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水無月蔵光の冒険譚  作者: 銀龍院 鈴星
第六章 絶対悪との対決
141/164

第141話 誠三郎のスパイ大作戦4~任務付与

うーん、やばくね。と言うような感じです。

第141話 誠三郎のスパイ大作戦4~任務付与

次の日、誠三郎が、ヒダカと共に冒険者ギルド グレリオーダ支部に着いた。


スプレイド領内にあるギルドだけに、かなり立派な造りの建物かと思いきや、メトナプトラにあるギルドとさして変わりはなかった。

ただ、違っていたのは、その周辺の街並みだ。


『グレリオーダ』はスプレイド領内で一番重要な都市であり、メトナプトラの首都ヨーグに負けるとも劣らない程の(にぎ)やかさで、建物の豪華さで言えばこちらの方がかなり派手な造りで、金が掛かっている。

商業ギルド加盟店の建物の数も多く、商人の街というのも伊達ではない。


スプレイド領の主な産業で、スプレイド家がその実権を握っているのは、武器等の製造と、それの国内での販売と、国外に対する輸出入である。

後は、紡績や魔導車製造、人造魔石製造等を地場産業としている。

ルセウスは父親の仕事である、武器の製造部門を担当している。

武器と言っても、剣や槍、戦斧、魔法用の杖の製造を受け持っている。

ちなみに兄のカリウスは、武器製造の材料となる鉱石や魔鉱石、魔石などを取り扱っている。

三男シグナスは盾や鎧等の防具関係の製造を担当し、四男ネルギスは、魔法が付与された指輪やネックレス、腕輪など魔石を使った装飾品関係の製造を担当している。

ご存知、五男のトライプは武器等の輸出入と人材派遣を担当していたが、メトナプトラで事件を起こして父親の大目玉を食らい、現在は謹慎中である。


だが、そのトライプが輸出入の要所を押さえていたため、他の者が代わりに担当しようとなったが、上手く仕事が回らないという事態となってしまた。


そのため、現在は製造した武器等の輸出入がストップ、若しくは滞っている状態であり、 スプレイド家の関係者としては早期にトライプの復帰を願っている者も少なくはない。

特に長男のカリウスは、弟のトライプをかなり可愛がっており、今回のメトナプトラの件でトライプが逮捕された時などは、捕まえたヘルメスが率いるプラチナドラゴンズの身柄の引き渡しを求めてくるなど、意味がわからない行動を起こしていた。

これには、エイダーが間に入り、カリウスを抑えたらしいが、エイダーによると何故カリウスがプラチナドラゴンズの引き渡しを要求したのか聞いたところ、

『貴族であるトライプにあらぬ疑いをかけて逮捕させるなど、不敬罪も甚だしい!そのような(やから)はスプレイド家で厳しく処分するので引き渡すように。』

と言ったという。

この時は、まだヘルメスがプラチナドラゴンズのリーダーであると知らなかったようであり、エイダーがヘルメスの事を話すと、今度は、『ヴェレリアントの田舎娘が生意気な!辺境伯の家だか何だか知らんが、トライプをこんな目に遭わせた礼は必ず返してやる!』

と言ったらしい。

エイダーもそれは言ってはいけないと諫めたが、全く聞く耳を持たない状態であったという。

まあ既に、その話はかなり、このスプレイド領内では有名な話となっていて、誠三郎もこの話を訪れた冒険者ギルドの中で聞かされた。


そんな話になったのも、ヒダカが出してきた紹介状がヴェレリアント家のものであったからで、

『こんな時期に、こんな紹介状を持ってきたら大変なことになりますよ。』

と、ギルドの受付嬢が気を使ってくれ、こっそりと手続きを進めてくれた。

とりあえず、これでヒダカも冒険者の一人となった。


だが、その受付嬢も、誠三郎達がルセウスからの指名依頼を受けるということを聞くと、

『何故、そんな依頼が入っているのですか?何をするつもりなのですか?』

と質問の嵐であったのは言うまでもない。


とりあえず誠三郎は、

『ルセウス達が魔物に襲われているところを助けたら、しばらくルセウスの下で働いて欲しいと言われた』

と説明すると、変な顔をしながらも納得した。


そして誠三郎とヒダカがルセウスの指名依頼を受注したので、ルセウスの屋敷に向かう。


屋敷に到着すると、そこではロッゾが応対し、今後のルセウスの予定を説明した。

とりあえず、誠三郎達にやってもらいたいことは、ルセウスの用心棒として、その身辺の警護をしてもらいたいということだった。


誠三郎がロッゾに、

「身辺警護ということは、ルセウス殿は何か狙われるような事があるのか?」

と聞くと、

「いや、特に誰かに狙われているという事はないのですが、今の立場であれば、狙われる可能性が非常に高いと思われるのです。」

と説明し、現在のスプレイド家の相続争いはかなり険悪な状態となっていて、誰かから事故に見せかけて、殺される可能性もあるという。

特にルセウスは次男であるが、父親のグラークからの信頼も厚く、次期当主の可能性が一番高いと言われていて、それを認めない長男のカリウスが、彼の命を狙っているのではないかとも言われているらしいのだ。


とりあえずこの屋敷内は安全であるが、一旦外に出れば、命の保証はないらしい。


「兄弟にまで命を狙われるとは、何とも言えんな…」

誠三郎が難しい顔をして話を聞いている。

戦国時代なら兄弟間でも殺し合いをしていたと言われているが、そんな昔の時代ではないのに兄弟から命を狙われるとは何とも枯れた時代ではないかと、誠三郎にはそんな気がしていた。


「ルセウス様は、本日、御父上様であるグラーク様が御屋敷で、皆様を集めてのお食事会をお開きになられる予定でして、八鬼様にはそちらでルセウス様の護衛に当たって頂きます。」

「わかった。」

「あと、飛騨神様には、魔法を使われるとお聞きしましたので、この屋敷の警護をお願いします。」

「それは、わかったが、我は屋敷を守るという様な魔法は知らないぞ。」

とヒダカが答える。

「大丈夫でございます。侵入してくる不審者を撃退していただけるだけでよろしゅうございます。」

「わかった、それならば大丈夫だ。」

ヒダカも納得する。

「ですので、ここで働いている者達を紹介しておきますので、飛騨神様はこちらへ、八鬼様はこのまま2階のルセウス様のお部屋の方へお願いします。」

「承知した。」


ヒダカはロッゾに連れられ、使用人達のいる部屋へ案内された。

誠三郎から、今の自分達の身分は冒険者なので、特に身分に演技は必要は無いが、プラチナドラゴンズのメンバーであることや、当然ながらスプレイド家の内情を探っているなどと、この家の者には絶対に喋ってはいけないと口止めされていた。

また、探ることが難しいと思ったら、とりあえず、本来、この家から与えられた仕事をこなして信頼を得ることが大事であり、無理をしてボロを出さないようにすることと教えられていた。

と言うのも誠三郎達の今回の目的が、

『ヘルメスの命を狙っているのは誰なのか?』

と言うことだけであり、ヘルメス自身も狙われていることはエイダーからの情報で知っているで、用心さえしておけば、無理をしなくても向こうから襲ってくれば(おの)ずとわかることであろうし、何にしてもここはスプレイドの屋敷内のため、情報が入る可能性は高いので、無理は必要なかった。


だが、ヒダカは別の意味で無理はしなければならなかった。


と言うのも、ルセウスの家には100人以上の使用人がいたため、ヒダカはそれらの人間の顔を全て覚えなくてはならなかったのだ。


ルセウス家には執事長のロッゾが指揮する執事衆が五人、それら執事衆がそれぞれ、屋敷内の食事を作っている料理長以下料理人、掃除長以下掃除人、庭の整備長以下庭師達、給仕全般を受け持つ給仕長以下給仕人達の他、渉外、経理、資材管理、屋敷の管理等を受け持つ。

また、ルセウスの本業である武器製造の仕事に関するスケジュール管理や、ルセウスの私兵となる騎士や兵士の管理運営などの業務について、秘書と兼務をしている者達もいる。

本来、貴族は、領内の人々からの税金で生活出来るようなシステムになっている。

にも関わらず、このスプレイド家は、自分達で事業を立ち上げて運営しているこの世界では珍しいタイプの家柄であり、とくにルセウスは税金の無駄遣いはしてはいないタイプと思われる。

だからこそ、これだけの数の人間を雇える訳なのである。


ヒダカは、予想を上回る使用人の多さに驚いていた。

「なかなかの人数だな」

とややひきつりながら覚えていった。


一方、誠三郎はルセウスの部屋にいた。

ルセウスは食事をするにしては少し、構え過ぎとも思われる様な服装であった。

正装と言うのだろうか、国賓を相手にするようなレベルの格好である。


「今日は家族でお食事会では?」

と誠三郎が不思議に思って尋ねたが、ルセウスはニヤッと笑って応える。


「いや、これでいいのです。」

と言うのも、父親のグラークが主催する食事会は、子供の頃に食べていた夕食とは意味が異なっていた。

それは、スプレイド家の年に一度の事業報告の場でもあり、それら事業の運営が上手くいっているかどうかによって、今後の事業の運営権を父親から継承できるかどうかを判断されるのだ。

そのため、兄弟全員が身だしなみを整え、社交場さながらの服装をしているのだった。


「八鬼殿、今日の食事会は、我々兄弟にとってそれほど重要なものであります。もし、事業の運営権が私以外の独占的、独裁者的な兄弟の手に渡ってしまえば、今、父から任され、持っている全ての利権を奪い取られ、残るのは貴族としての細々とした給金のみとなります。そうなれば、今まで、一緒に事業運営に携わってきていた私の家族とも言うべき会社の者や屋敷で働いている者達を解雇しなければならなくなります。ですから彼等を路頭に迷わさないためにも、必ずや父の持つ事業の運営権を手に入れるつもりです。」

ルセウスは意を決したように誠三郎に話した。


「危ない真似をするんじゃないでしょうな?」

心配して誠三郎が尋ねる。

すると、ルセウスの目が怪しく光り、誠三郎に向けられた。


「私が兄や弟を殺そうとでも?」

「いや、そういう訳ではないが…」

誠三郎は、ルセウスが兄弟を殺してでも運営権を手に入れるのではないかとは思わないが、何か今回の食事会に並々ならぬ気持ちを持っていることを肌で感じていた。


「逆ですよ。」

「えっ?」

ルセウスの言葉に誠三郎の眉が寄る。


「私を殺そうとしているのは彼等ですよ。間違いありません。」

ルセウスはそう断言する。

「?!彼等?」

それは複数系の者に対する言葉の使い方だ。


「私は、兄弟達を信じてはいません。そして、父親のグラークでさえも。」

「それは?一体どういうこと…」

「私は、本日、食事会で殺される予定なのですよ。」

ルセウスは衝撃的な言葉を発した。

「何を?!」

流石の誠三郎も言葉を詰まらせる。

忍びとして入り込んだ屋敷の長が、家族の開く食事会で殺されることを予期している。

潜入先の対象が殺されれば、場合によっては自分達の身も危うくなる。

こんなときどうすれば良いのか。

誠三郎でもこんな場面には出会った事はない。


そして、さらに誠三郎が驚く言葉をルセウスが発した。


「ヘルメス嬢はお元気でしょうか?」

ルセウスの口から予想外の言葉が飛び出す。


『バレている!』

誠三郎は頭の上から冷水を浴びせられたようなショックを受けると、同時に瞬間的に相手から離れて間を置き、刀の鍔に手が掛かる。

ルセウスを殺すのは簡単だが、一方的に殺してしまっては非があるのは明らかにこちら側のみであり、良いことなど何もない。

出来るのならば誰も傷付けず、逃げるのが一番良い。


「待ってください!」

ルセウスが誠三郎に声をかける。

真剣に話す人間の言葉には力がある。

この時のルセウスがそうであった。


「八鬼殿、貴方の正体を知っていて黙っていたのは申し訳ありません。どうやって私に近付いて来られたのかも最初は知りませんでしたから…でも、時間を頂けるのなら、私の話を聞いてからでも良いのではないかと思いまして…」


こうして、ルセウスが誠三郎に話した事は、誠三郎達が最も知りたかった事であったからである。









ヴ「バレていたんですか?!」(;゜∇゜)

ト「ヤバいじゃないですか!」(-_-;)

マ「早く逃げましょうよ!」(´Д`ノ)ノ

このコーナーでそれを言ってもなあ。

まあ、誠三郎なら大丈夫でしょう。

ヾ(´▽`*)ゝ表情文字中々便利也


ではまた次回まで、さようなら~!

(o´・ω・`o)ノ

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