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水無月蔵光の冒険譚  作者: 銀龍院 鈴星
第六章 絶対悪との対決
145/164

第145話 運命は突然に

覚えていましたか?という話です。

第145話 運命は突然に

ここはギルレア洞窟の近くに建てられている、建設現場の拠点にある仮設建物である。

そこに、開発に携わる者が集結し、寝泊まりしながら温泉街開発は着々と進められていた。

元々は、一時的に使用するためと作られた簡易の建物なので、木造の簡単な造りの建物であり、冬場であれば寒くて大変なのだが、まだ、今は少々暑いくらいなので、夜などは逆に窓を開けて寝ている。

約20~30人が、寝泊まり出来るくらいの大きさの建物が10棟くらいある。


ヘルメス達はゼリーの指揮の下、温泉街作りに精を出していた。

現場に来ていたのは、ヘルメス、ゼリー、ギルガ、トンキで、実家の屋敷には蔵光、ヴィスコ、ザビエラ、オルビアが残っていた。


ゼリーは、現場での手始めの作業として、先ずは道路整備から着手した。


そして、道路が温泉街の街の中心部分に、ある程度敷かれると、今度はさらにサリドナ方向やユブノ砦港方向へ向けて道路を拡張及び延長するための工事を引き続き実施する。

こうすることによって、馬車や魔導車の通行がしやすくなり、それに伴い人や物資の流通がしやすくなるのだ。

つまり、ヴェレリアント領の経済が活性化するのである。


道路の舗装については、ゼリーの土魔法を使って、施工されていた。

そして、ギルガも大昔に経験したことのある、土木作業に従事していた。

ヘルメスが、発現した勇者の力を利用して、近くの森で聖剣を使って斬り倒した大木等を含む材木等を道路の施工現場に運び込み、道を造る敷地に打ち込むための杭を作り上げた。

そして、まずは道路予定地をある程度、整地したのちに杭打ちをし、さらに、その場所の整地部分を、仕上げ整地した後、ゼリーが土魔法の『石材加工』を使って、石のタイルを作り、それを杭に沿って整地した場所へ、はめ込むように置いていくという作業だ。

こうすることによって、石畳の道路が造られ、馬車等の車両が通りやすくなるのだ。


トンキは、サリドナやフォドンに避難していたジョリアの人間を中心に人を集め、先ずは、自分達が住む場所となる家造りを指揮した。

場所は、ギルレア洞窟が見える程近くにある、やや開けた土地で、最初に、そこに生えていた木や草の除去や岩や枯れた木の根っこを取り除いたり、その後、そうした作業ででこぼことなっている土地を埋めたり、削ったりしながら水平に整地していく作業を中心に行っていた。

なお、この場所は温泉の源泉脈や水脈から外れているので、地盤が緩くなったりすることはない。

また、その水脈だが、水源確保のため、近くの川から水を引いたり、水脈を感知魔法で探しあて井戸を掘った。

井戸水は飲料水として、川の水は飲用に使えないため、食器などを洗うときや洗濯、その他水洗トイレ用の水など、口に入れないものに使用したり、また、温泉宿と兼業農家を希望される者には用水路を確保し、離れた場所に小麦畑を作る予定である。


ゼリーは温泉の源泉の抽出に巨大な汲み上げポンプを設置した。

某異世界漫画で頻繁に出てくるような旧式の手動型汲み上げポンプではない、魔石の動力を組み込んだ自動汲み上げ式の魔導機だ。

これは濾過機能付きであり、掘り当てた井戸にも使用している。

スイッチひとつで水が蛇口から出てくる。

このポンプはカリスマエージが開発したものを使用しているのは言うまでもない。

ちなみにジパング王国では既に採用され、普通に使用されている。


ルセウス達の食事会が終わった頃、こちらでも既に日が暮れて、夕食も終わり、夜中になっていた。

ギルガは、拠点建物の中で、いつもよりソワソワとしていた。


それは、オルビアから運命の人に会えると言われていた『一週間後』が明日だったからだ。


「どないしたんや、ギルガ?調子悪いんか?」

ゼリーはこの話に加わっていなかったので、ギルガのソワソワの意味がわかっていなかった。

逆にヘルメスはそれがわかっていたので、

「大丈夫だよ、オルビアが言ったんだから間違いないよ。頑張って!」

と声をかけ、ギルガを励ます。

ギルガも、ヘルメスの激励に、

「あ、ああ、わかっている。」

とややぎこちなく応えた。

それを見たゼリーが、

「なんやなんや?ワイの知らんとこでおもろい話があったんか?」

と言ってギルガがソワソワするその訳が知りたくてウズウズとしていた。


ゼリーも元々は女性なので仲間に入れる資格はあるのだろうが、あまり女子会には加わろうとはしない。

魔物として中性化してしまったからなのか、色恋沙汰にはめっきり興味が無くなっていた。

なので、女子会の仲間に入れてはもらえていないのだ。


ただ、こんな開発途中の土地に『運命の人』が現れるとは思えない。

もしかしたらオルビアから未来を聞くことで運命が変わってしまったのかなとも思っていた。


なので、ギルガはそれよりも、今の温泉街造りの仕事に力を入れようと思っていた。

温泉が好きだと言うのもあるのだが、今まで、戦争等で失うことしかなかったはずの、『街』というものを、自分達の手で作り上げていくという素晴しさに感動していたのだ。


これは龍族では考えられない事であった。

というのも、龍族は群を作って生活をしているが、人間のようにその場に定住するということは余程の事がない限りしない。

というのも、餌となる動物が、自分達の住んでいる縄張りからいなくなれば、食料を求め自然と移動しなければならなくなってしまうからだ。

だから、ギルガの父親のワダツミ等は特殊な事例である。

ワダツミはジパング王国のホンシュ大陸にある龍火山に長年住んでいるが、移動はしていない。

と言うのも、その近くにある巨大なエブーダの森やカントゥの森など、豊富な餌場があるため移動を必要としないのだ。


だが、他の龍族は森の動物を食べ尽くして絶滅してしまう前に移動をするため、家などを必要としないのだ。

また、龍族同士で物の売り買いや、貿易等の生活に必要な物の流通をすることがないためともいわれていた。


つまり、『街』とは高度な社会における人間や物の繋がりを保つための場所であり、野性動物には到底及ぶことが出来ない代物なのである。

だからこそギルガはそれを造ることに従事できる喜びに浸っていたのだった。


街を造る者達で寝食を共にし、その中で人々は共に笑い、また苦しさに泣く時もあった。

だが、人々には希望があった。

自分達が住むための『温泉街』を作り上げるという希望が…


そんな、厳しくも楽しい、ゆったりとした時間を過ごしていたときであった。


ギルガは建物に物凄い殺気が近づいてきている事に気付く。

これにはヘルメスやゼリーも直ぐに気付いた。


「これはアカンな、恐らくカリウスっちゅう奴が雇った殺し屋やろな。」

とゼリーが言うと、ヘルメスも、

「ああ、間違いないだろう。ゼリー、悪いが作業員の棟に防御魔法をかけておいてもらえないか?」

「ああ、わかっとる。もう既に展開しとるわ。」

「済まない。あと、ギルガ()()もお願いします。」

「ヘルメス、お前がリーダーだ、私の事は()()()でいい。」

「…わかりました。じゃあ、行きましょう。」


現在のヘルメスは、魔力値が1000万M(マーリョック)を超えていた。

それに伴い、あらゆる感覚が研ぎ澄まされ、肉体も強化されていた。

ギルガの魔力値は約8000万M、ゼリーに至っては1億2000万M以上ある。

この世界は基本的に魔力値が高いものほど強いとされている。

魔力値が高い者には、低い者の魔法は効果が低く、逆に魔力値が低い者に対して行使する魔力値が高い者の魔法の効果は高くなるからだ。

また、肉体に及ぼす効果もそれに比例し、高い魔力値になればなるほど、余程の例外を除いて強力な身体となる。

また、研ぎ澄まされた感覚は、生命体感知の範囲を更に広域化し、敵となる者が手に取るように分かるようになるのだ。


「約20人、建物の向こうの森の中に潜んでいます。右手に5人、左手にも5人、森と反対側の温泉街側にバラバラで10人くらいが散り散りになっています。」

ヘルメスが建物の外に出てから感知した者の位置を正確に言い当てる。

「まあまあ、出来るようになってきたな。」

とゼリーがヘルメスに言う。

実は、この生命体感知はヘルメスが今まで魔力がなかったため出来なかった魔法のひとつであったが、強大な魔力を手に入れた事により、出来るようになってきていた。

ただ、最初に出来ていた生命体感知は、膨大な魔力を使ってやっていたため、効率や要領が悪かったため、魔力の消費量に比べて、正確性や索敵範囲が狭かったものを、ゼリーの教えを受けて修正し、ヴィスコ並みに少ない魔力で更に広範囲に渡って正確に感知が出来るようになっていた。


ヘルメスが、ゼリーとギルガに、

「私が囮になります。私が正面と右手の奴等に切り込んでいきますので、後ろはゼリーが、それと左手の者をギルガに頼みます。」

と言うと、物凄い速度で森の中へ走ると言うか空中を飛んで向かって行った。

それと同時にギルガが左手の者に、ゼリーが後ろとなる温泉街側の者に対して迎撃を開始した。

それに面食らったのが、暗殺者グループのギアン達であった。

かなり気配を殺して近付いていたのに、200m以上建物から離れていたのに気付かれるなど、全く予想してはいなかった。


「なっ!?何か、建物から飛び出て?と、飛んでるぞ!?」

暗殺者グループの一人が驚いて叫ぶ。

そんなことが出来るのは上位の魔族以上の魔力がある者だけであり、いくら魔力値が高くとも、人間では飛翔魔法が使えないことは周知の事実である。

それだからこそ、ヘルメスが飛んでいる事に驚きを隠せない。

「ば、化け物!?」

彼等にはその言葉を口に出すのがやっとであった。

ヘルメスは、カリウスに雇われた暗殺者が自分の命を狙っていると聞いていたため、彼等には躊躇(ちゅうちょ)無く、敵として認識していた。

一瞬で、彼等との間を詰める。

暗闇の中でも、感知が出来ていれば見えていなくても俯瞰で戦える。

先ずは、右手の三人は軽く撫でる様にして首を跳ねる。

こんなことで聖剣を使いたくはないのだが、致し方ない。

更に残っていた二人は、串刺しの様に剣で突き刺して胴体を貫いていた。

ヘルメスにしては大した速度では無いのだが、彼等にとっては建物から飛んでくるのが見えた瞬間から、いきなり目の前に現れた様な感覚であり、次にヘルメスの姿を認識した時には既に剣が体を突き抜け、命は奪われていた。


また、次の瞬間には正面側にいたギアン達五人全員の動きも停止していた。

時間にして、コンマ数秒、ヘルメスは正確にその者達の心臓をえぐりとっていた。

驚く暇もない。


ギルガもヘルメスと同様に建物から出た瞬間に、森の左側に潜んでいた暗殺者達に飛びかかっていた。

ギルガの魔力値が強大なのは、元々は100mを超える巨体を浮かせたり、操るためや体の強度や硬度を維持するための補助的な魔力が主であり、それが人間サイズになれば、当然ながら速度や強度は、凝縮され、その数値は恐ろしい程跳ね上がる。

ギルガは素手で彼等のところに飛び込み、一瞬で、相撲で言う『張り手』の要領で全員の頭の部分を押した。

すると、トマトを潰すかのように彼等の頭はひしゃげながら吹っ飛び、周囲の木や岩にぶつかりグシャグシャになる。


ヘルメスだけでも、対応できたのであろうが、少しだけ左側の方が正面にいた者達から離れていたため、安全策としてギルガにお願いしていたのだが、実力が違いすぎた。

()()()()()に攻撃をすれば、この様な結果になるのは当然と言えば当然なのだが、あまりにも酷い。

人間の形を残していない状態である。


ゼリーに至っては、散り散りバラバラになっていた暗殺者達にそれぞれ一瞬で近付き、その身体に触れた瞬間に、体内に取り込み、体内で溶かして吸収した。

それを見たヘルメスは、顔をひきつらせながら、誠三郎の時を思いだし、

「敵でなくて良かった。」

と呟いた。101


と言うことで、案ずる暇もなく、一瞬でカリウスに雇われた暗殺者グループは壊滅した。

ヘルメスとギルガが倒した奴等もゼリーが死体を取り込み回収し、森は何事も無かったかのように平穏が戻っていた。


そして、ヘルメス達が仮設建物に戻ろうとした時であった。


「あの…」

ふとギルガの後ろから声がした。

全く気配を感じていなかった。

敵であれば相当の使い手だ、彼等の仲間なら攻撃を受けていても不思議ではない程の気配の消し方である。

声をかけられたギルガは、驚きに、その目が大きく見開き、次の瞬間にはその場所から10m近くも前に移動し、振り向きながら、体の前で両手を構え、迎撃体勢を作る。


「誰だ!」

ギルガが叫ぶ。

その声に、離れて歩いていたヘルメスとゼリーも反応する。

二人も全く気付いていなかったのだ。


だが、そこに立っていたのは、暗殺者ではなく、ギルガの運命の人『デルタ・グリード』だった。





ヴ「デルタ(゜∀゜ 三 ゜∀゜)キター!」

マ「ちょっと、私にはよくわからないのですが。」

ト「私、この後の展開を知っていますので、何も言いません。」

ヴ「そういう事か!」

マ「なるほど!」

ト「いや、だから何も言ってないし!」

この続きは次回になりますから。


ということで気になる次回まで待っててね。

えっ?待ってないって?スミマセン

( ̄□ ̄;)!!ゴーン

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