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水無月蔵光の冒険譚  作者: 銀龍院 鈴星
第五章 甦る正義の血脈
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第109話 秘密の暴露

ここで、この物語の謎のひとつが紐解かれます。

第109話 ~秘密の暴露~

いよいよ、蔵光達の紹介を始めることになった。

ヘルメスは蔵光達の自己紹介については自分達だけでやってもらうようにしていた。


「八鬼誠三郎、ジパング王国水無月家付きの鍛冶師の一族、八鬼家の三男で、剣術は『黒緒神流』という流派です。」

と誠三郎がいうと、ゼリーが、空間魔法で超巨大な大木の丸太を出してきた。

樹齢も相当であろう、太さが直径10mくらいある。

高さはその3倍くらいはあろうか。


「この船にも使われている『ヤイダ樫』の丸太や!切れんかったら大恥やけどな。」

とゼリーが意地悪く笑う。


「龍の皮膚よりは柔らかいんだろ?」

と誠三郎が確認すると

「どっちかな?わからんけど?」

とゼリーが答える。


「まあ、とりあえず切っとくか…」

と言うと誠三郎は腰の刀を抜いた。

「ふん!」

誠三郎はその場で跳躍し、刀を振るう。

ガガガガイイイィィーーンン!

誠三郎が地面に着地しても、まだ丸太はその形を維持していたが、誠三郎が刀を鞘に納めた瞬間、最初はゴトリゴトリと静かに、それから段々とガラガラと大きな音を立てながら、丸太が木片となって崩れ落ちた。

その木片のひとつをギルガが拾い上げ、そして、一言。

「あたしの皮膚より固いかも…」

ギルガは少し誠三郎の事を舐めていたようである。


エイダーはかなり、この異常な状況に慣れてきたようである。

だが、自分達の乗っている船と同じ材料のヤイダ樫の丸太をいとも簡単に切り刻む剣士にはこれまで会ったことはない。


「えと、水無月蔵光です。最近なりたてのC級の冒険者です。えーーーっと、皆みたいに変身したり、大声をあげたり、剣で物を切ったりとかいうような、あんまりこれといった特技はないです。」

と謙虚に自己紹介をする。

「いやいや、(あるじ)、特技、一杯あるやん。」

「そうかな?」

「あるある、例えば、その如意棒を重くして持つとか、『水化月』とか『零座』で何か切るとかできるやん。」

「えっ?あんなのでいいの?」

「あんなのって…エエって、それで…」

「じゃあ、さっきの丸太まだあるかな?」

「あるで」

「じゃあ二つほど。」

「わかった、そしたら、これでどやさーー!」

ゼリーが叫ぶと空中に先程の大きさと同じくらいの丸太が二つ現れた。

『水化月 無限斬』『水球』『水激・零座』『水恵・滴』

蔵光は詠唱なく、一瞬で4つの魔法を展開した。

丸太の一つは誠三郎の時よりも細かく、しかも、地面に着く前にすべて切り刻まれていた。

もう一つは、『水球』で丸太の断面を空中に固定し、さらにその状態を維持しながら、水球の力でクルクルと回転させ、それの半分を『水恵・滴』がマシンガンのように撃ち抜き、また、その半分を『零座』がチーズのように滑らかに切り裂いていた。


「す、すごい、魔法を同時展開で4つも…」

とヴィスコが驚く。

当然、エイダーも再度腰を抜かしていた。


次はゼリーの自己紹介であるが、本人は以前、失敗した経験がある。25

今回もカミカミであればヘタレの称号を与えられるであろう。


「あー、ワイが元エンペラースライムのゼリーさんや。」

と順調な滑り出しである。

エイダーも、

「エンペラースライムだと?!」

と驚いている。

しかし、ゼリーはエンペラースライムの形態をとるかと思いきや、衝撃の姿になったのだった。

「ワイな、みんなに隠してた事があるねん。」

と切り出してきた直後、変化の魔法を使って、女性の姿に変化した。

昔の魔法使いのイメージのような、トンガリ帽子に黒っぽいローブ、魔法の杖の様なものを持っている。

年の頃は20代くらいで、黒髪にグリーンの瞳の綺麗な顔立ち。

気が強そうな顔付きをしている。


「この姿は、ワイが以前飲み込んだ魔法使いの姿でな、この女魔法使いは名前を…」

と言いかけたところをヴィスコが答える。

「チョッコ・クリム!」

「そうそう…チョッコって!何で知っとるんや!?」

「だって、ゼリーちゃんって、チョッコ・クリムの名前を出した時に限って、何か挙動がおかしいし、空間魔法を使っていた魔法使いは過去から今にかけて、チョッコ・クリム一人しかいなかったし、チョッコ・クリムが行方不明になった時期とゼリーちゃんが魔法使いを飲み込んだ時期とが大体一緒だったから、多分そうじゃないかなと?」

「その通りや、なんや、ヴィスコ、わかっとったんか!何かおもろないわ。」

とゼリーがプイッと横を向いたが、他の者には衝撃的な事実だったようで、目を見開き、口をアングリと開けている。

ゼリーはその表情を見て。

「それやん!その表情が見たかってん!」

とポンと片手でもう一方の手の平を叩く。


だが、話はそれだけでは終わらなかった。

「それとな、ヴィスコ、これはお前にもわからへんかったと思うんやけど、実は、このチョッコ・クリムという女は、こことは違う世界で死んで生まれ変わった、つまり異世界からの転生者やねん。」

「はい?」

一瞬、ヴィスコの思考が停止する。


「な、なんですって?それって…」

これにはヴィスコも驚いたというか、半分以上意味がわからなかった。


「チョッコ・クリムが生まれたんは300年以上も前やけど、そのチョッコ・クリムという女性は元々は地球という星の日本という国で生まれ、そこで生活していた日本人という種族なんや。」

とゼリーが衝撃的と言うか、この物語の根幹を揺るがす様な事実を喋り出した。

『転生したら女魔法使いでした。』というような題名になっていたかも知れないのに…


「チョッコ・クリムの前世の人物も女性で、名前を宮離霧千陽子(くりむちよこ)と言って、大阪のお笑い芸人でジャンルは異世界系コントをやっとった。」

「お笑い芸人?異世界系コント?」

聞きなれない言葉に全員が固まる。


「そうや、コントや、そのコントには相方ちゅうのが必要なんやけど、そいつもこの世界に転生している。お前らももう知っとる人物や。ちょっとわからへんやろけど」

「え?誰?」

皆が顔を見合わせている。

「ええわあ、その顔!ここまで言うたんやから教えといたるわ、ソイツの名前はカリスマエージ、ジパング王国技術開発部の若き天才科学者や!」

とこれまた、ゼリーはとんでもないことを暴露してしまった。

「ええーーーー!!???」

全員がひっくり返りそうになる。


「ワイが転生した時期とアイツが転生した時期はかなり時間がかけ離れてるけどな、ワイは、チョッコ・クリムの姿で転生した時に思った。『とりあえず魔法使いとして世界一になったる』てな。それに転生した時のギフトが『空間魔法』やったり、全属性魔法やったりと至れり尽くせりやったわ。」


全員がゼリーの話に釘付けとなる。

ゼリーの話によると、チョッコ・クリムは転生した時に授かったギフトにより、順調な魔法使い人生を歩んでいた。

クリムが絶頂期のころ、当時の水無月家の中で活躍していた第56代の水魔神拳伝承者、一族の中でも稀代の天才と言われた水無月水覇(みなづきみずは)と出会い、当時、魔族の進攻があったノースヨーグにおいて、共闘して魔族と激戦を繰り返す。

その後、水覇の誘いでジパング王国へ入る。

水覇はノースヨーグの件で、誤った力の使い方をしたために、呪いを受けて、若くしてあるところに封印されてしまう。

呪いの期間は約300年間、クリム以外は誰も知らない場所で水覇は時間を止められていた。


チョッコ・クリムはその呪いが解けるまで何とか生き延びる事を考えた。

ただ、人間の寿命には限界がある。

何とか長寿命の生き物の生体サンプルを入手し、不老長寿の薬を作ろうとした。

サンプルにする長寿命の生物だと魔物がいる。

魔物にはドラゴンのように何千年も生きる個体もある。

まずクリムは、魔物の長寿命の秘密を探ろうとしたが、長寿命の魔物はほとんどがS級指定を受けているものばかりで、流石のクリムも危険すぎてサンプルも取れなかった。


だが、その後、クリムは魔物が能力やスキルを得る手段として、補食があることに着目した。

自分が魔物に補食された時に、体内でうまくサンプルを取れないか、若しくは、補食された時に自我を失わずその者に自分の記憶等が移せないかを検討した。

そして、白羽の矢が立ったのが、ラージスライムだった。

クリムはジパングのエブーダの森に入り込み、空間魔法で身を包んだ状態で、そこにいたラージスライムの補食により体内に入り込み、空間魔法で作った部屋の内側からスライムの体組織を採取して長寿命の研究をすることとなった。

そして、一通りの研究や実験が終了する頃にはかなりの高齢となっていたが、結局、不老長寿の薬は完成しなかった。

その代わりに、そのスライムに自分の知識と記憶、そして、肉体を融合させ、引き継ぐことには成功したのだった。


そして、長い時間が過ぎたころ、森の中でラージスライムは最強のエンペラースライムに成長していた。

普段は地中に住んでいたのだが、水覇の呪いがもう少しで解けると思ったときに、つい油断をして地表に出てきてしまった。

運悪く、近くでは凶暴化したキングドリルが誰かと戦っているようであった。

それは人間のようだったが、一瞬でキングドリルを倒したようだった。

自分の存在も気付かれた様であり、このままでは殺されるかも知れないが、水覇の事もあるので殺される訳にはいかないと思い、攻撃したが、結果やられてしまった。

何とか命乞いをして助けてもらったが、その相手というのが蔵光であった。


クリムはゼリーと名付けられ従魔となった。

さすがに自分の正体をバラす訳にはいかず、今まで黙っていた。

ただ一人を除いて…

ジパング王国にいた頃、ゼリーはある日、蔵光に連れられて王国技術開発部というところに連れて行ってもらった。

そこでは、転生前にも見たことのある魔導機が存在していた。

スマートフォンや水洗トイレ、エアコン、大型バス等々

そして、それらを開発したというのが、天才科学者花里須磨叡知(かりすまえいじ)であった。

彼も千陽子と同じくこの世界に転生していた。

しかも、『科学者』『技術開発』等というスキルを授かっていた。

それをフルに活用して自分が前世で生きていた時代の最先端技術をこの世界に再現したのだった。


彼は、ゼリーこと宮離霧千陽子とコンビを組んでいたのだが、転生前はコントのネタを作っていた。

ゲームオタクで異世界物のライトノベルを趣味にしていたこともあり、ネタは『異世界ネタ』が多かった。

コアなファンには受けていたがメジャーではなかった。

コンビ名は『クリム&カリスマ』という名前で、舞台に登場するときに『クリム&カリスマ、略して()()()()で~す!!』と言って自己紹介するいうかなり危ないギリギリの名前であった。

まあ、メジャーにならなかったのが幸いした。


そして、ある日、営業が終わって車で、次の場所へ移動中に交通事故に遭い、二人とも死亡し、年代は違ったが、同じ魔法世界『マーリック』に転生していたのだった。


ゼリーは、生前の芸名をそのまんま名乗っていたエージを見つけると直ぐに彼に近付き自分の正体をバラした。

エージもゼリーから話しかけられると、最初はかなり驚いていたがゼリーが宮離霧千陽子だとわかると泣いて喜んだ。

その後、二人は正体を隠して、ジパング王国の中で暮らしていたのだった。


蔵光もゼリーがそのような秘密を抱えていたとは全く知らなかったので、メチャクチャ驚いていた。

「そ、それじゃあ、エージとゼリーは元々は一緒の世界の人間だったの?」

と蔵光が聞く。

「そうや、エージの開発しているモンは、ワイらの世界に元からあったものを、さらに改良して作り上げたもんや、考えたらわかるやろ、あれだけの技術は他にはあらへん、見てみい!今のこの世界が作り出している魔導機の技術とエージが開発している魔導機との性能の差を!格段に違うやろ!それにワイのしゃべっている時に時々意味不明な単語があったハズや、それは向こうの世界の言葉がこちらの世界に自動翻訳されないのが原因やからな。」

「た、確かに、エージ君の開発した物はスゴいものばかりだし、ゼリーちゃんが時々変な言葉を言ってたような気がする。」

とヴィスコも納得している。

そして、マソパッドを起動させて、エージを呼び出す。

「ハイハイ、エージです、何ですか?」

「ヴィスコです、エージ君って転生者らしいですね。」

「はい?」

「ゼリーちゃんが白状しましたよ。」

「ええーー!?マジで、もう、ゼリーって言うかチヨコさん、何やってんだよ!」

「すまんなエージ、成り行き上、仕方がなかってん。」

最後の最後にとんでもない秘密の暴露(カミングアウト)があった。

他の皆の暴露は(かす)んでしまったようだった。



ヴ「チョッコ・クリムということまでは薄々わかってたんだけどなあ。」

ト「まさかのまさかですよね。」

マ「いやーホントソルッス。」

ヴ・ト「………」


ま、ということで、近々、ゼリーの前前世、宮離霧千陽子のスピンオフ作品を出す予定です。

まあ、それを見ても全く本編には影響はありませんが、感情移入するには、この本編を第109話まで見て頂いたほうがいいと思います。


では次回もよろしく~ヾ(´∀`*)ノ

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