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水無月蔵光の冒険譚  作者: 銀龍院 鈴星
第六章 絶対悪との対決
151/164

第151話 プラチナドラゴンズの今後の方針

今後の方針が決まります。

第151話 プラチナドラゴンズの今後の方針

蔵光は一旦、ヴェレリアントの屋敷に戻り、留守番をしていたオルビアに事の顛末を報告した。


翌日、ギルレア洞窟近くの温泉街建設現場に蔵光達は戻ることになっていた。

それは、今回のギズモワール村での事を皆に話をすることにしていたからだった。


彼等には『水蓮花』というゼリーの通信魔法があるので、ギズモワールでの話がわかっている者もいるようだったが、あまり離れすぎたり、魔力を消費すると、『水蓮花』も通話が乱れて音声の受信が出来なくなって聞こえなかったりすることがあるので、リセットも兼ねて、ゼリーの体に分身を戻す必要があるため、一度全員が集まり話をすることにしたのだ。


サリドナからギルレア洞窟までの直線距離は約100kmもあるのだが、ゼリーの魔法と魔力をフルに使った活躍により、数日でかなり立派な道路が整備されていたので、超高機動型魔導バス『プラチナスカイドラグナー』は特にトラブルに遭遇することなく、そこを通って蔵光達を迎えにやって来た。


温泉街の建設現場の仮設建物までやって来ると、誠三郎がいた。

「やあ、誠さん、久しぶりだね。」

「若もお元気そうでって、いつも元気でしょうが。ハハハハ」

「何か、スプレイド家でやらかしたみたいだね?」

「はっはっは、バレてましたか。まあ、昔の血が騒いだとかなんですかねえ。」

「雷鳴と稲妻はどうなったの?」

「ええ、ルセウスは、感付いていましたので、残念ながら引き揚げさせました。今は王都に向かわせています。ルセウスは別にいてもらっても構わないと言ってたんですがね。」

「うーん、でも、それはやっぱりマズイよね。」

「確かに、公になっている忍など他の国にもおりませんからな。ハハハハハ。ただ、しばらくヒダカは現場に残しています。」

「えっそうなの?」

「ええ、何故か奴は妙にやる気を出しましてな、雷鳴達の代わりにしばらくスプレイド家の様子を見ておくとか言い出しまして…」

「へえ、そうなんだ。」

「とりあえずは向こうの冒険者ギルドの仕事をさせています。」

「なるほどね。ははは。」

蔵光はヒダカを思い出して笑う。


久しぶりに対面した主人と従者は、温泉街の出来を見に来た。

目に入ってくるのは作業をする者ばかりであり、大変なんじゃないかなと思われたが、皆の表情が明るく、現場に笑顔が溢れていたのでホッとする。

作業の進行具合を確認すると、まあ、日にちはそんなに経ってはいないので、まだまだ、完成までには時間がかかりそうという感じだったが、温泉の露天風呂の方はいくつか完成していた。

とは言っても小屋付きや建物の中にある風呂ではない。

外から丸見え状態の温泉だ。

湯は湯船になみなみと張られ、湯気も立っていて、いつでも入れる状態である。

その湯船は大きな岩と小さな岩とを組んで作られたもので、隙間はゼリーの土魔法で、土を石のように固めたもので埋めてあり、水漏れの心配はない。

温泉は二種類あり、茶色く濁った金泉と言われるものと、もうひとつは透明の湯で銀泉と言われるものであった。


そこには、とりあえずというか、衝立(ついたて)所謂(いわゆる)脱衣場に見立てたパーティションが置かれていた。

そこでは、作業を終えた作業員が、お湯に浸かり仕事の疲れを癒す事が出来るようになっていた。


時間はお昼を少し過ぎた頃であった。

「若、久しぶりに本物の温泉に浸かりますか?」

「そうだね。ジパングの龍火山の温泉も良かったけど、ここはどうかな?」

二人は意気投合し、パーティションで、体を隠しながら服を脱ぐ。

まあ、隠れなくても別に誰が見ていると言う訳ではないのだが、一応、とりあえず、社会人としてのマナーだな。

そして、二人は自分達を包んでいる湯気の中を抜け、本物の露天風呂に入る。


「かー!いい湯ですなあ。」

誠三郎がお湯の中で背伸びをする。

どれだけ伸ばしても、湯船の大きさが大きいので足を曲げて入らなければならない何てことは全く心配はない。

蔵光も、お湯から首だけ出して浸かっている。

そこに、誠三郎が話しかける。


「若、邪悪の神の化身を探しているとか?」

「うん、シンディーナさんに会って話を聞いてきた。」

「ほお、あの魔法好きですか?」

「面白い話が聞けたんで良かったよ。」

実は、シンディーナの魔法好きは魔法オタクの蔵光とかなりウマが合っていて、シンディーナがジパング王国に来ていたときは、結構な頻度で意見交換をしていたのだ。

「それは、良かったですな。」

「ザビエラが勇者になった理由もわかったし、黒龍が邪悪の神の化身と繋がっているという確信が持てた。」

「では、その邪悪の神の化身を追えば(おの)ずと黒龍に辿り着くということですな?」

「そう言う事だね。」

そう言いながら、蔵光は湯船から揚がり、パーティションの方へ戻る。

誠三郎が見送る蔵光のその背中には、生まれた時からあるアザ(紋章)が見える。

何を意味するのか解らないが、絵の様な文字の様な不思議な紋様である。

誠三郎が話を聞いたところによると、この紋章がある者が水無月本家を継承する資格者ということらしく、いくら、継承者の子供だとて紋章が無ければ資格者とは認められない。


それに、継承者にしか超魔力と超剛力のスキルは発現しないので、文句があればケンカをして、実力を示せとも言えない。

間違いなく継承者とその者との間には、天と地程の実力差があるからだ。

もし分家に継承者が生まれれば、その者は本家に送られ、本家に継承者として入る事になるのだ。6


「若も大変な事だな。」

誠三郎は蔵光の背中を見ながら、生まれながらにして定められた使命を思いながら呟く。


蔵光達が仮設建物に戻って来た時には既に、他のメンバーが揃っていた。

この場にいないのは、マッソルとヒダカだけだ。

「あーめっちゃ、疲れたわ。皆、ワイを誰やと思とるんや。ちょっと魔法が使えるから言うて、こき使い過ぎや!()()()()や!」

とゼリーはプリプリと怒っている。

だが、その表情は穏やかである。

と言うのもゼリーは、(ほか)から面倒な事を、自分に持ってこられて、皆が出来ない事をやってのけ、皆の前でドヤる事に快感を覚えるらしい。


(あるじ)ぃ~、温泉入ったんかあ?」

とゼリーが尋ねる。

「ああ、入ったよ、気持ち良かったよ。」

「せやろ、何せワイが見つけた温泉やからなあ。」

ともう既にドヤってきている。

何か久しぶりにゼリーのドヤ顔を見たような気がする。

「それとな、ここの温泉は金泉銀泉の他に、もうひとつ別の温泉が出たんや。」

「えっ?もうひとつの温泉?」

「そうや、それはな…」

と言いかけたところでヘルメスの話が始まった。

「ちっ、エエとこやったのに。」

とゼリーが舌打ちする。


「皆に集まってもらったのは、これからのプラチナドラゴンズの方向性を再確認と、今後の予定について連絡しておくためです。」

とヘルメスが仮設建物の一階にある会議室で説明を始める。

この建物はヘルメスやゼリー、ギルガ、トンキといったプラチナドラゴンズのメンバー用の建物となっていて、今回の様な場合を想定して他の建物よりも大きめで、宿泊用の部屋も多めに作ってあり、皆が泊まれるようになっていた。


「まずは、このプラチナドラゴンズのメンバーに対するスプレイド家の暗殺企図事案は、八鬼殿とヒダカ殿のお陰で無事解決となりました。なお、しばらくはヒダカ殿のみスプレイド領内に残り、スプレイド家の経過観察をするとの報告がありました。次に、温泉街建設計画ですが、これは引き続き実施の予定で、事業費用はプラチナドラゴンズのメンバーの総意で当クランズの口座から捻出されます。なお、完成後、この温泉街から上がってくる利益は、当クランズの口座に振り込まれる予定となっています。作業日程や作業内容については、現在、調整中で、サリドナやその他の街への連絡道路が完成すれば、さらに作業員を投入していく予定です。また、今後の温泉街への領民の移住については私の父親に任せています。」

と、ここまではヴェレリアント領内での事案報告と予定だが、本来のプラチナドラゴンズの仕事の予定については、各メンバーの報告を聞いてからとなった。


まずは、ヴィスコからだ。

「昨日、アズミノール領内にあるギズモワール村というところに行ってきました。『水蓮花』で御存知の方もおられると思いますが、今回、私達のクランズが追っている『絶対悪』についてですが、これは大昔、神同士の戦いで地の牢獄というところに落とされた、元神であることがわかりました。これが、地の牢獄つまり『魔界』から悪魔達を操ったり、自分の化身を地上に送り込んでいるということもわかりました。ちなみにらこれら悪魔達の隠れている場所はザビエラさんの持つ『聖槍デスフレア』によりわかるそうです。」

とヴィスコが簡単に説明した。

「と言うことで、彼等の所在はザビエラ殿のデスフレアによる探索で判明すると思いますので、今後とも協力をお願いします。あと、一点、皆さんに検討してもらいたいことがあります。」

とヘルメスは話を区切る。

「それは、この間、クワッテ鉱山で現れた、デルタ・グリードという人物の事です。」

そう言うとギルガの顔が緊張した面持ちになる。

自分が一目惚れした相手だが、それだけで仲間に引き入れていいものかどうかということである。

「この人物は、ギルガと同じ、古龍で、現在はこのギルレア洞窟の西にそびえる、龍の墓場と言われる火山地帯に母親と住んでいます。そして、このデルタの兄ラドラ・マークス・グリードが黒龍であることも判明しています。彼は兄を探して大量虐殺行為を止めさせようとしています。それを踏まえて(わが)クランズに入れるか否かを判断してもらいたいと思っています。」

とヘルメスが皆に話すと、それを聞いていたゼリーが口を開く。


「ワイはあまり乗り気やないな。」

とゼリーが言うと蔵光が尋ねる。

「どうして?」

「ワイらは黒龍を殺す目的で追いかけとる、コイツは虐殺を止めると言うてるだけや。殺すつもりかどうか、ハッキリとしてへん。もし、コイツの前で兄貴を殺そうとしたとき、コイツがどんな行動を取るかわからへんやろ?」

「あー、なるほど。」

「止めに入られたら邪魔なだけや、弱い奴やったら問題ないけど、下手に強いだけに、敵に回したら面倒やなと思ってな…」

かなり的確な意見である。

身内を殺すことには誰しも躊躇する。

ましてや、他人から身内を殺されそうになっている現場において、冷静でいられるかということをゼリーは言っているのである。


ギルガはその意見を聞いて、愕然としていた。

普通にデルタを仲間に入れてもらえるものだと思っていたからだ。


「それにや、ギルガ、お前、『殺さないでくれ』と涙を流して懇願するデルタの目の前で兄貴を殺せるんか?」

「あっ、いや、それは…」

ギルガはゼリーにそう言われて下を向く。

ギルガもそれは即答出来ないと言うか、多分、殺せはしないだろうとメンバーの全員が思っていた。

ギルガは古龍にしては優しすぎるのだ。


ギルガは膝に乗せた拳をギュっと握り絞め、目には涙を溜めている。


「まあ、無理はせんでエエ、そのラドラという奴はワイらが片付けたるから、ただ、悪いけど一緒には行動することはでけへん。」

とゼリーは言い放つ。


(ほか)(かた)は、どうでしょうか?何か意見は有りますか?」

とヘルメスが他の意見を(つの)る。


「あの…」


スッと手を挙げたのはオルビアだった。




ヴ「シンディーナさんの家の蔵書の数、ヤヴァかったですぅ。」

ト「そんなに多かったの?」

ヴ「最初に私達がいた部屋から見えていただけでも凄かったんだけど、その部屋に入ったら、さらに奥に倍くらいの大きさの部屋があって、本まみれだった。魔法書とか世界地図と各国の地図とか歴史書とか、古代文字の研究本とか、とにかくたくさんあった。」

ト「古代文字とかは魔王種とか上位魔族も使うから、それは凄いな。」

ヴ「また今度暇なときに来てくれていいよって言われちゃった。」

マ「すんごい森の奥なんでしょ、そのギズモワールって村は?一人で行けるの?」

ヴ「あっ…うーん」(´-ω-`)

ト「ダメっぽいね。」

マ「うん。」



また次回をよろしく。どーん⊂(・∀・⊂*)




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