表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

竜の始まり

『ふぅ……落ち着いた』



あれから俺はあの場所から逃げ出したあと、とても大きな山の上に居座っていた。


白くて森林もなく、山なのか?と思えるような山だったが、俺としてはあの鉄の街よりははるかにマシだし、何より似たような山を知っているので驚くようなこともない。



『しかし、なんだったんだあそこは……いや、そもそも何処なんだここは』



先程は混乱してばかりでロクに考えることも出来なかったが……いや、本当に何処なんだここ。


それに───



『俺は、何処からあそこに出たんだ……?』



ここに来る前は、迷宮に潜ったわけでもなく未開の地に行ったわけでもない。ただ突然、空を飛んでいたらいつの間にかあそこにいたのだ。



『……空間転移か?』



まず考えたのはそれだった。が、すぐに除外した。


自慢ではないが、俺はそれなりにあの大陸を飛び回ってはいたのだ。そんな俺だから言うが、このような街は見たことも聞いたこともない。


空間転移というのは、転移させる距離によって魔力消費量が増減する魔法だ。大陸の端から端に転移するのにも、それこそ父並みの魔力が必要だ。


とてもではないが、何処にあるのかも分からないこの場所に転移させるのには、魔力が足りないだろう。勿論距離にもよるのだが……



『やはり現実的ではない』



という結論になる。それを考えれば……



『……まさかとは思うが……ここは異世界、か……?』



考えが飛躍し過ぎではあるが、俺はとある昔話を思い出していた。


確かそれは、かつては異種族同士が交流し全ての種が栄えていた時代の話で───その昔話に、異世界から来たという異邦者の話があったはずだ。


父も、叔父にその話を聞いたらしいので、信憑性は高い。


それを考えるなら……この状況も、不思議ではない。

では一体どうやって呼び出したのかという疑問が浮かぶが……



『流石にそこまでは考えられないな』



転移には膨大な魔力が必要だ。それも世界を渡るだから、使われる魔力は膨大では済まされないだろう。


なら考えるだけ意味はない。なにせ規模が違いすぎるのだから。当然、俺を呼び込んだやつの力も規格外のものだろう。


────しかし。



『なぜ俺なんだ?』



そう、そこだ。そこが気になる。


俺はいたって普通……ではないが、通常の竜よりも弱い存在だ。そんな俺を、ここに連れてきたのはどういう理由からなのか……



『……一度、戻ってみるか?』



俺が転移させられたのは、あの街の上空。なら、あの街に何かあるのかもしれない。


それに俺は、あそこに現れてから一度も攻撃されていない。

刺激しないようにするためなのか、もしくは武器を持っていないかのどちらかだろう。


つまりもう一度行っても、いきなり攻撃される可能性は低い。勿論、攻撃される可能性は少なからず存在するのだが。



『…やっぱりやめとこう』



なんかんや言って、臆病なのが俺なのだ。何か分かるかもしれない可能性よりも、攻撃される可能性の方が高い。


しばらくここにいたほうが良いだろう。あちらにとっても、俺にとっても。



【───】



『……?』



小さく、ほんの僅かに音が聞こえた。周りを見渡してみるが、誰かが近くにいる様子はない。


聞き間違いだろうか?それとも幻聴か?もしくは念話でもされたのか……?

最初はそう思ったが、すぐにそれは違うことがわかった。



【確認。システムへの適合により、パラメーターが付与されました】

【確認。世界への適合により、肉体が最適化されました】

【『先駆者』を達成しました。ギフト『取得権限:ジョブ』を獲得しました】

【『初めての異世界転移』を達成しました。アビリティ『対干渉』を獲得しました】

【『ファースト・モンスター』を達成しました。ギフト『取得権限:アビリティ』を獲得しました】



『ぐっ…!?』



突如聞こえた声と共に、俺は自分が作り替えられていく感覚が体全体を走った。

痛みはない。だが、何処か違和感のようなものが大きくなった。


この世界に来たときから、違和感を抱いていた。それは認識だとか、そういう類いのものではなく、もっと物理的な……つまりは肉体に感じる違和感だった。


だが、大きくなった違和感はすぐに消え去り、先程まで確かにあった違和感も、共に消え去った。



『なんだったんだ…?』



先程の声……あれは、知らない言語だったはずだ。だが、不思議と言葉を理解できた。知らない言葉であったので、その内容までは分からなかったが……肉体の最適化とやらが関係しているのか?


意味がわからないのは、システム、パラメーター、ギフト、アビリティ、ジョブ……この五つだ。


この言葉が、一体何を意味しているのか……それが分かればいいのだが───そう思った時だった。



【確認。該当するアビリティを検索……該当結果を表示します】

【該当結果:『叡智』『知識』】

【アビリティを選択してください】



『……随分、都合の良いな』



本当に、都合の良い場面で出てきた。正直、怪しいどころの話ではないし、出来れば選びたくもない。


……だが、このまま何も知らない状態でいる、というのも危険すぎる。多少の危険は、仕方ないものとしよう。



『……では『叡智』を』



俺は『叡智』を選択した。理由は、知識よりも叡智の方が得られる情報量が多そうだからだった。

……まぁ、どちらを選べばいいか分からないのだし、今回はこれでいいだろう。


さて、これが俺の欲しいものだといいのだが……



【『叡智』を獲得しました】

【『パラメーター表示』が『叡智』に統合されました】

【『取得権限:アビリティ』が消滅しました】



……少しの間待ってみたが、続きはなかった。あまりにもあっさりとしていて、何かあるのではないかと思ったのだが……どうやら検討違いだったらしい。



『……で、どうやって使うんだこれは』



俺がまず始めなくてはならないことは、この『叡智』の使い方のようであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ