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水無月蔵光の冒険譚  作者: 銀龍院 鈴星
第一章 伝説のはじまり
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第2話 登録は必須です。

とりあえず蔵光達の冒険者登録が始まります。

第2話 登録は必須です。

冒険者ギルド…登録制の職業安定所や組合のようなもので、冒険者と呼ばれる登録者がギルドの請け負ったクエスト(仕事)を受注し、達成すればその内容に見あった報酬がもらえる。

また契約して店、商会等に住み込みで働く場合もある。

クエストでは護衛、討伐、探索、調査、掃除、配達、運搬等があり、住み込みでは用心棒、開墾、宣伝等、雇われ先の方針により内容が変わる。

国との繋がりも強く、戦争以外の援助も行っているため登録者はほとんどの国に登録の証を見せれば入国税を取られずに出入りできることが可能だ。その詳細は後程。


「着いたみたいやで。」

ゼリーが蔵光と誠三郎の前を歩いていたためか、先にギルドの建物を見つけたようで振り向きながら声をかける。

冒険者ギルドタスパ支部は港から少し離れた場所にあり、港も含めて詳しくはタスパイースト区という名前の地区に所在している。

タスパ支部は港と違って街道沿いに建てられているため、比較的その周辺は静かである。

建物の外観は港町と同じく西洋中期のヨーロッパ建築の様式に似た造りをしており、その内部も高級な大理石を使った立派な建築物であり、中に入るとワンフロアタイプのエントランスが冒険者を迎え入れると、フロア中央にはクエスト掲示板がいくつか置かれ、その奥には受付の窓口と思われる場所や、隣の建物へ続く廊下も見えることから、かなりの大きさであることがわかる。

入口入って直ぐのところにある案内板によるとこのギルド内にはギルド職員の執務室の他、食堂や訓練所、資料室、休憩所等の施設が設けられていた。


冒険者ギルドは世界各国に存在する。

その太いネットワークのすごさは、先程も出てきた登録の証(ギルドカード)でもわかるであろう。

この世界、普通はその身分を証明するものが非常に少なく、余程の信用性がなければ、他の身分証明書ですらも発行はされないため、大きな商会等は別として、個人での国と国との行き来はまず出来ない。

従ってこの登録の証に至っては取得条件が非常に難しく、普通に申請してもまず発行されない。

それくらいの代物であるからこそ、信用性も高く、また、身分を証明、保証するという点では確実である。

当然だが、犯罪歴のある者は絶対に取得できず、もし取得後に犯罪を犯せば直ぐに身分証を剥奪されることとなる。

犯罪歴の判定はギルドの各支部に備えられた魔鉱機(まこうき)といわれる魔導機械で、申請者の記憶を読み取り取得の可否を判定する。

またこの後に出てくる登録の証にもその機能の一部が組み込まれているので犯罪を犯せば直ぐに支部へ連絡が届くようになっている。

このように冒険者の身分は確実に保証されることから 登録の証の所有者は各国へ自由に出入りできるのだ。

とは言っても判定は難しく、誤って人を傷つけてしまった場合等や傷つけた相手に非があったり、虚偽の情報や策略で、無実の者を死傷させたりした場合等は神殿において「神の審判」を受けることとなる場合がある。

そしてそこで絶対神「ラー」により裁かれることとなるが、このような事案はめったにない。

というのも、それら審判の代替措置としてギルド支部に設置の魔鉱機「ラーの瞳」により判定されるので問題はないとのことで、その審判結果には定評がある。

話を戻そう。


ギルドの建物内に入った蔵光達が、建物の造りに興味を示し周囲を見回している。

フロアの中にはちらほらと冒険者らしい者達が見てとれるが、思ったほど多くはなかった。

やはり冒険者となる資格基準が、厳しいからであろうか。

「へぇー結構広いんだね。」

と感心していると、

「いらっしゃいませ、ようこそ冒険者ギルドタスパ支部へ。」ギルドのフロア担当の受付嬢が声をかけてきた。

出迎えた受付嬢は、さすがと言うべきか、スタイル抜群、容姿端麗、髪は長めのストレート、お目めパッチリ、笑顔も最高、ギルドの制服に身を包み端正ではあるが「流石、看板娘」といったところである。


「本日はどういったご用件でしょうか?」

ギルド嬢は蔵光に話しかける。

先程、チンピラ共に絡まれらたのと同じように侍を連れた金持ちの坊っちゃんに見えたのだろうか。

そしてギルドへは何かクエストを依頼にでも来たのであろうと思っているのだろう。


「冒険者登録をしたいんだけど?」

と蔵光が言うと、ギルド嬢は若干拍子抜けのような顔になったが、直ぐに気を持ち直し、

「は?登録ですか?少々お待ちください。」

と言って、蔵光達を、その場に残し奥の受付の一つへ向かっていった。


するとそこで、受付の女性職員と何やら二言三言話をすると再び蔵光らの元へ戻ってきた。

そして少々不審な目で蔵光らを見ながら、質問した。

「お待たせしました。あの…登録申請に際しましては、本国若しくはどちらかの国か首都の発行する推薦状が必要なのですが、何かそれらの物をお持ちでしょうか?」

確かに、蔵光くらいの年齢で冒険者登録をするような者はまずいない。

何故ならギルドのクエストは難しいものであれば命懸けになるものもあるため、余程の実力者か何かでなければ推薦状や紹介状は発行されない。

なので蔵光みたいな一見ボンヤリ系ボンボンにしか見えない少年が冒険者になるとか、絶対に思わないし、ましてやそれらを後押しするための推薦状とか発行されているなど完全に予想外なのである。

でその少年が推薦状を出してきたから、ギルド嬢の驚きは相当であったであろう。

「あぁ、持ってるけどこれでいいかな?」

と言って蔵光は手に持っていた手紙の様なものを見せた。


「わっ、わかりました。ではこちらへ、その推薦状はお預かりします。」

声が上ずりながらも、受付嬢は蔵光から推薦状を受け取ると、蔵光らを受付窓口近くのソファーに座らせたあと、奥の受付窓口の女性職員に手渡した。

推薦状を受け取た女性職員は、

「確認します。」

と言って受け取ると書状の封を開封し、中の書状を取り出した。

そしてそれを受付カウンターに設置された魔鉱機にかざすと、受付女性職員の顔色が変わる。

「こっ、これは!」

女性職員から思わず驚きの声が漏れる。


「どないしたんや?」

少し笑顔になっているゼリーが受付に近づいて尋ねる。

ゼリーは面倒事や厄介事が大好きな性格で、特に他人が抱える面倒事は『他人の不幸は蜜の味』とばかりに嬉しがる。

なのでどうしても不都合の臭いがすれば笑みがこぼれる。

女性職員は書状を蔵光に見せながら尋ねる。

「この書状の発出元って…ジパング国ですか?」

「そうだけど、何か問題でも?」

蔵光も受付に近づき、少し怪訝な顔をして答える。

自分の国で正式に発行された推薦状だから問題はないと思っていたが、何か様子がおかしい。

「いえ、問題というわけではありません。書状は間違いなくジパング国が正規に発出したものですが、しかし…」

女性職員が言い淀む。

「ほら問題あるんや、やっぱり。」

ゼリーが何かトラブルを期待するような目をしている。

女性職員が重い口を開く。

「メトナプトラを含めギルドのネットワークは世界各国にあるのですが、ことジパング国は所謂(いわゆる)一部『鎖国』状態でギルド支部もありません。ですからいくら推薦状があったとしても無条件で冒険者ギルドに登録することが出来ないのです。」

と衝撃の事実を述べた。


「えぇ~?!」

蔵光はそれを聞いて滅茶苦茶困ったという顔をした。

そしてその顔を見たゼリーは、

「ほら~来たでトラブルが!」

と言って目茶苦茶うれしそうな顔をしている。

自分の(あるじ)の困り顔を見られたのが嬉しいのか、ギルドに登録されなくて済みそうだからなのかはわからないが。

「何とかならないんですか?」

蔵光がすがるような目をして受付の女性職員に聞いている。

すると、

「身元の保証は何とかこの推薦状でできるとして、あとは個人の実力を見せていただくことになりますが?」

との答えが返ってきた。

「えっ?実力ですか?」

蔵光の顔に緊張と困惑の表情が浮かぶ。

「ちょ、ちょっと待って下さい。セイさん!」

蔵光は少し離れていた誠三郎に声をかけ、

「実はこれこれしかじかで、…」

と事の詳細を説明した。

「えっ?ジパングってそのような立ち位置の国だったんですか?」

誠三郎もやや予想外といった感じで蔵光に答える。

「で、どうするんです。」

「何か適正検査のようなものなのかなぁ。」と言いながらチラリと受付の方を見た。

受付嬢は蔵光と、目が合うとニッコリと笑顔を見せた。

営業スマイルか!


「致し方ありませんな、若、ちょっと腕前を見せてあげて下さい。とりあえず魔法は無しの方向で。」

「えっ?」

蔵光の額に嫌な汗が光る。

そもそも蔵光が冒険者になろうとしたのは世界各国を自由に行き来して見聞を広めるためと武者修行のためであった。

なのでここで登録の証を発行してもらわなければわざわざ国を出てきた意味が無くなってしまうではないか。

蔵光の冒険者ギルドの冒険者に対するイメージはこうだ、

・めっちゃ凄腕でないとなれない。

・めっちゃ頭脳明晰でないとなれない。

であり確かに腕前には自信はあるが、こと学力や専門知識といったものに対する自信は皆無であり、頼みの綱であった推薦状だけでは登録出来ないと言われたことから普段、ほとんどの事柄に動じない蔵光が動揺で汗だく状態になっているのだ。

『推薦状があれば大丈夫だと思っていたのに…』

蔵光の動揺を嘲笑うかのようにゼリーが耳元でささやく。

「主ぃ~どうしたんやぁ、えらい汗かいて。」

「えーい、うるさい!あのぉ、俺、あまり物事知らないんですけど、専門知識とか社会常識とか…」

蔵光は受付女性に懇願するようなボソボソ声で言い寄る。

受付の女性職員もそんな蔵光の心情を読み取ったのか、笑顔で、

「大丈夫ですよ、とりあえず推薦状があるので適正検査は一応名目上実施するだけで、ほぼ合格みたいなものですよ。実技検査も体力検定みたいなものと簡単な手合わせだけですし、それ以外は魔鉱機による犯罪歴確認と倫理質問くらいなので、難しい知識は冒険者になってから習得してくださいね。」

と教えてくれた。

「そっ、そうなんですか?!なんだ良かったぁ~」

蔵光の顔に笑顔が戻る。

ゼリーの顔に不満が溢れる。


受付のカウンターに魔鉱機が置かれた。

「なので先行して冒険者登録の受付を開始しておきますね。登録は冒険者2人と従魔1匹でよろしかったでしょうか?」

「はい、それでお願いします。」

蔵光は元気を取り戻した声で返事をする。

先程とは全然違う。

「わかりました。それでは登録手続きを開始します。」

魔鉱機は静かな音を立てて起動を始めた。

途中で蔵光らが機械に手をかざしたりして、その反応を職員がチェックしていく。

しばらくして受付女性職員から質問があった。

「あのぉ、この従魔の種類なんですが、スライムネコって何ですか?スライムじゃないんですか?」

それを聞いていたゼリーがすぐに反応してキレる。

「スライムちゃうわ、あんな下等なもんと一緒にせんといてや。」

女性職員が、目を丸くしてゼリーを見ている。

「あの、この従魔、しゃべってません?」

先程からしゃべっていたがようやく気づいた様子である。

そもそも従魔は知能が低く会話ができる魔物はほとんどいないとされているため、まさかこんなスライムかネコか訳のわからない生き物がしゃべっているなど全く思っていなかったのだろう。

「今頃気付いたんかい!今さらやで、い・ま・さ・ら!ナウソーサーや!」

ゼリーの鬼の突っ込みが炸裂した。

しかし、受付の女性職員はさらりとゼリーの突っ込みをかわして、情報の入力作業に戻った。


「こちらの冒険者ギルドではスライムネコというジャンルはありません。ですから登録するのであればスライムか魔猫(まびょう)かのどちらかになりますが?」

蔵光は女性職員からやや困惑気味に説明された。

「うーん、じゃあスライムで。」

と蔵光はさらりと答える。しかし、

「あか~ん、スライム絶対あか~ん!どっちか言うんやったらネコにしてえや。」

とゼリーが手足をバタつかせて駄々をこねる。

「どっちでもいいんじゃないの?」

蔵光は面倒臭そうに答える。

「あか~ん、そんなええ加減な線引きやめてや~!」

蔵光のズボンを掴むゼリーの顔が泣き顔になる。蔵光も可哀想に思ったのか、観念したのか、

「ハイハイわかりました。じゃあ魔猫でお願いします。」

と受付に答えた。

「かしこまりました。」

そう答えると受付女性職員は再び登録作業を再開した。

(あるじ)ぃ~恩にきるでぇー。」

ゼリーも先程の汗だくの蔵光の時と同じくフラフラになっていた。


はぁゼリーちょっと休ませて。

小説がこんなにしんどいものだとは思わなかった。

ゼ「感想聞かせてもらうんやったらもうちょい書かないとあかんのとちゃうか?」

ええ?マジで…不覚!

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