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当て馬お嬢様は今日も吠える!  作者: にゃんこの肉球
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 皆様!神は存在したのです!常にわれらを照らし導く、唯一無二の存在!それはゴット!今、私の手の中に降臨したのです!


「莉・奈ちゃん?」

神を抱きかかえ、エデンの至福を堪能していた私は後ろに邪神が忍び寄ってきてたことに気付かなかった。

「!! ...。」

現実にもどされ、ゆっくり振り返る。お兄様という邪神でした。

「その白いものはなにかな?」

「え...。か、神です!神が降臨したのです!」

「神に噛み付かれてるけど、痛くないの?」

「甘嚙みです!甘神です!!」

「上手いこと言えてないよ。ダンスの練習の時間はとっくに過ぎてるので、庭をさがしにきたら、こんなとこに...。」

「神が私を導き下さったのです!」

「神にフーって威嚇されてるけど?腕のあっちこっちの爪痕から血が出てるけど?」

「ツンとデレの法則を解くのには痛みを伴うのです!」

「...。」

邪神お兄様は、眉間を押さえた。


 神に守られてる私は無敵なのだ! チートだ! 邪神などにはまけないのだ!


「あ!あっちにも神が居る!!」

と、邪神お兄様は指さした。

「え??」

とっさにその指先をたどってしまう。 二人も神がいるなんて、ハーレムになっちゃうじゃん!

欲という煩悩におぼれかけたそのすきに、邪神お兄様は抱きかかえてた白い神の首根っこをヒョイと捕まえてペットケースに突っ込んだ。

「ギャー!!神が! 私の神が奪われた!!なんたる暴挙!なんたる冒涜!!」

思わず手を伸ばし、ペットケースを奪い返さんとするが、身長差に阻まれかなわない。


「フハハハハ!!己の欲に負けたあわれな羊よ。大人しく我の粛正を受け入れ反省をするがいい。さすれば、神も再び姿を現すであろう!!」

邪神お兄様は、ペットケースを頭上に持ち上げて高笑いを響かせた。


 見事だ。邪神お兄様。プラチナブロンドのイケメン邪神!好物です!!


「あーなーたー達は、勝手口の前で一体、な・に・を、やっているのかしら??匠さんもなんです?一緒になって!!」

魔王ラスボスの降臨により、邪神は顔を真っ赤にし戦意は喪失され、私は青ざめた。

「お母様!!お慈悲を!!お慈悲を!!」

私はそのまま地面に這いつくばった。

 

 神を神をお助けせねば!!


「貴女だったのね?この数日、勝手口の門の下の隙間にツナ缶を置いていたのは!...猫が飼いたいなら、ちゃんと言いなさい!」


 お母様、ツナ缶ではありません。猫缶です。


などと、言えるわけもなく。

「勉強もその他習い事も頑張ります!!勿論、世話は全部します!!お願いします!!」

「その言葉に偽りはない?」

「もちろんです!」

「二言はないわね?」

「はい!」

私のその言葉にお母様はニタリと笑った。

「言質はとったわよ?」と、スマホをひらひら見せた。


 しまったーーーー!!謀られた!!私の神への信仰の高さを最大利用すべくタイミングを計られていたのだ!! ...しかし後の祭り! く!無念!!


「さあ、匠さん。連行して!貴女の神は病気などがないか診てもらっておきますわね!エミリお願い。」

私は、少し放心気味のお兄様に引っ張られ、引きさかれる愛しき神に後ろ髪をひかれながら、

「暫しの別れにございます!必ずや御身の下に戻ります!!」

と涙した。


 

 お母様に思わぬ黒歴史を握られる羽目になった邪神お兄様は、いつも以上に修羅と化し、私のHPを容赦なく一桁まで削りきり、後に「猫缶事件」と称され、安寿家末代まで語り継がれる恐怖の伝説となったのであった。




 動物病院からもどってきたエミリに抱えられて、自分の部屋に戻ると、ペットケースに入った神様が私のベットの上で眠っておられた。

HPの回復をはからせていただこうと手を伸ばすと

「フギャー!!」

と叱咤を受けた。

 一人にしたことを怒ってらっしゃるのだ。寂しかったからツンをなさっておいでなのだ。

「申し訳ありません。忌まわしき邪神にこの身を拘束されていたのです。ルー様にお会いしたかった!」

もう一度チャレンジした。

「フーー!!」

まだ、お許しいただけないようだ。左手に愛しき肉球攻撃を受けた。HPが1減った。

ルー様はペットケースから脱出するとピンクの天蓋に飛びついた。ビリリリと不吉な音がして天蓋のひらひら部分が引き裂かれて、地面に落ちた。ルー様は驚き興奮して再び違う方向のひらひらに飛びついた。

私がお救いしようと近づくとさらに上に登ろうとして布が悲鳴をあげてしまった。

「キャー!!」

私との攻防にルー様がモモンガのごとく飛び回るので、エミリがパニックになって悲鳴をあげた。


なんとかせねばと思っていた天蓋は無事、ルー様の手によって、見るも無残に物理的排除されたのだった。



「これは、どういった状況なのか、忌まわしき邪神に教えてくれるかな?」

エミリの悲鳴を聞きつけて、やってきた邪神お兄様がにっこりと微笑んだ。


 何という地獄耳!さすがは邪神!怖すぎます!


「る..ルー様が天啓をお示し下さったのです。」

私は恐ろしさのあまり目を泳がせた。

「ルー様とは?」

「あの天蓋に引っかかっておられる方です。」

「ペットケースに入れていたはずだよね?」

「HPが一桁だったので、回復アイテムが必要だったのです。」

「あれは、ポーションではないはずだけど?」

「もふみに適うポーションなど、この世に存在しません!!」

「もふみ...?」

「ルー様の柔らかな毛並みをもふらせていただくことです!」

「...。なるほど、状況が見えてきたよ。部屋に戻った君は癒しを求めて、ルー様を触ろうとし、

それを拒否したルー様が逃げ回って、この惨状になったと。」

「違います。天啓です。この天蓋は不吉だとお示し下さったのです。」

「...。」

お兄様は、眉間を押さえた。



「とりあえず、ルー様の確保と天蓋の撤去。ルー様捕獲は僕がやるから、天蓋撤去をエミリと莉奈やってくれる? お母様に見つかったら、まじやばい。」

お兄様のその言葉に、私のHPはさらに削られた。邪神より恐ろしい存在がここにはいたのだった。

お兄様は、ピアノの椅子をもってきて足掛けにして天蓋にへばりついていたルー様の首ねっこをつかみあげた。なんともあざやかである。

その後は、脚立を取りに行っていたエミリと協力して天蓋の撤去を終わらせた。


「ふー。なんとか終わったね。後は証拠品の抹消と、外してしまった言い訳を...。」

お兄様がそう言いかけた時、カツーンカツーンと特徴的な足音が廊下の方から聞こえてきた。

「ひっ」

あれはこの世を統べる魔王のハイヒールが床を削る音。

私は慌てて、燃えるゴミ袋に入れた天蓋の残骸を2階の窓から下に投げた。証拠隠滅は完璧に。

エミリとお兄様は、驚愕して口がパクパクしていたが、声はださない。さすがです!


「お茶が入ったわよ。休憩にしましょう。」

魔王お母様がドアを開けて入ってきた。

「あら?天蓋はどうしたの?」

「あの...えと。」

お兄様の目がグルグルまわっている。

挙動不審気味のお兄様の言葉を遮り、私が思い付いた言い訳を述べた。

「い...イメージチェンジです。それと、あ、暑さ対策です!天蓋があるとクーラーの風があたらなくて寝苦しいのです。」

「そうなの...。あれはお父様があなたの誕生日に買ってくださったものだったんだけど...。」

あのドピンクはお父様の趣味だったのか...。それはそれで少々お父様に不安を覚えるが、それよりもあれをなんとかせねば。

私はエミリに目配せを送った。さすがはエミリ、頷くとお母様に気づかれることなくコッソリ部屋を抜け出した。あれの回収に向かってくれているだろう。

「アンジェリーナどうしたの?目を両方パチパチさせて、ゴミでも入ったの?」

「いえ、お母様。ドライアイでございます。現代病ですわね!それよりもお茶!喉が渇きました!」

「そうね。居間に用意してるわ。匠さん?行きましょうか?」

ベットの近くで固まっていたお兄様。あからさまにビクッと体をふるわせた。

「あ、はい。いただきます。」

と、お母様に促され部屋を出た。





「大変でございます!庭師の鈴木さんがお倒れに!!」

居間で私達が紅茶といただいたクッキーを食べているとエミリが青ざめて入ってきた。

「なんてこと!どういう状況?」

お母様が立ち上がってエミリを見る。

「私が通りかかったら、庭の花壇でお倒れになられてたのです。お声をおかけしましたら、お気づきになられ、なにか、後頭部に重いものが落ちてきたそうで気を失い重みで腰をいためられてしまったようです。

部屋までお連れし、今は自室で休養されてます。」

お母様は慌てて長年仕えてくれている鈴木の様子を見にいった。


 ...。まさか。

エミリが私の耳元に駆け寄り

「大丈夫でございます!証拠はゴミ置き場に移してから、鈴木さんを起こしましたので、何が落ちてきたまではばれておりません!」

と、耳打ちした。

 

 犯人私じゃねーか!!お兄様の視線が痛い...。ごめんなさい。


宝くじに当たるくらいの確立でジャストヒットさせた鈴木さんは、ぎっくり腰のみの診断だった。

よかった。高齢なので、心配したがさすがは庭師!鍛え方がちがったようである。


「でも、不思議よね?ぶつかったことは確かなのに、ぶつかった物が見つからないなんて...。透明な物がぶつかったってことかしら?」

「さ、さあ?ふ、不思議なこともありますね...。」

鈴木さんの部屋からでてきた私は、お母様の言葉に動揺で言葉につまった。

「お祓いしてもらった方がいいかしら?」

「そ、そうですね。その方がいいかもです...。」ごめんなさい。



部屋に戻りペットケースの中で眠るルー様をみてHPを回復。モンプ〇の貢ぎ物の在庫を出してきて、お皿にいれてあげた。ルー様は匂いで目を覚まし、ケースから出てきて食べ始めた。


 尊い!可愛いすぎです!


おそるおそる尻尾の付け根の腰あたりをポンポン優しく叩いた。小さい尻尾がピンと上がる。

食べ終わったルー様が足元に顔を擦り付けてきた。貢物効果がやっと出てきたらしい。


 はー。幸せ!!たまらん!ダメージが全快したよ。ルー様効果絶大である。調子に乗って腹毛と言うお宝に手を伸ばしたら、肉球パンチをくらった。まだお許しいただけないらしい...。つらい。



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