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水無月蔵光の冒険譚  作者: 銀龍院 鈴星
第五章 甦る正義の血脈
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第119話 雷鳥ヒダカ

空を飛ぶ変な魔物が登場しました。

第119話 ~雷鳥ヒダカ~

「お前達は、こ奴らの仲間か?」

そう雷鳥は蔵光達に喋りかけた。

「い、いえ私達は違いますが…」

ザビエラが慌てて答える。

「では、何故(なにゆえ)にお前達の船に戻ろうとしていたのだ?」

と更に質問をしてきた。

「それは、どういう意味でしょうか?」

とザビエラが応え、その質問の意味を問う。

「我と戦っていた者達が、急にその場を離れ、お前達の船に向かって行ったのだ、援軍を求めるか、この船に戻り、一度体勢を整えようとしたとしてもおかしくはないからな。」

と雷鳥はジロリと睨む。

「はあ、なるほど、それは、あなた様の一方的な見方であって、決して我々はあなた様と事を構える気は…」

とザビエラが説明しようとしたが、雷鳥がそれを遮る。

「黙れ!言い訳無用!下郎共!ここは我の縄張りであり、ここに侵入した時に、既にお前達は我の敵であるわ!」

と耳をつんざくかのような声が辺りに響き渡る。


バリバリバリーー!!

巨大な音とともに、曇りで薄暗い辺りが、稲妻の光で一瞬だけだが、快晴の太陽の下のように明るくなった。

雷鳥は、叫ぶと同時に船の真上から巨大な雷を落としたのだった。

しかし、それはまたしても、魔族と同じ様に蔵光の張った防御結界が弾き飛ばした。


「な?なんだと?我の雷を弾き飛ばしたのか?」

雷鳥の目が大きく見開かれる。

今まで、人間の張っている結界が自分の攻撃で持ち(こた)えた試しがないから驚くのも無理はなかった。


「それは、俺達に対する宣戦布告と受け取って()いのか?」

今まで、黙っていた蔵光が口を開いた。

雷鳥がその声を聞き、蔵光のその目を見た瞬間に背中に悪寒が走る。

まるで、自分と人間の力の差が逆転したような、そんな感覚に陥る。


「あ、いや、その、」

あれだけ大きな態度であった雷鳥の偉そうな口調がショボくなる。

「とりあえず、俺達に危険な魔法を放ったお礼だ。」

と蔵光が言った瞬間、手元にあった如意棒が物凄い速さで伸び、張られた結界を抜けて、その先端が雷鳥の腹部に当たる。

「グボオオォ!!」

雷鳥は口から何か変なものを吐き出しながら、後方に突き飛ばされる。

結界は自分達に敵意のないものは拒否しない。

そのため、当然、如意棒は透過する。


「おっと、逃がさないよ。」

蔵光がそう言うと、如意棒の先が変化して、ロープのようになり、雷鳥の首に巻き付く。


「ぐがっ!な、何だ、この棒は?はっ!?ま、まさか?お前は!」

そう雷鳥が言うや、如意棒はグイグイ雷鳥を船に引き寄せる。


「や、やめ、止めてくれ!た、頼む。我が悪かった、お前達の言った事を信じるから止めてくれ!」

完全に力の差を見せつけられた雷鳥は懇願する。

雷鳥は蔵光の『超剛力』の前に屈した。


「とは言ってもな…」

と蔵光がこの雷鳥の処分に困る。

一応、『裁定者』スキルの判定は◯判定であったが、なんせ、言い分も聞かず雷魔法をブッ(ぱな)す奴だ、このまま野放しには出来ないだろう。


だが、雷鳥は既に戦意を喪失している状態で、空中に浮かんでいる。

羽ばたかなくとも魔力操作で体を浮かせているのだろう。


その時だった、大きな雷の音に何事があったのかと、プラチナドラゴンズのメンバーがゾロゾロと甲板まで上がってきていたが、ギルガがその雷鳥に叫んだ。

「ヒダカ!そんなところで何を遊んでいるのだ?」

「な?だ、誰だ我の名前を知っているのは!?」

ヒダカと呼ばれたその雷鳥は、自分に呼び掛けた人物を見る。

「あ、あなたは、ぎ、ギルガンダ様?!どうしてこの船に?」

ギルガが人型に変化しているのにもかかわらず、ヒダカはギルガの正体に気付く。

一方ギルガは先程の雷鳴の原因がヒダカにあると直ぐに理解した。

「人に理由を聞く前に、あたし達にも謝ったらどうだ。」

ギルガにそう言われたヒダカがタジタジとなる。

「あ、いや、す、すま、すみませんでした。」

「お前はいつもそうだ、直ぐに自分の縄張りに入った者に雷を落とすから、後で後悔することになるのだ。」

「め、面目ない。」

ヒダカがそう言うと、ギルガが蔵光に、

「あれは、あたしの知り合いだ、許してやってくれないだろうか?」

「あーそう言うことなんだ、ま、◯判定だし、ギルガがそう言うんなら、別にいいよ。」

蔵光はそう言うと如意棒の拘束を解く。


「ヒダカ!こちらに降りてこい!」

ギルガはそう言うとヒダカに人化魔法『ジギン』をかけると、ヒダカは男の姿に変化した。


「服はオマケでつけておいたぞ。」

とギルガが付け加えた。

ヒダカは、人の姿では、体つきは細身で身長は170cmくらい、年齢が20歳くらいに見える。

髪の毛は金髪、顔つきは、アゴが痩せた感じで、目付きが鋭く、鼻は高めで、唇は細目、隙のない感じだ。

だが、先程、蔵光にやり込められているため、若干、おどおどしている。

ヒダカはギルガに言われた通り、船の甲板にゆっくりと降り立った。


「じゃあ、訳を聞かせて貰おうか?」

ギルガがヒダカから事情を聞く係となった。

ちなみに、先程、防御結界にぶつかって撃沈した5人の上位魔族達は、蔵光が水球で確保し、捕らえていた。

あとで彼等からも話を聞く予定だ。

「実は、(われ)が、雷雲の中で寝ていた時に奴等がやって来たのだ。」


話はこうだった。

ヒダカが、雷雲の中で寝ていたところ、何やら、雲の中が騒がしいので、起きてみると、先程の上位魔族達が自分を取り囲んでいた。

奴等は、ヒダカに睡眠魔法や麻痺の魔法をかけてきた。

だが、当然、魔力値が遥かに高いヒダカを眠らせることが出来ず、今度は、魔法攻撃をし掛けてきた。

それらも、当然効かないため、眠りを妨げられたヒダカが激怒し、彼等を追い掛け回していたという事らしい。


「一体、奴等は、ヒダカに何をしたかったんだろう?」

蔵光も頭を捻る。

「とりあえず、あ奴らにも話を聞いてみましょう。」

とザビエラが空中に浮かべられているヴァンガロスの上位魔族達の方を見た。

「そうだな。」

蔵光もそれに賛成した。


蔵光がヴァンガロスの上位魔族達を『裁定者』スキルで、確認した。

見事に全員が☓判定であった。

「ヴァンガロスの奴らって、こんな奴らばかりなのか?」

蔵光が呆れている。

「いや、そうではないとは思いますが、彼等は特別、気性の荒い者達ではないかと…」

「ふーん。あっそ。」

蔵光は、水球に首だけ出した格好の魔族達全員を宙に浮かべた状態から移動させて、自分達の前に並べた。


「さて、自分達はヴァンガロスの魔族の者で間違いないか?」

と蔵光が尋ねる。

見た目は人間のお坊っちゃんなので、魔族達も見下す態度をとるかと思われたが、ヒダカを手玉に取った手腕を目撃していたからなのか、思うほどには反抗的な態度は示さなかった。

しかし、蔵光の質問には答えず、黙っていた。


「拷問でもしますか?」

ザビエラが蔵光に確認する。

それを聞くと、魔族達は体をビクッと反応させる。

「いや、そんなことをしても喋らないだろうな…まあ、仕方がないからゼリーにでも頼むかな。」

蔵光がそう言ってゼリーの方を見るとゼリーはギルガと一緒にヒダカと喋っていた。

古龍に雷鳥にエンペラースライムと超の付く魔物達が井戸端会議をしていた。


「ゼリー、こいつらを喋らせたいんだけど?」

蔵光がそう言うとゼリーは、話を中断して、

「わかった、ちょっと待ってや。」

と言って蔵光の近くにやって来た。


「何や、こいつらうたわへんのか?」

と刑事ドラマさながら、警察用語を使う。

ちなみに警察で『うたう』は白状するという意味で使用されている。

まあ、我々の現実世界では黙秘する犯人に手を出すことは禁じられているが、こと、魔法世界マーリックでは、魔族などは自白に拷問を用いる場合がある。


ゼリーが魔族達の前に立つ。

ザビエラが言うように、彼等は全て上位魔族であるみたいで、下位の魔族よりは体が大きく、平均して身長が3m近くある。

魔力値も10万M以上はありそうだ。


ゼリーはそんな彼等をどうしようというのだろうか。


「はい、そこの兄ちゃん、こっち見て。」

ゼリーがそう言って、彼らのうちの一人に声を掛けた。

その魔族がその言葉に何気なく振り向いたときに、既にゼリーの魔法は発動していた。

その魔族はゼリーの目を見た瞬間に、その脳内に催眠魔法を展開された。

ゼリーの魔力値は1億M以上であり、魔力値が10万M程度の魔族に抗えることは出来なかった。

完全にゼリーの魔法に操られてしまった。

「自分等は、ヴァンガロスとかいうとこの魔族に間違いないんか?」

「ああ、そうだ。」

何の抵抗もなくその魔族は答える。

慌てたのは他の魔族だ。

「お、おい、お前!何を喋ってるんだ!黙ってろ!」

と制止するが、催眠魔法をかけられた魔族の男には、その声が全く耳に入っていないようであった。

ゼリーは更に質問する。

「何の目的で、誰に指示をされた?」

「我々の住むヴァンガロスより南にあるジェノマという地区の魔族達がギルガンダという古龍を隷属させようとしているとの情報が入ったため、それに対抗する手段として、古龍の力に匹敵すると言われている雷鳥を捕獲しろと、我らが魔王ゴッデスダーク様が命令したのだ。」

とその魔族はスラスラと答えた。

他の魔族達は、仲間があまりにもアッサリと喋ってしまったので、唖然とする者がいたり、ガックリとうなだれている者がいた。

ゼリーが使った催眠魔法は、まあ、ある意味『自白魔法』とも言えるであろう。

痛みを伴うことなく本人の意思に反して、白状させてしまうのだから、恐ろしいことこの上ない。


「ゴッデスダーク…うーんその名前、どこかで聞いたことがあるような…」

ゼリーが思い出そうとしたが思い出せなかった。


とりあえず、彼らの目的は判明した。

ジェノマが手に入れようとしている古龍に対抗するための戦力を確保するために雷鳥を捕獲しようとしたのだった。

まあ、ジェノマはもう、そのような状態ではないし、他の地域に侵略をしようなどとは思ってもいないのだが…






マ「ギルガさんの知り合いって言ってたけど、ヒダカって、どんなやつかな?」

ト「何か危なそうだな。」

マ「いきなり魔法を打っ放す奴だからなあ。」

ト「まあ、ザビエラ様の話ではギルガさんも最初は蔵光さんにいきなり炎を吹いたとか。」

トンマッソ「野蛮だよねー!」

まあ、強いのは強いみたいですけどねー。


それでは次回もよろしくお願いしまーす。

(●´∀`●)∩

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