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水無月蔵光の冒険譚  作者: 銀龍院 鈴星
第六章 絶対悪との対決
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第159話 魔海嘯計画vs絶対悪討伐計画

いよいよ黒幕との対決に向けて作戦が立てられます。

第159話 魔海嘯計画vs絶対悪討伐計画

ヴィスコがジパング王国から届いた大型のモニターに自分達のマソパッドを接続する。


このモニターは魔導バスの助手席に取り付けてある『据え付け型マソパッド』よりも大きく、大体100インチくらいはある。127


これは、ゼリーが『転位魔法』が使えるようになった時、ゼリーの分身を飛翔魔法で飛ばしてジパング王国の王国技術開発部の若き天才科学者エージこと花里須磨(かりすま)叡知(えいじ)に届けた。

そして、エージを介して、ゼリーの分身に付与させていた転位魔法を使用して、この大型モニターを転送させたのだった。

その他にも色々と転送させた物があるが、機会があれば紹介しよう。


モニターにはこの世界の全図が映し出されていた。

そして、負の魔素の噴出状況がわかる画面や魔物の分布状況、封印した魔素口の状況など、操作ひとつで画面が切り替わる様になっていた。

また、各国の画面に切り替えると、現在の国の経済状況や国内の特異な事案など、『忍』から入ってくる情報がリアルタイムで画面に流れるようになっていた。


ヴィスコはそれら画面上の情報の整理を手元の操作盤を使って、手慣れたように行っていた。


「こ、これは…ヴェネシア王国なのか…?」

ワイルドバンドがそれらの情報を呆然とした表情で見ていたが、ちょうど画面に映し出されたヴェネシア王国の地図に反応する。


そして、画面を切り替え、国内の情報を映し出す。

そこには、ヴェネシア王国の正確な領土の形や広さ各街の配置状況、国王を含めた王族、貴族の数やその人数と名前、国の機関、また、ヴェネシア城や国境にある砦の位置や建物の構造、そこに配置されている兵士や武器の情報、それに国全体の戦力となる騎士、兵士の数、武器や兵器の種類と数量の他、国力となる総人口やその分布、食料や物資の産出量とその種類、流通状況、通貨の価値や輸出入の状況など詳細な情報が映し出されていた。

また、先日のスプレイド家のお家騒動から、ヴェレリアント領のギルレア洞窟のヒドラの件、温泉街開発など、また、隣国タイトバイトス皇国の東の森の負の魔素情報と隣接地の情勢、その他の国とこのヴェネシア王国に関係するあらゆる情報が映し出されていた。


「な、なんだこれは!、こんなもの他の国に知られれば一瞬でこの国は終わってしまうぞ!?ど、どうしてこんなものが…?」

ワイルドバンドはそう言いながらヘルメスを見る。

正に、その表情は恐怖そのものとなっていた。

情報の漏洩とはこんなにも恐ろしいものなのか、これほどの影響を与えるものなのかと思われる程の狼狽ぶりである。


「これは、貴殿方の国をどうこうするという物ではありません。我々、ジパング王国の参考情報程度のものですから。」

と蔵光が説明する。


「さ、参考情報…」

今、見た情報だけでも、十分に世界を相手に戦争が出来る、というか戦争をしても負ける気がしない程のデータであった。

その世界各国の詳細情報が、ジパング王国にとっては只の参考情報でしかないと言われて、ワイルドバンドは拍子抜けをする。

水無月家の事だけでなく、この情報量の多さ、ネットワークの凄さだけでも、絶対に敵わないと思い知らされた。


だが、まだまだ驚くのは早かった。

マソパッドで撮影された国内の映像や画像もあったり、地図だけではなく実際にはるか上空から撮影された航空写真もあったりと彼等の科学力では到底追い付けない程の差を見せつける。

そして、極めつけは魔の大森林地帯各地の魔族の街の中の状況や魔族の暮らしぶりが映された映像が流れた時はヴェネシア王国の者は全員が固まっていた。

それは、これまで魔族の事については、噂や伝承でしか聞いたことはなく、魔力値が高く好戦的であり、人間では到底勝てる相手ではないと言われているため、積極的に彼らに関与しようと思う者はいないし、実際、している者がいるとは思っても見なかったからだった。


これらのデータを出してきた理由は、オルビアが予知した『魔海嘯』の発生予知日となる三日後、発生場所となる第二直轄領の詳細な場所の確認と、予知の中には魔族が関係していると思われる状況がある事から、魔族の住んでいる魔の大森林地帯の情勢を確認するためであった。


「とりあえず、この事は、他の方に言わないで下さいね。」

と蔵光がワイルドバンドに口止めをする。

ヴェネシア王国のトップと言ってもいい人物に口止めするというのは意味があることなのだろうか?


とりあえず、各国の『忍』にはマソパッドを通じて、『魔海嘯』の情報を送信すると共に、オルビアが予知した『魔海嘯』の発生日と場所も伝えた。



ひと通り驚いてもらった後で、今度は食事となった。

誠三郎が、腕によりをかけて作った料理の数々は、先日のライズの料理店『牛牛屋(ぎゅうぎゅうや)』を彷彿させる程の出来であった。53


と言うのも、誠三郎は、あの店に大変感銘を受け、あれから暇を見つけては厨房に籠り、色々と料理の研究をしていた。

今では一級調理人レベルの腕前になっていると言っても過言ではなかった。


そのため、出された料理はいずれも、好評であったが、本人はまだ納得に至っておらず、今後も精進すると言っていたらしい。


また、風景再生画面壁付きの露天()風呂やサウナ&冷水風呂、芳香付きミストサウナ、高濃度炭酸泉ジャグジー等のスーパー銭湯シリーズはワイルドバンドだけでなく、やはり女性のゼルフィーナが反応した。


「こんなにも素晴らしいお風呂があったなんて、私、ここに住もうかしら。」

と言って三従士を慌てさせていた。


さらに皆を驚かせた事があった。

当日は出張という名目で、現場に王鎧(おうがい)航夜(こうや)が来るという事であった。


「王鎧さんと航夜さんって、蔵光さんのお祖父様とお父様ですよね?」

ヴィスコが念のため確認する。

「うん、そうだよ。」

蔵光が普通に答える。

だが、周囲の者は普通ではいられない。

特に蔵光の父親の航夜は、ついこの間まで現役の冒険者であり、伝説の塊である。

あまりにも有名な『ジョルマルクス公国の人喰いドラゴンの大量討伐』事案、『ガイライナスの魔神城の壊滅』事案、ドリタニア王国の東の海に出没し航海する船を襲っていた巨大な海獣『海の巨大獣ネペンテス討伐』等、冒険者なら知らない者はいないと言われる伝説の持ち主でもあるのだ。


ヘルメスが、その応対についてどうしようかと思案している。

公爵クラスの人間がこちらにやって来るのだ、当然、緊張くらいはするだろう。

「ここへはどうやって来るのかな?船だと間に合わないと思うんだけど?もしかして飛んでくるのかな?」

と念のため蔵光に確認したところ、

「あ、いや、多分、ゼリーの転位魔法で来るんじゃないかな?」

と簡単に言われたため、少し拍子抜けする。

「あ、ああ、そんなあっさりと来るんだ。」

と応える。


しかし、さらに拍子抜けする事がこの後、起こった。


水月が魔導バスにやって来たのだ。

驚いたのは蔵光や誠三郎だけではなく、ヘルメス、ヴィスコ、ザビエラ、ギルガ、ついでにゼリーも驚いた。

クライ渓谷の件以来であり、話を聞くと、水月付きの『上忍(じょうにん)』が所持するマソパッドの情報から、蔵光達が邪悪の神の化身と共に黒龍とも戦うことになっていると聞きやって来たらしい。


ちなみに水月の話によると、あの後、デストロは結局、アリジンの指示で処刑されたらしい。

それを聞いたザビエラは何とも言えない表情をしていた。

まあ、それは仕方がないと言えば仕方がない。

自分の妻を殺され、子供も殺されそうになり部下にその罪を擦り付け、最後にはザビエラ自身も殺そうとした男である。

本当ならば自分が殺してやりたかったであろう。


また、その後、アリジンの息子アリジスはザムザードレの王女と結婚し、二つの地域は協力体制が整い落ち着いたらしいのだが、今度はその北にあるヴァンガロス地区の動きがおかしいということで、水月は引き続き、魔の大森林地帯に残り調べていたらしい。


何でも、ヴァンガロス地区の魔族は、大量の魔石を集め、何やら企んでいる様子との事で、先日もサプマック湾の方で魔石を積んだ船を襲っていたり、雷鳥という雷の魔物をギルガンダの時と同様に隷属させようとしていたようであると話した。107 119

魔石を集める理由を調査していたところ、どうもドラギゴがカキノタ村で使っていた物と同じもの、つまり『転送の魔法を付与した魔石』を大量に造ろうとしていたらしく、捕らえた上位魔族の一人から聞いたらしい。

まあ、恐らくちょっと痛い目に遭わせてしゃべらせたのだろう。

だが、それを誰が作っているのか、また何に使用するのかは全く知らされていなかったという。

その魔石は、ヴァンガロスの魔王ゴッデスダークが脅されて、セト・グロスという得体の知れない者に渡していたという話らしい。


「セト・グロス!?」

蔵光達がその名前に反応する。


「それって、デルタが言っていたラドラの配下の名前じゃなかった?」

とヘルメスが言うと、ゼリーやギルガも、

「間違いない。」

と頷く。


「何や、繋がってきたな。」

ゼリーが、話を整理する。


つまり、ラドラは『魔海嘯』を発生させるための準備段階として、セトを使ってヴァンガロスのゴッデスダークを脅迫、指示して、各地から魔石を奪って集めさせていた。

そして、それは恐らくダウスやドラギゴが持っていた魔石の様に、まず『転送』の空間魔法を付与した魔石を大量に造り、そこへ凶暴化させた大量の魔物を入れるためだったと考えられる。

『転送』の魔法が付与された魔石の一部はタイジャ・ジークも持っていたが、本来は今回の魔海嘯の為に使用されるために用意されていたものだったが、ギルレア洞窟で使ってしまったという訳であり、モグル・ランカスがメトナプトラで作っていた凶暴化した魔物達も恐らくは今回の魔海嘯で使う予定であったのかも知れないとゼリーは説明した。


「確かに話のつじつまは合う。」

ヘルメスも頷く。

「つまり、これまで討伐してきた凶暴化していた魔物達は、全て奴らが魔海嘯で使用するために各地で作り実験、改良の後で回収していた、それも邪悪の神の化身と手を組んでやっていたということか…」

と誠三郎も事の全容が見えた様子であった。


「何じゃ、ワシの話もどうやら役に立ったようじゃな。」

と水月はキョトンとした表情で皆を見ていた。


蔵光達が集めた情報と水月が持ってきた情報により、ようやく魔海嘯計画の全容がわかったのである。

恐らく、今回の魔海嘯ではオルビアの予言通り、ラドラやその他の黒龍達も現れるであろう。

未だに、相手には、ヘルメスが勇者覚醒したという事以外に蔵光達が仲間にいる事や、出現日時と場所を既に特定され、水無月一族総出で、今回の魔海嘯に当たっているとは思ってはいないし、知らないであろう。

付け入る隙はそこである。

倒すべき敵は、ガロヤスミカンダ、バゾニアルアジカンを筆頭とする悪魔落ちの魔族達、黒龍のラドラ・マークス・グリード、セト・グロス、ハウラ・ミーシャン、ロギアス・ゼドウである。

また、魔族が関与しているのであれば、ヴァンガロス地区の魔王ゴッデスダーク率いる魔族達であり、そして、ラドラが集めた、大量の魔石の中に封印している凶暴化した魔物達である。


ただ、懸念されるのは、それらの群れの中に放り込まれているウィルドネス王を早期に発見回収し、精神支配を解除しなければならない事だ。


「それまでは、全体攻撃が出来ないと思わなければ…」

蔵光も、タイジャ・ジークの時と違い、かなり難しい黒龍討伐になることに眉をしかめていた。

蔵光達の間で、当日まで、ガロヤスミカンダら絶対悪に対する綿密な討伐計画が作られていた。


そして、前日には王鎧と航夜の二人が、ゼリーの空間魔法をくぐり抜けてやって来た。


ヴ「色々な謎が解けていきますね。」

ト「そうだね。」

マ「誠三郎さんの料理も最高でした。」(´▽`)

次はいよいよ対決が始まるぜー!

゜+.ヽ(≧▽≦)ノ.+゜

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