第160話 対決(前半戦)
魔海嘯が発生します。
第160話 対決(前半戦)
魔海嘯発生の当日が来た。
時間は早朝になるとオルビアが予知していた。
奴等は恐らく転位魔法を使って亜空間の中から現れるであろうと思われた。
蔵光達の作戦は、まず、ウィルドネス王の所在を真っ先に発見し、ヘルメスの聖神力で精神支配を解き、その後、ゼリーが空間魔法で身柄を回収、その後には全体攻撃を開始する。
蔵光や航夜達、水無月一族は厄介な空間魔法を使うものを最初に瞬殺して逃げられないようにしてから、殲滅作戦に移行するというものだった。
だが、相手はかなりの数なので、目的の相手を探すだけでもかなりの苦労がいる。
どこまでこの作戦が通用するのかわからなかった。
配置に関しては、地形の状況を見てからオルビアが配置箇所を決めた。
結果、かなり広範囲に配置される事になった。大体、幅が全体で約20kmくらいに拡がり配置された。
プラチナドラゴンズのメンバーのうち、今回はオルビア、トンキ、ヴィスコ、マッソルはゼリーの体内空間で待機となっていた。
戦うのは、蔵光、ゼリー、誠三郎、ヘルメス、ザビエラ、ギルガ、ヒダカの7名が戦闘に加わる。
水無月一族は、蔵光以外では、王鎧、航夜、水月が入る。
また、その後、ゼリーがヴェネシア王国に再度、透明化で訪問、取り上げられていた武器のほか、さらに格納庫へ侵入し、そこから魔装ゴーレム5体を空間魔法で回収してきたので、ヴェネシア王国の五名については、それに搭乗し、戦闘に参加することとなった。
当然ながら、ヴェネシア王国では、フォルガイムスとシャークライドの二人が、ゴーレムの搭乗者である五人が蔵光達と共に牢屋からいなくなった事と、格納庫の巨大なゴーレムが全て無くなっている事に驚愕し、パニックとなっていた。
まさか捕まえた者達の仲間に伝説の空間魔法を使える者がいるとは思っても見なかったからだった。
全員が静かにその時を待っていた。
朝もやが拡がるその場所は、第二直轄領の真ん中辺りにある大草原であり、多くの魔物を展開させるには絶好の場所であった。
小鳥のさえずりが草原の中に響く。
このままなら非常にのどかな場所なのだが…
今回は、ヨーグでも使用したゼリーの『水蓮花・通信+位置探査version』を全員が装着していた。
また、初めのうちは相手に姿を見られないようにゼリーの気配遮断、透明化魔法を全員にかけた。
数では絶対数で相手より劣る。
そのためにはこちらは狩人となり、陰に隠れ、闇に紛れ、静かに、そして、的確に獲物を始末しなければならない。
異変に最初に気付いたのは航夜であった。
「来るぞ!」
その声が、『水蓮花・通信+位置探査version』を通して全員に届く。
上空の何も無いところに、長い横線の様な空間の切れ目が出来る。
転移魔法だ。
亜空間の出入口が姿を見せたのだ。
ゼリーや黒龍も転位魔法は使えるが、その場所に魔石などの媒介となるモノがないと転位出来ない。
前回、タイジャ・ジークが現れた時と出現の状況がよく似ている。
だが、黒龍であるタイジャはあのような真似は出来ないはずなのだが…
何もない任意の場所に空間を展開させ、移動してくる事が出来る存在は、ガロヤスミカンダしかいないのだ。
そして、その亜空間の切れ目の隙間から、最初にキラキラとした物が滝のように流れて落ちていく。
「魔石だ!」
蔵光の超視力が、それを捉えていた。
まるで、花火大会でよく見る、グランドキャニオンという滝の様な花火みたいであり、その火花の様にものすごい数だ。
「何て数だ!魔石一個でも千体程の魔物がいるのに…」
ヘルメスもその数に驚く。
その大量の魔石が地上に落ちていく光景を、全員が固唾を飲んで見ている。
そして、その魔石が落ちていく最中、亜空間の隙間が大きく開いていく。
「これは…」
全員がその数に圧倒される。
白い朝もやと茶色い土煙とが、地上から上空へ舞い上がり、その中に、無数の魔物のシルエットを浮かび上がらせる。
何百万、何千万とも付かぬ数の魔物のざわめく声と地面を踏み締める足音が地響きとなって聞こえてくる。
「いた!」
蔵光が叫ぶ。
実は蔵光とヘルメス、ゼリーは同じところに配置していた。
というのも、蔵光の超視力でウィルドネス王を素早く発見し、それをヘルメスが聖神力で精神支配を解除、すぐさまゼリーの空間魔法で国王を回収するという作戦であったからだ。
その蔵光が、すぐにウィルドネス王を見つけた。
透明化をしていても自分達の間ではお互いが見えるようになっているため、連携はスムーズに行われた。
蔵光達は、ものすごい速度で、ウィルドネス王に近付いていく。
「あっ!」
蔵光が叫ぶ。
ウィルドネス王は巨大な魔物の角の部分に、体の一部、つまり両手足と腹の辺りまでが融合し、同化していたのだ。
「何ちゅう事や!こんな事になっとるとは…このままでは五体満足に救出できんぞ!」
ゼリーもこの状況は全く想定外であった。
体が角に同化しているため、無理に引き剥がそうとすれば、ウィルドネスの体が引きちぎれてしまうことになる。
「仕方がない、この大きな角ごと、切り取る。」
と蔵光が『水化月』で魔物の角を切断しようとした。
「蔵光!止めろ!」
航夜の声が『水蓮花』を通して聞こえてきた。
「父さん!どうして?」
蔵光が航夜に聞き返す。
「よく見ろ!表面ではなく、魔透視だ!」
「え?!魔透視?」
魔透視とは、水無月家の者の体に流れる膨大な魔力を自身の眼球に満たし、対象者の体に流れる魔力の状態や、体内の状況を透視するという特殊な技であった。
これは魔法というよりはスキルに近いものであった。
蔵光は航夜に言われた通り、ウィルドネスの体を魔透視した。
すると、とんでもない事がわかる。
「こ、これは!」
ウィルドネスの上半身と思われていたものは、只の肉の塊であり、それを切り取ったところで、相手に気付かれるだけで、全く意味が無いことがわかる。
航夜はその事を、遠くにいながらにして、気付いていたのだ。
「罠だ、よく回りを見ろ!お前ならわかるはずだ。」
蔵光は航夜に言われ、再び辺りを見回す。
オルビアの予知である。
この辺りにウィルドネスがいることは間違いない。
今度は魔透視である。
全ての魔物が、魔力の光となって見えるようになる。
『どこだ!?』
蔵光が周辺をくまなく探す。
その間にも魔物達は進軍を続けている。
早くしないと、このままではここから一番近い村に到達してしまうことになる。
だが、蔵光は全く焦らないし、慌てない。
それはスキル『裁定者』に付属している『精神状態異常無効』があるからであり、まるで、精密機械のように淡々と、それでいて恐ろしい程高速に探していくのであった。
すると、一ヶ所変な光り方をしている所があることに気付く。
「あそこか!」
蔵光がようやく、ウィルドネスの所在に気付く。
それは、先程の魔物の角よりもさらに探し辛くと言うか、完全に隠されていた。
それは、多くの体毛で体を覆われている巨大な魔物の体毛の中に押し込まれ、その体毛で体を縛り付けられていた。
蔵光達が直ぐにその魔物に近付く。
近くで見ると、ウィルドネス王は気を失っているようであった。
ちょうどその場所は、巨大なバイソン型の魔物の背中部分であったため、下に落ちる事はなかったが、動いているため、体を押さえつけながらの作業となった。
「『水化月』!」
蔵光はウィルドネスが縛られている体毛を切り落とす。
そして、直ぐにヘルメスがウィルドネスの頭に手をかざす。
金色の光が体から溢れ、ヘルメスの手からも聖神力のオーラが出ている。
その光はウィルドネスの体全体を覆っていく。
「どうだ?」
横でウィルドネスの体を押さえている蔵光がヘルメスに尋ねる。
「精神支配がこれで解けたのかどうかは分からない…」
「何だって?!それじゃあ…」
「一応、大丈夫だとは思うんだけど…」
とヘルメスが言うと蔵光はホッとした顔になる。
「そしたら、バスの中へ移動させるで!」
と一緒にいたゼリーがウィルドネスに触れると、一瞬にしてその姿が消えた。
「よし、成功です!みんな!国王はこちらに転送されました!」
魔導バス『プラチナスカイドラグナー』の中で待機していた待機組のヴィスコが『水蓮花・通信+位置探査version』を通じて全員に連絡する。
バスは現場が一望できる小高い山の上に停車していたが、上から眺めていると、魔物は今や数十㎞に渡って拡がり押し寄せ、まさに魔物の津波となり、土煙を巻き上げながら、大草原や付近の森を飲み込んでいく。
「よーし!作戦開始だ!」
ヘルメスの指示が飛ぶ。
魔物達の移動速度は、個体差により、巨大なものであれば結構速いが、小さな魔物だとかなり、移動に時間がかかっているようであり、巨大なものであればすぐそばの村まで数㎞のところまで接近していた。
ウィルドネスを救出したので、次の作戦に移る。
蔵光達がウィルドネスを捜索していた頃、他の者は遊んでいたわけではなかった。
主要な対象者を探していた。
先ずはガロヤスミカンダ、そして、バゾニアルアジカンが率いる悪魔落ちの魔族軍団、ラドラ・マークス・グリードら四体の黒龍達も同時に個体確認作業がなされていた。
しかし、ガロヤスミカンダとラドラの姿が発見出来ない状態であることは、『水蓮花・通信+位置探査version』で全員が把握していた。
だが、このまま攻撃することなく放置すれば、村が飲み込まれてしまう事になるため、ヘルメスの決断により、作戦が開始されたのだ。
これについては、事前の作戦会議の時に検討されていたことなので特に、現場が乱れると言うことはなかった。
ヘルメスの指示が飛んだ瞬間、気配遮断、透明化したザビエラがバゾニアルアジカンの背後からその体を『聖槍デスフレア』で貫く。
また、水月、航夜、王鎧らは、黒龍の姿になっている、セト・グロス、ハウラ・ミーシャン、ロギアス・ゼドウの三体を水魔神拳で瞬殺した。
彼等は全員の姿を見ることなく暗殺者達に葬られていた。
その後は魔物と悪魔落ちの魔族に対する殲滅作戦だった。
当然ながら黒龍に支配、使役されている龍族は
水無月一族が対応する。
だが、今回は討伐というような、そんなレベルではなかった。
まさに、『蹂躙』、まさに、『殲滅』というほかなかった。
水月は、水無月家の中でも群を抜く高い魔力で、広範囲に『魃』を展開する。
一度に何万という龍や魔物がカラカラの干物になって崩れ落ちていく。
王鎧は、長さが数百mもあるような超巨大な『水化月』を展開、大多数の魔物を潰していく。
逃げようとする魔物も逃げられない程の超高速度で追い詰め、さらにそこから分裂した『水化月』が四散した魔物達全てを切り刻んでいく。
航夜は『水激・零座』を展開する。
だが、蔵光の指から放出される一本一本が『威零座』に近いレベルの水魔法であり、貫通力が半端なかった。
数㎞先までの魔物、龍、魔族、全ての敵を手の指10本分の水のレーザーが貫き、切り刻む。
何百万という魔物の大軍がほんの数分で殲滅されていく。
ほとんどの敵をこの三人がやっつけてしまった。
『水無月無双』
そう言わざるを得なかった。
ヘルメス、誠三郎、ギルガ、ザビエラ、ヒダカ、そして、ヴェネシアチームらはこの攻撃に巻き込まれないように一旦、後方に待避して、状況を傍観していた。
というか見ている事しか出来なかったというのが実のところであった。
「す、すげえ!」
魔導バスの中から見ていたマッソルがこの恐ろしい光景を見て、震えながら呟いた。
「これが、水無月一族の力…」
当然、ヴィスコ、トンキも見ていたが、言葉にならない声を出していた。
全員が気配遮断、透明化の状態で全ての魔法を展開していたため龍族や魔物達は何が起こったのか分からないままに死んでいった。
だが、ガロヤスミカンダとラドラの二人の行方が分からないままに時間だけが過ぎ去っていくのだった。
マ「ヤバいですよ、水無月一族は…」
ヽ(;゜;Д;゜;; )ヒャァァァ
ト「あれって、既に天災のレベルですよね?」
ヴ「こんなにスゴいとは思いませんでした。でも、あの魔力値があれば、こうなるのかと、納得しました。」
マ「えっ?魔力値見たことあるの?ヴィスコは?」(;・ω・)
ヴ「あるわよ!」70( ̄^ ̄)
ト「でも、数字は明確には出ていないよね?」
ヴ「あれは、危険すぎて表に出せませんから。ちなみにゴニョゴニョ」
トンマ「えっ、マジで?ヤバ。」( ´゜д゜`)エー
じゃーねー!バイバ~イ(>_<)/~~ヤバ