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当て馬お嬢様は今日も吠える!  作者: にゃんこの肉球
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やりました!やり遂げました!

度重なる、暴政を強い居て、善良なる市民を苦しめていた魔王に、一矢を報いてやりました。

ついでに、旧莉奈ちゃんの名誉も守られました。めでたし、めでたし。


 って、めでたくないわよ!根幹の問題が、解決していないのよ!!今日、今、ルー様にお供えするおやつがないのよ!!

まあ、エミリが獣医さんお勧めのちょっとお高いカリカリを診察の時に買って来てくれたので、飢えることはないけども!一刻も早くお宝を触らせていただきたいのよ。わたしは!!その為の努力が一向に報われていないのよ!

五百円、五百円あれば、三個パック二百二十円のモンプ〇グルメシリーズが二パック買えちゃうのよ!計六個!

くぅ!あの時邪神に見られさえしなければ、今頃はルー様の至福のもふみを心ゆくまで堪能出来ていたはずなのに!!

恨みがましい目でお兄様を見たら、お兄様はお腹を抱えてヒィヒィいいながら、笑っていた。


「まったく莉奈は面白いな!そしてすごいよ!これで、お父様もチョコチョコ帰ってくる様になるんじゃない?」

お兄様は私の肩をたたいた。

「??」

「仕事、仕事っていくら仕事でも、海外ばかりに行ってる訳じゃないのだから、一月に一度くらいは都合付かせないとダメでしょ。仮にも、一財閥の社長がだよ? 莉奈の小学受験辺りから、あまり帰って来なくなったんだよね。多分お母様や莉奈がピリピリしていて、家が安らげなかったからじゃないかと思うんだ。」

「ピリピリしてたんですか?」

「うん。お母様の笑った顔なんてこの数年見てなかったからね。まぁ、この春から、僕は寮に缶詰めだけど、僕が見た限りはなかったね。」

「...。」

「ところが、僕が夏休みで帰ってきたら、家の中が笑顔で一杯だ。友達が来ていたり、お母様は怒っていても楽しそうだし、エミリだって、仕事は増えてると思うけど、時折笑みがこぼれてるし。ちなみに、エミリって本名は、住田笑美すみだえみって知ってた?お母様がエミリって呼び始めてそれが定着してしまったんだ。」

「て、定着はしていないと思いますが!」

エミリが慌てて制止する。

「定着してるって、いい加減認めなさいな。」

「...うう。」

エミリはとっても認めたくなさそうだ。


「と、言う訳で、はい。これ!」

お兄様が、私の手を取り五百円硬貨を握らせた。

「??」

「ルー様のおやつが欲しいんでしょ?お母様がお父様の所に行ったから入手経路が断たれて、恨みがましい目で僕を見てたじゃないか。」


ば、ばれてる!!こわ!!邪神、こわ!!


「いや、莉奈の顔が全部物を言ってるからね?何もいわずとも、全部顔にでてるからね?」


ひいぃぃ。まじか!!ダメじゃん!噓つけないじゃん!


「貢献に担う金額ではないけど、まあ、後々出世払いとさせてもらうよ。」

お兄様は言いたいことだけいうと、ヒラヒラ手を振って出て行った。


 特に何も努力したことはないのだけど...。ルー様効果かしら?幸せの招き神かもしれない!今日は二パックあげちゃおうかしら?個人的には丸々ルー様、好物なのだけど、長生きしてほしいしなぁ!


小一時間ほど、部屋のかたずけをエミリにも手伝ってもらい終わらせると


「エミリ買い物つきあって下さる?」

私は、エミリを振り返った。

「もちろんですわ!お車用意します!」

エミリは嬉しそうに微笑んだ。

「ルー様連れてお散歩しながらではだめ?今日はちょっと涼しいし。」

「わかりました。私も一応武術の心得がありますが、念のために私の兄も連れて行きましょう。普段は旦那様のボディーガードなのですけど、鈴木さんの代わりにこっちに来てくれてるので。」

「うん。お願いします。」

エミリは、頷くと兄を呼びに行った。


私は、部屋用の小型冷蔵庫から、ミネラルウォーターを取り出し、ルー様用お椀とリードを用意した。

ルー様は、私のベットでお休みだったので、首輪にリードをつけて抱き上げた。寝ぼけていて抵抗しなかった。尊い!



「エミリの兄の住田圭吾です。莉奈お嬢様。」

玄関先でエミリと共に出迎えてくれた、エミリのお兄様。エミリも美人だがやはりイケメンだ。

「今日はよろしくお願いします。住田さん。」

私は軽くお辞儀をかえした。

「敬称はいりません。住田とお呼びください。」

「わかりました。行きましょうか。」

「はい。」

返事をしながら、私の手荷物と空のペットケースを自然に持ってくれる。さすがだ。


家を出て公園に向かう道すがら住田は話かけてきた。

「莉奈様がお元気になられてから、エミリがすごく楽しそうなのですよ。匠様と莉奈様のエピソードも我慢できずに洩らしておりましたし。」


 なんですと?


エミリをチラッと見ると

「ちがうのですよ!お兄さん!!それは、旦那様に帰って来ていただく様に誘導してくださいとお願いするために言っただけで!!」

エミリは慌てて取り繕う。

「わかってるよ。社長には、上手く言っておいたよ。」

「それに!お兄さんがむりやり言わせたんじゃありませんか!!」

エミリは涙目になっている。

「ハハハ。ごめんごめん。でも、僕も一応身内ですからね?ここだけの話です。ご安心ください。莉奈様!」

どんな話が伝わってるのか、多少不安が残るが、エミリなりに安寿家の心配をしてくれていたのだろう。

まあ、あれだけの失態を見られてるのだ、今更取り繕う事もないわけで。

「大丈夫ですわ!エミリにはお世話になりっぱなしですし、信用もしています。」

「お嬢様~!」

「でも、アレの事だけは他言無用ですよ?」

エミリにコソッと耳打ちしておく、エミリが真剣にうなずいた。

「まだまだ秘密がありそうだけど...。僕も信用してくださいね。莉奈様!」

住田の言葉に私はニッコリと微笑みかえした。


 残念ながら君はイケメンだ。信用できない。










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