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水無月蔵光の冒険譚  作者: 銀龍院 鈴星
第五章 甦る正義の血脈
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第128話 ヘルメス帰還

ヘルメス姫の帰還です。

第128話 ヘルメス帰還

ヴィスコは『据え付け型マソパッド』を、操作して道が整備されていない理由について検索した。


「えーと、サリドナと、ユブノ砦港間の道路の未整備についてっと…」

ヴィスコは初めての魔導機なのに、手際よく操作していく。

基本的な操作はマソパッドと同じの様で、直ぐに検索画面に辿り着く。


「あー、なるほど、そういうことか。」

ヴィスコが検索結果に納得する。

そして、蔵光とヘルメスにその検索結果を伝える。

「この道は、立て札とかは無いけど、事実上は封鎖されているみたいですね。」

と説明した。

ヴィスコの話によると、この道はヒドラの出現により、危険地域として指定され、立ち入りと通行の禁止措置がなされていた。

とは、言っても、ヴェレリアント家からの調査が入ったりして、事件後、しばらくは街への出入りが続いていたため、通行禁止の立て札とかを立てる暇が無かったようである。


「なるほど、そういうことか、よくわかった。」

蔵光も説明に納得する。


ヴィスコの検索結果によるとこの地域は、魔物の討伐記録の中にヒドラと思われる死体が無かったため、未討伐の魔物として手配がかかっている状態となり、ジョリアの街の近くは危険区域に指定され、その付近、約10km以内に住む、住民については、立ち退きを要請された。



また、ジョリアの街の中についても、周囲の防御壁が破壊され、魔物の侵入の可能性があるため、街の中に住む事が出来ないとの判断により、街の住民も避難させられたのだった。

避難した住民のほとんどは農家の者達であり、フォドンだけでなくサリドナの街にも避難者はいて、仮設の建物に住むこととなったそれら農家の者達等のほとんどが別の仕事をして収入を得なければならないなど、かなり苦しい生活を強いられていた。


ただ、サリドナの街の周辺でも農作物を作る農家の者達がいたため、一部の者達はそれらの人達の手伝いをすることで、何とか以前と近い生活ができている者もいるようであった。


サリドナの街の周辺はかなり開拓され、広大な小麦畑が広がり、それを見回りの者が警戒しているのはメトナプトラの冒険者と同じである。

畑を荒らされるという事は、農家の者だけではなく、街に住む者達にとっても死活問題となるため、警戒はかなり厳重である。

また、農作物を荒らす、動物等の駆除も、サリドナにある冒険者ギルドの冒険者がしっかりとやっているらしい。


蔵光らが、サリドナの街に着いた。

サリドナの街も、周囲に高さが約10m以上もある石垣でできた防御壁が囲っていて、門は南と東、北西にそれぞれ設けられ、同所は検問所にもなっている。


検問所には警備隊ではなく、兵士が警備に付いていた。

夏場のため、風通しの良い軽めの鎧を装備し、腰には剣を下げていて、街に入る者達をチェックしている。


そして、この大きな超高機動型魔導バス『プラチナスカイドラグナー』が塀の門前に現れた時は、門番兵士の慌てようは凄かった。

このような巨大な魔導車は、まず見たことも無かったため、最初は、得体の知れない魔物でも襲ってきたのかと思ったのか、腰の剣を抜き、戦闘体制に入った。

塀の中に作られている、休憩所の中からも何人かの兵士が飛び出てきた。

そして、何やら叫んでいる。

魔物が出たから住民に知らせろとでも言っているのであろうか。

その顔には、緊張と恐怖の表情が浮かんでいる。


プラチナスカイドラグナーは門の手前、約10mのところで停止した。

あまりにも近くだと、彼等が攻撃しかねなかったからだ。

当然ながら攻撃すれば、攻撃反射で痛い目をみるのは彼らである。


バスの側面にある出入口扉が開く。

中からまず、ヘルメスが降車した。

そして、それに続いて蔵光、ヴィスコが降車する。


兵士達は、最初、何が出てきたのかもわからなかったようであるが、人が降りてきたことで、初めてこのバスが魔導車であると認識した。


「と、と、止まれー!」

兵士の内の一人が叫ぶ。

兵士の中でも上司になる者なのか、回りの兵士よりは貫禄がある。

「こ、こ、ここはサリドナの街の検問所です!身元を改めますので、身分証明書を出して下さい!」

とかなり丁寧な言葉遣いで対応してきた。

直ぐに剣も納める。

恐らく最初は、高圧的になろうとしていたが、よく考えればこのような巨大な魔導車を所有している者ならば、下手をすればかなり身分の高い者である可能性があると判断したのであろう。


「よう、ヘクタ、元気だったか?」

とヘルメスが、声をかけてきた兵士に気安く声をかける。

ヘクタと呼ばれた兵士は一瞬、キョトンとした表情となる。

何故なら、こんな巨大な魔導車に乗っている知り合いはいないし、ましてや、現在は封鎖され通行禁止となっていて、本来は人がやって来る方向ではないジョリアの街の方からやって来たのだから無理はない。


「なっ?!誰だ?えっ?、」

ヘクタは動揺しながらも、自分の名前を呼んだ人物をよく確認しようと近付く。

そして、その人物が約5mくらい手前に近付いた時、初めてヘルメスだとわかった瞬間、飛び上がるほど驚いた。


「ひ、姫様!!」

ヘクタは驚き過ぎて、その場に尻餅を付く。

まさか、自分達の領主の娘が帰ってくるとは思っても見なかったようである。


「あはははは!何てざまだ、ヘクタ!そんなことでよく、門番が勤まるな?!」

とヘルメスがヘクタをからかう。

「ひ、姫様、いつ、こちらへお戻りを?」

ヘクタは恥ずかしそうに立ち上がりながら、ヘルメスに尋ねる。


「昼頃に、ユブノに着いた。先程、ジョリアの街の状況も確認した。お父様は屋敷にいるのか?」

「えっ?ユブノから、今日ですか?速すぎませんか?道も悪かったでしょうし…。あ、御館様はお屋敷におられます、すぐにお嬢様のご帰還をお伝えしますので…」

「それには及ばん、すぐに屋敷に向かう。ここを通してくれ。」

「わ、わかりました。えっと、お連れの方は?あっ、ヴィスコ様!お久しぶりです。それと、こちらの方は?」

「ジパング王国の水無月蔵光殿だ。丁重に扱うように。」

「か、(かしこ)まりました。」

ヘクタはすぐに検問所の大門を開き、プラチナスカイドラグナーを通した。


街の中でも魔導バスは目立ちまくった。

皆が、バスを指差して驚いている。

が、その前を、門番の一人が馬に乗り、街の者達にバスの通り道を開けさせるために、先導していたこともあり、大きな混乱は無かった。


街は、ヘルメス達が言うほど(さび)れた印象はなく、場所によっては逆に、活気に溢れたところもあった。

街の目抜通りには野菜や道具を売る商店などが立ち並び、食べ物を売る屋台なども街角に多数出店していた。

街の建物は、木造建築と石造りの家が混在していて、古いものは石を組んで作られた家であるが、新しいものは、木造に多かった。

これは、周囲の防御壁が出来るまでは、外敵を防ぐため、石を使って、壊れにくく強固な家屋を築く必要があったが、逆に木造の家屋は、防御壁が完成した後、それほど、建物の構造に頑丈さを求める必要性が無くなった事が、その理由であった。


当然ながら、ヘルメスの実家であるヴェレリアント家の屋敷の造りは、非常に硬い石で造られた地上三階、地下一階建てのまるで要塞のような家で、家の回りの塀も、防御壁と同じように石を組んで造られた頑丈な塀で囲まれ、上部には容易に乗り越えられない様に剣の様に先が(とが)った金属の板が埋め込まれていた。

これは、魔物の侵入もさることながら、この地域をヴェネシア王国が治め始めた当時、戦争が激しい地域であったため、建物自体が防衛拠点となっていた歴史があったからとも言われていた。


そのため、建物の窓は小さく、金属の枠がまるで刑務所の窓を想像させる様な造りを見せている。

塀の出入口部分は、大きくて頑丈そうな鉄の門扉が取り付けられていた。

門の前には、軽鎧の甲冑に身を包んだ屈強そうな門番の兵士が二人立っている。

手にはそれぞれ槍を持ち、油断なく周辺を警戒している。


先導していた門番が、屋敷の門番にヘルメス帰還を伝える。

その連絡を受けた門番が慌ただしく、屋敷の方へ走っていく。


しばらくすると、大勢の兵士と屋敷の使用人等も、現れ、大層な出迎えを受ける。

中にはハッサンの姿も見える。

どうも、先程のユブノの港町での歓迎と同じ様に、エイダー伯爵の部下の者達の広報活動により、かなりヘルメスの活躍が取り沙汰されているようで、凄い歓迎ぶりだった。

バスは塀の門を通ると、静かに屋敷の出入口前に到着した。

出入口扉の前には、執事長のハウザーが立っていた。


ヘルメス達がバスを降りると、ハウザーは軽く会釈をして、

「姫様、お帰りなさいませ、御館様が中でお待ちになられています。」

「わかりました。」

ヘルメス達がハウザーの案内で屋敷の中を進んでいく。

屋敷の内部は、外観から想像するほど、暗いイメージは無かった。

魔石では無かったが、燭台がいくつも(とも、)され、室内は比較的明るかった。

当然ながら石で出来た建物であるため、重厚感のある造りは否めないが、屋内は綺麗に整頓され、清潔感のある屋敷であった。

壁や床には磨きあげられた大理石が使用され、それに蝋燭の火がキラキラと反射し、幻想的な感じがしている。


部屋の数も結構あり、蔵光達は、二階の一室に案内された。

ここは、ヘルメスの父、バジルスの執務室であった。

室内は、屋敷の内部と同様に綺麗に整理整頓され、バジルスの机が部屋の出入口に向けて座れるように配置されていた。

室内の調度品は、それほど高級とは言えないが、きちんと手入れがされていて、持ち主の性格がよく分かる。


接客様の部屋ではないためか、ソファーなどは置いておらず、それらは隣の応接室に置かれていた。


「お父様、ヘルメス、只今戻りました。」

「うむ、よく無事で戻った。」

バジルス・カース・ヴェレリアントは年の頃は50代後半くらいで、身長は180cmの大柄、ガッチリとした体型で、顔はやや日焼けで浅黒く、頭髪はヘルメスと同じく金髪で、目の色も同じ様に青い。

武人としても知られており、厳格そうな顔付きで、目付きは鋭く、隙がない。


「先ずは、先日のハッサンに(ことづ)けたもの、ありがたく頂戴する。」

「あれほどの金子があれば、しばらくは我がヴェレリアント家の財政もしばらくは安泰だからな。」

「え?しばらく?安泰?」

ヘルメスがハッサンに渡したのは確か30万マスタであり、これでもかなり奮発していたと思ったが、流石にヴェレリアント家の財政をどうこうする程の額では無かったはずである。


「ま、ま、ま、それは、良かったですね、何せヘルメスは俺達のクランズのリーダーですからね。」

と蔵光がヘルメスの会話に割って入る。

ヘルメスがハッサンに渡したのは30万マスタだが、蔵光はヘルメスに黙って3000万マスタを託けていた。

さすがにそれがヘルメスにバレると何かと面倒なので話をそらそうとした。


「ほう、クランズの?で、君は何者だね?」

バジルスがヘルメスよりも年下に見える蔵光に問いかける。


「お父様、この方は我がクランズのメンバーで、水無月蔵光殿といわれるお方です。」

「みなづき、……あ!もしや、あの『龍を狩る一族』の?」

流石にヴェレリアント家程の家柄、特に武を志す者であれば、『水無月』の名前は伝説的な存在である。


だが、大抵の人間が龍を退治するだの、魔神を倒すだのと全く夢物語、空想上の話だと思われていた。



ト「姉御は姫様と呼ばれていたのですか。と言うことはかなりの上流階級ということですね。」

マ「俺達は姫様と一緒にいたのか、姉御には失礼なことしてばっかりしていたような。」

それは不敬罪で打ち首だな。

トンマッソ「ひー!お許しを!」

まあ、ヘルメスならそんなことは言わないと思うけど…


ではまた次回まで。

(´・ω・`)/~~バイナラ~!(死語魔法)



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