C-3:Disappearance
…………。
目が覚めると、俺は見知らぬ部屋にいた。自分の他には誰もいない、真っ白で簡素な部屋だった。俺はベッドに寝ていた。
窓からは暖かい光が差し込める。起き上がって窓から外に顔を出すと、ここはどうやら病院らしいということが分かった。
どうして俺はここにいるんだろう。
思い出した。今までの記憶を。
周りを見渡す。誰もいない。
……誰もいない?
俺は麗菜を探した。貸し切りの病室にはいなかった。外に出てみた。他の病棟へ繋がる廊下にも、一階のロビーにも、食堂にも、更に病院の外にも出てみたが、麗菜は見当たらなかった。
嫌な予感がした。
あれは夢だったのだろうか。果たして本当に何でもない、ただ俺の脳味噌が創りだした偶然だったのだろうか。
病室に戻った。やはり誰もいない。そこは最初に目覚めた時と変わらない、無機質な空間だった。
ふと目にとまったものがあった。
麗菜の携帯電話だった。
女子の携帯を勝手に覗くのは紳士としていかがなものかと思ったが、どうしても気になってフリップを開いてみることにした。
待ち受けからメニューへ。メニューからメールへ。メールから送信済みメールへ。鼓動に震える手を落ちつけながら、一つ一つ確実に動作を進めていく。
その先頭にあったのは、俺宛てのメールだった。
〈将也。今のあんたは携帯持ってないみたいだから、こんなの送っても見ないと思うけど、書くね。
あんたのお父さんとお母さんはね、もうあんたのところには来ないと思う。愛理や優希や諒子も、来ないと思う。
ずっと前、まだみんなでお見舞い来てた時にね、いつもと同じように私達がお見舞いに来たの。そしたら待合室であんたのお父さんとお母さんがお医者さんと話してたの。みんな聞いちゃったの。
あんたの記憶喪失は一過性なんかじゃない、もしかしたらもう二度と記憶が戻らないかも知れないんだって。
ご両親の気持ちは分からない。けど、絶対冷静ではいられないだろうと思った。他のみんなももう無理だと思っちゃって、それからなの、来なくなったの。
でも私は諦めなかった。一過性じゃないとは言ったけど、一生治らないとは言わなかったもん。だから今までずっと来てた。いつか将也の記憶が戻ってくれるって信じてた。
でも私は気付いた。あんたの記憶が戻ったとして、私はどうすればいいんだろうって。今までと同じように接することが出来るのかな、って。
それにね、今になって、もし本当に将也の記憶がいつまで経っても戻らなかったらどうしようって、不安にもなってきたんだ。不安になってきたら、もう、どうしようもなくなっちゃって、どうしていいか分からなくなっちゃって。
だから、もうお別れね。私、生きる意味もなくなっちゃった気がするの。だから、もう、
じゃあね。
さようなら。〉




