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水無月蔵光の冒険譚  作者: 銀龍院 鈴星
第六章 絶対悪との対決
153/164

第153話 ヴェネシア王国と邪悪の神の化身

ヴェネシア王国の騒動です。

第153話 ヴェネシア王国と邪悪の神の化身

マッソルからの報告で、王都ノワイヤがとんでもない状態になっている事が判明した。


それは、現在のヴェネシア王国、国王ウィルドネス・クライス・ヴェネデシアンが倒れたという話だった。

病なのか事故なのか、容態の軽重もわからないまま、様々な噂が飛び交う中で、国王の子供達が、次期王位を巡って争いを始めたと言うのだ。

長兄ワイルドバンド、次兄フォルガイムス、そして、三男シャークライドはそれぞれの配下の者に命じて、王下議事会と教会に次期国王の承認を求める訴えを起こしていた。

普通は国王が崩御すれば、次期国王は、世襲制のため長兄が継ぐことになるのだが、まだ生きているため、その制度に待ったをかけた状態である。

長兄ワイルドバンドはのんびりとした性格であり、頭の切れる次兄のフォルガイムスに比べるとあまり、王位には執着が無いように思われていた。

また、三男のシャークライドは三人の中では一番の野心家であり、二人を追い落として国王になろうと、以前から世襲制度の撤廃に力を入れていた。

それだけに今回の国王の状態にはかなり自分に有利な状況になったと考えていた。

また、今回のような状況になった場合、王下議事会が次期国王の判断が出来ないとされた場合は、王下議事会だけでなく教会に判断を委ねる場合がある。

と言うのも、国王は国王就任の時に教会の承認を必要としていたからだ。

まあ、これは当初、あくまでも形だけのものであったが、威厳を持たせるために教会に承認の儀式を執り行わせるための協力を求めた格好が今日まで慣習となっていたものである。

だが、これがまたややこしい事になっていた。

教会は、王国の成立の際にその存在を認められ、現在は厚い庇護下にあり、かなりの権威を持っていた。

王国民は、太陽神ラーを信仰する自然神信仰とともに、新興宗教として起こされたドマニグライゼ教会の布教するドマニ教が存在し、王国は国王就任に、このドマニグライゼ教会の協力を得ていた。

そのドマニグライゼ教会に、国王の息子達三人が国王就任の承認請求を起こしていた。

これには、フォルガイムス、シャークライドの二人が驚いていた。

まさか、あの、のんびり屋の長兄ワイルドバンドがこの時期に目を見張るような動きで国王継承に積極的な態度を見せるとは思わなかったようで、そのことにかなり動揺していた。


『今までの態度は我々弟達を欺くためのものだったのか』

と思わせると共に、侮れぬ兄に対し、

『ワイルドバンド恐るべし』

との印象を植え付けた。


だが、このワイルドバンドの行動の裏には、ヘルメスの兄二人の影なる働きがあった。

実際のところ、この長兄ワイルドバンドは、のんびり屋のイメージはあるが、王に相応しい器を持っていた。

頭脳明晰ではあるが、それをあまり他人にひけらかしたりせず、それでいて大事があれば大きな決断のできる懐の大きな人物であった。

ヘルメスの兄、長男デビッドと次男ディノの二人は父バジルスの命を受け、このワイルドバンドの補佐を志願し、長兄付けの騎士として働いていた。

バジルスは、以前からワイルドバンドの事をよく知っていたし、次期国王はワイルドバンドであることを確信していた。

だが、懸念材料が、次兄と三男であった。

普通であれば、世襲制度に対し異を唱える事は無いのだが、それに固執する理由があったのだ。

それは、俗に言う『異母兄弟』である。

父親は同じだが、母親が違う。

ワイルドバンドは正室の子供だが、フォルガイムス、シャークライドの二人はまた別の側室から産まれていた。

そのため、自分達の息子に対する側室達の次期国王への期待は非常に大きかったのだ。

それが、二人の弟を歪んだ性格にさせた。

二人は、兄を敬わず、のんびりとした性格に嘲笑すらする始末であった。


バジルスは、そんなこともあり、以前からこれらの事を予期していたかのように、二人の息子に対して、いざというときはワイルドバンドを補佐して必ずや国王にさせるように厳命していた。

この二人の息子は、勇者の眷属として誇りを持ち、またバジルスの血を引いているためなのか、少なからずも武芸に秀でていた。

そのためか、王都内ではこの二人に敵う騎士はほぼいなかった。


また、今回の国王の件では、ワイルドバンドに代わり直ぐに教会及び王下議事会へ、次期国王継承への承認を申請していた。

これについては、ワイルドバンドも下の二人の弟の事を危ういと感じていたこともあって、デビッドとディノに一任していた。

ワイルドバンドも別に国王になりたくないと言う訳ではない。

彼は誰よりも国を想っていた。

誰も傷付けず、事を運びたいと思っていただけである。

ただ、それが、そうとも言っておれない状況になってきていたからだった。


国王であり、自分の父親であるウィルドネスが倒れたという話は病でもなく事故にあった訳でもなかった。


それは、恐ろしい事に、ガロヤスミカンダが化身として、ウィルドネスの精神に入り込み、その肉体を支配してしまい、城を飛び出してしまったのだ。

現在は行方もわからず、ただ、国民には混乱を避けるため『国王は倒れた、政務は長兄ワイルドバンドと現国王の下で働いている王政府の機関で執り行っている。』と御触れを出しているが、いつまでもこんな状態が続けられる訳でもなく、弟達を巻き込む訳にもいかないため、隠密裏に事が進められていた。

だが、弟達が、ワイルドバンドが国王を拘束して自身の国王就任を早めようとしていると勘違いし、今回の騒ぎとなってしまったのである。

そのため、デビッドには国王の追跡調査を依頼し、ディノには、このまま弟達が勘違いし本当に王位継承の手続きを王下議事会にさせて間違ってどちらかが国王になってしまう事を避けるため、弟達には気付かれないように自分も継承争いに参加しているように見せかけるため、教会と、国王の継承に関する手続きを行う機関である『王下議事会』に継承の承認申請をさせ王位継承の決定まで、国王捜索を継続する時間稼ぎをしていたのである。


ワイルドバンドはあの日の事を思い出していた。

ーーー

ある日の夜中、国王ウィルドネスは、精神をガロヤスミカンダに奪われる前に、国王の居室においてワイルドバンドと話をしていた。


それは、次期国王に関する話であった。


『ワイルドバンドよ、私ももう年だ、政務は疲れるからな。次はお前だ。頑張れよ。』

とウィルドネスから言われるとワイルドバンドも、

「何をそんな弱気なことを、父上ならまだまだ頑張れますぞ。」

と笑いながら応えていた。

「まあ、フォルガイムスやシャークライドも私がわがままに育てすぎたからな」

と顔をしかめながら話す。

「まあ、彼等もそのうちに父上の気持ちをわかってくれる日が来るでしょう。」

「そうであれば良いのだがな。」

と窓の外を見る。

城の窓から眼下にはノワイヤの城下町の明かりが美しく輝いていた。


だが、その直後、部屋の中に地の底から響いてくるような恐ろしい声が聞こえてきた。

『フハハハハハハー!』

「何者だ?!」

ワイルドバンドは見えない声の主を探して周囲をキョロキョロと見回す。

「我の名はガロヤスミカンダ、地の牢獄の神とでも言っておこうか…ウィルドネス、お前が国王を辞めるとはな、それは好都合だ!では、お前の知識と名前を頂こう!」

その声の主がそうと言うとウィルドネスの様子がおかしくなっていく。

「ううっ…」

顔を上げた時、既にこの世の者とは思えない醜悪な人相に変貌していた。

ガロヤスミカンダの精神が乗り移ったウィルドネスは自分の手を見ながらニヤリと笑う。

『フハハハハ!肉体は年をとってはいるが、中々、色々な事を知っているな。()()()()()()()よ、我に協力すれば父親の命は助けてやるが、どうだ?』

ガロヤスミカンダは精神に入り込む事で、ウィルドネスの知識と記憶を取り込んでいた。


ワイルドバンドでなくとも、流石に自分の父親が邪悪の神に乗り移られれば、話くらいは聞いてしまうであろう。

「な?どうするつもりだ?」

とワイルドバンドが聞き返す。

『フフフフ、お前達の国の民を、毎月百人、我に供物として差し出せ、そうすれば助けてやらんではないがな。』

「断る!そんな話、聞くまでもないわ!」

ワイルドバンドの声に異常を感じた、デビッドとディノが国王の居室に駆け込んできた。

二人は居室ドアの外で待機していたのだ。


「どうされましたか!!?」

二人はワイルドバンドが部屋の中で国王と思われる人物と対峙しているのが目に入った。

それは体から黒っぽいオーラが出ていたり、国王とは思えぬほど醜悪な面構えをしていたため、思わず腰の剣を抜く。


「二人とも()めろ!あれは父上だ!」

直ぐにワイルドバンドが二人を制止する。

「何ですと?!」

ワイルドバンドの言葉に、二人とも、もう一度目の前のウィルドネスを見る。


『フフフフ、デビッドにディノか、おっ、お前達、ヴェレリアントの眷属だったか、バゾから聞いているぞ!お前達の妹ヘルメス・カース・ヴェレリアントが覚醒したことを!』

ウィルドネスの記憶とガロヤスミカンダの記憶が交錯している様子であった。

そのため、デビッド達にはウィルドネスが何の事を言っているのか全くわからない。


『まあ、これはおもしろい事になってきたわい。また会おう。』

そう言うとウィルドネスは高い城の窓から飛び出し闇の中へ消えて行った。

ーーー


「父上、無事でよければいいのだが…」

ワイルドバンドが巨大な城の一室の窓からあの日の夜のウィルドネスの様に城下町を見下ろす。

空はワイルドバンドの、気持ちとは逆に晴れ渡り、遠くの山々に巨大な入道雲が沸き立っていた。


ヴ「ヘルメスのお兄ちゃんすごいね。」

ト「裏で活躍してたんだ。」

マ「私、まだ出てきてませんけど、王都にいるので、また後で出ますから。多分…」

展開が読めないので、出てくるかどうか…

マ「えっ…」


じゃあまたね。(* ̄▽ ̄)ノ~~ ♪




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