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当て馬お嬢様は今日も吠える!  作者: にゃんこの肉球
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 学習机の引き出しを探したが、お目当ての物は見つからなかった。

「ということは...。」

一つだけ鍵が掛かって開かない引き出しがあるのだ。

面倒だけど、鍵から探すしかない。


机の上のちょっと大きめのオルゴール。さすがお嬢様。オルゴール自体もお値段がつきそうだけど、中身がすごい。

子供が気軽につけていい代物でなさそうだ。恐らく本物の宝石が施されているものばっかりだった。

思わずこのまま、買い取りセンターに持っていきたくなる衝動に駆られた。いかんいかん!

しかし、よく見て見るとこのオルゴール、高さのわりに深さが足らない感じなのだ。裏向けて見ると、やはり、二重底になっている。


 ふふふっありましたよ。引き出しの鍵!


取り出し鍵穴に差し込むと、カチャリと開錠した。

お宝!お宝!と引き出して見ると、何やら紙がクチャと丸まった物が沢山入っている。

取り出すと学生時代に見慣れたものが...。そうテスト用紙である。嫌な予感がして紙を開いてみると、

3点、2点、0点、5点、...。

以前の莉奈ちゃんの、見るも涙、語るも涙の苦悩が見てとれた...。ホロリ。

この間の算数が解けなかったのは、入れ物が悪かったのだと胸を撫で下ろし、そっと引き出しを閉めた。


 いやいや!違うでしょ!!目的代わっとるやないか!


慌てて、テスト以外のものが入ってないか確認する。すると、また違った形の鍵があった。

「!!」

今度は鍵穴探しに転身せねばならないのか・・・。ガッデム!

他怪しいのは本棚かなと高価そうな本棚を調べた。

すると、少女漫画のコミックの棚の奥に鍵穴付きの隠し扉が...。これは、特注品だな。

ここまでして何を隠そうとするのか...開けてみると結構スペースがあり、ありましたよ。

やっと目的のこずかい帳!と、日記帳?のようなものが出てきた。...そうか、日記か! かー!乙女だね!!

他にはないかと手を突っ込み漁ると、また鍵があり、もう一つ少し硬い楕円形の3センチくらいのものがあったので、摘み出してみた。

「!!」

黒光りする6本足の見慣れた生き物!!それはGと略されて久しい!

「ギャーーーー!!!」

持ってた右手をブンブン払って、目を頑なに瞑って叫んだ。



「どうしたの??」

と、悲鳴を聞きつけたお母様が飛んできた。

「あわわわ。GがGが!!」

腰を抜かした私を支えてくれたお母様にGを指さした。


「何があったの?」

お兄様もエミリも駆けつけてくれた。

お兄様が私の指さした先に目をやり

「あれ、偽物だよ!ほら。」

と、自分の手のひらにのせた。うん、動かない。


「!!」

私はホーっと胸をなでおろし、

「ああ。良かった!!」

と、安心した。

「リナさん。ちっとも良くないですよ。何がどうしたら、こんな惨状になるのです?」

お母様の眉間に皺が寄り、私に詰め寄った。


見渡すと、机やタンスの引き出しは出しっぱなし、本棚の本は、床に積み上げたまま、

言わずもがな、泥棒被害の後みたいになってた部屋。ひぃぃぃ!!


「へ...部屋の模様替えですわ!新しく同居人(ルー様)も増えたことなので、彼の持ち物も増えるでしょうし...。」

「それにしても、もう少しかたずけながらできるでしょうに...。あら?ゴミかしら?」

「!!」


あ、アレは入れ物(以前の莉奈)が必至で守り倒したテスト用紙!アレだけは見せてはならん!


「お、お母様それはこちらにいただきます!それはそうと、今月のおこずかいについてですが、今月まだ、いただいてなかったのではないかと、コレをチェックしておりましたのです!」

お母様が手にした、丸まった紙を奪い取り、手にしていたノートをヒラヒラ見せた。


 まだ、中身は見てないので、内心ドキドキだったが、アレを見られたら、私の夏休みも終わってしまう!!


「あ、えっとぉ...。そ、そうだったかしら...?」

なんだかお母様の言動が挙動不審である。目がグルグル泳ぎだしたのだ。


も...もしや...。

「まさか...。そういえば、黒沢先生が来られるとき、今年流行りの素敵なワンピースを日替わりで着てらしたわよね?」

「な、何のことかしら??あ、あああれは以前からあったものよ。」

「僕も初めて見ましたけども...。」

お兄様も参戦してきた。ナイスです!!

「や、やだ。匠さんまで、ご冗談を!」

「...。」

「...。」


お兄様と私はお母様をじぃーと見つめた。

「ち、違うのよ!黒沢先生がロスに行かれる前に講習代を早めにお渡ししたのよ。ほら、色々買いたい物とかおありでしょうし、先立つ物は多い方が良いでしょ?そ、それに、莉奈さんの家庭教師代なのだから、莉奈さんの経費とも言えるし...。」


「裁判長、判決をお願いします!」

私はお兄様に空気マイクを差し出した。

有罪ギルティ!!」

お兄様の手を前に差し出し振り下ろすアクション付きの無慈悲な判決に、

「いやあぁぁぁ!!」

お母様が両手で顔を覆い、膝から崩れた。さすが、元ハリウッド女優(但し、主演ではない)見事な演技である。

「ひどいわ!ひどいわ!」

ハンカチを顔に当てながら、部屋を足早に出て行った。

「お母様!私のおこずかいーー!」

廊下を駆けていくお母様の背中に呼び掛けた。

「あ、明日までには、用意しますわ!それと、今日はお父様の所にいきますから戻りませんと料理長に言っておいてください!」

お母様は涙目で振り向くと一目散に自室に向かった。

お父様に泣きつきに行くのであろう...。


 エミリが頭を押さえていた。


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