第108話 魔石文化とクランズ紹介
後半でみんなの自己紹介があります。
第108話 ~魔石文化とクランズ紹介~
魔石にはいくつかの種類がある。
まず、大きく分けるとすれば、天然魔石と人工魔石である。
天然魔石とは、文字通り、自然に出来た魔石で、魔鉱石をさらに純度が高密度になったもので、結晶体になっていることが基本である。
この天然魔石は数が非常に少ないが、魔力保存限界量がべらぼうに多く、この天然魔石を使った魔導車はその魔力出力量も凄いため、速度が半端ない。
そのため、取引される金額もとんでもない額になる事が多々ある。
次に人工魔石であるが、これが、人間が一般的に製造している『魔石』のことである。
魔鉱石を精製して純度を高密度にさせ、魔石を完成させる精製技術を確立した人間は生活水準が飛躍的に向上した。
天然魔石よりも安価であることや、魔力保存量の限界は天然魔石よりも低いが、逆に魔力暴走事故の発生の確立が低いため安全性が人気を呼んだ。
その魔石を使用した機械は魔導機と呼ばれ、日常生活に色々と活用されるようになった。
まだ、低層な家庭では、灯火や竈門は、蝋燭や薪を使用し、中層家庭では魔鉱石を使った『魔鉱機』を使用しているが、上流家庭では、風呂やトイレ、冷蔵庫、車等にも魔石を多用している。
魔法世界『マーリック』において、人間は魔力が少なく非力である。
その魔力の少ない人間にとって、魔石の活用は、非常に重要なウエイトを占めていた。
それは、日常生活を送る上での魔石の活用と、魔法武器の開発による魔石の利用であった。
魔力が蓄積された剣や杖による魔法攻撃は、それまで不可能とされていた魔物に対抗できるようになっていた。
ある程度魔力のあるものは、それら魔法武器を魔法行使の補助具として使用し、強力な魔法を行使するすることも可能になり、パーティーを組んだ冒険者による戦略の幅が拡がり、魔物の討伐も当たり前となっていた。
また、それら魔法武器は当然、戦争にも活用されるようになった。
様々な、魔法武器が研究開発され、戦争に投入された。
第一次世界魔法大戦では、多くの人命が失われた。
鎖国していたジパング王国は、この時、世界の情勢を静観していた立場であったが、自分達の武力に酔いしれ思い上がった人間の国の一部が攻め込んだ時に牙を向いた。
それらの国は、水無月一族、つまり『龍を狩る一族』に蹂躙され、壊滅した。
それらの国は滅亡し、世界の地図から消えた。
現在、残っている国は水無月一族の名前の恐ろしさだけが記憶に刻み付けられた。
ただ、その後、水無月一族はそれらの国を奪うことなく、自分達の使命を果たすために再びジパング王国に戻る。
そして世界には新たな決まり事が出来た。
『彼の者達には、一切の干渉をするべからず。』
と…
話を魔石の話に戻そう。
魔族の持つ魔石についてであるが、彼らには魔鉱石を精製し、魔石を造る技術はなかったが、人間の魔石文化とは別に発達してきた、独自の魔石の文化があった。
彼らは魔石をお金の代わりに使用していて、物品の購入や交換は魔石を使っている。33
これらは大体、天然魔石を使用している。
そして、それらの魔石には様々な効果があり、彼らはその価値で値段を決め、交換に応じるという独特な文化を持つ。48
彼らは魔鉱石を精製する技術は持ち合わせてはいなかったが、『改造魔石』というものを開発する。
魔族の魔力の源は『負の魔力』であり、その負の魔力を魔法に使用している。
負の魔法使いである魔族は負の魔力の素となるものを生命維持のためにも使用する。37
その魔力の素が、『負の魔素』と言われるものであり、負の魔力は『正の魔素』を根源とする『正の魔力』、つまり、普段、『魔力』と言われているものと対を成す魔力で、正の魔力よりも不安定ではあるが、同等量のエネルギー値でいえば、かなり負の魔力の方が力が強い。
『改造魔石』は、彼らの生命を維持する、それら『負の魔素』を吸収し、蓄積させておくもので、魔力を蓄積させる点では人工魔石によく似ているが、それには、『負の魔素』及び、そこから変化する『負の魔力』も蓄積させることが可能であるのが『改造魔石』なのである。
魔族には、魔素結晶というものがあるが、これは元々、ザビエラの仲間であったエルザが独自で、開発したもので『魔造魔素結晶』というのが正式な名称で、天然のものはない。
魔素を結晶化したもので、魔力の塊みたいなもので、魔石に魔力を込めたものとは根本的に違う。
小さなものでもかなりの魔力を持ち、その中に魔法を付与というか、『刻印』しておくこともできる。
『刻印』は『付与』と違い、書き換えが出来ない。
エルザはデストロの命令でこの魔素結晶に古代魔法『進化付与』も刻印しようとしていた。33
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話が大分横道に逸れてしまった。
話を戻そう。
ヘルメスが、エイダーに詰め寄る。
「何故、魔族が人間の造る魔石を欲しがるのですか?彼らは天然魔石から改造魔石を造る技術はあるし、それらには負の魔素を取り込むものであり、人間の使っている魔石では用を成さないはず…」
「ど、どうして、そこまでの事を知っているんだ?!」
エイダーはヘルメスの言葉に驚く。
自分達の知らない情報がその中にあったからだ。
「あっ!しまった。」
ヘルメスはつい、ザビエラとの普段の会話の中でしゃべっていた事を口にしてしまった。
魔族に関する情報は、普通、人間と交流することがないため、魔族でしか知らないことであり、それを知っているヘルメスは魔族と交流があるか、また、何らかのルートで国の機密情報を入手し、持っていたということになるのだ。
まあ、普通の場合、魔族と交流のある人間はいないため、後者となるのだが、これの方が問題がある。
機密情報を知る者は、その職務に付いている者か、そうでなければ間者、つまりスパイである。
「あ、いや、ちょっと魔族の人に知り合いがいて…話を聞いて」
「ヘルメス嬢、真面目に話をして下さい。それはどこからの情報なんですか?先程の話だと、魔石を魔族が狙う事はないという風にも聞こえましたが?」
確かに魔族の知り合いがいるというのは間違いではない、というか、同じクランズに所属しているのだが…そう簡単には信じてはもらえない。
「あ、その、そう言う訳ではないのですが…」
「では、どういう訳なんですか?」
エイダーは怒っているのではない。
ヘルメスが国でも一部の者しか知らない魔族の事情を当たり前のように口にしていることに違和感を覚えているのだ。
何か、ヘルメスの身の上にとんでもないことが起きているのではないか。、
それは、普通ではあり得ない人物、つまり、オルビアや蔵光の同行が、その異常さを物語っているからだ。
「ヘルメス嬢、正直にお話し下さい、私は貴女の味方です。」
「え、ええ、それはわかっています。」
ヘルメスは戸惑っていた。
エイダーに正直に話していいものかを…
「話してあげたら?」
声をかけたのは蔵光だった。
蔵光は、先程から悪意の感知と『裁定者』のスキルでエイダーを視ていたが、大丈夫であったのでそう言ったのだ。
彼は本当にヘルメスを心配しているようであることがわかったみたいだった。
「わかった。」
ヘルメスはそう言うと、まずエイダーに確認をとる。
「エイダー卿、今からお話しすることは一切他言無用でお願い出来ますか?」
「え?あ、ああ、他言しないことを誓おう。」
エイダーはヘルメスの急な申し出に驚きながらもそれを承諾する。
「それと、私のしている行動には口を出さないと誓って頂けますか?」
「わかった誓おう。」
「わかりました、では、こちらへ来て下さい。」
ヘルメスは甲板を降り、魔導バスの中へエイダーを招き入れた。
甲板での状況は通信魔法『水蓮花』を付与したゼリーの分身で、仲間全員が知っていた。
「エイダー卿、あなたは我がヴェネシア王国で伯爵という身分でありながら、『救国の英雄』としてとても有名であり、国内においても発言力があることは知っています。だからこそ、あなたには、私達の事を知っておいて貰うことは今後、お互いの利益になると思っています。なので、今から、私達のクランズ『プラチナドラゴンズ』のメンバーを紹介しておきます。ゼリー、お願いが…」
「ああ、わかっとる、ここやと狭いからな。」
「?」
エイダーが通された『中の間』はそんなに小さくはないが、どういう事なのかエイダーは不思議そうにしている。
ゼリーが空間魔法でその『中の間』へ、さらに巨大な空間を作り上げた。
「まず、ヴィスコとマッソルは普通の人間ですが、私の元からの冒険者仲間です。」
二人は頭を下げる。
エイダーもそれを見て頷く。
「ここから、普通では無くなります。ザビエラさんとトンキ!」
二人がエイダーの前に進み出た。
そして、彼の前で変化を解く。
トンキは今までその正体を晒さなかったが、初めてメンバーの前で正体を現した。
しかし、あまり見た目が変わらなかった。
体の色がやや褐色になったのと、瞳が金色となり、猫の様な縦長の瞳孔、尖った耳に変わっている事を除けば。
ザビエラは、身長が4.5mもあるので人間からすれば巨人であり、怪物であり、恐怖の対象である。
「う、うわあ、ま、魔族!」
エイダーが驚いて後ずさる。
「落ち着いて下さい、ザビエラさんは魔の大森林地帯にあるジェノマというところを支配している魔王アリジンという方の下で魔准将をされていた上位魔族の方です。」
「えっ、魔王アリジン?魔准将?上位魔族?」
エイダーはかなりのパニック状態になってきている。
普通、魔族というだけで逃げ惑うのに、その中でも上位で、准将となるととんでもない存在であることはエイダーにも十分すぎるほどわかっていた。
「よろしくお願いします。」
ザビエラが、胸に手をあて、巨大な姿でエイダーに挨拶をする。
「あ、ああ、こ、こちらこそよろしく…」
何とか挨拶を返す。
「次にいっていいですか?」
とヘルメスが言うと、ギルガが前に出る。
周りのメンバーもエイダーの驚く姿を期待して、にやつく。
ギルガが久しぶりにジギンの魔法を解く。
巨大な空間の中に、全長200mを超える超巨大な龍が姿を現した。
「は、は、は?」
エイダーはペタリとその場に腰を抜かす。
「古龍で濃霧龍の二つ名を持つギルガンダさんです。」
グオオオオオオーーー!!
巨大な咆哮が空間を震わせる。
「彼女のお父様はジパング王国がある大陸の中にそびえる龍火山に住む龍王ワダツミ様です。」
ヘルメスは耳を塞ぎながら説明を続ける。
もはやエイダーに聞こえているかどうかも、疑わしい。
ギルガは再びジギンで人間の姿に戻り、
「好物はアップルパイだ。よろしくな。」
と一言挨拶する。
その次は、オルビアだった。
ヘルメスが確認する。
「貴女の能力をエイダー卿にしゃべってもいいの?」
「ええ、この方は後に私達に重要な関わりを持ちます、話していて損はないと思います。」
「わかったわ。」
「エイダー卿。」
ヘルメスはその場にへたり込んでいるエイダーに話しかける。
「あ、ああ、だ、大丈夫だヘルメス嬢、次を頼む。」
エイダーが応える。
「わかりました、次はこのオルビアです。」
「あ、ああ、わかっている。それが?」
「彼女は『先見の乙姫』という特殊な能力を持っています。」
「そ、その『先見の乙姫』というのは?」
「未来予知です。」
「な!?何だって!?み、未来予知だって…?そ、そんな能力…聞いたことないぞ…」
未来などを視ることが可能であれば、その気になれば世界を操ることも可能である。
エイダーは初めて聞く能力に畏怖心を抱く。
ヘルメスはドヤってきていた。
「彼女の未来透視は、必然的なもの、つまり必ず起こることは1ヶ月から1年の間に必ず実現し、流動的なものは1週間から1ヶ月以内のものを予知しますが必ず実現するとは限らず、他の影響で別の結果になる場合があるという能力です。」
「そんなこと…」
エイダーは震えだしていた。
これまでの紹介を受けて、衝撃を受けないものはいないだろう。
なんせ国家機密級の者ばかりだ。
それらが一同に介している。
まだ、あと、二人と一匹が、控えている。
どんなことになるのか、ショック死してしまわないか心配になるのだった。
魔石文化は他にもありそうやな。
ト「ドワーフとかエルフとかですか?」
そうやなあ。
マ「そう言えばゼリーさんがこの間、魔石に何か魔法を付与して面白いものを作っていましたよ。」
えっ?何を付与したって?
マ「何か『ツッコミ魔法』って言ってましたけど、面白いボケをしたらツッコミをその魔石が、入れてくれて、面白くないボケには無反応らしいです。」
そ、そんな恐ろしい魔道具を作っていたとは…
ト「そ、そんなに恐ろしい物なんですか?」
ああ、人間、特に芸人という種族にとって『ツッコミ』がないということは死の呪文に匹敵する。
しかも、『面白くなかったら突っ込んでこない』という条件付きとは…どんな芸人もその魔道具の前では恐ろしくてボケたくてもボケられないな。
今度、ゼリーから借りて、このコーナーでみんなにボケてもらおう。
ト・マ「えーーーっ!」
次回もよろしく。⊂(・∀・⊂*)ヤー!