A-2:Transferring
二人はいつでも一緒だった。学校も一緒、登校も一緒、クラスも一緒――
授業も、休み時間も、昼食も、午後も、部活も、下校も、みんな一緒だった。進学した高校まで一緒だった。
それは必然であり運命であった。
運命とは必然。
必然の反対は偶然。
つまり、偶然は運命でない。
彼女はいつも考えていた。この出会いが偶然でないのなら、それは神の定めだと。誰も逆らうことの出来ない運命だと。必然だと。
では何故神は、こんな何も才のないような平々凡々な自分と、まるで正反対の位置に生きているかのような彼を引きつけたのか。
彼女も、彼も考える。しかし、その答えはいっこうに思い浮かばない。それはまるで、太平洋に沈んだたった一つの小さな真珠を手探りで求めるかのようだった。
その真珠を探すのは彼らだけではなかった。世界中の、過去に――し、――された人々はみな、こぞってそれを探し求めた。二人はその人々に気付かなかった。彼らもまた、二人には気付こうとしなかった。
やがて月日は経ち、二人は高校に入学した。
いつも一緒だった男女はしだいにすれ違い始める。クラスこそ同じだけれど、届かなかった想いはさらに遠くなってゆく。
過去に求めた真珠は、太平洋になどなかった。それは目前にあったのだ。彼女はその時になるまで全く分からなかった。そうか、これが――なのか、と。
そしてその真珠を求めるものは、やはり彼女一人ではなかった。いや、高校だからこそ、それを求める者は一気に増えた。そんな人々の誰一人として、今度は彼女の存在に気付かない者などいなかった。代わりに、その存在を認める者もいなかった。
彼女は苦しくなった。
宝石など周りにいくらでもあるのに。自分はその中のたった一つ追い求めただけなのに。
状況は太平洋以上に広大なものになっていた。果てない、宇宙のようなものだった。
いや、太陽だった。
彼女の真珠は太陽となり、誰のものでもなくなるかわりに、誰に対しても明るみを照らすようになった。
そして追い求めた宝石は、決して触れることの出来ない輝きへと変わった。
それは嫉妬ではなかった。
絶望だった。
何も出来ない悲しみよりも妬みよりも、とにかく頭に浮かんだのは絶望、この二文字だけだった。そして、宝石を何よりも光り輝くものに変えてしまったのも、他ならぬ自分自身だとさえ感じた。
だが、好機はおとずれる。