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水無月蔵光の冒険譚  作者: 銀龍院 鈴星
第一章 伝説のはじまり
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第10話 過去編5~何かおかしい~

おまんたせいたしました。いよいよゼリーちゃんの登場です。

第10話 ~何かおかしい~

キングドリルと遊んで(?)いた蔵光もそろそろ相手に対して興味がなくなってきたようである。

蔵光が攻撃をしたのは最初の如意棒の一撃だけで、その後はキングドリルの攻撃をさばいているだけであったが、最後のキングドリルの攻撃は自分の拳で殴り返した。

体長が50mを越える巨体から繰り出される大猿の拳は5m近くある。

それに対して蔵光の拳幅は大体5~6㎝くらいだ。

普通であれば潰されるのは蔵光の方だが、結果は、キングドリルの拳が潰れた。

魔物化していてもさすがに拳が手首付近までぐちゃぐちゃになれば痛いであろう。

キングドリルは悲痛な声を上げて()()る。


水恵(すいけい)(ばく)

水魔神拳の系統技の一つで、任意の場所に『水の膜』を張るという術式(呪文)。魔素の溢れを塞いだりできる。

この系統は、高度な魔法操作能力が必要な水魔法の種類で、他には『(じゅん)』『(かい)』『(かん)』等がある。

先に出た『水化月(みかづき)』は攻撃的な水魔法の系統で、『(しずく)』等がある。

系統技としては『水鏡(みずかがみ)』系があるがこれはまた後で。

キングドリルとの決着に戻る。


キングドリルは蔵光の術式発動後、しばらくは高速の攻撃を繰り出していたが、段々と動きが鈍り、最後はそれも止み、その場に倒れ伏した。

「はぁ?」

誠三郎には一体キングドリルに何が起こったのか全く解らなかったが、水魔神拳を使ったということは理解できた。

蔵光は術式の名前を口にするが、決して魔法を詠唱している訳ではない、本来、不効率な呪文詠唱は戦闘に不向きであり、水無月家の伝承する水魔神拳はその詠唱を、高速演算による戦術計算と戦況把握に併せて高速脳内詠唱で術式処理をするため、魔法行使は基本的に無詠唱で行使し、ほぼ無意識的に最適な攻撃魔法が発動行使される。

今回蔵光が使用した『水恵』という魔法は蔵光が使用する水魔法の中でもポピュラーな魔法で、本来は魔素を封じる栓にする『膜』をはじめ、生活魔法に近いものである。

ただその使い方によっては、今回のようなキングドリルなどを倒すことも可能である。

蔵光は生活魔法を攻撃に使用する。

魔法は魔力値が高い者のほうが、魔力値の低いほうに対してより大きな影響を与えることができるというのは前に述べた通りだが、それであっても魔力を帯びた者の体内までは魔力の干渉はできないというのが通例で、普通であれば身体が帯びている魔力が魔法を弾くという規則性があるため体内には効力を及ぼすことはできないとされている。

ただ、ここにひとつの落とし穴がある。

実は相手との魔力の差が物凄く大き過ぎれば、魔力は相手の体内まで浸透し影響を与える。

蔵光は水神様の加護により、破格の魔力を与えられているため、キングドリル程度(?)の魔力なら、抵抗なく体内に影響を及ぼす。

これを防ぐためには、蔵光との魔力差を少なくする必要があるのだが、それは現在、マーリックの世界に生息する生物では回避不可能である。

それほど蔵光の魔力値は高いのだ。


ちなみに蔵光が使った「膜」は相手の気道内に水の膜を張り、呼吸不能状態にするというもので、キングドリルが倒された直接死因は「窒息死」であった。

魔物といえどもキングドリルは元々地上に住むヒヒが変化したものである。従って呼吸をして生命活動を維持しているので、ゴーレム等の無機質なものや水生生物等は別として、地上生活をしている生物に対しては、非常に有効かつ効果的に威力を発揮する。


この一連の状況を見ていた誠三郎は、その不思議な光景に唖然としていた。

が、その誠三郎に蔵光が声をかけた。

「セイさん、次来るよ、本命が。」

「えっ?はっ?本命?」

誠三郎は耳を疑った。

『キングドリル討伐が本命だったはず…なのに本命って。そんな個体がこの森にいたのか?』

と誠三郎が周囲に目を配り、素早く気配を探る。

しかし、森の中には全くそれらしい気配は感じられない。

『何かおかしい?どこにも気配が感じられない。若は一体何を感じた?』

誠三郎は、森の中に気配を探していたため最初は全く気付かなかったが、地面の下から奇妙な気配を感じた。

「こっ、これは?」

誠三郎がその気配に気付くと同時くらいに、キングドリルの死体が一瞬でドロドロになって溶けていった。

「なっ?」

誠三郎は、この状況が今一つ飲み込めていなかったが、蔵光はわかっている様子で、少し構える。

そこに現れたのは、超巨大なスライムであった。

出現したスライムは先程倒したキングドリルの数倍はあった。

魔力を帯びたスライムであれば、そこからさらに巨大化も可能だ。


スライム…本来は無害な森に住めば小型で最弱な魔物として冒険者達から最初の腕試しキャラとして大人気で親しまれている存在(?)だが、そこに現れたのは超巨大なスライムで、体長は100mは優に越え、その鮮やかな青色の身体から分泌される体液は先程のキングドリルを一瞬で溶かし、地上に現れてからは周囲の木々や岩等をも溶かし、さらにその身体からは強烈な酸の蒸気が立ち込めている。


「わっ、若!あれは一体?」

誠三郎はその禍禍しいスライムを見て、直感的に、

『こいつは危険だ。逃げなければ!』

本能的にこの生物に危険を感じ、体に戦慄が走る。

蔵光はそれを見てもあまり動じている様子はない。

「あれは、んー多分、家の本で見たことがあるけど、エンペラースライムじゃないかな?」

「エ、エンペラースライムですと?」

誠三郎の額に汗がにじむ。


エンペラースライムとは、スライム種の究極個体とも言われ、その体には物理攻撃はほぼ無効で、火炎や氷塊などの魔法攻撃も耐性がありほぼ無効、逆にその身体から出る、『バレット』と呼ばれる高密度、高速度の液体弾と『霧風(きりかぜ)』と呼ばれる強酸の蒸気を霧状に周囲に広げ、全ての者を溶かし尽くす。

なので、いくら実力があったとしても、ほぼ勝てない。

各国では災害級(ディザスター)として指定するほどの魔物であり、一度(ひとたび)出現すれば国が数ヵ国壊滅するレベルで、相当ヤバい魔物なのである。


「まずい、…若、まずいですぞ。」

誠三郎もエンペラースライムの噂くらいは伝え聞いている。

先程のキングドリルがいくら凶悪といえども、誠三郎が本気を出せば何とか倒せるであろうが、このエンペラースライムは非常にまずい。

彼の腕でも、どうにも相性が悪い。

切っても切れず、強酸の影響で刀は溶かされ、最後は強酸の霧だ。

ひとたび吸い込めば肺が焼け溶け、身体も溶けて崩れ落ちる。

先程のキングドリルのように。


「若!若の魔法、『水化月』や『滴』は効きませんぞ!」

そう、相手も水系統の魔物である。

水で水を切ろうとしても、弾き飛ばそうとしても全く効果はない。

逆に……

「若!来ますぞ!」

誠三郎が叫ぶ。

ボッボッボッ!

エンペラースライムの身体から水の塊が高速で発射される。

「アシッドバレットか!?」

誠三郎がその攻撃を避けると、後方の木々が『水化月』で斬り倒されるように倒れるが、元々サイズが大きいので破壊力も大きく、しかも、よく見るとその切り口から蒸気のようなものが出ている。

「若、あっあれは?」

「強酸の水化月ってとこかな。」

蔵光がエンペラースライムの攻撃を落ち着いて避けながら、技の解説をする。

この強化版水化月も、岩をも切り裂く威力であり、恐らくは金属製のもの等も一瞬で溶断されるであろう。

エンペラースライムが分泌する酸の力と合わさってその威力は倍増されているようであった。

蔵光達が、攻撃をかわすと、エンペラースライムはさらに驚異的な攻撃を繰り出してきた。

あの『霧風』であった。

強酸の霧『霧風』は文字通り強酸の霧を広範囲に立ち込めさせ、周囲のものを絶命させる。

さらに逃げるものには風魔法を使って高速の霧を浴びせかけ溶かし尽くす。

逃げ場なし、最強最悪の技である。

スライムの周囲に霧が立ち込める。

よく見ると既に、かなりの範囲に渡って霧が張り巡らされていた。

ほぼ逃げ道は無くなっていた。

これがわざとであれば、かなりの知能の持ち主である。

しかし、まだ何とかなるはずと誠三郎は、

「若!逃げましょう。」

誠三郎が蔵光の腕を掴んで、その場から逃げようとした。

しかし、

「うっ、」

蔵光の身体はビクともしない。

まるで地面に深く打ち込まれた鋼の杭のように……

『10歳だぞ…』

死の運命すらも受け入れさせる水魔神拳伝承者の宿命。

まだ幼いこの子供に神はなんという試練をお与えになるのだ。

誠三郎は思った、

『私は何をしているのだ、若を守るため命を懸けると誓ったのではなかったのか…自分は水無月蔵光の従者ではないのか、主が死の覚悟を決めている時に何をしようとしているんだ…』

そして、過去に蔵光と初めて会って、自分が決心した時のことを思い出した。

「そ、そうでしたな…若…」

誠三郎は掴んでいた蔵光の腕を離す。

エンペラースライムが発している霧は次第に周囲の木々や岩の表面を溶かしながら徐々に蔵光らに近づいてきた。


伝説では、このエンペラースライムの『霧風』により、とある国が壊滅したとの言い伝えがある。

その国は、国中の人間が全てエンペラースライムの『霧風』で溶かされてしまったため、真実かどうか確認が取れる人間がいなかったとか、そこから命からがら逃げ出した者が、事実として話をしたが、あまりにも甚大な被害であるが故に、荒唐無稽な寓話として受け取られ、その後はいくら話をしても嘘だと言われて一切信じてもらえなかったと…

国の名前すら消滅するほどの脅威

その伝説とまでいわれた存在が今まさに蔵光達の目前に迫っており、その攻撃はまさしく災害級であった。

誠三郎が逃げようとしたのも無理はない。

蔵光が勝負を諦めても、逃げることをしなかったのは一つのプライドでもあったのだろう。

誠三郎も蔵光の従者として、主に殉ずるのが武士の本懐、覚悟を決めた。

「若、ご一緒しますぞ。」

誠三郎は目を閉じた。

強酸の霧はもうすぐ蔵光達を覆おうとしていた。












ゼ「うわー嫌な記憶が甦るわぁ。」

ゼリー、めっちゃ強いやん

ゼ「アホいいな!このあと大変やってんで、。」

あっそれ言うたらあかんやつ

ゼ「あっ…」

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