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水無月蔵光の冒険譚  作者: 銀龍院 鈴星
第六章 絶対悪との対決
152/164

第152話 タイジャ・ジーク襲来

まあ、急展開ですな。

第152話 タイジャ・ジーク襲来

ヘルメスの言葉にスッと手を挙げたのはオルビアだった。

「あの…」


皆がオルビアを見て、一瞬、ギクリとなる。

彼女には『先見の乙姫』と言われる未来予知の能力がある。

将来、やって来る未来を予知すれば、仲間にする、しないはハッキリとする。

つまり、彼女の言葉は絶対なのだ。

皆がゴクリと唾を飲み込む。


ここでの言葉はこの物語の将来を左右すると言っても過言ではない。

皆が彼女の言葉を待っている。


「すみません、言うのが言い辛くて言い出せなかったのですが、間もなくこちらに黒龍が一体現れます。それも、黒龍でない龍種も数体、後、悪魔落ちした魔族も現れます。」

「えーー!!?」

全員がその言葉に驚く。

突然の敵襲来の予知に、デルタの事は吹っ飛んでしまった。

「間もなくって、どこから現れるの?」

ヴィスコが尋ねる。

「温泉街の建設予定地あたりに例の次元魔法で現れそうです。黒龍の名前はタイジャ・ジーク、彼の使う次元魔法で、配下の龍種もやって来ます。悪魔落ちの魔族達は自分達の転送魔石を使って現れます。」

「何やて、何ちゅう事や!」

ゼリーもこれには驚く。

「とりあえず、作業員を避難させないと…、あと蔵光殿、仮設建物に防御結界をお願いします。あと、黒龍は任せます。」

「わかった。」

蔵光が頷く。

「ギルガはザビエラさんと悪魔落ちに対応を!」

「うん。」

「わかりました。」

二人が答える。

「ゼリーは、黒龍以外の龍をお願いします。」

「あいよ!ヴィスコとオルビアはワイのとこ入っとれ!」

「わかった!」

「はい。」

二人はゼリーの空間魔法で体内に収容される。

「八鬼殿とトンキは作業員の避難誘導を。それが終われば、トンキは仮設建物の中で待機、八鬼殿は…」

とヘルメスの指示が止まる。

相手の数がハッキリとわからないため、どこへ誠三郎を持っていくかわからないのだ。


が、その時、耳に装着していた『水蓮花』から声が聞こえてきた。

オルビアだった。

『八鬼様はゼリーさんに付いて下さい。ヘルメスさんは悪魔落ちした魔族に対応してください。』

「わかった!」

直ぐに誠三郎とヘルメスは応える。


五分後、誠三郎とトンキは作業員の避難を終了させた。

そして、避難した建物に蔵光が防御結界を掛ける。


それが終わり、蔵光達は温泉街の建設予定地の方を睨んでいた。


「奴ら、ワイらを潰しに来たな。」

とゼリーが呟く。

「潰しに?」

「そうや、ギルレア洞窟でヒドラを倒した事で奴らも危機感を募らせたんやろな、それで、ワイらがのんびりと街作りをしているのを確認したのか、早いうちにワイらを叩こうと考えたんやと思う。」

「なるほど。」

ヘルメスがゼリーの体内で頷く。


「来るぞ!」

誠三郎が空中の歪みを見つけて皆に知らせる。

その歪みは次第に大きくなり、亜空間の出入口として予定地上空に巨大な口を開けた。


そして、そこから何十匹という龍が現れ、最後に巨大な黒龍がその姿を現した。

また、その空間の出入口の側に、先程とは違ってサイズは小さいが、無数の亜空間の出入口が現れ、そこから、見るのも気持ちが悪い悪魔落ちの魔族が現れたのだ。

その数、ざっと千体くらいだ。


「さあ、来たでぇー!」

ゼリーが言ったその直後だった。

タイジャ・ジークと思われる黒龍が、突然、現れた場所から墜落していったのだ。


「えーー!!?」

いきなりの出来事でメンバー全員が驚く。


(あるじ)がやりおったで。」

ゼリーが地面に墜落する黒龍を見ながら呟く。


「一体何を?!」

ヘルメスがその事態を飲み込めずに蔵光に聞く。

「次元魔法で逃げられたら面倒なんで、現れた瞬間に『(ばつ)』で身体中の水分を抜き取った。」

と蔵光は答えた。

まさに電光石火、一瞬で、敵の大将を殺ってしまった。

次元魔法の亜空間の中に逃げられると、いくら蔵光の魔力が強くても相手に到達しない。

だが、亜空間の外にいる場合で、なおかつ目に見える範囲なら蔵光の魔力は必ず到達する。


「全員殺っても良かったんだけど、とりあえず奴だけは逃がしたくなかったんで、一点集中で水を抜いた。」

蔵光の説明が終わる頃、タイジャ・ジークの巨体が大きな音をたてて地面に到達した。


タイジャは完全に身体中の水分を抜かれていたため、墜落の衝撃で体がバラバラに砕け散り、そこにもうもうと砂埃が舞う。


これに驚いたのはヘルメス達だけではなかった。


それは、タイジャの次元魔法でここまで連れて来られていた龍族の龍達や悪魔落ちした魔族達であった。

彼等は、タイジャの墜落を見て何が起こったのか訳がわからずパニックとなっていた。

だが、次の瞬間にはそれら蔵光の目の前にいる全ての龍、全ての悪魔落ち魔族が『魃』の餌食になっていた。

全ての敵が水分を抜かれ、舞い散る木の葉の様に落ちていく。


唖然とするメンバー達。


水無月の者にケンカを売るという愚かな行為を後悔する間もなく、全ての敵が地面に墜落していった。


『魔物は実体があれば必ず倒せる』

これが蔵光が学んだ教訓であった。


先日はヨーグのモグルの時と同じように、タイジャを次元魔法で逃がしてしまったことに対して蔵光は非常に反省していた。

前回、チャルカ村で、霊体に物理攻撃や魔法攻撃が効かなかったことについても反省点はあったが、元々霊体などは実体がなかったり、ゴーレム、スケルトン等は体内に水分が無かったりで、『魃』では倒せないとしても、それ以外の『動物』系統の魔物等で実体が存在するということは必ずそこには『水分』が存在するということであり、『魃』でそれを抜くことで相手の身体機能を完全に奪ってしまえば何とかなるのではないかと考えた蔵光は、今回のタイジャには絶対に逃げられないための方法をずっと思案していた。


それが、『出現時カウンター攻撃』であった。

それは、出現する相手に名乗りもさせず、出てきた瞬間に『魃』で仕留めるという何とも恐ろしい作戦だった。


(あるじ)ぃ~ワイらの出番が無かったんやけど?」

とゼリーが蔵光に言うと、蔵光も、

「あ、ごめん、ちょっと自分に腹が立ってて…」

と答える。

「あー、ま、しゃーないか、主のやる事やし。」

とゼリーはそう言いながら、

『ワイに『魃』掛けた時に比べて、魔法の展開速度と効果の速度が桁違いに速いわ…、あの時にコレをやられとったらワイはもうこの世におらんかったやろな…』

と蔵光と初めて出会った時の事を回想していた。


時間にして数秒、それで敵が全滅したのだ。

地上最凶のエンペラースライムであるゼリーでさえも驚愕させるその強さは、やはり本物であった。


その後、地上に墜落した龍や魔族を確認したが、蝉の脱け殻とか、ドライフルーツのような状態となっていた。

そして、それらの死体は全てゼリーが空間魔法で収納し、温泉街の建設予定地は何事も無かったかのように静まり返っていた。


「あの~、これだけ強ければ勇者は要らないんじゃないですか?」

とヘルメスが蔵光に言うと、蔵光は真面目な顔で、

「いや、ゴーストとかの、霊体なんかは基本無理なんでヘルメスに任せます。」

とハッキリと断言した。


そして、蔵光がザビエラに、

「ザビエラ、これだけの悪魔落ちをこちらに投入したんだから、多分、今の邪悪の神の化身という奴の回りは誰もいないか、もし、いたとしても数が少ないんじゃないのかな?」

と言うと、ザビエラが、

「そうですね、それでは、これを使ってみましょう。」

そう言うと、ザビエラはギズモワールでシンディーナから教えてもらった通り『聖槍デスフレア』を天に掲げた。


すると、不思議なことにデスフレアは全体が金色の光に包まれ、それが収まりかけた瞬間、先端からその金色の光が一本の光の筋となり、天に向かってぐんぐん延びて行く。


「おおっ!」

蔵光が光の筋が延びる勢いに驚く。

そして、まるで意思を持つかの如く、ひとつの方向へ向かって行った。


「一体、どこへ向かっているんだ?」

ヘルメスが、光の筋を見上げながらその軌跡を追う。


「あの方向は!?まさか!?」

ヘルメスが光の筋の進む方角に心当たりがあるようであったが、あまりいい方向ではないようであった。

「ノワイヤか!?」

ノワイヤとはヴェネシア王国の王都の名前であった。


あのタイジャ・ジークを使役し、悪魔落ちをした魔族達を配下に従えた邪悪の神の化身が王都に巣喰っているとなれば当然只事ではないし、悪い予感しかしてこない。

さらにタイジャ・ジークが殺られたと知れば、何をしてくるかわかったものではない。

それに王都にはヘルメスの兄が二人いる。


大事(おおごと)である。


「行くしかないな。」

蔵光がヘルメスに言うと、ヘルメスは無言で(うなづ)く。

また、蔵光はギルガに、

「ゼリーの言うとおりデルタを仲間に引き入れることは、本人にその気持ちを聞いてから考えた方が良いと思う。黒龍退治に私情が入ればその手が鈍るのは間違いないだろうから。」

と言うと、ギルガも、

「確かにゼリーに言われる通りだ。私も今から考えれば舞い上がり過ぎていたのかも知れないな…」

と寂しそうな表情となり蔵光に応える。

やっと自由な身分になったと思ったのに、天は彼女から恋愛すら取り上げてしまうのかと思うといたたまれない気持ちになる。

他の者達も、天がギルガに与える過酷な試練に同情の気持ちを持つが、先程の黒龍襲来を見るとそうも言ってはおれない状況であった。


とりあえず、王都にはヘルメス、蔵光、オルビア、ザビエラ、ゼリーの5名が先陣を切って、入都することとなった。

ギルガ、誠三郎、トンキ、ヴィスコは後で追い付くという段取りとなった。

ヒダカには『水蓮花』で直ぐに連絡を取り、至急、王都に向かうように指示を出した。


そして、マッソルにも『水蓮花』で連絡を取って、こちらの状況を伝えると共に、向こうの情報を入手しようとした。

すると、王都がとんでもない状態になっていることがわかったのだった。




新たに発生したヴェネシア王国の問題とは。

そして、王都にいるかも知れない邪悪の神の化身との最終決戦は実現するのか?

事態が刻々と変化していく中で、ギルガの恋の行方はどちらに向かうのか…


ヴ「あの、このコーナー、何かいつもと感じが違うんですが?」

ト「そうですね、こんな後書のような後書きは初めてです。」

マ「作者が原点回帰を考えているとか?」

ト「ということは、このコーナーを無くすとか?」

ヴ「ええ?!それは困りますぅ!出番が少ない者達の唯一の場所なのに…」

ト「そうですよ、それは断固反対!」

マ「でも、王都では私も出番が来そうなんで何とも…」

ヴ「マッソル、魂を悪魔に売ったね。」

マ「えっ?」

ト「自分の出番がありそうだと思ったら、このコーナーの存在を軽く見始めたな?」

マ「えっ?ちょ、いやそんなことは…」

ヽ(´Д`;≡;´Д`)丿

ヴ「見損なったよ、マッソル!」

ト「悪魔落ちがここにもいたよ。」

マ「えーーーーーっ?」ヽ(ヽ゜ロ゜)ヒイィィィ!

まあまあ、このコーナーは無くなりはしませんよ。

只、ちょっと気分転換をしたかっただけです。

ヴトンマッソ「ホッ!」


ということで、次回からはヴェネシア王国に乗り込んで行きますので、お楽しみに…って誰が楽しんでいるのかって、それは私です。

では、イバイバ!⊂(・∀・⊂*)




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