表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水無月蔵光の冒険譚  作者: 銀龍院 鈴星
第五章 甦る正義の血脈
114/164

第114話 恐怖の黒龍

絶対、絶対絶命!

第114話 ~恐怖の黒龍~

寮の一室に逃げ込んでいた三人は、最初は静かにしていたのだが、やはり、三人寄ればかしましいとはよく言ったものである。

すぐに話し始めた。


「どうする?」

チョッコがジュリーに聞いてきた。

「えっ?どうするって?」

「あの黒龍、何とかやっつけられないかなと思って。」

「ええっ?それは無理でしょ。奴らの体には人間の魔法は通用しないって、さっき先生に言われたんじゃないの?」

ジュリーが驚いて答えたが、チョッコは顔に似合わずものすごいことを言う子だと思っていた。


「無理かな?」

チョッコが残念そうに言う。

「それはそうよ、このまま、ここにいろってファラリアス先生が言ってたじゃない。」

エミリアはここからは動きたくない派だ。


「じゃあ、私が一人で様子を見てくるから、ここで待っててね。」

とチョッコが言うと、

「ちょ、ちょ、ちょっと待って!黒龍に見つかったらどうするの?」

「大丈夫だって、私にはこれがあるから。」

とチョッコが言うと気配遮断の魔法を使った。

マグローシャの直伝である。

これが行使されると、目の前にいる人間すらも認識が阻害され、見えづらくなる。

「あれ?チョッコちゃん。どこに…」

「目の前にいるで……」

「凄い魔法をもっているんだね、何かよくわからないけど…」

この魔法に『透明化』という、光魔法の一種で、『光線操作』というスキルと合わせれば使える魔法があるが、これを付けるとさらに相手から見つかりにくくなる。

だが、この時はまだ、チョッコは『光魔法』は修得していたが、『光線操作』のスキルは覚えていなかったので使えなかった。

だが、気配遮断だけでも十分に威力を発揮していた。

チョッコはそのまま廊下を再び戻って行った。

「チョッコ!気を付けてね!」

エミリアが声をかける。

だが、チョッコがそれに答える声は二人に聞こえなかった。


チョッコは黒龍のいた渡り通路まで戻ってきた。

だが、既に黒龍はその場所にいなかった。

「どこに行った?」

キョロキョロと辺りを見回すが、それらしき姿は見えない。

「また、空間魔法を使ったのかな?」

と思ったが、ファラリアスの事も気になったため、チョッコは気配感知の魔法を使う。

マグローシャの魔法では気配感知は生命体感知とも言って、他の魔法使いが使う波紋型と違って、一点集中型というタイプのため、捜索範囲がかなり広い。

線状に延ばした魔法の感知線をレーダーのように周囲に回転させて生命体を感知する。


『あ、いた!ファラリアス先生と、えっ?これは!黒龍?!』

ファラリアスの気配の近くに黒龍の巨大な気配が感知された。

他には何人か生存者と思われる者の気配が感知された。

恐らくは黒龍から隠れていたのだろう。

「もしかして、この動きを見る感じでは…ファラリアス先生は黒龍に気付いていないのかも?!急がないと先生が危ない!」


黒龍が段々とファラリアスの方へ近付いていく様子が感じられる。

だが、ファラリアスの気配は全く動かない。


このグランマリオンは、最初に入った、中央校舎の他にも配置は歪であるが、東西南北の校舎が存在し、それぞれ異なった授業を行っている。

また、チョッコ達のいた学生寮はグランマリオンの中央付近に建てられていて、そのさらに北側には魔法研究棟等もある。

これらについては後程説明しよう。


ファラリアス達は西校舎といわれる、先程の渡り通路から見て、西側に建っている校舎にいた。

黒龍もゆっくりとこちらに近付いている。

恐らくファラリアスに感づかれないように気配を殺しているのかも知れない。

体が大きいためゆっくりでないと気付かれてしまうのからなのであろう。


『間に合え!』

チョッコは校舎の間を高速移動する。

『いた!』

黒龍とファラリアス達の距離は大体、約30mはあるが、既に、ファラリアスは黒龍に気付いていた。

ファラリアスと一緒にいたのは学校の職員と思われる者が二人と生徒が二人だった。

全員が黒龍の威圧に抑えられて、身動きできない。

チョッコは丁度、ファラリアス達と、黒龍を挟むように、反対側に出てきていた。


「ええい!ままよ!」

チョッコは、黒龍に意識をこちらに向かせるために気配遮断の魔法を解き、さらに隠していた魔法を発動させる。

「黒龍!こっちや!!」

チョッコが大声を上げ、黒龍の意識を自分の方へ向けさせる。

黒龍はピクッとして、動きを止め、ゆっくりとチョッコの方へ頭を向ける。


『空間魔法、『次元断裂』!』

この魔法は、チョッコの持つ『空間魔法』を利用した攻撃魔法で、相手の肉体は当然のこと、魔力自体を空間魔法で亜空間に取り込んでしまうため、魔力値が相手よりも低くても、相手に効く。

ただ、恐らく黒龍に使えるのは一度きりだろう。

というのも、黒龍自身も空間魔法を使えるため、同時に発動させられれば効果は無効化される。

蔵光の水魔法が通らなかったのも、これの理屈である。

魔力値を度外視するその魔法をチョッコは発動したのだ。

チョッコの作った『次元断裂』という魔法は球形の亜空間を、黒龍の左前頭部付近の空中に作り出し、発動展開と同時に左頭部の一部と左目ごとえぐり取った。


グアアアアアォォォォーーー!!!

黒龍が恐ろしい程の悲鳴を上げる。


人間にこれほどの攻撃を食らうとは思っても見なかったのであろう。

激痛でその場にのたうち回る。


ただ、やはり行使するための魔力値が低いため展開した魔法領域の範囲が小さかった。


「くそ!ちょっと小さかったか!」

チョッコは悔しがる。

「チョッコちゃん!?」

ファラリアスがチョッコに気付き、黒龍が暴れまわっている向こう側で呼んでいる。

「黒龍が先生達を狙っているのがわかったから!」

チョッコが叫ぶ。

「来ちゃ駄目って言ってたじゃないですか!危ないでしょ!」

ファラリアスも大声で叫ぶ。

「説教は後で聞くんで、皆を早く避難させて!」

チョッコが言うとファラリアスも頷く。

チョッコの攻撃魔法を見て、驚くとともに、何とか出来るのではないかと思ったためだ。


黒龍はしばらくはその場にのたうち回っていたが、そのうちに動きが止まり、周囲に黒い霧のようなものが漂い始めた。


『なんだ?』

チョッコが身構える。

黒龍はヨロヨロと起き上がると、喋りだした。


「キ、キサマ、ナゼ、クウカンマホウヲ?」

まだ、若いドラゴンなのだろうか、片言の人語だ。

「まだ、しゃべる口があるんかい!」

そう言うとチョッコは再度、先程の『次元断裂 』を展開しようとした。


バチーーンン!!


しかし、というかやはり、黒龍に読まれていた。

黒龍も空間魔法を展開し、魔法は相互に弾かれ、無効化された。


「ちっ、やっぱりね。それじゃ、先生も逃げたことだし、ワイも逃げさせてもらうわ。」

と言って気配遮断魔法を発動させたが、黒龍が翼をばたつかせて、周辺に風魔法と同じ効果を発生させる。

さすがに炎を口から吐き出すのには、頭部の傷に響くのであろう。

炎であれば、まず助からなかったであろう。


だが、この風もかなりやっかいだ、認識されないとは言え、強烈な風圧で動きにくい。

それに加えて、一瞬で黒い霧のようなものが、辺りを包む。


「うわ、何だこれ?ゲホ、ゲホッ!これ吸い込むと気分が悪くなるぅ!」

毒霧とまではいかないが、体内に取り込んだ負の魔素が漏れ出たものを風魔法で飛ばしてきたのだ。

当然、負の魔素は、人間には有毒である。

多量に吸い込めば死に至る。

チョッコはある程度、転生ギフトで耐性を持っていたため助かったが、普通の人間であれば死んでいるところだ。

チョッコは直ぐ様、防御魔法を展開する。

その直後に、黒龍の尻尾攻撃がサイドから飛んでくる。


バチーン!

ギリギリセーフのタイミングだった。

だが、魔法は効果を発揮出来なかった。

チョッコは転生者といっても、そこにはギフトの割り振りはなかったようで、普通の人間よりも少し高めの魔力値しかない。

ドラゴンの、しかも黒龍化した個体などとは魔力値の差は圧倒的に格下だ。

そのため、黒龍の魔力がこもっている尻尾がチョッコの防御魔法に干渉してしまう格好となり、尻尾の攻撃を受けてしまうことになった。


尻尾の先がチョッコの足を打つ。


その勢いでチョッコは後方に倒れる。

「うわあ!」

立ち上がろうとしたところ、右足に激しい痛みを感じる。

「うっ!って!」

よく見ると右の太ももが5cmくらい裂け、血が出ている。

「痛ててて、ちょっとかすったかな?」

チョッコは足を引きずりながら立ち上がる。

恐らく直撃していれば右足どころか両足は真っ二つに切断されていたかもしれない。

だが、黒龍の目を潰し、遠近感が失われていたお陰で、致命傷を免れたのであろう。


しかし、黒龍の攻撃はそれだけではなかった。

今度は尻尾ではない、頭を前にして腹を下に向け、四つん這いの状態でじわじわと近付いてきた。

恐らく、今度は絶対に逃がさないようにするためであろう。

「アカン、逃げられへん!」

逃げた瞬間に、首を伸ばしてひと呑みにするつもりであるのは、わかっていたが、相手に隙がない。

これ以上は逃げられないというところまで、黒龍はチョッコを追い詰め、その血だらけの大きな口を開けて、勢い良くチョッコに食らいついてきた。

『ああ、もう駄目や…』

チョッコが諦めて、目を(つぶ)る。


その時である、遠くからひとつの魔法が展開した。


「『水化月(みかづき)』!」

ガシイイイィィーーーンンン!!


金属を叩きつけるような大きな音が辺りに響き渡った。


その後は何も聞こえない。

辺りはシーンとしている。


『あれ?ワイは生きてるのか?』


そう感じたチョッコが(つぶ)っていた目をゆっくりと開いていく。

すると、目の前にあの黒龍の首から上が地面に転がっているのが見えた。

開けていた口からは、だらしなく舌が伸びてはみ出している。

目に宿っていた妖しい光は失われ、生気は感じられない。

完全に死んでいるようであった。


「うわわわ!?」

チョッコは驚いて座り込んだまま後ろに下がる。

その首の側には、首から上が無くなった胴体部分が横たわる。

「ど、どうなってるの?」

チョッコがこの光景を見て唖然としている。


「ははははは、大丈夫だったかい?」

後方から若い男の子の声がした。

チョッコは恐る恐る後ろを見る。


そこには、拳法家のような軽装で、手には背丈ほどの長さの金属製の棒を持った少年が立っていた。


ヴ「うわーやったー!蔵光さんのご先祖様降臨!」

ト「やはり圧倒的です。」

マ「待ってましたという感じですね。」

待ってましたか…まあ、早い展開を望む人にはダラダラと話を引き伸ばしてるんじゃないと言われそうだけど、それも含めての蔵光の冒険譚ですからねー。

まあ、長い目で見て下さいね。


では、次回もよろしく。⊂(・∀・⊂*)どーん

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ