表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水無月蔵光の冒険譚  作者: 銀龍院 鈴星
第六章 絶対悪との対決
134/164

第134話 温泉が見つかったよ

第六章開始です。

第134話 温泉が見つかったよ

ヒドラの討伐が何とか終わり、ヘルメスも聖剣を入手することができた。

再び、ヴェレリアント領に平穏が訪れ、これで、ジョリアの街も再興の目処が立った。

だが、根本的な問題があった。

ヴェレリアント領に恒常的に続いている財政難の問題である。

これを何とかしなければ、領民は路頭に迷うことになる。


ギルレア洞窟内からの帰り道、ゼリーがヘルメスに問題提起したことから、ある話が持ち上がる事となった。

「ところで、ここの土地はヘルメスの親父(おやじ)さんが治めている土地なんか?」

とゼリーが聖剣の話から話を切り替えた。


「えっ?そうだけど、どういうこと?」

ヘルメスがいきなりの質問に不思議そうな顔をする。


「いや、ちょっとな、気になったことがあってな…」

「えっ?気になること?」

「いや、ヘルメスは『温泉』というものを知っているんかなと思ってな。」

「『温泉』?」

「そうや、地面から噴き出すお湯の事や。それがギルレア洞窟の近所で涌き出てたわ。」

「ああ、地面から噴き出す、何か(くさ)(にお)いのするお湯だな。あれが、どうかしたのか?もしかして負の魔素の(たぐ)いなのか?」

「おいおい、今の時間軸でも温泉を知らんのかいな?あきれたもんやな、ここの世界の住人は?」

ゼリーが言葉通りあきれたように言う。


「その、温泉とは一体何なのだ?」

ギルガも知らない様子だ。

「温泉とは、天然の風呂のことや。そのお湯の中に浸かれば、疲れが癒され、傷の治りも早いと言われている薬のお湯だ!』エブーダの森の外れにもあったぞ。」

ゼリーはジパング王国では、龍火山の近くにエブーダの森があったため、森の中に自然発生していた温泉を見ていた。

前世の宮離霧千陽子の時には、当然ながら温泉に入っていた。

チョッコ・クリムの時も温泉の存在を知らない者ばかりのため、自作の温泉を造って入ったりしていた。

だが、スライムの体になってからは入る必要が無かったため温泉には一度も入ることは無かった。

蔵光の屋敷にも風呂はあったが、エージの開発した入浴剤のお陰で、蔵光達は一度も天然の温泉に行くことが無かったが、エブーダの森のように天然の温泉があるので、チョッコ・クリムの時代は仕方がないとして、約300年経った今の時代なら、この世界の住人は当然ながら知っていると思っていた。

だが、まさか、未だに温泉というものを知らないとは思っても見なかった。


「えっ?天然の風呂?あれが?あの(くさ)いお湯に浸かるのか?体が腐るんじゃないのか?」

「そんなことあるかいな。あれに溶け込んでいる成分は体にめっちゃエエねんで。」

とゼリーは説明する。

「へぇー、そうなのか、で、それも前世の記憶というものなのか?」

「そうや、近くに『龍の墓場』っちゅう火山があるやろ、そのおかげで、このギルレア洞窟の近くに温泉が湧いているんやと思うわ、温泉はすごい気持ちエエで。天然やからな、うちの魔導バスの中の露天風風呂と見た目の感じは同じでも、こちらの方が体に作用する成分は段違いにエエで!」

「ほう、それは凄いな。魔導バスにあるものが天然にあるとは。」

「そうやろ。」

ギルガが、温泉に興味を示す。

貧乏農家の家に居候していたときは、風呂などという贅沢なものには一度もお目にかかれなかったからだ。

それが、自然の中にあるとは思っても見なかった。

龍種は火山地帯に好んで住むと言われているが、実のところギルガも住みたかった。

だが、そんな火山には、龍を討伐していると言われる水無月一族がやって来る可能性が非常に高かったため、ギルガとしてはそんな危険な場所には一度も近寄りたくはなかったというか、近寄れなかったのである。

そのため、最初は宿屋の風呂も入っていなかったが、プラチナスカイドラグナーの中にある、露天風風呂に入るようになってからは、今は風呂が大好きになっていた。


「それはわかったが、そんな温泉というものが、こんな場所にあるということに、何か意味があるのか?」

とヘルメスが質問する。

「かー!これやから素人は怖いねん。この温泉の凄さがわからへんとは…」

ヘルメスはゼリーの言おうとしている事が全く解っていなかった。


それは、この世界『マーリック』には、『温泉に入る』という概念がないからだった。


この世界では、ある程度、魔法で何でも出来てしまうため、科学の発達が未熟でいびつな世界になっていた。

例えば、基本的に体を清潔に保つ等という衛生上の観念や知識はこの世界ではあまり進んではいない。

細菌やウイルス等の知識はもちろんのこと、温泉の中に溶け込む成分等の知識が基本的に欠如しているのだ。

そのため、体が汚れたら洗い流すという程度のものであり、当然、温泉に浸かって体を癒すなどという『湯治』の概念などは皆無である。


低層階級の人間は、その体を近くの川などで洗ったり、川がなければ、井戸から汲み上げた水や、それを沸かしたお湯に手拭いなどを浸したもので、体を拭く程度で済ましているのである。

高級宿屋や、貴族の屋敷、金持ちの家等にお風呂はあるが、お水を一回に大量に使うことや、それを沸かすための薪や火の魔法を付与した魔石の使用は、一般人つまり、中層、下層階級の者にはそれ自体がとても高価なものであり、当然、家屋内にそれらの施設も無い。

だから、メトナプトラの宿屋『海老の尻尾亭(えびのしっぽてい)』に設置されていた『お風呂型魔鉱機・湯弐場(ユニバ)』何て言うものは最高級品なのである。23

ちなみに、これはエージが開発したものであり、将来的にジパング王国が輸出する商品として、ジパング王国に一番近い街であるメトナプトラのタスパに試験的に設置したものであった。

もちろん、エージは元々こちらの世界にいた人間であり、抗菌や除菌の知識があり、それらは湯弐場に実装されている。


※ジパング王国は鎖国しているが、全ての物の輸出入を制限、封鎖している訳ではない。


それだけお風呂というものは経済的に余裕のある者だけに許された贅沢な代物であり、単にお湯に浸かるだけなのだが、それが出来るのも自由に水や薪が使えるお金持ちだけであり、満足に水等が使えない者達には、高嶺の花、いわば、お風呂は『金持ちの道楽』の象徴なのである。


この世界に『温泉』が発達しなかった理由についてだが、温泉は本来、火山地帯に近いところから湧くため、先ずは、そこに行く必要があるのだが、この世界は、火山に限らず森や山などには、例外無く魔物がいる。

魔物がいる場所の中で、装備を外して、お湯にゆっくり浸かることは絶対にないため、臭いお湯が湧き出る場所があるということについては、知っていても、それに体を癒す作用がある事など、ここの人間には知る由もなかったのだ。

地中深く穴を掘って温泉を掘り当てる等というのは、温泉の効能を知っているから出来るのであって、知らなければ、先ず掘ろうと思うことすらないであろう。


「あのな、温泉は、浸かれば体の体調を整え、傷を癒し、肌は艶々(つやつや)の美肌となる奇跡のお湯なんやで!」

とゼリーが説明するとギルガの目が光り、大きく見開く。

「ん!?『傷を癒し』の次に何と言ったのだ?」

ギルガが食い付いた。

「艶々の美肌や!肌が綺麗になって、そら、そんな女やったら男にモテモテや!」

「な、なんと!それは本当か?!」

ギルガが身を乗り出す。


「アホ、嘘言うてどうするねん。それより、ヘルメス!こんなお宝をここにこのまま眠らせとってエエんかっちゅうことや!」

「ど、どういうことだ?」

当然ながらヘルメスはゼリーの言葉の意味にまだ、気付いていない。


「ヘルメスの親父さんの治める、この土地は税収が少ないんやろ?そしたらこの場所に、『温泉』をエサにして人を呼び込んだらどないや?

温泉の効能を謳い文句にして、ここを一大温泉街にして、湯治客や観光客をドッサリと呼び込んで、そいつらに金を落として貰うっちゅう寸法や!魔導バスの中で見てたみたいな感じに、ちゃんと回りの景色もええ感じに整えてな。」

「なるほど!それはいい考えです。」

トンキがすぐに食い付く。

魔導バスの整備を担当している彼は、いかに魔導バスの中の環境が素晴らしいものであるのかということについて、日々思い知らされていた。

今まで全く思い付くこともなかった、素晴らしい技術と、それを最大限に活かす手法。

ゼリーやエージが、異世界からの転生者であることを聞いてからは、それらゼリーらの革新的な考え方ややり方に心酔していると言っても過言ではなかった。


「私も良いと思います。」

ヴィスコも頷く。

彼女も同じであった。


「ここ一帯の土地と温泉の利権はヘルメスの親父(おやじ)さんなんやから、それを誰にも奪われんように、しっかりと書面で明らかにしておいて、後は、信用の置ける奴に温泉宿の経営を任せる。お湯は火山の地熱と地下水から取れるので、汲み上げの魔導機を造れば、後はお湯を汲み上げるだけや。薪代は要らんし、浴槽は岩を魔法でうまく組み合わせれば施設に大した金はかからへん。金をかけるのは温泉宿とか、ここまでに通ってくる道をキッチリ舗装して、馬車を通しやすくする。宿屋も貴族なんかが使う高級なもんから下層階級の者が使うものまで作っておく。身分(ごと)に分けて使えるようにな。それで、そこに泊まりながら、疲れた体を温泉で癒すんや。」

「なるほど、それはわかったが、本当にその温泉は体に良いのか?」

「入ったら分かる。ここのはめっちゃええ湯や!」

ゼリーが断言した。


こうして、ゼリープロデュースのヴェレリアント領、初の温泉街の製作活動が開始される事となった。


とりあえずは、ヘルメスの実家に戻り、バジルスにヒドラの件の報告をしてから、温泉街計画の話をすることになった。





ゼ「どやさー!ワイのプロデュースで温泉街が出来るで!まあ、詳しい話はヘルメスの親父に言わなアカンけどな。」

ヴ「凄いです。」

ト「最高ッス、どこまでもチームゼリーはゼリーさんに付いて行きますから。」

マ「そうなんす。」

おいおい、何を勝手にクランズ内にチーム作っちゃってるの?

まあ、面白そうだからいいけど。(*´∀`)♪

ゼ「エエんかい!」


新章突入したんで、気合い入れます。

ではまた次回をよろしく。⊂(・∀・⊂*)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ