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水無月蔵光の冒険譚  作者: 銀龍院 鈴星
第六章 絶対悪との対決
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第148話 暗殺の代償

暗殺の件は方が付きます。

第148話 暗殺の代償

ヘルメスは、今度はデルタに自分達の事を話した。

自分達は、水無月一族の一人蔵光と宿命を共にして世界中に生き残っている黒龍を倒すためにクランズ『プラチナドラゴンズ』を立ち上げたこと、ヨーグではモグル・ランカスをその蔵光が倒したこと、先日、ギルレア洞窟内にて二人目の黒龍と思われるタイジャ・ジークと遭遇したこと等を話した。


「そんな事になっていたのですか…」

デルタはモグルの件については、よくわかっていなかったため初めてその真相を知り驚いていた。

また、クワッテ鉱山で顔を合わせていた少年の正体が水無月一族の者であったことにも驚いていたし、龍族の者から聞いていたとおり、水無月一族は黒龍化した龍を倒すために活動しているということを知ったことで、今までの自分の中のモヤモヤしたものが取れてスッキリとしたようであった。

その上で、デルタは、

「一度、龍の墓場に住んでいる母の元に戻り、今までの事を報告します。そして、それが終われば、ここに戻り出来ればあなた方の力になりたい。」

と話した。


この申し出に、ギルガは二つ返事でOKしていたが…ヘルメスはクランズのリーダーとしてこの申し出を受けるか否かについては保留することとした。

確かにデルタをクランズに引き入れる事は戦力アップに繋がるが、先日もヒダカをメンバーに加えるなど、今のメンバーでさえ手に余る程の戦力であるのに、更に1億超えの魔力を持つ古龍がさらに参入するとなると、冒険者ギルドのパワーバランスが崩壊するのではと心配になっていたのだ。


ということで、その後、デルタはギルレアを出て、龍の墓場へ帰って行ったが、ギルガだけ、建物から出て、その後ろ姿をずっと見送っていた。



翌朝、スプレイド領のルセウスの屋敷でも一騒動が起こっていた。


それは、前日の真夜中の事から始まる。

ルセウスが食事会を終え、自分の屋敷に戻って、執事長のロッゾと明日の予定の打ち合わせをしていた時の事であった。

シリンダーから指揮を受けた、レイアスらのグループがルセウスの屋敷に乗り込んできたのだ。


防御結界の魔法が無いため、屋敷を防ぐのはやや高さが高い塀だけだった。

五人の侵入者は、初めて入った屋敷にも関わらず、何年も住んでいる住人の様に迷うことなくルセウスの居室に向けて、その包囲網を(せば)めていった。


二人と三人に分かれて部屋を挟む。

三人組の中にレイアスがいた。

レイアスは裏口の前付近にいた。

二人組はその反対側の腰高の窓辺りにいた。

その窓が無施錠であったので、音がしないように静かに窓を開けて、素早く中へ侵入する。


一人は周囲を警戒しながら、もう一人は裏口のドアの錠を開ける。

残りの三人も音も立てずに建物内に侵入する。

レイアス達は顔にガスマスクの様な物を取り付けていた。

レイアスは仲間の一人に合図をすると、その者は懐から、小さな缶コーヒーくらいの大きさの筒状の何かを出してきた。

そして、それを床に置き、筒から出ていたピンの様な物を抜き取る。

すると、筒の上部から白い煙が出てきた。

何のガスかわからないが、彼等はそれを設置すると闇の中へ消えて行く。

そして、次に現れたのはしばらくしてからであった。

どうやら、あの煙は眠りガスのようであり、屋敷内にガスが行き届いた頃に戻ってきたようだった。

彼等の手口はこうだ。

眠りガスで昏睡させ、寝ている対象の顔に濡れた布を被せ窒息させるというもので、布を被せた時に暴れても大丈夫な様に残りの四人が両手足を布団の上から押さえ付ける。

元々強力な眠りガスなので起きることはないのだが、念には念を入れるということだ。


そして、対象は外傷も無く、死亡しているという具合だ。


窒息死は、頚部の圧迫、鼻口腔の閉塞により生じるが、その判定にはまぶた、専門用語で言えば眼瞼結膜(がんけんけつまく)に生じる溢血を材料とする。

諸事情によりあまり詳しくは記述出来ないが、これを確認する事により、窒息で死亡したことが分かるのだ。

だが、これを見つけられたとして、犯罪による死亡と他人から判断させないようにするには様々なハードルを越えなければならない。

まずは、抵抗痕跡、これは相手から抵抗された時に付く傷などだ、興味ないと思うが興味がある人は調べてみるのも良いが、あまりお勧めはしない。

どっちやねん。


次は、その人物に対するものだ。

人間関係にトラブルがあるとか、借金や相続、会社の経営など、その他にお金に関係するトラブルがあるかどうかだ。

現代の社会では保険金殺人何てのもある。

そんなものがあれば、まずは犯罪性を疑うべきだろう。


そして、最後は死んでいた場所だ。

犯罪であれば、その場所には必ず、痕跡が残る。

痕跡があったり、痕跡を消そうとした跡があれば、犯罪死決定だ。


そういったことで、彼等の手口は古いが、この世界では何とか通用しているみたいだが…

何が古いって?それは自分で考えよう。

ヒントは上に書いている通りですよ。


と言うことで、レイアス達は、その完全犯罪を目論んで、家人を全て眠らせた上、ルセウスを殺そうとしていた。

これまで、この方法で失敗したことはなかった。

全員眠らせていれば、用心棒であっても何ら怖くない。

ただ、その用心棒が屋敷の中に居ればの話だが…


ルセウスの居室は既にカリウスからの情報により把握済みであり、後は、いつも通りに行動を起こすのみであった。


彼等は静かに2階への階段を上がって行く。

だが、彼等は、この時点で既に人数が四人になっていることに気付いていなかった。

さらに、ルセウスの部屋に辿り着いた時、三人になっていた。

この時になってようやく異変に気付く。

あまりにも自然で、音もなく仲間の姿が消えていったために気付くことが遅れたのだ。


何か得体の知れないものに取り囲まれている様な、異様な気配に彼等はパニック状態となる。短剣を構え、背中合わせになり、周囲を見回す。

だが、何も姿が見えない。


『ここは危険だ!』

彼等の頭の中に最上級の警報音が鳴り響く。


だが、それは彼等にとって既に遅すぎた警報音であった。


レイアスが、パチパチという妙な音に気をとられる。

目線だけをそちらに向ける。

暗がりの中、目の前に、人間とも魔物とも思えるような恐ろしい形相をした生き物が立っていた。

その生き物は目が、猛禽類のそれであり、人間の体に鷹や鷲の頭が付いたような姿であった。

そして、その体からはプラズマの様な電気の光が弾け出し、その光でこの生き物の姿が見えたのだ。

パチパチという音はこのプラズマの音であるということが認識される前に、三人は恐怖の叫び声を上げる。


「うわあぁぁー!」

三人はこの怪物から距離を置くが、レイアスは腰が抜けて立ち上がれず、そのまま、尻を床につけたまま後退りをする。


三人の目線が怪物に奪われていたとき、背後に潜んでいたもう一人の存在は掻き消されていた。

立っていた二人はそのまま、その存在に背後から暗がりの闇の中へ引き込まれて行く。


レイアスが最後に残っていた。

後にいた二人の気配が感じられないため、一瞬だけ後ろを見るが、二人の姿が見当たらない。

自分だけが、この場所にいることに気付く。

用心棒は自分達に姿さえ見せずに一人ずつ消していることに恐怖を刷り込まれていた。


『こんな、恐ろしい奴らだったなんて…』


レイアスがそう思った直後、意識が無くなっていた。


次にレイアスが目覚めたとき、彼はカリウスの屋敷の庭の中に放り出されていた。

まだ、夜も明けきらぬ時間であるが、東の空がやや明るくなってきていた。

他の四人も同じで、全員が生かされて戻されていた。

「こ、これは!生きているのか?!」

レイアス達は自分の両手両足を確認し、全くの無傷であることを知る。

だが、それだからこそ、彼らに植え付けられた恐怖は、簡単には消すことが出来なかった。

もう二度とあの屋敷へは行きたくないと心と身体が拒絶していた。

しかし、それをボスのシリンダーが許してくれる訳もなく、どうしようかと思案していたとき、カリウスの部屋から大きな叫び声が聞こえてきた。


「うわあぁぁーー!」


その声を聞いたレイアス達は、直ぐ様、カリウスの部屋に駆けつける。


カリウスが部屋の中で腰を抜かして床に座った状態で震えていた。

その顔には恐怖という二文字が張り付いていて、びっしょりと汗が噴き出していた。

そして、レイアスがカリウスの部屋の机の上を見た時、レイアス達も恐怖に身体が凍りついた。

そこには、シリンダーの生首が置かれていたのだ。

レイアスは、初めて奥歯がガチガチと鳴り響く程の恐怖を覚える。

この屋敷内に於いても、その正体不明の用心棒から命を握られていると思わせられるこの状況に他の四人もオロオロとするばかりであった。


そうしながらも、レイアスはあることに気付く。

シリンダーの生首の口に何かが咥えられているのが見えた。

それを恐る恐る確認すると、どうやら小さな紙片の様であり、そこに何か書かれているようであったので、慌ててそれを口から抜き取り、その文字を読む。

そこには、こう書かれていた。


ーーー

殺し屋さんへ、

ルセウスの屋敷には二度と来るべからず。

もし、今後、この様な事をした場合は命は無いものと思うこと。

今回は、けじめとして、殺し屋さんのボスの命は頂きました。

今度、殺し屋として顔を会わせることがあれば命はありませんから、そのつもりでいてください。

カリウス氏には、ルセウス氏に殺し屋を送った事を父親に報告するように言っておくこと。

さもないと、カリウス氏は殺します。


追伸

ギルレア洞窟に向かった同僚の方は、全員お亡くなりになりました。


以上

ーーー


この文を呼んだレイアスは天井を仰ぎ見ながら、

「俺…、殺し屋辞めるわ。」

と呟いた。

他の四人もその言葉に同意するように全員が頷く。

そして、レイアスはカリウスに手紙に書かれた内容を伝えるとそのまま屋敷を後にした。


カリウスは手紙に書かれていたとおり、父親に事の一部始終を報告し、勘当されていた。


こうして、スプレイド家のお家騒動とヘルメス暗殺計画は全て解決したのだった。


ルセウスはその後、正式にスプレイド家の事業を継承することとなったが、まだ、父親が元気なため、しばらくは事業は代行という形で引き継がれることとなったらしい。

三男シグナスと四男ネルギスはどちらも長男のカリウスの息が掛かっていたのだが、カリウスの屋敷での顛末を人伝(ひとづて)に聞かされ腰を抜かしてしまい、ルセウスには絶対逆らわないと念書を書いて渡し、ルセウスの軍門に下った。


ちなみにルセウスの屋敷での騒動とは、屋敷内にいた、ルセウスや執事長のロッゾを筆頭に全員が昼過ぎまで寝過ごし、屋敷にやって来たシグナスの使いの者に起こされるという珍事があり、起きた使用人らが屋敷内を慌てふためいて走り回っていたらしい。



翌日、ルセウス邸の門の前に、ルセウス、ロッゾが、今日で用心棒もお役御免となった、誠三郎とヒダカの二人の見送りに出てきていた。


「本当にお世話になりました。兄のカリウスが父に全てを白状したようで、私が知らないところで、動いておられたということを後で知りました。兄も父から勘当され、もう私に何かするような力もありませんので一安心です。」

「まあ、こちらも、今後、クランズへの協力を約束していただいたし、何もいうことはありませんな、はっはっはっ!」


誠三郎はルセウスに、今後の『プラチナドラゴンズ』の活動への協力を依頼したところ、快く引き受けてくれたのだ。

それは、金銭面や情報に関する事など、あらゆる事に対して協力を惜しまないというものだった。

まあ、言わばスポンサーとなったのである。

ちなみに今回の用心棒代は数億マスタがクランズの口座に振り込まれていた。




ト「まあ、何となく想像はしてましたけどね。」

マ「あの、残った暗殺者達はどうなったんだろうね?」

ヴ「どちらにしても真っ当な生き方をするには人を殺し過ぎていると思うんだけど…」

ト「冒険者ギルドにも登録出来ないだろうしね。」

マ「無印とか無登録という部類でしか活動出来ないパターンだね。」

ト「でも、どうして、八鬼さんは最初に部屋にいた奴は殺して、後で屋敷にやって来た五人は殺さなかったのかな?」

ヴ「それよねー。何でだろ?」

マ「全員殺してしまうより、全員、生け捕りにして屋敷に送り返す方が難易度が高いし、相手に恐怖のメッセージを届けられるからとか?」

ヴトン「それだ!」

うーん、ちょっと違うけど、まあ、どうでもいいか。σ(´・ε・`*)

ヴトンマッソ「違うって?じゃあ本当のところは?」

(;゜∀゜)

まあ、どっちにしても結果は一緒だしね。

ヴ「気になるうぅー!」(・д・`*)エー!



ではまた、さいなら~。Σ(゜∀゜)



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