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 チン、ガラガラ。「おやおや……」


 夕食のオムライスで満腹になったせいか、何時の間にか眠っていたらしい。重い瞼をうっすら開けると僕等の保護者、“ゴールデン・アガペー(黄金への愛)”コンラッド・ベイトソンの笑い皺の刻まれた目と目が合った。

「こんな所で寝ていると風邪を引くよ、小さな刑事君」

「ありきたりな喩えしないでよ、おじさん……今、何時……?」

「もう九時半だよ―――ああ、大丈夫だアダム。ジョシュアは私が運んでおく。あと、今朝は悪かったね―――うん、おやすみ」

 居住スペースへ続くドアの閉まる音をバックに、おじさんは資料を鞄に収めた。そして僕の胸の上へ置き、鍛えた両腕で軽々と抱え上げる。

 エレベーターで二階へ降り、心配要らないよ、廊下を歩きながら彼は口を開く。

「職員会議の後、アンダースン先生とキューを呼んで、レヴィアタ君の警護を頼んでおいた。あの御二人の事だ、きっと有効な手を打ってくれるだろう」

「それを聞いて、ますます不安になったね……明日一日、桜を借りたいんだけど」

「ああ、特に問題無いよ。彼女は授業を受け持っていないし、両隣の初等課と高等課棟にも保健室はあるからね」

「そう。だったら朝にでも頼んでみるよ」

 蜘蛛の糸よりか細い手掛かりだが、政府館も把握していない貴重な『目撃者』だ。一応当たってみる価値はあるだろう。

 僕を抱え直し、空いた片手でドアを開く。そのまま電気も点けず、勝手知ったる足取りでベッドルームへ。


 トサッ。「さあ、着いたよ。鞄は枕元に置いておくからね」「ん……ありがと、おじさん」


 “金”が布団を掛けようとして、寸前で気配が止む。直後、顔面にふかふかした感触。目を瞑っていてもハッキリ分かる。UFOキャッチャーでお兄ちゃんが取ってくれたぬいぐるみだ。

「ん……」

 ぎゅう。抱き締めると、先週洗った残り香がほんのり鼻腔をくすぐった。清潔感のあるお兄ちゃんにピッタリだと思い、桜に貸してもらった石鹸の香りの柔軟剤だ。

 改めて布団を肩口まで掛け、気の利くナイスミドルが囁く。


「おやすみ、ジョシュア」「おやすみなさい……おじさん……」


 家族が立ち去るドアの音を聞きながら、僕は今度こそ深い睡魔に落ちて行った。




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