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水無月蔵光の冒険譚  作者: 銀龍院 鈴星
第六章 絶対悪との対決
137/164

第137話 ヴェレリアント領復興計画

在り来たりだが、はてさて、どうなるものか。


第137話 ヴェレリアント領復興計画

ここは、ヘルメスの実家、ヴェレリアント家の一室である。


ヘルメスが父バジルスの部屋でメンバーの事で説明をしていたところ、

「ヘルメスの親父殿、ちょっと話があるんやけどな?」

と言いながら、バジルスに、『ゼリー』という、蔵光の従魔であり、()と言うか()()のエンペラースライムであると説明があった魔物が話に入ってきたのだ。

それは、話では『スライムネコ』という名称の猫の形をした体のスライムで、いつの間にかバジルスのところに近寄ってきていた。


バジルスには、脅威の存在であるエンペラースライムがここにいるということ自体が驚きであったが、それ以上に、魔物が言葉を喋っていることが、非常に驚きであった。

魔物が喋るということ、つまり、人間のように意思を持っているという事を聞いたことが無かったからだった。

エンペラースライムや古龍など、一部の伝説的な魔物というか、そういった存在の中には喋る事が出来る者がいると伝わってはいるが、存在自体が伝説なので、聞いたとか見たとかいう者は、普通いない。


「えっと、君は確か、蔵光君の従魔だったかな?」

まだ、彼にはゼリーがチョッコ・クリムの生まれ変わりだとは話してはいない。

そのため、只の従魔と思われていた。


「そうや、魔物界最強の生物や!」

「ほう、そ、それはスゴいな、で、私に何の用かね?」

バジルスはゼリーの容姿を見て、(あなど)っていた。

だが、ゼリーが今から話す、計画を聞き、只者ではないと一目を置くようになるのだった。


「ヘルメスにも言うたんやが、ギルレア洞窟の近くに『温泉』が湧き出とるんやが…」

と、ゼリーは先程、ヘルメスに話していた『温泉』の話よりもさらに詳しく話を始めた。


最初は、魔物の与太話かと話半分に聞いていたバジルスが、最後の方には身を乗り出して、真面目に話に聞き入ることになるのであった。


それは、現在のマーリックでは到底考えられないような革新的なものであったからだった。


ゼリーの話は、まず『温泉』と言うものについての説明から始まり、そして温泉に含まれる成分と、その効能、身体や精神に及ぼす影響などを説明した後、温泉を効果的に利用するための『露天風呂』を含む温泉風呂等の概要と火山地帯周辺において発生する温泉のできる仕組み及びそれらを地下から汲み上げるための魔導機の内部構造と必要性を説く。


続いては、それを支える『温泉街』というものの存在と、『観光業』というものについてもその重要性を解説する。

温泉と宿泊施設が融合した街造り、それと、温泉宿やその他の店舗等の商店が一体となり、その街の風景自体が美しく自然に溶け込むような建物の配置、また、周辺の自然を美しく見せられるように常に整備管理し、『観光地』として、田舎の街にしかない、その豊かな自然と、その美しい景色を見たときの人間の心理と体に及ぼす影響等についても教えていった。


そして、(きわ)めつけは、未だ他の国や街に存在しない『温泉街』というフロンティアなものを作る、その希少性と有益性を説くと共に、それらを武器にした、新たなヴェレリアント領の在りかたを示唆した。

それは、ここに住む領民に、ジパング王国のカリスマエージから、温泉宿の建築技術や、詳細な温泉の掘削技術及び自然の管理技術など、他の追従を許さない高度な技術を伝授させ、それをバックにヴェレリアント領を活性化して、税収の増加、ヒドラに破壊されたジョリアを含めた街や村の復興、職を失った者達に対する救済措置には、先の技術提供の話にもあるように、『温泉』というものに関連する新たな職の提供など、土木建築や温泉宿の運営なども含め、人や物の動きをシステマチックに解説すると、バジルスの表情は、既にヘルメスの親父ではなく、一人の領主としての顔になっていた。


また、ゼリーは調査の最中、『温泉』とともに、『鉱山』を発見したことを明かす。

これは、ヴェレリアント家にとっては、素晴らしい知らせとなった。

まだ、埋蔵量や鉱石の種類などは鑑定出来てはいなかったが、それらもいずれは調査の結果でわかるであろう。


いずれにしても、バジルスはこのゼリーという不思議な生き物に畏敬の念を抱かざるを得なかった。

そして、その気持ちや態度は言葉になって現れていた。

「ゼリー殿、これでヴェレリアント領は救われます。本当にありがとうございます。つきましては、我々ヴェレリアント家の顧問として、今後とも指導をお願いします。」

とバジルスは、ゼリーに丁寧な挨拶をすると共に今後の協力を要請した。


その後、バジルスは直ぐに、優秀な部下を召集し、先程のゼリーの話をし、今後のヴェレリアント領の進路について、語っていた。

それを、伝え聞いた部下達は、直ぐにそれが凄い話であるということを理解し、早急に対策を立てるべくそれぞれの持ち場に散っていった。


「すごいですぅ。」

ヴィスコがゼリーの話を隣で聞いていて驚いていた。

ゼリーは魔法の知識だけではなく、魔物としても最強の部類に属するエンペラースライムである。

また、その他の知識も豊富に持っていて、今回は『温泉』というものを魔法世界『マーリック』に導入しようとしている。

いくら転生前の知識だったとしても、『温泉』単体を持ち込むのではなく、『温泉街』ごと導入するという豪胆な考え方にもヴィスコだけでなく、他の者達も驚かされていた。


「あと、それらが、うまく軌道に乗ったら、開墾とか河川整備とかにも、取り掛かっていかなあかんな。」

とゼリーは更に先の事を見据えていた。


その日の夜、ヘルメスの帰国祝いと蔵光達の歓迎会が開かれることとなり、開催場所は、ヴェレリアント家の迎賓館において行われることとなった。

迎賓館は、本館の屋敷の隣に建てられていて、本館と同じような堅固な造りであり、元々、戦時は兵士の待機場所にもなっていた場所だった。


ヘルメスは屋敷の自室に戻ると直ぐに、パーティー用のドレスに着替える事となった。

普段から鎧に身を包んでいるため、久しぶりのドレスとなるとかなり気恥ずかしい。


だた、それだけではなく、ヘルメスは少し表情が暗かった。

と言うのも、歓迎会で出される料理を心配していた。

それは、マッソルからも前に聞かれたのだが、このヴェレリアント領には本当に名物と呼ばれる食べ物がない。

元々、痩せた土地でもあり、農作物も自慢出来る物もなく、また、森などで、捕れるものと言えば猪や鹿などで、基本的にライズの街のように高級な牛肉等はもちろん扱ってはいない。

そのため、出せる料理は田舎料理が基本になってくる。

これまで、蔵光達と食べてきた数々の美味い料理に比べたらはるかにレベルは下がってしまう。

要は、ヘルメスは『田舎者の料理』と馬鹿にされはしないかと心配していたのだ。


迎賓館にはスプレイド家の内情を探りに出た誠三郎とヒダカ、そしてヘルメスから特命を受けたマッソルと、皆の道案内で出発したハッサンが欠席となった。


「ヘルメス、どうしたの?」

蔵光が迎賓館の出入口付近で難しい顔をしながらうろうろしているヘルメスに声をかける。


「あ、蔵光殿。いや、実は…」

ヘルメスは前述の心配事を蔵光に話す。

「ははは、そんなことを気にしていたのか。そんなの気にしなくてもいいよ。」

「えっ?だって、蔵光殿の家柄であれば、いつも豪華な料理を食べているんでしょう?」

「まさか。そんなことないよ。誠さんやゼリーが仲間になるまでは、一人で保存食を持ってジパングの森の中を走り回っていたからね、干し肉とか干し芋、後は、肉とかは現地で捕った猪とかの肉を血抜きした後、(さば)いて、塩を振って焼くだけだったし、まともな料理は余り食べなかったなあ。実家も粗食が基本なんで、こちらに来てから食べている物なんて、ジパングで食べたことなんか無かったものばかりだったよ。」

と蔵光が話すとヘルメスの顔が驚きの顔になる。

蔵光の実家と言えば、公爵家に匹敵する程の家柄である。

それが、普段から干し肉とか干し芋を食べていたとは、非常に予想外だった。

「何故?そんな食生活を?」

「うーん、何故と言われてもなあ、まあ、王鎧じいちゃんに戦場なんかも連れて行かれた時なんか、水だけは魔法でいくらでも飲めたけど、それだけじゃあね、何でも食べたよ、鼠とか蛙とか…虫も食べたかな?何日も食べられない日もあったし、」

「えっ?そうなんだ。私はてっきり、良いものばかりを食べているとばかり…」

「はははは」

蔵光がヘルメスが言おうとしている事は理解したが、実際は余りにもかけ離れた食生活をしていたので、思わず笑ってしまった。


だが、この日、出された料理は、ヘルメスの予想を良い意味で裏切られた。

かなり奮発したのであろうか、豪勢な肉料理や魚料理に、瑞々しい果物の山、牛乳やチーズをふんだんに使った料理等、ヴェレリアント領では普段お目にかかれない物が多くあった。


「こ、これは!?」

ヘルメスが驚いていると、ヘルメスの姉のメラが近くにやって来てヘルメスに声をかける。

ヴェレリアント家の長女で、年は23歳、スラリとしたスタイルに長髪の金髪。

パーティー用の薄い青色のドレスを着ていて、ヘルメスよりも、落ち着いた雰囲気を持っていた。



「驚いた?」

「あ、メラお姉さま!どうしたのこの料理は?」

「何故って、貴女のお陰じゃないの。」

「えっ?私の?」

ヘルメスは全く心当たりがなかった。

ハッサンには託けとして、30万マスタを渡したが、それだけで、晩餐会をどうこう出来るものではない。

「だって、あれだけじゃあ、足らないでしょ?」

「えっ?ヘルメス、貴女、自分で渡したお金の額を覚えていないの?」

「えっ?どういう事?私がハッサンに渡したのは30万マスタだけど…?」

「何を馬鹿なことを言っているの?そんな事ないでしょ、貴女がハッサンに渡したのは3000万マスタだったでしょ!しっかりしてよ。」

「えっ?えっ?」


偶然か必然か?

既にヨーグにいる時、蔵光の手によってヴェレリアント領復興計画は進められていたことが、とうとうヘルメスにバレてしまった。


この収拾をどう着けるのか蔵光!




ヘ「私は何も聞いていなかったぞ!!(`Δ´)」

マ「わ、わ、私もですよ姉御!(;゜д゜)」

ト「マッソル!お姫様だぞ!(;´д`)」

マ「あわわわわ(;´゜д゜)ゞ」

ヘ「そんな事はどーでもいい!それよりも一体誰が?(`ε´ )」

そんなの金持っている人しかいないでしょ。

ヘ「あっ。(・o・)」



今日は少し顔文字で表現しました。

と言うことで、次回もよろしくです。

⊂(・∀・⊂*)どやさ



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