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水無月蔵光の冒険譚  作者: 銀龍院 鈴星
第五章 甦る正義の血脈
115/164

第115話 天才魔法使いと呼ばれて

チョッコ頑張りました。

後半は学校紹介です。

第115話 ~天才魔法使いと呼ばれて~

あの恐ろしい黒龍が、目を閉じている間に、首を切断された状態で死んでいた。

そして、その横で笑って立っている一人の少年。

まあ、どう見ても、この少年の仕業であるとしか思えないような状況である。


「ど、どうなっているの?あなたは誰?」

チョッコは思わず名前を尋ねた。

「ははは、俺の名は水無月水覇(みなづきみずは)、この黒龍を倒すことを仕事にしている。」

そう言った、この水覇という少年は、年齢が14~15歳くらい、今は成長期なのか、身長はあまり高くなくて、どちらかと言うと低い方だった。


「何人か黒龍にやられちゃったけど、君が、時間を稼いでくれたから、何とか被害の拡大が防げたよ、ありがとう。」

水覇がチョッコに礼を言う。

「あっ、いえ、」

チョッコは顔を赤くして下を向く。

無謀にも黒龍に向かっていって殺されそうになったのだから、あまり自慢は出来ない。


チョッコはとりあえず、自分の怪我を治癒魔法で治療し、傷を塞ぐ。

回復魔法は体力は回復するが、魔力は戻らない。

なんとか、立ちあがり辺りを見る。

最初は、あまり良く分からなかったが、よく見ると、校舎の一部はかなり破壊されたり、植樹が薙ぎ倒されたりしている。

ここで激しい戦闘があったようだ。


チョッコが水覇に話を聞くと、彼は冒険者ギルドの冒険者で、たまたまタイトバイトス皇国に調査に来ていたらしく、ファラリアスが警備隊や冒険者ギルド等、いくつかの関係機関に飛ばした『伝書つばめ』でこの事態を知って来たという事だった。44


彼は、ジパング王国という国の出身で、黒龍を倒すことを宿命付けられた『龍を狩る一族(ドラゴンスレイヤーズ)』の血族ということらしい。

今は、冒険者ギルドに登録し、従者を一人連れて、武者修行中ということであった。


「まだ、何人か残っているみたいだな、あと、地下にも…」

「えっ?地下?」

実は、学校に黒龍が侵入してきたとき、塀の魔石に込められていた結界魔法は正常に作動していた。

だが、やはり黒龍の魔力には抗えず、結界は破壊され、侵入を許してしまったのだ。

学校側は直ぐに出来るだけの生徒を地下に避難させていた。

また、黒龍には戦闘職の警備の職員が対応していたようである。

チョッコ達の見たあの死体は黒龍に挑み、殺されてしまった職員の死体であった。


黒龍は、生徒や教師を狙い、やって来ていたようであるが、ここ最近、この黒龍の被害や目撃情報が頻繁に冒険者ギルドに入ってきていたので、水覇にも依頼が掛かってきていたのだった。


いつもであれば、黒龍が人を襲い、食い付くした後で、駆けつけるため、後手後手になっていた。

先日は、水覇がうまく駆けつけたが、運悪く相手も直ぐに水覇に感付いてしまい、空間魔法を展開されて亜空間に逃げられていた。


そして今回は、黒龍の次の狙いがわからなかったため、多少、被害が出てしまったが、何とかチョッコが時間を稼いでくれたお陰で倒せたようであった。


ファラリアスも地下に避難していたようで、地上が静かになっていた様子だったため、ひとりで様子を見に上がってきていた。


教師として、生徒を危険に晒して、自分達だけ逃げてしまった事実は消すことはできない。

地下にいたとき、自責の念が彼女を締め付けた。

地上が静かになったとき、チョッコも恐らく黒龍に殺されてしまったのではと感じた。


自分は教師としてとんでもないことをしてしまったのではないかと思い、慌てて上に上がってきたのだった。


だが、死んだものと思っていた生徒が生きていので、ファラリアスはチョッコの姿を見つけて驚く。


「チョッコさん?!」

「あ、先生!」

チョッコもファラリアスを見つけると、ファラリアスのところに駆けて行き、ファラリアスに飛び付いて抱きつく。


「うわあああ!」

ファラリアスに抱きつくなり、チョッコは号泣する。

前世の記憶があっても、魔力が強くても、心も体も今は10歳の子供である。

黒龍に殺されそうになるという、極限に恐ろしい目に遭った緊張が、ファラリアスの顔を見て解け、その途端に、体に恐怖が甦ったのだった。

ファラリアスに抱きついた時、その安堵感からの大泣きであった。

ファラリアスも、チョッコを置き去りにしてしまったことに対する申し訳ない気持ちでいっぱいであった。

この子は黒龍という恐怖の存在に対し勇気を振り絞り立ち向かって行ったのだ。

怖くて恐ろしくて誰もが逃げてしまう状況であっても、皆を守るために自分を犠牲にしてでも、黒龍の前に立ちはだかったのだ。

そう思うといたたまれない気持ちになる。


「ごめんなさい、ごめんなさい、貴女を置いて逃げてしまって…本当にごめんなさい…」

ファラリアスも、チョッコを抱きしめ、涙を流しながら何度もチョッコに謝る。



しばらくして、ファラリアスが側に立っている水覇に気付く。


「あなたは?」

「俺は冒険者ギルドの冒険者で水無月水覇と言います、伝書つばめの手紙を確認してやって来ました。」

「えっ?あの伝書つばめを見てって?飛ばしたのはついさっきだったはず…」

ファラリアスは水無月家の人間の驚異の移動速度を知らなかった。

絶対に早くても二日はかかると思っていた。

だから、学校の被害がどれ程になるのか予測がつかなかった。

全員殺されてもおかしくない状況であったのだ。


「あの黒龍は、貴方が?」

ファラリアスが首を飛ばされた黒龍を見て確認する。

「はい。冒険者ギルドには今から連絡を入れますので、これは持って帰りますね。」

そう言うと水覇は黒龍を巨大な水球に包んで浮かせる。


「あ、あの!」

チョッコが帰ろうとした水覇に声をかける。

「ま、また会えますか?」

水覇は笑いながら、

「もちろん。また来るよ。」

そう言うと飛ぶように学校を去っていった。

チョッコの一目惚れであった。

自分の命をギリギリのところで救ってくれた正義のヒーロー、惚れない理由はなかった。

「水無月水覇様…」

チョッコは水覇の去っていった方角をずっと見つめていた。


その日、学校は、亡くなった職員の遺体を回収し、遺体は講堂に安置された。

職員の家族を呼び、事情説明と遺体の引き取りが行われた。

いやらしい話だが、今後は、遺族と死亡補償に関して、お金の話になる。

また、その数日後、ギルドの調査員が学校に訪れ、黒龍が襲ってきた時の状況について、学校職員から聴取していた。

今後の黒龍対策の参考とするためだ。

また、水覇が討伐した黒龍は研究対象として国の研究機関にかなりの高額で買い取られた。


こうして、再び、学校に平穏が訪れた。

遅れていた日程も、ようやく一週間後に通常に戻り、何とか、無事に入学式も終わった。

なお、今回は新入生が10人であったため、クラス割りはなく、1クラスだけだった。


チョッコは、既に学校で、とんでもない程の人気者になっていた。

『グランマリオンの救世主』

『黒龍を追い詰めた天才魔法使い』

等と呼ばれて持て(はや)された。

黒龍に一撃を与えて、のたうち回らせたところを見ていた生徒達が言いふらしたのだ。

当然、それを見ていた職員も学校長に報告した。

チョッコは教師や上級生からも一目置かれる存在となり、チョッコの回りには常に人だかりがあった。


「あー疲れるぅー!」

チョッコが教室に戻ると自分の机に突っ伏した。

「仕方がないじゃない、誰もが倒せないと言われていた黒龍を魔法で傷付けるなんてこと、普通はできないから。」

とジュリーが言うと、エミリアも、

「ホント、最初、チョッコが黒龍を倒せるかなんて言い出したときは肝をひやしたわ。」

と言って肩を(すく)める。


少し、魔法学校グランマリオンについて紹介しよう。

チョッコが今いる教室は中央校舎というところで、低学年の生徒が学習するための場所で、ここでは、

・魔法世界情勢

・魔法史

・魔法体系

・魔法理論

等の座学の他に、実習では、初級の項目となる

・魔力感知、魔力操作、魔力制御

・根元素理解

・魔法感知、魔法操作、魔法制御 (座学・初級)

等を学ぶ。

ちなみに魔力感知は、生命体感知とも言われ、人が体内に存在させている魔力を感知するというもので、魔法感知は、自分や他者が発動している魔法を感じとるというもので、自分の魔法を発動している場合は、それを感じながら制御、操作、行使する。他者の場合は、どんな魔法が発動したのかすぐに察知し、対抗する魔法を発動しなければならないというものだ。


また、黒龍がいた、西校舎では、

・元素魔法

つまり、火、水、土、光、雷といった自然界の元素等を利用した魔法や、

・その他の攻撃魔法

これは、毒、麻痺といった魔法を言うが、それらの魔法の基礎を教えている。


東校舎は、魔法薬品の精製について勉強する場所で、『回復薬』『毒薬』といったものを研究する場所でもある。

南校舎は、

・補助魔法

・生活魔法

を教えている。

魔法操作能力に長けている者が利用していて、主に上級生が入る。

補助魔法は、感知魔法の上級の修得や、気配遮断、透明化、罠魔法、防御魔法等を習う。

生活魔法は、魔力の制御を重点に置き、例えば水魔法であれば、水を一定温度に保ったり、水量を規定の量だけ展開するといったもので、かなり精度の高い操作、制御能力を必要とする。火魔法であれば、暖炉や竈の火を一定時間、定量展開する能力が必要となる。

また、部屋の壁に取り付けられた複数の燭台に小さな炎で一瞬で同時点灯させなくてはならない。

これは、高度な攻撃魔法のフレイムアローという多くの矢の形をした炎を展開、行使するのに似ている。

土魔法等は、陶器製食器の作成が課題となる。

皿やカップなどの原型を土魔法と水魔法で作成し、火魔法で窯の温度を調整しながら焼き上げなければならない。

さすがに火力の維持は魔力が尽きるので、薪を使用できるが、かなりハイレベルなのは確かだ。

中央校舎が初級ならば、西校舎が中級、南校舎は上級にあたるだろう。


そして北校舎であるが、これは魔法研究棟と連携している校舎で、

・召喚魔法

・鑑定魔法

・結界魔法

・古代魔法研究

・古代言語研究

・アーティファクト研究

・空間魔法研究

等々多岐にわたる研究がなされている。

その他の施設としては、生徒が主導となって活動している

『倶楽部棟』

や、世界各国から持ち込まれた魔物のサンプルが納められている、

『魔物研究棟』

そして、魔法戦闘訓練を行う、

『室内訓練所』

『屋外訓練所』

がある、食堂や講堂は中央校舎に併設されている。

また、学校は全寮制であり、学生は全員、寮に入らなければならず、職員は希望により職員寮に入ることができる。


学生についてであるが、入学期間は5年制で、飛び級もある。

また、研究員として学校に残ることもできるが、ここの研究員は相当優秀でないと残れない。

噂によるとここの研究員で構成された特殊部隊が存在するらしいが、都市伝説だという説もある。


とりあえず、ここを卒業すれば、ファラリアスが言っていたように、国の研究機関か、軍部か、国付きの冒険者となる道が待っている。

まあ、国の金で育ててもらったんだから、国に恩返しするのは仕方がないだろう。

ト「すごい人気者だったんですね。」

ヴ「いやーさすがですわ師匠!」

マ「ヴィスコ、なんかゼリーさんみたいに訛ってる。」

まあ、弟子だからね。


次回もよろしく!(*>∇<)ノ



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