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水無月蔵光の冒険譚  作者: 銀龍院 鈴星
第五章 甦る正義の血脈
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第118話 雷の聖獣

何かまたトラブルです。

第118話 ~雷の聖獣~

「とまあ、こんな話や。」

とゼリーがチョッコ・クリムの悲話を話し終えた。

ほとんどのメンバーがこの話しに涙していた。

「うわあああん!チョッコさん可哀想ですぅ!」

ヴィスコが号泣する。

「しかし、魔族を大虐殺して、次元幽閉300年の呪いとは、いやはや…」

誠三郎も驚きを隠せない。

「でも、ゼリーはカキノタ村で村長から、この話を聞いた時、初めて聞いたような反応だったけど?」30

とヘルメスが尋ねる。

「あーあれか?あれは自分の記憶との刷り合わせやな、まあ、実際と伝承が違うときもあるけどな…」

「なるほど、そういうことか。」

ヘルメスは納得する。

「で、水覇様の呪いはいつ、どこで解けるのでしょうか?」

泣いていたヴィスコが、涙目で尋ねる。

そこは、知りたがりの性格としては、是非とも聞きたいところなのだろう。

「とりあえず封印は300年後解けるっちゅう話なんで、まあ封印解除はあと数日やな。でもな、問題はその場所や、その記憶だけスッポリ抜け落ちとるんや、封印されたことも、封印が解ける時間や場所等も、ミズハノメ様から聞かされたはずやのに…場所だけがわからへんのや。」

「え!それって?」

「そういうことや、封印された場所がわからんかったら、封印が解かれても意味ないわな。もう二度と会われへんわ。相手もそこにずっと()る訳とちゃうやろしな。」

とゼリーが言うが、そこには残念とか、悔しいと言う気持ちは感じられない。

「でも、何かそれって、寂しいですよね、何とか会わせてあげたいですよね。」

とマッソルが言う。

彼はネーミングセンスもさることながら、見た目にも関わらず繊細な心の持ち主であった。


「会えない事はないと思いますけどね。」

そう言ったのはオルビアであった。

「まさか?例の能力を?」

とヘルメスが尋ねる。

彼女には『先見の乙姫(せんけんのおとひめ)』という未来を透視、予知する能力がある。

「ええ、でも、未来確定がハッキリとしていません、ぼんやりしていますから。ただ、否定的な感じではないので、会えるのかなと思います。でも、会えたとしても、それが必ずしも良い結果になるとは思えませんけど…」

「それって、あまり良くないってこと?」

「うーん、それも確定がしていないので、多分ゼリーさんの判断で『会う』『会わない』を決めるのではないかと…」

「そうなんだ…」

ヘルメスは、その言葉に何か心の中にモヤモヤとしたものが残っていた。


エイダーことエイダー・ドズ・グラフタールの所有する軍船エスカルディア号は、プラチナドラゴンズのメンバーが話をしている間にも、順調に海上を進んでいたが、北西からの雨雲はまだ、北の空に居座っている。

雲の中で稲光がしている。

あの雲の下の海は大嵐だろう。

こちらの方も分厚い雲が立ち込め出してきている。

雨が振りだすのも時間の問題であろう。

風はやや向かい風だが、帆船は前に進むことが出来る。

あと1日あればヴェレリアント領にある砦港に到着する予定なのだが嵐になればそうはいかない。

どこへ、流されてしまうかわからないからだ。


だが、あの雲の様子がどうもおかしい。

普通ならこちらに流れて来るはずなのだが、一向に動く気配がない。


「あの雲の中に、いくつかの気配がするな…」

甲板に上がってきていた蔵光が、視線の先にある黒雲を見つめながら言う。


ザビエラも隣にいる。

いつでも主の指示に対応できるように待機しているのだ。

「様子を見てきましょうか?」

「いや、この感じだと何かの魔物と、何人かの魔族が戦っているようだし、邪魔をしてもなあ…」

「そうですか、わかりました。でも、海上で魔族が戦闘とは、空中戦になっているのであれば上位魔族があの中にいるようですね。」

ザビエラも魔力値が魔王級以上に跳ね上がり、自分自身もそれを自覚しているのだが、ザビエラ本人でもあんなに遠くの距離にある生命体感知は正確に出来ない。

それに、以前もそうであったが、今でも蔵光の魔力値があまりにも高すぎて、勝負をしても未だに全く勝てる気がしない。


『しかし、あんなところで上位魔族が何をしているのだ?ここから近いのはジェノマだが、こんなことは恐らくしないはず、とすると、どこの地域の魔族だ?』

ザビエラが色々と考えていると、雨雲の方から、こちらへ向けて、何かが飛んできている。


「魔族だな。」

蔵光が落ち着いた口調で話す。

ザビエラもそれを見ながら、状況を解説する。

ザビエラも蔵光に劣らず、夜間や曇り空等の時に飛躍的に視力が良くなる。

そのため、近くに接近してきた者達がどのような者達かハッキリと捉えていた。

「5人ですか…あと、何かその後から追いかけているようですね。」

「空を飛ぶ魔物か…ドラゴンでも無いようだけどかなり大きいな。」

「あ、あれは、雷鳥(サンダーバード)です、体に雷を纏った恐ろしい魔物です。上位魔族が束になっても敵う相手ではありませんが…」


ここマーリックに住む雷鳥は、こちらの世界の高山に生息するような可愛い鳥ではない。

ザビエラの説明のように、帯電体質の体には常に高電圧、高電流の電気がまとわりつき、それを魔法操作により、自由自在に操る。

そして、生息場所は雷雲の中という変わった魔物で、国によっては聖獣とも言われている存在だ。

当然、見つけることさえも至難の技と言われていて、その強さと、個体の確認数の少なさから討伐は困難であり、ギルドではSS級に指定されている。


「あれは、ジェノマの北部にいるヴァンガロス地区の上位魔族ですね。何度か戦闘で見かけたことがあります。」68

とザビエラが話す。

「ああ、好戦的とか何とか言ってた?」

「ええ、そうです。あ、奴ら、この船を見つけたようです。こちらに来ますね。」

ザビエラの言った通り、ヴァンガロスの上位魔族と思われる魔族達がこちらにやって来た。

雷鳥と交戦中なのに、こちらに敵意を見せてくるとは、かなり、おかしな連中だ。

そのおかしな奴らが物凄い勢いで船に近付いてきた。

このままでは、まるで、突進して船を丸ごと破壊するつもりなのであろうか。

魔族達は速度を緩めることなく、どんどん接近してきた。

「こ、これは!この船に体当たりでもしてくるつもりか!?」

ザビエラが叫ぶ。

いくらヤイダ樫で造られた軍船と言えども、上位魔族が魔力を纏って体当たりすれば、ただでは済まない。

だが、蔵光は微動だにしなかった。

「えっ??あっ!そ、そうでした。」

ザビエラがそれに気付くと同時だった。

ヴァンガロスの上位魔族どもが、軍船エスカルディア号に突進した。

だが、彼等の突進は船体に届くことはなかった。

何故なら、彼等と船の間には蔵光が最初に施した防御結界をさらにマストまで拡張した特殊な結界が張られていたからだった。107

上位魔族達は、結界の壁に激突し、血飛沫(ちしぶき)を上げて海に墜落していった。

交通事故で言えば正面衝突だ。

彼等としては、軍船を突き抜けて海に飛び込むつもりであったのであろう。

そうすれば、雷鳥の追跡からは何とか逃げる隙を作ることが出来ると踏んだのであろう。

だが、彼等の目論(もくろ)みは微塵に砕け散った。

相手が悪すぎた。

蔵光の防御結界は魔力値が億単位と言われている古龍の炎ブレスさえ跳ね返す。


「あーあ、痛そうだな。」

ザビエラが憐れむような表情で海面を見る。


そして、さらにその後方から追跡してくる雷鳥を見た。

流石に雷を操る魔物、物凄い速度で追い付いて来ていた。

既に、エスカルディア号の手前、数十mのところでホバリング状態で停止していた。

体長は約40~50mはあろうか、全体が鷲や鷹などの猛禽類の体に近く、その体にはプラズマのような雷の帯を纏わせている。

その目は金色に輝き、(くちばし)も体に見合った大きさを持っていたが、その大きさに反してその先端は非常に鋭利であり、どんな生き物の体であっても食いちぎれる程の鋭さを持っていた。

翼も大きく強く、そのひと(あお)ぎは、普通のドラゴンでさえしのぎ、そして、体から延びる二本の強靭な足には鋭く大きな鉤爪があり、一度それに捕まえられれば、決して逃げることは出来ないだろうと思われた。

また、羽は一枚一枚が虹色の様に美しく、そしてそれら全てが大砲の砲弾でさえ弾き返しそうな硬さを持っていた。

まあ、見るだけでも、上位魔族では敵いっこないと思わせるほどの威厳を持っていた。


「お前達は、こ奴らの仲間か?」

雷鳥がしゃべった。

ということは、かなり成長した古い個体であると思われた。

若い個体は、まず人語を解すところまでに至るまでに200年はかかると言われている。

そして、片言でしゃべれるまでには、さらに300年かかると言われていて、都合500年はかかる計算だ。

何故、それほどの時間がかかるのかというと、単に、人語を理解をするための脳の構造が人間程発達していないことと、口の構造がしゃべるようにできていないためだ。

本来、人語を喋るためには、脳の構造に加えて、舌と唇、呼吸、歯の構造に加えて聴力による聞き取りの力等が揃っていなければ、ハッキリとした言葉は喋ることは出来ない。

すなわち喋るためには、それらのことを全てクリアせねばならず、単に鳥などが口真似をするのであれば喉の構造を使って発声する九官鳥のようになるだけである。

だが、稀にこちらの世界でも、明らかに人間の話を理解して喋っているのではないかと思われるような動物が話題になることがあるが、それは、もしかしたら、こちらの世界の動物が転生した姿なのかもしれない。

まあ、そのような話はさておき、今回の雷鳥の場合は、喉の構造は九官鳥のように、それほど発達はしていないため、流石に、そのままでは絶対に喋ることはできない。

そのため、口等の構造のサポートとして、魔法の力を借りて、喋っているのだ。

彼等の使用する魔法は人間の使用する魔法とは少し違う。

魔力値が相当高ければ、魔法が使えるかと言えばそうではない、火や水などの魔法は人間であれば根元素理解というものを経て、ようやく使用することができる。9

根元素理解とは、つまり、火や水等の組成構造の根源と元素の構造式を理解して初めて使用することができるのだ。

それに、本来、魔法は空中において、固定された術式を言葉により詠唱した上で、それらを結合させて、発生させなければならないため、言葉を操ることの出来ない魔物達では人間の使用する魔法は普通、使うことはできないという理屈だ。

彼等の使う魔法は外見上は人間の使用する魔法に似ているが、実際は古代魔法に近く、魔物は人間にはない器官を使ってそれらを行使していることが多い。

例えば、我々が住むこの世界でも人間には体に微弱な電気が流れているが、他者に影響を及ぼす程のものではない。

しかし、電気ウナギなどに見られるように、他の動物にも影響を与えるほどの高電圧の電気を発電する動物が存在し、それは人間界には存在しない。

あれも、いわゆるひとつの魔法の器官と思われなくもないだろうか。

だが、動物界などにはそういった特殊な器官を持っている個体が存在しているのだ。

そういった事で、マーリックも例外ではなく、そういった魔法を展開する器官を持つ特殊な個体のひとつが雷鳥なのである。

それらを利用して彼等は喋ることが可能になっていると思ってもらいたい。

かなりこじつけだが。





ト「雷鳥じゃないですか!?ヤバいですよ!」

マ「えっ?そんなに?」

ト「昔、雷鳥の怒りに触れて国が滅ぼされたと言う伝説があるよ。」

マ「それって何かエンペラースライムに似てるよね。」

ト「うーんそうかも、まあ危険なのは間違いないね。」

あー言うの忘れてたけど、気付いてる人もいると思うけど、この間から、文章の途中にある変な数字が書いてあると思うけど、それはその前にある文に関係のある話が出ている話の回の数字なんで、間違ってませんから。


それでは、次回もよろしく。

⊂(・∀・⊂*)そいや!

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