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「―――見覚えがあるんだね、あの刀に」「っ!?」 


 一通り調査が終了後、僕が代表でお兄ちゃんを送って行く事になった。近道だからと中央公園へ入り、ブランコ前での発言が先の物だ。

 今日だけで何度目かの仰天をする僕に、御免、小さく頭を下げる学生。

「また訊いちゃいけない質問だったみたいだね」

「違うんだ。ただ……自分でも巧く説明出来る気がしなくて、それで……」

 らしくない言い訳。何をこうも恐れているんだ、僕ともあろう者が。

「でも……お兄ちゃんはもう、これ以上関わらない方がいいよ。ただでさえ危ない立場だし、合唱大会だって近いし……」

 あぁ、失敗した。今のお兄ちゃんは、他人の老婆心なんて感じられないのに。

 僕の落胆を見透かすように彼はスッ、真摯に見つめ返す。


「それは、こうやってお喋り出来るのは凄く嬉しいけど……僕、ハイネお兄ちゃんには死んで欲しくないんだよ。だから」「―――あれ。消さないの、記憶」「……へっ?」


 計算が狂った、とでも言いたげに首を傾げる。

「一応だけど次の手掛かりも見つかったし、てっきり直ぐにでも消すかと思ったんだけど」

 信じられない!何で一言の断りも無く暗示を掛けると思っているのさ、この中学生は!?

「早とちりだったみたいだね、御免」

 合わせていた視線を逸らし、一歩下がる。ああ、成程。親しさからとかでなく、彼なりに異能を使い易いよう近付いてくれていた訳か。って!?

「酷いよお兄ちゃん!僕、そんな極悪非道な奴じゃないもん!!」

 手近なブランコに跳び乗り、思い切り唇を尖らせる。

「でも偶然だけど僕、『ホーム』の秘密を全部知っちゃったんだよ。忘れさせないと流石に拙いんじゃ……」

 うぅ、物分りが良過ぎて、逆にこっちが泣いてしまいそうだ。僕がこんなにも苦しんでるってのに、何なんだよもう!?

「そんな事、改めて教えられなくたって考えてるよ。だけどリスクと天秤に掛けられる位、お兄ちゃんには利用価値があるからね」

 推理力と洞察力、加え度胸は大人顔負けで、僕等に全く引けを取っていない。寧ろ、これで異能まで獲得した日にはチートレベルだ。

「弁護士の奴にだってまた会いたいでしょ?だから彼女が無事戻るまで、取り敢えず処遇は保留」

「……そっか。ありがとう、ジョシュア」

 安堵の表情に、こちらも釣られて肩の力が抜ける。

「明日は休日だし、丁度さっきの『気長な方法』をやってみたいと思っていたんだ。正直そう言ってくれて助かったよ。理事長先生の計らいで、外出禁止令も解かれるだろうし」


―――分かった。アンダースン先生には、私から嘘でない範囲で頼んでおくよ。但し、今まで以上に出歩く際は注意する事。それが調査に加わる条件だ。


「ジェイ家にまだ刀があったって事は、試す価値有りだからね―――ああ、御免。話したいのは山々だけど、明日でいいかな?もう遅いしね。って言うか、まさかと思うけどミトさん、『三人目』の話もまだ」

 さ、三人目だって!!?

「やっぱり。となると、捜査前にその話もしておかないと……早朝で悪いけれど、ジョシュア達のマンションにお邪魔してもいいかな。まさか一学生の僕が、先生方と喫茶店で相談する訳にもいかないし」

 まさかの超展開に、勿論!!失神寸前になりながらも即答。

「お兄ちゃんが来るなら僕、頑張って朝ご飯準備するよ!」

「え?いや、そんなに張り切らなくても……じゃあミトさんと理事長先生には僕から連絡しておくから、トーストとコーヒーをお願い出来るかな?」

「えー、もっと色々作ってあげるよ。何てったってお兄ちゃんの朝ご飯なんだから」

「ううん、あんまり食べると後で困りそうなんだけどな……分かったよ。でも、くれぐれも無理はしないでね」

「はーい!」

 さーて、ハムエッグにしようかな?それともベーコンエッグ?野菜もたっぷり摂ってもらわなきゃね。ああ、こんな事なら冷凍なんかじゃなく、昼間の内にパン屋で焼き立てを仕入れておいたのに!




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