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水無月蔵光の冒険譚  作者: 銀龍院 鈴星
第五章 甦る正義の血脈
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第104話 車内泊

まあ、車内の話です。

第104話 ~車内泊~

ここは、プラチナスカイドラグナーの車内。

リサの街を出発して、約一時間くらいは経っていた。


「いやぁ感激しました。流石ですザビエラ様!」

とトンキは感動して泣いている。

「もう、寝ろよ、トンキ!」

マッソルがトンキに注意する。


昨日は(みんな)、徹夜でチャルカ村のことに対応していたので、バスの中でとりあえず仮眠を取ろうということになっていたのだが、ザビエラの行動に感激したトンキが、『小の間(しょうのま)』という小さめのリビングルームにいるザビエラの側で騒いでいたのだ。

ザビエラはホストゴーレムに晩酌セットを頼んで、一人で酒を飲んでいた。

もちろん嬉しいことがあったからだが、それをトンキに邪魔をされていたため、それを見かねたマッソルがトンキに注意をしたのだ。


「わかっているよマッソル、俺だって運転の仕事があるから寝ないといけないんだけど、あんなもの見せられちゃ、興奮して寝られないんだよ。」

とトンキが話したら、マッソルが、

「じゃあ、しょうがない、ヘルメスの姉御に言い付ける。」

「すいやせんしたぁーー!」

トンキは直ぐに自室に戻って行った。

「マッソル、済まなかったな。」

「いや、いいんすよ、ザビエラさん、アイツもザビエラさんのこと大好きなもんで、最近なんかは、時々、魔族の土地にいたときの話もするようになって…それがまた楽しそうに話をするんですよ。あっ、と、すみません、今度は俺がザビエラさんの邪魔してるみたいだ。ハハハ、じゃあおやすみなさい!」

「ああ。」

マッソルも自分の部屋に戻って行った。


そこへ今度はギルガがやって来た。

ギルガは寝るときは寝るが、何日も寝なくても大丈夫な身体をしていた。

まあ、何千年も生きる種族は身体の造りが違うのだろう。

なので、皆が寝ていると暇をもて余すらしく、バスの中を色々と散策していたらしい。

「眠れないのか?」

とギルガがテーブルを挟んで向かいのソファーにドカッと座る。

「ああ、嬉しくて。」

元々夜間に力を出す魔族は人族でいうならアフターファイブみたいな時間帯だからかもしれない。

「お前も父親だったんだな。」

「?」

「いや、何、あたしの父もあたしが居なくなってから、ずっとそんな風に思ってくれていたのかなと……」


『小の間』の壁には露天風風呂と同じように、壁に取り付けられたスクリーン映像に空を遊泳するような空撮映像が流れていた。

眼下に広大なジャングル地帯を、そして、遠くに巨大な山脈が見える。

魔の大森林地帯のようだ。


「それは、そうでしょう、父親とはそんなものです。」

「ふっ、そんなものか……」

ザビエラの言葉に口許を緩める。

「ええ、」


ザビエラは元いた魔の大森林地帯の映像を見ながら、また一口酒を口に含んだ。


「ところで、ザビエラ、」

ギルガが話を変える。

「何でしょう?」

「ゼリーの話ではお前も勇者とやらになったと聞いたが?」

「ええ、実感はないんですが、魔力値はかなり上がっていて、魔王クラスの魔力値になっていました。」

「何か原因でも?」

「いや、奴等のやっていることに腹は立てましたが、それだけで変わるとは……あっ」

「ん?何か思い出したのか?」

「ヘルメス殿に蹴られました。」

「えっ?」

「私が、『死霊の言霊』を耳にして精神操作を受けてしまった時にヘルメス殿に攻撃をしてしまい、それを受け止められた上、逆に壁まで蹴り飛ばされました。」

「へっ?ヘルメスにか?ハハ、ハハハハハハ!」

ギルガはザビエラがヘルメスに蹴り飛ばされるところを想像して思わず笑う。

人間に上位の魔族が蹴り飛ばされるなど、普通は有り得無いからだ。

「はは、流石に私も驚きました。あんなに飛ばされるとは、まあ、お陰で正気に戻りましたからいいんですけど……ヘルメス殿は今、恐ろしいほど強くなっています。今の魔の大森林地帯に住んでいる魔族や魔王族の誰よりも……」

「そんなにか?」

「ええ、バゾニアルアジカンが言っていたこともあながち、出鱈目とは言えません。勇者出現の予言のことやヴェレリアント家の眷属の話とか…」

「そうだな、今回の移動先もヴェレリアント領だからな…それに目的物も…」

「約200年前に勇者サウザンドラが持っていたと言われる聖剣『ヴォルガナイト』でしたか?」

「確か昔、そんな名前の女勇者がいたな…」

「えっ?女性なんですか?サウザンドラという勇者は?」

「ああ、そうだ、ヘルメスと同じだな。」

と言いながらギルガはニッと歯を出して笑う。


「何とも因縁を感じますね。」

ザビエラはフーッと息を吐いてソファーに深く座り込む。


「あたしの記憶では、サウザンドラはヒドラを退治した後、どこかの国のえーっと、誰だったかな?とにかく、結婚して余生を幸せに暮らしたとか、別の話では国に恐れられ、どこかに幽閉されて死んでしまったとか色々な伝説があるんだ。」

「そうですか、片や、幸せな人生を、もうひとつはバッドエンドという訳ですか…何とも妙な話ですね。」


"まもなく、このバスはルク地区フクルを抜け、ルーボ地区キタルボに向かいます。"

車内アナウンスが入る。


フクルはルク地区の主要都市で、リサからだと約250km北西にある街だ。

馬車等で急いでいる場合などは街中で人にぶつからないようにするために街の外を通る道も整備されていて、特に大きい魔導バスはそちらを通ることになっていた。


そして、しばらく走行していると、再度アナウンスが車内に放送される。


"緊急停車します。状況確認中。"


「何だ何だ?!」

蔵光が直ぐに自室を出てきて、運転席の方へ向かう。

現在の運転手は運転手(ドライバー)ゴーレムである。


「どうした?」

蔵光が尋ねる。

「シゲミノナカニ、ナンニンカヒトガ、カクレテイマス。ヒトリトビダシテキマシタノデ、テイシシマシタ。」

「何だそれ?」

蔵光が言うと、横から誠三郎が、

「当り屋ですかな?」

「当り屋?」

「ええ、馬車や魔導車などの前に飛び出して、当てられたように見せかけ金銭を脅し取るという手口です。で、それに応じなければ後ろに控えている皆で暴力を加えて金品を奪い取るという感じですかな。」

「悪い奴だな、で、これがそうだと?」

「恐らく…」

「しょうがないなあ、道の真ん中に倒れられたら進めないじゃないか。」

「私が行きましょうか?若の力だと人を殺しかねないですから。」

「ええっ?!そんなことないでしょ。」

「いえいえ、そんなことあります。」

とか蔵光と誠三郎が言っていると、ギルガとザビエラが騒ぎを聞き付けてきた。


「どうしました?何かバスが緊急停車したみたいですが?」

とザビエラが聞いてきた。

蔵光達が状況を説明する。


「それは、面白そうだな。あたしが行く。」

とギルガが言うとギルガがバスを降りていった。

「何か、ギルガ、トンでもないことをしそうだな。」

と誠三郎が言うとザビエラも、

「確かに、さっき『面白そう』とか言ってましたから…」


蔵光達がバスの中から前の光景を見学していた。


「あ、倒れていた奴が立ち上がった。何かギルガに文句を言ってますね。」

とザビエラ。

「『おせえんだよ、なにやってるんだ。』と言っていますね。」

と誠三郎が読唇術で倒れていた20代くらいの男の言葉を読み取る。

「あっ、両手で掴んで、あ、投げた。向こうの小麦畑まで飛んで行った。」

蔵光も状況を解説する。

「また、奥の茂みから10人くらい出てきましたよ。何か刃物とか剣とか持っています。」

ザビエラも実況アナウンスをしている。

「『おうおう、姉ちゃんやってくれたな、これだけの人数でも、あんな真似ができるのか』と言っています。」

と誠三郎。

すると、とんでもない光景が目に映る。


「うあああ!!こ、ここで、そんなことを?!」

蔵光達全員が叫ぶ。

「全員が逃げて行きました。」

「そりゃそうでしょ。」

「あれは反則だわ。」

と話しているとギルガが魔導バスに戻ってきた。

「あーっはっはっはっはっはーー!!スッキリした!」

と大笑いをしながら自室に戻って行った。


"出発します。"


バスのアナウンスが入る。

何事もなかったかのように、魔導バスは走り出した。


「あれは、イタズラの域を越えてるぞ。」

と誠三郎が言うと、ザビエラは、

「でも、人は誰も死んでいませんよ。」

「確かに、全員が逃げて行ったからな。」

蔵光も納得した。



とりあえず、当り屋どもは去っていったが、どうも彼らはフクル地区のチンピラ共だったようだ。

まあ、ギルガのお陰で無駄な殺生をしなくて済んだようである。

どうも、街のチンピラを見るとコールを思い出す。

何をしているのかな、アイツ…。


まあ、それは置いといて、キタルボの話を先にしておこう。

キタルボはルーボ地区の北部に位置する港町で、魔の大森林地帯西岸と、ヴェネシア王国ヴェレリアント領南部、メトナプトラ国のジャグ地区、ルーボ地区とに接する海であるサプマック湾の南側にある。

加えて湾の西側には竜の墓場と呼ばれる巨大な火山があって、時々、小噴火し、付近住民の不安を煽っている。


複数の国に隣接しているため、昔、戦争では激戦区になったりしていた。

そのため、かなりの沈没船があるようで、一説によるとヴェネシア王国の西隣にあるタイトバイトス皇国に運ばれようとした財宝が沈んでいるとも言われている。

ただ、それがいつの話かわからず、今の国の位置関係などからはあまり当てにならない話のようである。

というのも、タイトバイトス皇国からサプマック湾までは、有に300km以上あり、戦時中にそのような距離を大量の財宝を乗せて馬車で運ぶなどとは狂気の沙汰であるからだ。


まあ、話はそれたが、そのような場所に開けているキタルボは、ヴェネシア王国との重要な貿易拠点になっているため、人の出入りは多く、ヘルメスやヴィスコなどもここを経由して、メトナプトラ国に入って来ている。

貿易拠点であり、他国が重なる要衝のため、漁業はあまり発展していないが、無いわけではなく、時々取れる魚は美味との噂だ。


山を越え、ようやくサプマック湾が見えてきた。

海面は穏やかで、太陽の光をキラキラと反射させ、波の上には海鳥が群れを成して飛んでいる。


遠くから見ると、港に入港しているいくつもの巨大な帆船が一望できる。


"まもなく、このバスはキタルボ港へ到着します。"


いよいよ、ここから船に乗ってヴェネシア王国に入ることになるのだが、これが、またまたトラブルに巻き込まれてしまう事になるのであった。

ギルガは何をしたんだ?

ト「私は寝てましたから。」

マ「同じく」

うーん。気になる。(´-ω-`)

ト「言われれば、確かに…」

マ「『水蓮花』の記録映像を見たらどうでしょう?」

それや!どれどれ。

うわ、こんな事していいの?

ト「ヤバいです。私も初めてです。こんなことを見るのは…」

マ「今度からギルガさんに口をきくときは、もっと丁寧な言葉遣いにします。」


ということで、検証の結果、ギルガはかなりヤバいことをしていました。


次回もヨロシクお願いします。

ヾ(´∀`*)ノ

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