23
23
ダンスパーティはあの後住田の機嫌がすこぶる悪くなった事以外には問題なく終わり、翌日の平和な午後の事。
『黒沢様からメールがきたよ♪ 白鳥様からもメールがきたよ♪
仕―方がなーいので無―視をしーてたら、直電かかって魔王にばれた♪』
「黒〇ぎさんと白〇ぎさんの歌を勝手に替え歌に使うんじゃない!」
お兄様がお茶を飲みながらため息をついた。
「だって、この暑いのに、サファリパークなんて嫌すぎます!こんな愛らしいルー様をあのような獰猛な獣と同じ扱いするなんて、神が許しても私が許せませんわ!!」
「神じゃなく、某有名な生物学者が決めたんだと思うけどね。明後日だっけ?」
「らしいですわね。」
「ところでお兄様、わたくしこの時間は、ここバラ園で、ルー様との愛のひと時を過ごすのが日課なのですけど、なぜお兄様までいるのですか?」
「誰かさんが練習を休まれてるせいで空き時間なんだ。その時間、僕の家の中、僕がどこで過ごそうとも問題ないと思うけど。」
「く~!あーゆえば。こーゆう!宿題はされたのですか?宿題は!」
「そのまま、ブーメランだと思うんだけど。僕のはもう終わってるから問題ないよ。」
「え?」
あれ?テストがOKで浮かれてたけど、やばいんじゃね?なんかドリルも追加されてたし、あと2週間程しかないやん!!
「わたくし用事を思い出しましたので、失礼しますわ!」
慌てて出ていく私の姿にお兄様が声掛けた。
「くくくっ!わからなかったら聞きに来ていいよ!」
くー!何気に何でもこなせるのがまた、腹立つわ!!邪神めが!
「エミリー!エミリー!」
私は協力者を求めて探した。
「はいはい。どうしました?」
エミリが洗い場から手をふきながら出てきた。
「大変なの!!早く来て!」
エミリの手を取って私の部屋に直行した。
「ど、どうしたんです?」
あまりの勢いにエミリは動揺している
「これよ!!エミリにはこれをお願いします!!」
私はランドセルから、白紙の画用紙を出した。
「?」
エミリが首をかしげた。
「ここに、ルー様を描いて頂戴!」
「えー!だ、ダメですよ!!私、絵が壊滅的にヘタなんです!」
「いいのよ!小学校の宿題なのだから、上手くない方がいいのよ!」
「で、でも...。」
「お願いします!時間がないの!私はドリルをかたずけないといけないし!」
「...。わかりました。」
「よろしくね。ここに絵の具もあるし、必要なものは勝手に使って!」
「はい。」
小一時間ほど、黙々と作業して、算数のドリルを終えた私は、必死でやってるエミリの為に、紅茶を貰いに行った。
紅茶を手に戻ってくると、エミリが泣いていた。
「ど、どうしたの?」
紅茶をサイドテーブルに置いた。
「すいません。失敗です!こんなになってしまいました!」
!!ひいぃぃ!!絵を見てビックリ!
なんか白い生き物らしき物が寝ている姿を描こうとしたのだろうが、白い生き物の赤いリボンが滲んで血まみれ状態になっていて、さらにルー様の赤い肉球印鑑があっちこっちについており、殺人現場のようになっていた。 なにこれ?スプラッターイラスト?ジャンルが違うのよ!
「メディーック!!」
思わず、心の声が漏れ出てしまった。
と、とりあえず、ルー様のおみ足の血痕を落とさなければ、部屋が殺人現場になってしまう!
「私がルー様をつかまえます。」
エミリのエプロンもやばいことになってるので、
「いや、そのままでいいわ。エプロンにもついてるし、私がつかまえるから!」
となだめて、必殺アイテムをさがしにいった。
「ナー。」
グルメシリーズをお出しすると大人しく食べてくださったのでつかさずリードをつける。
食べ終わったところを抱きかかえシャワールームに直行した。
私が帰ってくると、騒ぎを聞きつけて様子を見に来たお兄様と住田が、エミリの絵を見てヒーヒー笑っていて、エミリは涙目で真っ赤になって住田を叩いていた。
私は天を仰いだ。
「はい。これ。僕が前に買って置いたスペア画用紙。」
お兄様が部屋から持ってきてくれた。
「エミリにあんな才能があったとは、知らなかったよ!くくくっ」
笑いをこらえきれないらしい。
私もしらなかったわよ!いや、そもそもエミリ頼りの私がいけないわ。反省!
「ごめんなさい。私がいけなかったわ。無理難題をつきつけてしまったのね。自分もそれをされて辛い思いをしてるのに、エミリにさせてしまったわ。本当にごめんなさい。」
座り込むエミリを抱き起し謝罪を申し入れた。
「ちがうんですよ。幼少のころから美術が壊滅的に悪くて、テストで90点台を取ってもいつも『2』しか付かなかったんです。その絵をルー様が見て怒られたのかもしれません。申し訳ありません。」
「いやいや、エミリ! 時代が君に追いついていないのかもしれない。数十年、数百年後には、別の評価がされるかもしれないよ。芸術ってのはそういうものじゃないかな?」
お兄様がエミリをなだめた。
もっともらしい事言ってるが、あんたさっきおもっきり笑ってたじゃないか!戦犯だよ!この野郎!
「だいたい、人任せした莉奈が悪い!手抜きでもヘタでもいいから、自分でやりなさい。」
ビシッとかっこよく決めたお兄様に、
「はい、お兄様。ごめんなさい。」
私は素直に謝った。
そのとおりなので、甘んじてお叱りは受け入れよう。だがしかし。
「笑った件についてはお兄様も住田も謝罪すべきと訴願いたします。」
「!」
「!」
「...確かに。ごめんエミリ!!」
二人は顔を見合わせ同時に謝った。
「いえいえ。いいのです。それより、お嬢様の服にも絵の具がついてますわ。着替えてください洗ってまいります。ささ、殿方は退室を!」
エミリは私が着替えを出来るよう二人を追いやってくれた。
エミリの意外な一面をさらけ出す結果となってしまったが、それがまた萌える要素なのではないかな?フフフ
などと馬鹿なことを考えてる暇はなく。刻々と迫りくる期限に私はむせび泣いた。




