第17話 盗賊団「蜂の巣」(1)
話が展開します。
ちょっと残酷描写あります。気を付けて下さい。
15歳以下は立ち去れい!
第17話 ~盗賊団「蜂の巣」(1)~
蔵光らがメガマウスの駆除をしていた井戸の側では、マーピンやロッコがその様子を不安そうに見ていた。
蔵光は、彼らの不安を察知したのか、
「大丈夫、もうここの水は殺菌して飲めるようになっているよ、あのネズミもゼリーが丸飲みにしたので病原菌もあたりに飛び散っていないし、疫病も発生することもないので安心して。」
ゼリーも続けて、
「そうやで、ゴミとかゴキブリとか全部掃除して、ワイが井戸の中をめっちゃ綺麗にしとったったから、せやけど今度からは自分等でちゃんと綺麗にせなあかんで!」
と説明した。
しかし、外に出て様子を見ていた住民らの表情はまだまだ暗かった。
まあ、それは『蜂の巣』のことが気がかりなのであろう。
何せ、街の警備隊や冒険者でも、通用しなかった盗賊団である、このような少年に何ができるというのか?
ロッコにもそれくらいの判別はつく。
先程の魔法を見て、少しではあるが期待はしたいが、蜂の巣の頭目の「グリーン・ビー」は強力な魔法使いであるとの噂もあり、不安は消えない。
ロッコの不安そうな表情を見て蔵光は、
「心配してくれているんだね、ありがとう、でも大丈夫、その心配ももうすぐ終わるから安心してね。」
と言ってロッコの頭の上に手のひらを乗せ、ニッコリと笑顔を見せた。
「しかし、若、奴等の居場所が皆目分からないんじゃ探しようがないですなぁ。」
と誠三郎が蔵光に、盗賊団討伐の難点を指摘する。
『蜂の巣』は近くの山か森に隠れ住んでいるみたいであるが、その拠点については誰にもわからないようで、その規模についても大体200人以上はいると言われているが、その痕跡すら判明していない。
恐らく魔法を使って逃走の痕跡を消しているのであろう。
ギルドも躍起になって探しているようであるが、全く見つからないため討伐が困難な盗賊団としてA級登録されていた。
「あのぉ」
マーピンと、同じように井戸の側にいた住民の、一人が蔵光らに声をかける。
40歳くらいの男性で、皆と同じように薄汚れた服の下は、肋骨が浮き出るほど痩せている。
「ん、どうした?」
誠三郎がこの呼び掛けに応える。
「はい、実はロッコがあなた方に間違って石を投げたのには理由がありまして…」
「理由?」
「はい、奴等はいつも街に守り料の取り立てに来る日を決めておりまして…」
誠三郎がその言葉にピンとくる。
「あっ!それが今日だったと…」
「はい、その通りで…」
その男はおずおずと応える。
このようなことをしゃべったと奴等に知られれば命はないと思っているのであろう。
「若!」
「よし、ここで奴等を待つ!」
蔵光は井戸の横に立ち、ルーケイーストの街の入口側に向けて盗賊団を待った。
男の言葉通り、その約30分後くらいに、数頭の馬が蹄の音を石畳の道に響かせて近づいてきた。
日が傾き、辺りは薄暗くなってきていた。
蔵光は気配察知や生命体感知のスキルで、蹄の音が聞こえる前から、街へ近付く者達の気配に気づいていた。
どうやら、彼らは山の奥の方からやって来ているらしく、ここへは5名の盗賊達がそれぞれ馬に乗って姿を現した。
蹄の音が静かになり、街の入口の前に近づいたことで速度を緩めたことがわかる。
カッポ、カッポ、カッポ
馬に乗った人相の悪い男達が5名、ゆっくりと街の中央にある井戸の近くまで馬を乗り入れてきた。
それぞれの身体にはいつ戦闘になってもいいように軽鎧が装備され、またそれぞれが剣や弓矢を持ち武装されていた。
「兄貴、いやに今日は静かですねぇ。」
顔に大きな傷のある男が、ひときわ体格の大きいリーダー格と思われる男に声をかけた。
「ふっ、いつものことだ、俺達が取り立てに来る日はな、俺達が怖いんだろう。」
「ハッハッハッ、ちげぇねぇ!」
男達は下品な笑い声を出しながら井戸の側までやって来た。
いつもはここでマーピンが用意した金品を受け取るのだ。
奴等は決して大きな街を狙うことはない、そうすれば自分達に強力な追っ手がかかるからだ。そうなれば、いくら強い盗賊団といえども只では済まない。
下調べをして街の治安が弱い街を狙っていく。
そうやって彼らは街へ寄生していくのだ。
奴等はルーケイーストの街だけではなく他にも同じような街を水面下で支配下に置いていた。
街を治める領主の武力や財力、警備力、付近の冒険者ギルドの登録者の状況等を綿密に調べあげ、これはと思う街が見つかればじっくりと街を落としていく。
まるで真綿で首を締め付けるかのごとく、ゆっくりと確実に…
時々、街の警備隊等に追われることもあるが近くに応援を待機させているため、追いかけて来た奴等は大体返り討ちをしている。
先日もギルドの冒険者が自分達に突っ掛かってきたが、相手の人数が少なかったこともあり、返り討ちにしてやり、そいつらを依頼したと思われるこの街の奴らを何人か切り殺し、火を放った。
女どもも何人か拐って帰ったりしたのだった。
その後は頭目のグリーン・ビーの魔法で、追跡できないようにしていたため、誰にも見つけることは出来なかった。
ただ今回は、彼らの運の尽きであった。
蔵光らがギルドの冒険者登録した情報がF級のため未確認であったこと、クエストが指定クエストで、害獣駆除のため彼らの盗賊討伐クエストの情報に引っ掛からなかったこと、そして、蔵光らが彼らを討伐出来るほどの力を持っていることを…
盗賊の男達は蔵光が立っている井戸の前までやって来て馬を止めた。
井戸の前にはマーピンはおらず、代わりに一人の少年が立っていた。
もちろん蔵光である。
見慣れぬ少年に男達の反応は予想通りといったものであった。
「なんだぁ、このガキは?」
「マーピンの野郎は、こんなガキを差し出すつもりかぁ?」
「ふっざけるな!おい、ガキ!マーピンの奴はどこだ?」
リーダー格と思われる男が腰に吊った剣を抜き蔵光の目の前に突き付ける。
このリーダー格と思われる男は彼らの中でもひときわ体が大きく身長は2m近くはあろうか、また、筋骨隆々といった体つきであることから住人が1人、2人掛かっていったとしても、どうにかできるという訳にはいかないだろう。
剣を突き付けられた蔵光は一言もしゃべらず、リーダー格の男の周辺の男達4人の首を『水化月』で叩き落とした。
一瞬のことだった。
リーダー格の男は全く反応が出来なかった。
地面に仲間の首4つが転がる。
そして、しばらくして馬から4人の胴体部分がドサリドサリと落ちていく。
「なっ?」
リーダー格の男は、一瞬で周囲の仲間の首が落とされたことに気付くと同時に、脳裏に恐怖の文字が貼り付いた。
「おっ、おまっ?なっ、なに?」
言葉が言葉にならない。
大きな体が震え、奥歯がガチガチと鳴る。
恐怖とは、そういうものである。
リーダー格の男はもう既に正常な判断が出来なくなっていた。
今まで住人どもが、自分達に掛かってきたためしはなく、また最近では媚びへつらう態度しか見せていなかったのに、攻撃とか、しかも4人の首を一瞬で切り落とすような者がいるとは微塵にも思っていなかったからだ。
得体の知れない少年…人は正体のわからないものに恐怖を抱く習性がある。
それが現実に目の前にいて自分の命を脅かす存在となればなおさらである。
「お前の所のボスに会わせろよ。」
蔵光は有無をも言わせぬ重圧を相手にかけながらしゃべった。
そして、さらに水化月で剣を持っているリーダー格の男の腕を切り落とした。
「ギィヤァァアア~!」
男は乗っていた馬から転げ落ちた。
男はもう体を恐怖に縛られて動けなくなっていた。
「たったっ、助けて…」
男は命乞いを始めた。
自分達が殺した者も、そうやって命乞いをしていただろうに、まさか自分がそのような立場になろうとは夢にも思わなかったであろう。
「じゃあボスはどこだ?」
蔵光はさらに男を追及する。
「そっ、それは…」
男はボスの居場所を言い淀む。
まあ、自分のせいで居場所がバレたと知られれば、グリーン・ビーから殺されるのは目に見えている。
だか、このまま言わなければ自分が殺されるのは確実である。
この少年は自分を間違いなく殺しにきていると…
「ふーん」
蔵光が面白くないといった表情になり、さらに、男の左腕が切り落とされる。
まるで虫か何かを潰すように…
男は今度は声も上げられなかった。
『こっ、殺される!』
男は思った。
このまま言わなければ、他の4人と同じようなことになる、もし自分が言わなくてもこの少年は絶対にグリーン・ビーの居場所を突き止めるだろう。
そう思った瞬間、言葉が口をつく、
「こっ、殺さないでくれ、ビー様はタスパ山の砦跡にいる、どうか命だけは、たっ」
そこまで男がしゃべった瞬間、男の頭は胴体から離れていた。
「砦跡か。」
蔵光がポツリと呟く。
「若ぁ~いや~さすがですなぁ、容赦ない!」
誠三郎が近くの建物の中から出てきた。
満面の笑みである。
今回、もし誠三郎のような侍が井戸の前に立っていれば相手も直ぐに馬を反転させ、仲間を呼びに帰っていたであろう。
もしそうなればグリーン・ビーの居場所がわからなくなってしまうし、それどころか、蔵光達が街を離れたのを見済まして、後日に盗賊が多くの仲間を連れて街へ報復にやって来るかも知れなかったからだ。
そのため、今回は蔵光1人が盗賊達に対応することになったのだった。
「主…子供のくせに怒ったらエグいな。」
男達の死体を見てゼリーが呟きながら、過去に自分もそうなりかけたことを思いだし、身をすくめた。
蔵光達のもとにロッコ達が駆けてきた。
目には涙が溢れている。
蔵光の力を目の当たりにし、この人なら自分達を救ってくれると思ったのだろう。
そして、ロッコは蔵光に近付き、蔵光の手を握りしめ、
「お兄ちゃん、街を救ってください…お願いします。」
と懇願した。
そして、周りにいた、マーピンや街の住民達もその場に両膝をつき、両手のひらを組んで、まるで神に祈るかのように蔵光達に頭を下げる。
「私達からもお願いします、この街の未来をお救い下さい。」
蔵光は、踵を返して、街の入口、盗賊どもがやって来た方向へ向き、
「まかせろ。」
と一言呟いた。
このエピソードは残酷描写の連続になるかも?
ゼ「いわゆるR15やな?」
そうやね。
ゼ「ていうか、投稿の時間めちゃくちゃやな?」
言わんといて、気にしてるんやから。
ゼ「まあ、ワイには関係ないし、別にエエけど。」
ゼリーちゃんの活躍をみんな待ってるかな?
ゼ「うわ、ほんまや!ワイに関係ないことないわ!ほら、ちゃんと時間決めて投稿しいな!」