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9,少女は情報整理してみる


 あれからリョーマは変わらずバイトをそのまま続行し、リューマの方はリョーマに小言を言われながらもさっさと帰っていった。

 

 そして諷は道護を質問攻めにして、未だどこか夢見心地のまま、ノートを広げて頭の中を整理しようとしていた。

 

 

 <昨日あったこと>

 

 ・夜中、店で妖精に遭遇

  ↓

 ・ミチくん、異世界とか言う

  ↓

 ・店から出られない→原因不明

  ↓

 ・店の2階でミチくんとシェアハウスになる

  ↓

 ・シュシュ(妖獣らしい)私の服を吐き出す

  ↓

 ・魔法がみんな使える??

 

 

 <今日>

 

 ・夢ではなかった。

  ↓

 ・防犯カメラで角のある人、緑の人見る。普通の人とぶつかってもお互い気付かない。

  ↓

 ・試しに外に行けるかやってみる。→無理だった。

  ↓

 ・ミチくんにアランドのバイトを紹介される。(・リューマ、背が低い。子どもみたい。ドワーフ。髭無かったけど。口が悪い。

 ・リョーマ、リューマの弟。だからドワーフ?髭無い。リューマより優しそう。)

  ↓

 ・透けてるカップ麺持ったら魔法使えるとか言われる。

  ↓

 ・恐竜もどきが買い物に来る。怖い。リザードマンだった。

  ↓

 ・炭酸水がバカみたいに高い。

  ↓

 ・変な両替機みたいなの?がある。光る石が千円札に化けた。


 

 

 ざっくりと昨日から今までの事を書き出して諷は、それを眺める。

 なんだ、この作り話は…。意味不明すぎる…。

 それでもこの身に次々と起こっている事で、だんだんと何に驚いていいのか分からなくなってきていた。

 

 

 <分かったこと>

 

 ・世界は異世界と重なるようにして存在する、らしい

 

 ・元の世界→コランド

  異世界→アランド

 

 ・普通、コランドの人や物はアランドでは認識できない。その逆も。それぞれの世界の人達は互いの存在を知らない。

 

 ・店は特殊?でスポットというらしい。アランド、コランドどちらにも存在する箱?のようなもの。そこをコンビニにした。

 

 ・商品は基本コランドの物。ただ、手を加えるとアランド側の物になる。アランドの物になったらコランドからは消える。その逆もおこる。

 

 

 諷はそこまで書いてペン回しをしながら考えていた。

 

 道護を問い詰めたところによると、諷は2つの世界の境のスポットに完全に身を置いている状態なのかな、ということらしい。らしい、と言うのははっきり分からないと言うことでもある。

 外に出られないということは、コランド、アランドどちらの世界からも拒絶されている状態で、それを解消する術は今は分からない、とも言われた。

 とは言え、店の外へ出られないのは不便かもしれないけれど、今すぐに危険がある、とも思えないと道護は言っていた。いずれこの状況から抜けられる方法をみつける、とも。

 

 諷が両方の世界の物を認識できるのは、今の曖昧な状況によるものだとするなら、道護はどういう状態なのか?

 

 本人が言うには、元はアランドの存在だったが、7才の頃にコランドへ完全に転位してしまい、アランドを認識できなくなったそうだ。

 ただ道護は10才の頃にこの店、つまりスポットを見付けだし、前オーナーにこれはどういう状態なのかを相談し、その結果、様々な修行のような事をしてやっとこのスポットの中でアランドの物を認識する事ができるようになり、そこからまた努力を重ね、今では意識を集中させるだけで、アランド、コランド両方を行き来できるまでになったのだと言う。どちらの世界も知っているからこそ成り立つ事らしい。ちなみにスポットの外でも意識を集中するとコランドにいながらも、アランドの物をうっすらと認識できるようになっているそうだ。

 これは何も道護だけの意見ではなく、このスポットを管理していた前オーナーの意見でもあったそうだ。…前オーナーもアランド側の存在で、コランドを認識できるだけの知識を得た上で、コランド認識魔法を使えるらしい…。

 

 だから、諷のように前知識が無いにも関わらずアランドを見れるようになった上に、スポットから外に出られない状態は本当によく分からない、事のようだ…。今は前オーナーに連絡を取って様子を見に来てくれるように頼んでくれているらしいが…。

 

 この問題解決にはしばらく時間がかかるとして、リューマとリョーマに“魔法”と言われた現象、…これは現在の諷の特殊な状況が原因になっているのでは、と道護は言っていた。

 

 まず、諷には現在この店の中にあるコランドの物もアランドの物もはっきりと見えている。道護が言うには、どちらかの世界に片寄れば片寄るだけそうでない世界の物は存在感を薄れさせていくのだという。

 さっきリューマと話す前に道護は諷をアランド側の存在に片寄らせてみたのだという。いつの間にそんな事をしたのか諷には検討もつかなかったが、その結果、あの透けたカップ麺に繋がる。

 透けたカップ麺はコランドの物で、諷がアランド側に片寄った事で透けて見えたということだった。逆にコランド側に寄っていればアランドの物が透けて見えると言う。

 諷が手に持った事で急にあのカップ麺が存在感を増したのは、アランド側に片寄っている諷が触ったから、カップ麺も急激にアランド側に寄ってきたせいだと言われた。

 急激にアランド側に寄ってきたカップ麺は、アランドの物しか認識できないリューマとリョーマには唐突に何もないところから現れた事になる。…だから、魔法と言われた。

 そんな事ができるのはアランドもコランドも同じくらいに認識できる者に限られるため、魔法ではないが、アランド側の住人には相当珍しい出来事になるわけだ。そして、そういう現象は自分達の知らない魔法がある、と解釈された方が面倒が少ないのだという。

 これによって、リューマとリョーマに、諷が特殊な魔法を使えると思わせる事ができ、魔法など使えない諷を、歩くのと同じくらいに魔法を使える世界で目立つのを避ける目的もあったのだと言われた。

 

 

 そこまでぼんやりと思いだし、諷はため息を吐いてノートに書き加える。

 

 ・アランド側に存在が寄る?と、コランドの物は透けて見える。透けた物を触ると、今寄っている方の世界の物になる。

 (これはスポットの中に限られる現象、らしい)

 

 ・上の事は珍しいから、アランドでは魔法扱いされる。そのせいで、私が魔法を使えると思われた。

 

 

 ・炭酸水は魔法の道具を作る時に不可欠なのに、アランドではかなり高い値段で取引されている。

 

 

 そう書いて、諷は、500ミリペットボトルの炭酸水を嬉しそうに持って帰ったリューマを思い出していた。子どもでもそんな物であそこまで嬉しそうにはしないと思った。

 

 何でそんなに嬉しいのかと思ったが、道護の説明を聞いてなんとなくは納得していた。

 

 まずアランドでは炭酸水を人工的に作り出す技術は存在しないのだという。にも関わらず、炭酸水はアランド中に普及している魔法道具とやらを作るのにはどうしても少量は必要になってしまうらしい。実は炭酸水を使わなくても一応魔法道具は作れるらしいのだが、性能が段違いに落ちたり、すぐに壊れたりしてしまうため、一滴でも炭酸水が使われているのが一般的なんだそうだ。

 そして、人工的に作れない炭酸水をどうやって調達するかと言うと、炭酸水が湧いてくるところから汲むしかない。ただ、炭酸水が湧いてくる場所はいずれも山奥だったり、近くに強い魔物が棲んでいたりして、汲んでくるのも一苦労なんだとか。おまけに利益になるものだから、炭酸水の源泉を独占的に管理している人達もいて、結果として価格もかなり吊り上げられ、1リットルで3000円ほどの価値で取り引きされているのだとか。

 そこに100円にも満たない炭酸水をそのままの値段で売ってしまうとアランド側の物の価値が変わってしまうし、独占的に売っているところからも目をつけられるため、売る数を絞り1000円の価値をつけているそうだ。

 リューマは今、魔法道具を作る修行中でどうしても炭酸水を多く使うから、それが少しの手間で貰えるからあれだけ喜んでいたのだという。

 とは言え、諷にしてみればそんなのぼったくり以外の何物にも見えなかったのだが…。

 

 

 ・アランドでは、ほとんどの場合、初対面ではフルネームは名乗らない。

 

 

 そう書いて諷が名乗った時のリューマとリョーマの反応を思い出す。

 リューマは変な名前だと言い、リョーマは顔をしかめて困ったような表情をしていた。

 道護は、知っていたなら先にそれくらいは教えておいてくれても良かったのに、と思わなくもなかったが、忘れていたみたいだし仕方なかったのかもしれない…。

 

 諷は再びノートを眺めて、ため息をもう一度吐き出していた。現実感が全くない。下手なお話の設定みたいだな、とさえ思ってしまう。思ってしまうが、ノートの横でシュシュは気持ち良さそうに寝ている。つまりこんな不思議な生き物が見えている時点でノートの中身が本当に起きた事だと言えてしまうのだ。こんなに色々と現実離れした出来事が起こり、今もまだその中にいるのに、諷はかなり冷静だった。これが急に見知らぬ場所に1人きりだったりしたら、耐えられはしなかっただろうが、よく知ったコンビニで、よく知った道護が今のところ何でも答えてくれる。

 それに、異世界だと言われても外には出られない諷にとっては、まだあまり異世界がすぐそこにある、という実感が持てていない。確かにリザードマンなんていう得体の知れない生き物が買い物をしに来るというのは、恐ろしい。だけれど、時々来る意味不明に怒鳴り散らす客とあのリザードマンだったら、もしかしたらリザードマンの方がマシなんじゃないかとすら思えた。

 

 諷はそんな事をぼんやりと考えながら、道護から渡されたビー玉を手の上で転がしていた。

 不思議な色合いで虹色がガラス玉の中に閉じ込められているようにも見える。でも道護に渡された時はもう少し緑がかかっていたように思えた。

 諷は目を閉じて、自分の住んでいたアパートを頭の中に思い描いてみた。今は帰れないその場所を、できるだけゆっくりと。

 それから目を開けて、手の上のビー玉を見る。さっきの虹色の青が明らかに濃くなっている。シュシュを見るとなんとなくうっすらとしている気がする。

 

 ーコランドに存在が片寄っている状態ー

 

 諷はビー玉に息を吹き掛ける。ビー玉の中の青色が一瞬だけ光り、青が濃い虹色のビー玉になる。

 そして、うっすらとしてしまったシュシュにそっと触れてみようと手を伸ばしてみるが、その手はシュシュに触れる事はできない。

 その次にシュシュの隣でうすぼんやりとしたカップ麺に手を伸ばす。カップ麺の方は触った瞬間からあっという間に存在感を増した。

 

 道護の言った通り、どちらかの世界に諷が片寄っている時にうっすらとしている物に触ると片寄っている諷に引っ張られてくる。ただし、生き物はそうならない。

 

 ビー玉は魔法道具なんだと言っていた。

 アランドは魔法が当たり前に存在はするけれど、誰でもどんな魔法でも使える訳ではないそうだ。

 自分の使えない魔法は、魔法を閉じ込めてある魔法道具から使うのが一般的なんだとか。

 例えば、畑に水を撒きたいけれど、水の魔法が使えない場合、水の魔法を閉じ込めた魔法道具を使う、とか。

 

 諷が道護に渡されたビー玉は片寄った状態を維持し、反対の世界の人達から認識され難くなる、という効果らしい。

 

 ビー玉が虹色だけなら、諷の状態は中立。アランドからもコランドからも認識される状態。でもそれは、すぐにどちらの世界にも片寄りやすい不安定な状態でもあるそうだ。

 ビー玉の色が青ならコランド寄り。緑ならアランド寄り、なんだとか。

 

 アランドに諷が片寄っている時にコランド側の存在から呼ばれてしまうと諷は途端に中立の立場を通りすぎてコランド寄りになってしまうそうだ。それは、ちょっと諷が反対の世界の事を思い出したりするだけでも起きていて、そんな事が片方の世界しか認識できない者の目の前で起これば、諷は急に消えたり現れたりと、どっちの世界から見ても不可解な事になってしまう。諷には全く自覚がないが、昨日から今日にかけて道護の前で何度もそんな風になっていたのだそうだ。

 それだと不便だから、渡されたのがこのビー玉。諷の状態をどちらかの世界に引っ張り続ける事ができる代物なんだとか。

 

 使い方は持ってるだけ。さっきはなんとなく息を吹き掛けてみたが、青か緑どちらかの色が濃い時にちょっとした刺激をビー玉に与えるとビー玉が反応してそちらの世界に寄ろうとする、らしい。

 今はまだ青のまま。今度はシュシュに触りたい!と強く念じてみる。するとビー玉はあっという間に緑色になり、シュシュの存在感が増す。逆にさっき存在感が増したはずのカップ麺は、うっすらとしてしまった。

 ちなみに家具は不安定にいったり来たりしない。それは中立で固定されるように魔法がかけてあるからなんだとか。

 慣れれば、意識をするだけで自由自在にアランドもコランドも行ける。…ただしできるのはスポットのみ。そして、重要ではあるが、諷はこの店から出られない。…つまり異世界探検には出られない…。すぐそこにあるのに、分かるのに、なんとも残念な気がする。

 

 ビー玉にはもうひとつ重要な機能があって、諷がコランドに片寄っている時は、アランド側からは認識できないように膜のような物が諷の回りに発生するんだとか。ただし、それも諷にはよく分からなかったが…。

 

 

 諷はもう何度目か分からない大きなため息を吐き出していた。

 


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