第116話 チョッコ冒険者となる
チョッコの黄金期です。
第116話 ~チョッコ冒険者となる~
グランマリオンにおいて、チョッコは、魔法に関してあらゆる面で才能を発揮した。
全ての元素魔法を自在に操り、特殊な補助魔法もこなしていった。
また、付与魔法に至っては、作成困難と言われていた、空間魔法を利用したアイテムバッグをいくつか作成した。
本当は、いくつも作れたのだが、魔法研究棟の研究員らから、あまりにも危険な代物と判断されたため、作成を中断した。
現代に残っているアイテムバッグは、超希少価値のあるものとして、国宝級に保管管理されている。
まあ、そんな事をされたら、バッグの意味はないのだが。
そして、当然ながらチョッコの成績は常にトップであり、他の生徒の追従を許さなかった。
ただ、チョッコ達の学年は、チョッコだけでなく他の学年に比べても非常に優秀であった。
というのも、チョッコに刺激されたというのもあるのだが、やはり、入学初日に黒龍が学校を襲ってきたことが、彼等の危機感を煽ったのであろうと思われた。
いつ、あの恐ろしい黒龍に遭遇するかも知れないと思うと、生半可な覚悟で魔法の勉強をしていては、いざというとき命を守る事はできないと全員が感じていた。
そのため、ジュリーことジュリエッタ・ラムダ・ギャラダストは、チョッコには及ばなかったが、学年第2位の成績で、学校の魔法研究棟の研究員になった。
そして、最終的には学校長の次に権威のある、魔法研究長に就任し、数々の研究成果を発表し、当時でも結構知られていたグランマリオンの名前をさらに広く世界的に有名にすることになる。
ジュリーは学校長にもなれたのだが、元々貴族の家系であったため、政略結婚をさせられる羽目になって、研究長も20代で辞める事となった。
また、エミリアことエミリア・サムソライトも学年第3位の成績を残し、卒業後は軍部志願でグランマニアにある、タイトバイトスの皇室付きの魔法使いとして名を残す。
皇室では、タイトバイトス初の女性だけによる『皇室付魔法特別機動部隊』通称『魔法特機』を立ち上げることとなり、行幸行啓などの皇室行事の護衛にあたり、実績を残す。
チョッコは、特進していたのだが、学校には都合、5年間在学していた。
約2年で、ほぼ全ての習得科目を修め、残りの3年間は魔法研究棟に入り込み、アイテムバッグの研究をはじめ、様々な魔法研究を行った。そして、その研究成果をジュリーに引き継ぎ、首席卒業した。
チョッコは学校で誰も成し得ないような凄い成果を残しながら、冒険者ギルドの冒険者として野に下った。
そして、首席特権として、冒険者としての国に対する活動報酬の一部納金制度の免除を受ける。
だが、チョッコは全く、冒険者の道を選んだことに悔いはなかった。
それよりも、憧れの水覇と同じ冒険者として、活動出来ることに喜びを感じていた。
学校に在学中、一度だけ水覇が学校にやって来たときがあった。
それは、チョッコが、魔法研究棟に入り浸っている時だった。
チョッコの噂を聞き付けた水覇が、チョッコを勧誘にやって来たのだった。
水覇は正直に勧誘の理由を話した。
自分は、戦闘や水に関係する魔法に関しては問題は無いが、どうしても黒龍を退治する時に、相手に『空間魔法』を使用されたとき、魔法が相手に干渉しないため、逃げられる事があるのだと。
そして、それを打破するためにはチョッコの使用する空間魔法の力が必要であり、その力を借りたいと…
今まで、何人かとパーティーを組んだが、自分に合う冒険者はいなかった。
自分との力の差を見せ付けられ、パーティーを離れていく者が何人もいた。
『あんた、一人だけで十分じゃないの?』
と言われた事もあった。
だが、本当の理由はそれだけではなかった。
彼等は総じて黒龍を倒すことを使命とする水覇の宿命に恐れを持っていた。
命あっての物種だ、黒龍を相手にするなど、普通の冒険者なら絶対に考えもしない。
黒龍を相手にするということは、常に自分達を命の危険に晒すことになるからであった。
そんな、危険な使命を持つ人物とパーティーを組もうなどと思う人間はまずいない。
だから、水覇は普通の人間は仲間には出来ないと思っていた。
だが、水覇は覚えていた。
5年前、黒龍を相手に一歩も引かず、さらには手傷を負わせた少女がいた事を…
水覇は空間魔法だけでなく、他にもあらゆる補助魔法を使うチョッコを自分に足りないものを補ってくれる存在として見ていた。
そのため、水覇としては自分の仲間として非常に欲しい存在だったのだと話した。
普通であれば、チョッコのような首席の成績を持つ生徒ならば、国の機関に所属することになるため、直接交渉でもしなければ仲間になれる機会すらないため、ここにやってきたのだと説明した。
チョッコは当然、この話で水覇は自分を単なるパーティーの要員、悪く言えば『道具』として見ているとすぐにわかったし、水覇もそのようにわかるように話していた。
それは、チョッコに、この話を断りやすくするための水覇の心遣いであった。
だが、チョッコは『道具』でも構わないと思っていた。
何故なら、勧誘の理由などいくらでも作ることが出来るが、水覇は正直な気持ちを隠さずに話してくれた。
水覇を好きであるという気持ちも理由の一つだが、その真っ直ぐな気持ちがチョッコの気持ちを突き動かした。
当然、答えはイエスであり、卒業後は冒険者となり、水覇の仲間になることを確約したのだった。
そのため、チョッコは学校在学中に冒険者の登録を済ませていた。
そして、グランマリオン卒業後は、正式に冒険者としての活動を開始した。
当然、グランマリオンの首席魔法使いが冒険者ギルドの冒険者になったと、鳴り物入りで入ってきたものだから、他の冒険者はこぞってチョッコを勧誘してきた。
中には、上から目線で、『入れてやってもいいぞ』みたいな勘違いパーティーもあったが、チョッコはそんな奴等には目もくれず、直ぐに水覇とペアを組んだ。
水覇もこの頃には、既に超有名な一匹狼の冒険者として名高い人物となっていたため、誰も文句を言うものはいなかった。
逆に、あれほどソロの冒険者を続けていた水覇が仲間を作るなど思いもよらなかったようだった。
まあ、本人としては仲間を作らなかったのではなく、仲間が水覇の本当の使命を知り、恐れをなして逃げていったため、一人にならざるを得なかったからなのだが…
それに、黒龍を狩るという使命は他言無用のため、仲間になった者以外は知ることもなく、当然、口外すれば自分の命が危うくなるため、誰も喋ることなく、『一匹狼の冒険者』という噂だけが一人歩きしていたのだ。
水覇とチョッコは精力的に黒龍を退治した。
それまで、水覇が逃げられていたこともあり、数が増えていたので、その分も取り返すかのように世界中を飛び回った。
当然、負の魔素が噴出する『魔素口』の封印も行っていた。
水覇とチョッコは、ペアの冒険者として、さらに3年の月日が流れていた。
この時、水覇は23歳くらいで、チョッコも18歳であった。
二人はSSS級の冒険者として、既に不動の位置にいた。
世界各国から指名依頼のクエストも入るようになり、依頼者は半年待ち、一年待ちは当たり前になっていた。
「水覇さん、今度の依頼は結構、期間が長いですけど、いいんですか?」
チョッコが水覇に尋ねる。
この頃のチョッコの言葉使いに訛りはない。
世界を回るうちに修正したようだ。
ここは水覇とチョッコが居を構えるジパング王国にあるホンシュ島の一軒家である。
水覇はまだ、家督を継いでいないため、相続前の冒険者という状態のため、王国に住んでいた。
この時、二人は既に男女の関係になっていて、チョッコのお腹には小さな命が芽生えていた。
チョッコの猛烈なアタックに水覇が押しきられたようである。
「あ、ああ、メトナプトラのノースヨーグ砦の件だね。」
「はい、ある程度、砦自体は出来ているようなんですが、かなり大きくて、あと、森や砦の建設予定地に大きめの『魔素口』があるらしくて
、その辺りの建設が長引いているみたいなんです。」
「うーん、じゃあ、二人で少し手伝おうか?」
「そうですね。」
二人は、メトラプトラのジヨーグ地区の北部にあるノースヨーグという地域に建設されるという、砦の結界を張るというクエストを受注していた。
全長が150km以上にも及ぶ砦ということで、大規模な工事が行われていた。
砦の中に街をまるごと作るという、計画で国を上げての一大事業となっていた。
既に、ほとんどの作業は終了し、後は、負の魔素が噴出してきたという、砦内の『魔素口』の封印や建物全体の防御結界を張る作業が残っていた。
二人も、それが完成後は、この砦に住むつもりであり、既に居住区画も確保していた。
まあ、それも水覇が家督を相続するまでの間なのだが、二人にとってはこの時が一番幸せな時期であったのかも知れなかった。
現場である、ノースヨーグでは、チョッコが土魔法で砦建設の手伝いをしたり、水覇が部分的な防御結界を張るという作業を繰り返していた。
まだ建物自体は完成していないため、建物全体の結界が張れず、部分的な結界を張るに止まっていた。
だが、砦の街には、連日、続々と人がやって来て、既にかなりの数の住民が移住を始め、皆が、この新しい巨大砦に夢と希望を持っていた。
そんな時であった。
ノースヨーグ砦最大の悲劇が訪れようとしていた。
ヴ「文献で伝えられていた通りです。」
ト「史実ですか。」
マ「同級生の方もすごいです。」
ヴ「まあ、あの方達も伝説になっていますから。」
ト、マ「へー!」
まあ、国の中で選ばれた子供達だからね。
今後の話しに少しでも出てくれば面白いかもね。
本日はここまで。
次回もよろしく。⊂(・∀・⊂*)やー