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僕はお皿を両手でしっかり支え、お兄ちゃん(&その他大勢のオマケ)の待つリビングへ。健気にテーブルセッティング中の背へ声を掛け、はいどうぞ!寝椅子の背凭れを倒して示す。
「このソファ、普段は僕専用なんだけど、これからはお兄ちゃんの特等席だから遠慮せず座ってね❤」
「ああ、ありがと」
礼を言って皿を受け取り、目の前のテーブルへ置く。と、半ケツ野郎が首を伸ばしてきた。
「ところで俺、今朝は何処座ったらいいんだ?」チラチラッ。「あと空いてるのは、桜ちゃんのカウチ位だけど」
「却下だ。鵺公はいつも通り床」奥のドアが開き、タオルで髪を拭きながらアダムが命令。
「ええっ!?俺、今日は人間だぞ?一張羅のズボンが汚れちまう」
「文句があるなら立って食え。そうだオッサン、今日一日リムジン貸してくれ」
「別に構わないが、一体何に使うんだい?」
尋ねられるとバリバリ、濡れた頭を苛立たしげに掻き始めた。
「実は寅のアパートの大家が、昨日ギックリ腰やっちまったらしくてな。即入院&全治半月だからあの野郎、俺にしばらく猫達を預かってくれって泣き付いてきやがった」
舌打ち。
「全く。月に半分以上帰らねえんだから、好い加減真面目に引き取り手を捜せってんだよ」
「え゛?猫……あ、ああ、勿論いいよ。ただ、出来れば座席にはタオルかシートを敷」
「サンキュー。って訳で鵺公、手前も来い。意思疎通こそ出来るが、如何せん俺一人だと手が足りん」
「何で俺に飛び火!?」
「桜とジョシュアは買い出しで、オッサンは葬儀。レヴィアタは餓鬼で非力だからな、連れて行っても戦力にならん。以上、QED」
「あ、一応僕も人数に入ってたんですね……いいじゃないですか、ミトさん。猫触りたい放題ですよ?」
「まぁ、にゃんこは好きだからいいけどさー」
ぶー。唇を尖らせる年上に、大丈夫ですよ、中学生は微笑む。
「お二人が出掛けている間に、僕の方で打てる手は打っておきますから」「「「!!?」」」
突然の爆弾発言に、シェアホール全体を走る衝撃。
「ちょ、ちょっと待ってレヴィアタ君!?あなた、まだ私達に話していない情報が」
「正確にはミトさんが、ですけどね」
え?え?おい、しっかりしろ当人。
「赤姐さんの事ですよ、まだなんでしょう?ジョシュアから聞きましたよ」
ああ!得心の行った様子の“黄”へ、やれやれと僕は首を横へ。
「うっかり八平もいい所だね。―――ああ。そう言えば君、僕以外にも素敵な情報もお兄ちゃんへ流してたんだって?」ぴきぴき。「温厚な僕と違って、白状しないと二人共何するか分からないよ?」
穏便な警告に、ゲッ!?真っ青になりつつも、僕へ人差し指を突き付ける。
「って事は、昨日の蹴りは……くそう、裏切ったなハイネ君!?」
「他人のプライバシーを嬉々として喋るからですよ」
溜息。
「早くお三人方へ謝って下さい。こんなつまらない事で仲違いしてるようじゃ、ビ・ジェイさんの捜索にも支障が出ます」
さっすがハイネお兄ちゃん大人ー!思わず惚れ直しちゃったね❤
「嫌だー!言ったら酷い目に遭わされるの確定じゃんか!絶対言うもんかよー!!」
まだ性懲りも無く尻尾をいきり立たせ、完全拒否。その態度を確認した“蒼”は、ほー、とだけ呟いて生徒を一瞥した。
「お前がそこまで徹底抗戦の構えなら仕方ないな。―――レヴィアタ、言え」
「えっ、僕がですか?」
「他に誰がいる。素直に白状しねえと、今学期の内申は最低点にするからな」
すっかり板に付いた脅迫に、なら止むを得ませんね、寧ろ乗り気な様子で承諾。さては狙っていたな、この展開を!
「ええと、因みに先生方。先に聞きたいってリクエストはありますか?」
「あ……じゃあ、私からでお願い出来る?ほら」
チラッ。
「アダムは聞いたが最後、まず冷静でいられなくなると思うし……」
「ええ、僕もその方がいいと思います」
その一言を聞き、おじさんがテーブルごと朝食を窓際へ避難させ始める。流石辣腕経営者、賢明な判断だ。
「酷いよぉ。俺はただ、少しでも捜査の役に立つと思って情報を流してたのに……」
往生際の悪い鵺め。余りの自業自得っぷりに、協力者も呆れた溜息しか出ない。
「だからって下着の色やスリーサイズまで報告する必要無いでしょう。興味無いって言ったら失礼の上塗りですけど、レースでも紐でもAでもBでも、所詮は個人の好みじゃないですか。あ、えっと」
もじもじ。
「因みに僕は、ブリーフとボクサータイプが半々です……」メモ!メモとペンは何処だ!?
「わ、私に合わせて無理に恥を掻かなくていいのよ、レヴィアタ君……?」
赤面しつつおろおろする保健医。
「まぁ鵺の時は目線も低いし、薄々覗かれても不思議じゃないとは思っていたけれど……」
「ホント御免!桜ちゃんって可愛いから、いけないと思ってもつい目が行っちゃって!」
深々謝る助平に、分かりましたよ、女神はあっさり赦しを告げた。
「でも、これっきりにして下さいね?あと、他の女性には絶対しない事」
「本当?わーい、ありがと桜ちゃん!」
「チッ、相変わらず甘いな。で、レヴィアタ。俺のは何だ?」
聞いても暴れませんか?最終通告に、ハッ!鼻を鳴らす当人。
「勿体振るな。これでも一応お前等の担任だぞ?鵺公の妄言如きで我を忘れは」
「じゃあ言いますね。一応断っておきますが、僕は一ミリも信じてませんから―――ベーレンス先生、遠距離恋愛のゲイにされていますよ」
瞬間、ホール内の空気が完全凍結。最初に沈黙を破ったのは、エレベーターへ駆け出す足音。そして脱兎の如き獲物を追い掛ける、獅子も真っ青な狩人の咆哮だ。
「ぎゃあああっっ!!こっち来るな!!!」
「誰が何時野郎と遠恋なんざした!?今すぐ撤回しろ!!」
「だってお前、どんな遅い時間でもいっつも嬉しそうに電話取ってたじゃんか!?だからてっきり」
「あぁ゛!!?」
首を圧し折る勢いで掴み掛かった両腕を間一髪避け、ミトは尚も無駄な弁解を試みる。
「ととと、取り敢えず落ち着け!ってか、皆からもこの猪突猛進野郎に何か言ってやってくれよ!?」
「無理です」
「ま、当然の報いだよね」
「(テーブルを避難中)」
「仏の顔も三度までです。“スカーレット・ロンド”の実験台にしないだけマシだと思って下さい」
女家族のエグい最後通牒に、そんなー!!回し蹴りを辛うじて避けた鵺は、悲鳴混じりの叫び声を上げた。




