいんだけど…」
と蔵光とゼリーが会話していると、ヴィスコが話に加わってきた。
「ワイバーンに討伐部位とかは特にありません。元々個体数が少ないというか、討伐数が少ないのと、体の全部分が利用されていて、骨、牙、爪、鱗等は武器や防具に、肉は大変美味しくまた、貴重なので、高価に取引されていますので、全身持ち帰りで、ギルドへ持ち込まれています。それに討伐の証明はギルドカードで自動記録されますので大丈夫です。」
「なるほどなぁ、そういう話なら確かに討伐部位とかは要らないな。」
と蔵光が感心している。
蔵光はジパング王国で育ってきたが、この辺の常識が違う。
蔵光らが、ジパング内で討伐した魔物やドラゴンについては、基本的に本人達は回収しない。
回収は、水無月家の家来となる、『忍』の部隊が回収班となっているため、蔵光は回収方法や解体要領、その後の部位の換金の仕方や各部位の相場など全く知らない。
(何故って?お坊っちゃんだからさ。)
「じゃあゼリー、時限空間へ取り込み変更で。」
「わかった。」
ゼリーはそう言うと、外からでは全くわからないが、時間停止で保管できる『時限空間』に取り込み先を変更した。
こうしていれば、死体はいつまでも腐らず、いつでも死にたてホヤホヤで空間から取り出せるという訳だ。
「今『時限空間』って言いませんでした?」
魔法オタクのヴィスコが食いついてきた。
「うぉ?ああ、確かにそない言うたけど、何や?」
ゼリーがまたもヴィスコのオタク攻撃を受ける。
ゼリーはカキノタ村で一度空間魔法にゴブリンの耳を収納しているのを見せているのだが、ヴィスコはゼリーがエンペラースライムの姿で体内に取り込み強酸を使ってゴブリン達を全て溶かしていると思っていたため、この事実を初めて知ったようだ。
「時限空間って空間魔法の中の一つでしょ?時間停止が出来るとか、一度魔法学校の図書館でそんな魔法があるって本で見たことがあったけど、空間魔法とかって幻とか伝説級の魔法なんですけど?」
「伝説って、そんな大層なもんやあらへんで。」
とゼリーは言うが、ヴィスコは止まらない、というかスイッチが入った。
「何を言ってるの!ゼリーちゃん!これは凄いことなのよ!王立図書館の本にも書いてあったけど、『魔法の深淵を覗かなければ空間魔法の真理は理解できない』って、根元素理解をしてもそれだけでは空間魔法の習得は不可能と言われていて、色々な高名の魔法使いの人達が、伝説の魔法を復活させようと努力した。私もずっと研究して何度も挑戦したけどダメだったわ!過去にもその空間魔法が使えたのはあの大魔法使いチョッコ・クリム只一人だけなのよ!時間と空間を操る魔法がどれだけ難しいことか!それが、とても、とても、とても、とても、とても凄い事なんだって何でわからないんですか!」
ヴィスコは魔法に対する思いの丈を言い切って、目には涙が溢れ、ハアハアと息切れを起こしている。
「まあまあ、そんなに興奮しいなや、まあワイもこの魔法はなんとなく覚えたから、そんなに凄いことやとは思わんかったんやわ。」
ゼリーもヴィスコの魔法愛の凄さにやや気圧されている。
「はあ?何となく覚えたって?そんなもんで覚えられるか~!」
ヴィスコが両腕を挙げて叫ぶ。
そこまでキレられればゼリーも言わざるを得ない。
「そうや、何となく生きてたら覚えた。あんたも何となく生きてたら覚えれるんとちゃうか?」
ゼリーも口では負けてはいない。
ただ、それはヴィスコには鋭すぎる言葉だった。
そう言われたヴィスコは振り上げていた両腕を下に降ろし、その場に座り込んだ。
そして、顔を下に向けて完全に意気消沈してしまったようで、
「はあ………そうですか、わかりました。」
と大きなため息を吐いた。
ヴィスコは高位の魔法を連発するゼリーから何とか少しでも魔法の極意を伝授してもらおうとしているが、ゼリーは人にものを教えるのが下手なのか魔法自体が難し過ぎるのか、理解できず全く覚えられない。
そのため、ストレスが貯まっていたのもあり、今回爆発した。
貴族の生まれであったが、魔力値が高いことから幼少のころからヴェネシア王国の魔法学校へ通わされた。
才能と適正があったのか、メキメキとその能力を開花させ、魔法使いとなった。
魔法学校では常に成績はトップ、魔法に対する取り組み態度や知識はダントツで、目指すは聖魔導士という魔法使いの職業としては最上級のランクを目標にしていた。
ただ、日々の勉強などの努力だけでは駄目だということが次第にわかってきた。
それならば実戦も必要と思い、その頃、生活が荒れていた幼馴染のヘルメスを誘い、冒険者になることにした。
ただ、ヴェネシア王国では貴族という目で見られるだけで魔法使いとして見られることがないということで、ヴェネシアを離れ、南東にあるメトナプトラ国で冒険者登録をしたのだった。
しかし、現実は厳しかった。
魔法使いとしての知識はあっても魔物や世間の常識に疎いことから、何度も苦汁を飲まされた。
唯一の助けはヘルメスだった。
彼女は世間が思う程、荒くれた性格でないことはよく知っていたし、何よりも、クエスト中に、魔力切れを起こして動けなかった自分を何度も剣一本で、死地から救ってくれた。
感謝してもしきれない。
そんな彼女に恩を返すには、方法は一つしかなかった。
『自分も、強くならなければ…』
そう思ってはいたが、中々魔力値も上がらず、新しい魔法も満足に覚えられない。
冒険者のランクはB級に上がったが、ほぼヘルメスの活躍でなれたようなものだった。
心の中には、不安と焦りでグツグツと煮込まれているような気持ちがする。
そんな状態が続いていた。
そんなとき、あの強かったヘルメスが新人冒険者の模擬戦闘試験で完敗したと聞いた。
借家に帰ってきたヘルメスは笑っていた。
あのプライドの塊の様なヘルメスが試合に負けたのにだ。
それまで何かに取り憑かれたように剣の道へ邁進していたヘルメスをただの一回の試合で、そんな風に変えてしまう人がいるなんて思いもよらなかった。
それよりも、そのヘルメスに勝った人も凄く強かったが、その人が仕えている人もギルドマスターのジアドさんに勝ったとも聞いた。
そんな強い人達がいるんだなと、他人事で聞いていたが、ある日、ヘルメスから、今回、受けたクエストにその人達を加えていいかと聞かれた。
もちろん、どこの誰だかわからない人なら嫌だったけど、ヘルメスを変えてくれた人達ならばと思ってOKした。
紹介してもらった、その中にゼリーというわけがわからないが可愛い生き物がいた。
スライムネコだと?
聞いたことなんかない。
世界は広いなと思っていたが、もっと凄いことが目の前で起きる。
今まで本や言い伝えでしか聞いたことがなかった魔法をこの生き物が使うのだ。
自分は魔法オタクだと自認している。
魔法の知識ことなら誰にも負けない、使えなくても知ってさえいればと。
しかし、実際に見る、伝説の魔法は凄かった。
隠蔽魔法や空間魔法、空間魔法など聖魔導士になれたとしても使えるかどうかわからないとさえ言われる魔法だ。
私も伝説の魔法が使えるようになりたい。
そう思うのはヴィスコには当たり前の考えだった。
しかし、なかなか覚えられない。
難しいのは百も承知だか、このスライムネコは、その『伝説』を普通に使う。
そんな魔法を『何となく覚えた』だと。
怒りを通り越して、才能の限界を見てしまった。
天才ってこうゆう奴らのことをいうんだなと。
そんなため息だった。
涙が溢れてきた、悔し涙だ。
それを見てゼリーが声をかける。
「まあ、何や、ワイも1000年くらいは生きてるけど、この魔法を覚えてからまだ、200年くらいしか経ってないから、ようわからんのや。」
まだ200年って意味不明。
「は?に、200年て…」
「ゼリーちゃんの冗談ってよくわからないなあ…」
「まあ、時期がきたら、教えてやるさかい、それまで待っとき。」
とゼリーはヴィスコを慰める。
人間の寿命はもっと短いんですけど…
あれはどういう意味なん?
ゼ「何がや?」
200年がどうとか?
ゼ「あーあれか、あれは覚えたてで少ししか経ってないから、空間魔法の仕組みが今一つわからへんねんやって言おうとしただけや。」
200年が少しなん?
ゼ「そうや、言葉とか知識とか、急に頭に溢れてきたからなあ、こっちにも色々と理由が有るんや。」
へぇーまた、極秘事項ですか?
ゼ「ようわかっとるやん。」
まあ、このコーナーやりだして結構経つんで…




