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水無月蔵光の冒険譚  作者: 銀龍院 鈴星
第六章 絶対悪との対決
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第163話 顛末1

かなりゼリーのネタをバラします。

第163話 顛末1

【水覇の事】

ここは、魔導バス『プラチナスカイドラグナー』の車内にある大型リビングの中。

蔵光達、プラチナドラゴンズの他に、ヴェネシア王国の国王ウィルドネス他魔装ゴーレムチームとヘルメスの兄達、デルタ、そして水無月一家の面々、復活した水無月水覇がいた。


ガロヤスミカンダの呪縛が解けた水覇は、ようやく、自分の置かれている状況を理解した。


「ちゅうわけや。」

ゼリーの超簡単な説明で、水覇がミズハノメから封印された後、チョッコ・クリムがジパング王国に渡り、ラージスライムの体内に入り、魔法により、スライムと融合し、長寿命種の力で生き残る事を計画していた事を説明した。


また、その後、蔵光らと出会い、従魔のスライムネコのゼリーとしてここにいることも加えた。


「そんな、チョッコがこんなネコの様なスライムに…」

水覇はゼリーを見て愕然となる。

「スライムとちゃうで、スライムネコや!」

とゼリーが、訂正する。


こんな姿になっていたが水覇は、ゼリーの中にチョッコ・クリムの精神が残っていることに喜びも感じていた。

彼女に謝罪が出来ると…


「チョッコ…いや、ゼリーだったかな、あの時は勝手にカキノタを出てしまって、すまな…」

「ちょっと、待ちいや!」

ゼリーが水覇の謝罪を止めた。

「えっ?」

「謝罪するのは、ワイにやあらへんやろ。」

「いや、でも…」

水覇は、ゼリーにそう言われて戸惑う。

確かに姿形は違うし、ゼリーはゼリーだ。

チョッコとは違う。

だが、精神は同じだから大丈夫だ、謝罪が出来ると思っていた。


だが、違っていた。


ここで、ゼリーから、さらに皆が知らない事実が明らかにされることとなった。


「あのな、あーもう、面倒臭いのは嫌いやないんやけど、自分の面倒臭い問題っちゅうのは別やな。」

と顔をややしかめてながらゼリーは、皆が見ている目の前の空中に空間魔法を展開した。


「あのな、お前らに本当に黙ってたのは、この事や。」

そうゼリーが言うと、その亜空間から一人の人間が姿を現した。


その人物は女性であったが、髪は白髪で、顔にはシワが入り、どう見ても高齢者、つまり老女であったのだが、先程、ガロヤスミカンダの前に現れたチョッコ・クリムに良く似ていた。


「ま、まさか?」

皆の目が点になる。


そう、それは本物のチョッコ・クリムであった。

たが、映像の時とは違い、かなりの高齢となっていた。


「久しぶりやな、水覇…ホンマなんも変わってへんな…」

チョッコは、懐かしそうな顔をして水覇を見る。

「も、もしかしてチョッコなのか?」

水覇は、ようやく目の前の老女が自分の会いたかったチョッコ・クリムであると認識する。


「アホ、もしかせんでもワイに決まっとるやろ。」

年をとっていても口は悪い。

「……」

水覇の目に涙が溜まっている。


「チョッコ…、本当に済まなかった。」

水覇がようやく、チョッコに謝罪をすることが出来た。

「謝るんが遅すぎるわ。」

チョッコも目に涙を溜めながら頷いている。


「ちょ、ちょ、ちょっと待って下さい、貴女が本当に本物のチョッコ・クリムさんなのですか?」

そう言ったのはヴィスコであった。

「ああ、そうやで。ヴィスコちゃんやったかな。ゼリーが世話になったな。」

「は?えっ?えっ?どういうこと?」

ヴィスコはチョッコが言う事が全く理解できなかった。

「あの、ゼリーちゃんってチョッコ様が融合した姿じゃなかったんですか?」

ヴィスコの疑問は、その場にいる全員の疑問でもあった。

「あっはっは、そうか、そうか、それは、悪かったな。説明するわ。あのな…」


チョッコの口から話されたのは驚くべき真実であった。

チョッコは、空間魔法を利用して長寿命種のラージスライムの体内に入り込むことに成功し、その後はその体内で、その体と融合することを研究していたが、中々上手くいかなかった。


それは、ラージスライムにある魂が邪魔をしていたからだった。

スライムには自我が無かったが、生き物としての魂が存在しているため、そこにチョッコ・クリム自体の魂ごと、移し込むことは出来なかったのだ。

もし、それをすればラージスライムは魂を抜かれる事になり、死んでしまうからであった。

一度魂を抜かれた生き物に新しい魂を入れる事は出来ない。

それは古代魔法のうち禁忌の魔法に該当する魔法でできなくもなかったが、知識もなかったチョッコにはどうすることも出来なかった。

ただ、何とか出来たのは、自我のないラージスライムの魂に自分の魂をシンクロさせて、自分の過去の記憶や知識をトレースし、動きを操作することまでが限界であったのだ。


そして、その後は自分が高齢化し、このままではシンクロが出来なくなるのではと思った時にある事を思い付く。

それは、亜空間の中に自分を閉じ込めることであった。

これは()しくも、水覇がミズハノメに掛けられた呪いと似た原理で、水覇の時と少しだけ違うのは、亜空間の精神は常に現世空間にあるゼリーの精神とシンクロさせながら、自分の本体は時限魔法で時間が止まった亜空間に入れる事で、肉体の衰えを停止させるというものであった。

だが、これもゼリー自身が死んでしまえば、この世界に空間魔法を使ってチョッコの本体をこちらの世界に戻す事ができる者がいなくなり、この計画自体も水泡に帰してしまうため、絶対に死ねなかったのである。

そのため、蔵光に殺されそうになった時は、本当に必死で命乞いをしたのだ。


亜空間の中では、チョッコは200年前にゼリーに空間魔法を使って入れてもらっていた。

なので、チョッコ自体の感覚では、ゼリーは『久しぶり』ではなく、『ついさっきまで一緒にいた』という感覚になる。

つまり、普通の空間転移は瞬時に、A地点からB地点まで移動しているように見えるのだが、それは、その間に使用される『時間』を飛ばしているだけであり、今回は200年間という『時間』を飛ばして転移魔法を使用展開したと理解してもらえればいいであろう。


だが、ここで問題が出てくる。

ゼリーとのシンクロである。

チョッコは一瞬で、200年間をすっ飛ばして来たが、ゼリーはその200年間をこちらの世界で生きてきていた。

シンクロが本当に出来ていたのかという事である。

実は、ゼリーが空間魔法を展開する度に、シンクロの内容は『更新』され、新しい状態、新たな情報に書き換えられているため、現世空間に出た時、チョッコは直ぐにヴィスコを認識出来たという訳なのである。

だが、それよりも、問題なのはチョッコのシンクロが最近、上手く出来ていない状態が続いていた。

それは、ゼリーの自我が目覚めて来たことであった。

ゼリーは最初、チョッコの知識、記憶等で何とかジパング王国内にあるエブーダの森の中で生きてきていた。


この頃、自分の周辺には自我を持たない魔物や動物ばかりであったため、自我を目覚めさせる程の刺激もなく、自我を目覚めさせるところまでいかなかったし、長い間、森の中で生存出来ていたのもあくまでチョッコの知識や記憶によるものであり、この時までは、『チョッコ・クリムのコピー精神が貼り付いたスライム』の状態であった。

だが、蔵光らに遭遇し、本当の『死の恐怖』を味わうと共に『名前』を与えられたことによりゼリーの『自我』のきっかけが発動し始める。

その後、ジパング王国では、スライムネコゼリーとして生活を始める。

どんどんと新たな刺激がゼリーの自我を加速させる。

エージに再会したことも加速の要因となる。

さらにメトナプトラへ渡って冒険者となった頃から、チョッコによる精神へのシンクロがしにくい、つまり『上書き』がしにくい状態となっていた。

それは、ゼリー自身に自我が目覚めだしていたからであった。

カキノタ村で『記憶の擦り合わせ』をしていたというのも、これがあったからであった。30 118


そして、ついに、今回、ゼリーからチョッコに相談があった。

ゼリーは魔物であったが、チョッコの精神を受け継ぎ、良識を持った生物となっていた。

そのため、自分に元々あったエンペラースライムという魂に、上乗せされていたチョッコの記憶や知識、それと自分に元々あった自意識が今回の蔵光達との旅で刺激され、本当の意味で融合し、『自我を持った』とチョッコへ正直に話したのだ。

当然このままシンクロを続けてしまえば、ゼリーのアイデンティティーは崩壊してしまうことになる。

チョッコは、その話を聞くと、蔵光達に本当の事を話す時期が来たと理解し、もし、水覇の呪いが解け、この話をしなければならなくなった時は自分を亜空間から出しなさいと言ってシンクロを閉ざしたのである。

あたかも、自分の子供が巣立ちをするのを見守るように…


その場にいた者達はこの話を聞き、驚き、そして大きなため息をつく。

「つまり、ゼリーちゃんはゼリーちゃんであり、チョッコ様の意思を継いだ生き物ということになるのかな?」

「まあ、そういうことやな。」

ゼリーがヴィスコの問いに応える。


「まあ、最初はゼリーとワイは一緒やったけど、途中で分離したと思ってもらったらエエ。」

とチョッコは説明した。

「それにな、今のワイはあんまり寿命が長くないんで、ずっとここにはいたくないんやけどな。」

と笑いながらチョッコが言うと、

「そしたら、またワイの空間の中に入っとくか?」

とゼリーが応える。

「うーん、それをしたら、今度はいつ出られるかわからんしなあ、次に出してもらうときは、前に探して見つけられんかった『神仙の水』でも探してもらって飲ませてもらおうかな?」

とチョッコはゼリーにリクエストする。


「わかった、面倒臭いけど気には掛といたるわ。」

「頼むで、そしたら、水覇、またワイが『水仙の水』で若返る時に再会やで。浮気するなや!あ、それと、主、いや蔵光さん、あんたと従魔契約したのはあくまでも()()()()()や、ワイやあらへんので、今後もゼリーのこと、よろしく頼むで。」

そう言うとチョッコは手を振りながら、再び、ゼリーの空間転移魔法の亜空間の中へ消えて行った。


「すごい、すごい!ゼリーちゃんってチョッコ様じゃなくて、ゼリーちゃんだったんだ。」

ヴィスコが感動して泣いている。

それは、一匹のスライムが自分の力で一人の魔法使いの精神支配を脱却し、『自我』を持ったという奇跡の出来事に感動したためであった。

チョッコのそれはガロヤスミカンダの精神支配とは違う、愛情を持ったものであったことは言うまでもなかった。


水覇はその後、一度、王鎧達とジパング王国へ戻る事となった。

今後の水無月家として水覇をどう扱うのかということの相談と、本人自身の気持ちの整理の期間を与えるためであった。


【デルタの事とギルガの恋の行方】

また、バスの中ではもうひとつの問題が残っていた。

ギルガの想い人であるデルタの事である。

デルタは兄を、航夜に殺された。

いくら、ラドラが災厄の黒龍であったとは言え、血を分けた兄弟が目の前で殺されるのを見て平気ではいられなかった。

怒り、悲しみ、様々な感情がデルタの心の中で葛藤を続けていた。

確かに、どうにもできない、悶々とした気持ちが心の奥底にある。

かと言って、航夜に飛び掛かっていける程の実力も無いためどうにも出来ずにいた。

ギルガはそんなデルタを見て、どうすればいいのか悩んでいた。

結果的に、ラドラは航夜の手によって討伐されたが、自分とデルタの立場は、『兄を殺した男の息子達の仲間』と『兄を殺された男』という何とも微妙な位置に立たされていた。

デルタを愛せば愛するほど、何も出来ない自分にもどかしさと、腹が立たしさを痛感するのであった。


だが、デルタはギルガに、

「兄を殺されたことは、辛いですし、正直、航夜さんに恨みを持たないと言えば嘘になります。ですが、あのように黒龍となった者達は、いずれも欲望のまま、無差別に生き物を殺し、喰い尽くし、次第に生き物を殺すことに快楽を覚えると聞いています。兄はその先に何があるのか考える事もなく、最後はただの怪物と成り果てていたでしょう………私は兄を殺すことに戸惑いがありました。なので、その行為を止められさえすればいいと思っていました。ですが、今思えばそれは間違っていました。今回の兄の行動は人間だけではなく、この世界に住む魔族や動物など、全ての生き物、当然ながら我々、龍族にも影響を与えるものでした。ですから、本来は恨みの言葉をぶつけるよりも、お礼を言わなければならなかったのかも知れません。」

そう言って頭を下げた。


そして、ギルガに

「兄の亡骸は私が龍の墓場に持ちかえり、そこで母と共に供養します。そこで、あの、申し上げにくい事なんですが、ギルガ様に母上を紹介したいのですが…」

「えっ?」

ギルガの目が驚きに大きく開く。

「母上は、古龍族の生き残り、それもワダツミ様の娘であるギルガ様が生き残っていることを知り、とても喜んでいまして、できれば一度お会いしたいと申しまして…」

「い、いいのですか?こんなあたしでも?」

とギルガが応える。

自分の立場をわかった上で、そう言ってくれたデルタに頭が下がる思いである。

そして、

「ギルガ様、私は貴女と初めてあった時に、貴女に…、貴女という存在に惹かれました。その気持ちが何であるのか、最初はわかりませんでした。ただ、気が付くといつも貴女の事を考えていました。それがこの間、貴女が古龍であると知り、それが確信に変わりました。私は貴女を愛しているのだと…」

デルタがそう言うとギルガがハッとした表情となる。

そう二人は両想いだったのだ。


ギルガの目から涙が溢れだす。


自分には愛される資格が無いとさえ思った日もあった。

今まで、こんな気持ちは一度もなかった。

一生で一度の恋だと思った。

これが駄目なら二度と恋はしないとさえ思った。

だが、自分が憧れ、恋していた者から愛されていたのだと思うと胸が熱くなり、涙が止まらない。


「私の立場でこう言うのもどうなのかと思ったりするのですが、どうか、私に付いてきてもらえませんか?」

とデルタがギルガに手を差し伸べる。

「…こ、こちらこそよろしくお願いします。」

ギルガが恐る恐るデルタの手をとる。


「うわー!ギルガ様!最高ですうー!」

ヴィスコはここでも感動して泣いていた。


こうしてギルガはクランズ『プラチナドラゴンズ』に籍を置いたまま、しばらくはデルタの家の方へ厄介になることになったのだった。


ヴ「感動の回でした。」(T^T)

ト「この勢い…もうこの物語は終わるのか?!」

マ「うわー!ちょっと私の出番がー!」

ヴ「マッソルってプラドラでもモブなんだから別に出番なんて無くてもいいんじゃないの?」

マ「くっ、ヴィスコって、かなり辛辣だな。」

ト「それを言うなら俺もモブだな。」

ヴ「私もそうだよー、ヘルメスみたいに魔力上がらなかったし、モブコだよー!」(´Д` )

不毛なモブ争いは続く…

ヴトマッソ「お前のせいだよ!」(`Δ´)


次回に続く…(*´∇`*)

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