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水無月蔵光の冒険譚  作者: 銀龍院 鈴星
第二章 新人冒険者として
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第25話 朝食と自己紹介

ちょっとまったりの回です。

蔵光達には、他の冒険者からの誘いもあったようですが、相手からの条件がひどく(C級ということもあって…)、全て断っているので話の中には入れてません。

第25話 ~朝食と自己紹介~

蔵光達は、拠点の宿屋『海老の尻尾亭(えびのしっぽてい)』の1階の食堂にて、朝食をとりながら、同じ冒険者ギルドの冒険者である剣士ヘルメス、魔法使いヴィスコらと共に、調査クエストの段取りを組むことになった。

食堂の今日のメインメニューは、食堂自慢の海鮮料理を中心とした具だくさんスープと、焼きたてパンであった。

巷でも、ここの食堂の飯は旨いと評判で、宿泊客でなくても外から食べに来る客がいるほどだ。

蔵光達は窓際の街の通りが良く見えるテーブルに座っていた。

外の通りは、朝方ではあったが結構人通りは多く活気がある。


「ところで、え~っと…」

蔵光がヘルメスの名前を呼ぼうとして、呼び捨てがいいのか、『さん』付けで呼べばいいのか迷っていたところ、それを察してかヘルメスは、

「ヘルメスでいい。」

と蔵光に言う。

蔵光がそれを目で応えると、

「じゃあヘルメス、俺の事は蔵光と呼んでくれ。」

とヘルメスに言ったが、ヘルメスは、

「わかりました。では、くら…くら……くらみ、って呼び捨て絶対無理です!」

と蔵光を呼び捨てにすることが出来なかった。

というのも、あまりにも自分より実力や家柄が上の人間に対して呼び捨てにするということは、これまで貴族社会で生活してきたヘルメスには到底できないことであった。

「じゃあ、自分が呼びやすい呼び方で呼んでくれ。」

と蔵光が言うとヘルメスは、

「了解しました。では、()()殿()、この度はクエストの応援を受けていただいてありがとうございます。」

と改めて礼を言うと共に、自分達の紹介を始めた。

「改めて自己紹介します、私は名前をヘルメス・カース・ヴェレリアントと言います。出身はヴェネシア王国で三流貴族の三女になります。年齢は18歳、職種は戦闘職(バトラー)の剣士、ギルドのランクはB級、現在は『シルバーユニコーン』というパーティーのリーダーをしています。で、彼女は…」

と言ってヴィスコに自己紹介の順番を振る。

「私の名前は、ヴィスコ・ダ・ギャマ、年は15歳で、出身はヘルメスと同じヴェネシア王国です。職種は下位の魔法使いです。ギルドのランクはB級で、ヘルメスのパーティーに所属しています。よろしくお願いします。」


※追加情報として…ヴィスコの身長は155cm、体型は痩せ型で、髪の毛は明る目の緑色のショートカットで、整った顔立ちに、鼻筋が通り、二重の目の色は青色、薄目の唇。着ているものは濃い青色のローブを上に(まと)い、黄緑色のショートスカートにタイツ、灰色のロングブーツを履いている。

性格は大人しい目で、やや引っ込み思案。魔法史に精通し、過去の魔法が関わる戦いや事件、昔の有名な魔法使いの名前や現在の高位の魔法使い、指名手配中の魔法使い等にも詳しい。魔法の知識は豊富で、蔵光と同じ魔法オタク、ヘルメスとは幼馴染みで、下級貴族出身、同じ時に冒険者ギルドで冒険者となった。魔力値は1500Mで人間にしては高め。


二人の紹介が終わった。

次は蔵光達の紹介が始まった。

「名前は水無月蔵光(みなづきくらみつ)、年齢は16歳で、出身はジパング王国です。職種は戦闘職(バトラー)で拳法家です。魔法は水の魔法を少し使えます。従魔はスライムネコのゼリーがいます。よろしくお願いします。」

八鬼誠三郎(やぎせいざぶろう)、30歳、出身は若と同じジパング王国で、職種はバトラーの侍、流派は黒緖神流(くろおかみりゅう)、若の武者修行の従者として同行している。」

とそれぞれ自己紹介が終わった。


……………



そして、ヘルメスは自己紹介に続いて今回予定している調査クエストの段取りを話し始めた。

「早速なんですが、…」

と言いかけたところで、待ったが掛かった。

「うおーい!ちょっと、待ったらんかーーい!誰か忘れてるやろ!」

ゼリーであった。

(あるじ)ぃ、ワイも自己紹介させてえや!」

「え?ゼリーもするの?」

蔵光が聞く。

「するに決まっとるやん!何、普通に流してんの?余りにもスーって自己紹介終わるわ、ワイもスルーされるわ、ほんまもうビックリやわ。」

ゼリーは自己紹介がしたくてたまらない様子である。

「じゃあしたら。」

と言うとゼリーは自己紹介を始めた。

が、様子がおかしい。

全員の視線が自分に集中していると気が付いたのか、体をモジモジし始め、目線が下を向く。

「で、でわ、じ、じこ、自己紹介、やらせてもらいます。わ、ワイの名前はゼリーや、年はえ、えと、せ、1000歳くらい。て、あ、主の従魔してま…す。えと、と、得意は色々な魔法かな?で、えと………あれ?何も言うことが思い浮かばない?」

「はい、終了!」

蔵光がストップをかける。

「ええ?そんな?!!」

「ゼリー噛み噛みじゃん!」

「うっ!…」


ゼリーは、『普段は言わなくても良いことまでベラベラとしゃべるくせに、肝心なときに緊張してしまってちゃんと上手くしゃべれない病』にかかったようであった。

自己紹介は不完全燃焼で終了し、ゼリーは食堂の隅で『こんなはずやあらへんのに』とボヤきながら、うなだれていた。


ということで、ヘルメスが調査クエストの段取り説明を再開しだした。

「出発は明後日(あさって)、時刻は早朝6時にギルド前に集合ということで、全員が集まり次第出発とします。」

「わかった。」

蔵光は(うなづ)いた。

「食料や身の回りのもの等、必要な物は各自用意してもらいます。移動は馬車を使う予定です。できれば魔導車を使いたかったのですが、小型のものも全て、砦で囚われていた者達の護送に出払ってしまっていて、今は、馬車しか用意が出来ませんでした。」

「そうなんだ。」

蔵光は、今さらながら、自分達が(おこな)った盗賊団の討伐の影響が色々な所で出ていることを実感していた。

ちなみに魔導車とは魔石で動く車両で、大きめの魔石に魔力を込め、それを動力源とした魔法テクノロジー車のことである。

速度は馬よりも速いだけあって、値段も高く、ほとんどがレンタルである。

所有しているのは、王族や上流貴族、国軍、ギルドなどで、個人として所有しているのは一部の商人と限られている。


「あと、報酬のことなんですが折半でいいでしょうか?」

とヘルメスが申し訳なさそうに話す。

「構わないよ、今のところ、お金に困っているわけでもないし、それよりも色々なクエストで経験を積んでおきたいしね。」

「ありがとうございます。最近は割りのいいクエストが無くて、ちょっと報酬がいいかなと思ったら高難度だったりと、結構パーティーを維持するのも難しくて…」

ヘルメスがホッとした表情となる。

「そうだったんだ。まあ、お金のことは心配しないでいいよ、自分の家からも少し持ってきているし、後、ギルドから今回の討伐の件で結構報酬もらってるし…」

「凄い!あの盗賊団『蜂の巣』を壊滅させたんですから、相当な額だったんでしょう?」

ヴィスコが目を輝かせる。かなり興味がありそうだ。

「こら、ヴィスコ失礼でしょ!」

ヘルメスがヴィスコに注意する。

他の冒険者の報酬が気になるのは当然だが、詮索するのはタブーのようであった。

「だって~ヘルメスも言ってたじゃない、あれは相当もらえるよって!」

「なっ?もー!こんなとこで、そんなこと言うことないでしょ!本当にすみません。」

ヘルメスが顔を真っ赤にしてヴィスコに文句を言った後、(うつむ)いてしまった。

まあ、ヴィスコやヘルメスだけでなくても、この討伐報酬は他のギルド関係者にも十分に興味が持たれているところである。


「聞きたいかぁ?」

壁の隅のほうで落ち込んでいたと思われたゼリーがいつの間にかヴィスコのそばに寄り、耳打ちする。

そのいじわるな表情と声にヴィスコがビクッと体を震わせる。

「え?いや、えっと…」

ヴィスコも顔を赤くして下を向く。


「ゼリー!」

蔵光が右手で手刀の格好をして睨む。

「ハイハイ、すんませんねぇ~」

先程までの落ち込みはどこへやらといった感じで、ゼリーはペロリと下を出す。

言葉とは裏腹に反省の態度は見られない。

「はっはっはっ、さすがのゼリーも若にかかっては形無しだな。」

と誠三郎が茶化す豪快な笑い声が食堂内に響く。


とか何とか会話と食事が進み、ヘルメスの説明も終わると、お開きとなった。

蔵光らは宿の前までヘルメスらを見送った。

「それでは、明後日よろしくお願いします。」

ヘルメスとヴィスコが軽く会釈する。

「こちらこそよろしく。」

蔵光も言葉を返した。


ヘルメス達は近くに借家をら借りているらしく、そちらの方へ帰っていった。

長く街にいる者は、宿屋よりも借家住まいが安くつくらしい。


ぷぷぷぷっ

ゼ『何、笑とんねん!』

じこしょーかい

ゼ「言うな!あれはな、自己紹介やなくて『事故紹介』や!」

うまい!ところで、他の冒険者も来たの?

ゼ「あんまり言いたくないが、あいつらは最低やったからワイが成敗しといた。」

へぇー。

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